27年「人権侵犯事件」―札幌法務局 「体罰」7年ぶりに減少 「いじめ」10.5%増、63件( 2016-03-24付)
昨年一年間に道内の法務省の人権擁護機関が受理した「人権侵犯事件」の件数は九百五十一件で、前年に比べ一二・五%減少したことが札幌法務局のまとめで分かった。現在の分類で統計を取り始めた平成十六年以降最少の件数となった。学校でのいじめに関する事案は六十三件で、一〇・五%増加。増加が続いていた学校現場での教職員による体罰事案は二八・五%減の九十三件と、七年ぶりに減少した。同局は「教育委員会などの体罰防止に向けた取組が、教育職員に浸透してきている」とみている。。
札幌法務局をはじめ道内の人権擁護機関(函館地方法務局、旭川地方法務局、釧路地方法務局)は、人権侵犯事件調査処理規程に基づき、人権侵犯を受けた人からの申告などから、人権侵害による被害の救済に努めている。
二十七年において新規に救済手続を開始した人権侵犯事件は九百五十一件で、前年に比べ一二・五%減少した。現在の分類で統計を取り始めた十六年以降最少の件数で、一千件を割るのは初めて。そのうち、公務員や教職員などによる事件は一四・〇%減の二百二件だった。
教職員の体罰による人権侵犯事件は九十三件。過去最多だった前年の百三十件から、三十七件、二八・五%と大幅に減少した。二十一年から六年連続で増加していたが、七年ぶりに減少に転じた。同局は「教育委員会などの体罰防止に向けた取組が、教育職員に浸透してきているのでは」と分析している。
体罰に関する救済手続の完了件数は、前年に受理した事案を含め百十八件。学校と連携して被害児童生徒をケアする「援助」が四件、学校と保護者の間で「調整」を行ったのが一件、学校側に必要な措置を求めた「要請」が七十九件、体罰を行った教職員本人に改善を求める「説示」が八十五件だった。関係行政機関に情報提供し、措置の発動を求める「通告」、いじめをした本人への「勧告」や捜査機関への「告発」はなかった。
一方、学校におけるいじめ、児童生徒からの申告などを受けて、法務局が調査し学校側の対応が不適切だった人権侵犯事件は六十三件。前年に比べ六件、一〇・五%増加となった。
旧受理事案を含めた救済手続完了件数は五十二件で、「援助」が五十件、「調整」が一件、「不明確」な事案も一件あった。
また、プライバシーに関する人権侵犯事件は、七・七%減の百四十三件で、そのうち、インターネット等によるものが一一・六%減の百六件だった。ともに過去最多だった前年より減少したものの、依然として高い水準にある。同局では「インターネット等に対する利用者の知識やモラルを高める必要がある」とし、関係機関との連携・協力体制づくりを進め、人権侵犯事件の実効的救済および予防啓発に一層努めていく方針だ。
子どもをめぐる人権問題に関し、学校でのいじめをはじめとする様々な人権問題の解決を図るため、同機関が取り組んでいる「子どもの人権SOSミニレター」について、昨年十二月末現在で四百五十四通の相談があり、人権侵犯性があるものについては、学校や関係機関と連携し、対応している。
また、法務局・地方法務局に設置している専用相談電話「子ども人権110番」には、いじめに関する相談が百四件、暴行・虐待が二十四件、体罰等が九件など、二千十七件の相談が寄せられた。
( 2016-03-24付)