メンタルヘルスを高める職場のコミュニケーションづくり №13 相手の理解にかなう気持ちの伝え方
(メンタルヘルス 2016-11-01付)

メンタルヘルス13
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 会議や打ち合わせの席などでは、自分の意見を上手に述べながら、相手の理解を求めなければならない機会が多くあります。今号では相手の気持ちを大切にしながら、信頼関係を築くコミュニケーションづくりの一例について説明します。

◆相手の心を満たし、客観的に述べる

 コミュニケーションとは双方向の関係を言いますが、いくら自分の意見が正論であっても聞く側の気持ちを配慮しない話し方では、相手の理解は得られません。相手に自分の意見を理解してもらうためには、会話の最初には、「YESセット」を用いると効果的です。

 YESセットとは、相手から「この資料は○○さんが作成したのですか」など質問し、「はいそうです」さらに、「そう思います」などのYESを引き出す質問です。YESセットを導入することによって、肯定的な意識が高まり互いにリラックスし本題に入りやすくなります。

 つぎに、相手の承認欲求(人に理解され認められたいと言う人間の基本的欲求の一つ)を満たすため、「○○さんが言うように…」「そこは○○さんの言われるとおりで…」など、相手の名前を言いながら意見を肯定的に話す方法です。

 さらに、説明には「思う」「感じる」「考える」などの主観的な言葉だけではなく、客観的な内容を盛り込んだ話をするようにします。例えば、「○○については、道教委の調査をみても△△%の子どもたちが□□であると述べています。これは、本校のアンケートの結果と同様です。従って…」と説明すると説得力が増し、意見の信ぴょう性が高くなります。

◆課題や問題を指摘するときはサンドイッチ法を使う

 相手の課題や問題を指摘しそれを改善してもらうためには、サンドイッチ法が有効です=図参照=。サンドイッチ法とは図式にあるように、指摘する課題をプラスの言葉で挟む方法です。いきなり課題や問題を指摘すると、相手の自尊心が傷つく可能性があり、どんなに正しい意見であっても受け入れてもらえません。相手の気持ちを大切にしながら、伝えなくてはならない内容を理解してもらうためには、まず、日ごろの仕事ぶり(おだてるのではなく事実に基づく評価)を認めます。

 つぎに、改善してもらいたい課題を伝えますが、伝え方は肯定的に伝え自分を振り返らせるように、「子どもたちのために○○について、リーダーシップを取っていただきき感謝します」「ところで、現在行っている○○について、どのような課題や問題を感じていますか」と質問し、相手の考えを聞いたあと、「私としては○○については○○と思いますが、どう考えますか」などの意見交換をしながら課題や問題を明確化し、相手の納得を前提に改善への理解を求めます。その後、サンドイッチ法にあるように、期待を込めて励ましを送るようにします。

 課題や問題を指摘するとき、一方的に課題や問題を取り上げるだけでは、相手に失望感や反感を抱かせるだけであり、こちらの気持ちや考えを伝えることはできません。

◆連絡、報告は結論を先に述べる

 子どもたちのけがや事故など、極めて緊急性が高い内容を伝えるとき、肝心な内容を後回しにして、事故の経緯を先に長々と述べる人がいます。

 学校事故では、「○年○組の○○が、体育の授業中、出血し保健室で応急処置を受けています」「意識はしっかりしています」などの核心となる事柄を先に伝え、そのあと、事故に至った経緯を伝えるようにします。

 職場内での連絡や報告も結論を先に述べ、その根拠となる理由は後で述べる方が相手に伝わりやすくなります。

(公立学校共済組合北海道支部学校支援アドバイザー・石垣則昭)

(メンタルヘルス 2016-11-01付)

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