【リポート】道内市町村の高校魅力化に向けた取組 教育条件の支援が多様化 自治体間競争懸念する声も
(市町村 2018-03-07付)

 道内各地の市町村で、高校の魅力化に向けた教育条件への支援が多様化している。保護者負担の軽減を図る教科書や通学費などの補助以外にも、生徒の学力向上に向けた公設学習塾の設置が広がりをみせており、地域の活性化に向けて行政と高校が連携する取組も増加している。背景に少子化による生徒数の減少、地域産業の後継者確保などの課題があり、北海道大学大学院教育学研究院の篠原岳司准教授は、自治体間の支援が競争化している問題を指摘。「地域資源の可能性を知る地域住民、教材化の手法を知る教員が相互に連携することが大切」と語る。

 義務教育と比べて高校への通学は家庭の経済的負担が大きく、教科書・副教材、部活動遠征費の補助、医療費保障、大学進学時の支給金など、各自治体では様々な助成が行われている。

 奈井江町では、地元での就職希望者が多いことから、奈井江商業高校の生徒の資格取得や公務員試験模試の受験料などを助成。通学費補助と併せて生徒を呼び込み、約七割の生徒が町外から通っている。

◆公設学習塾設置、学力でアピール

 生徒の学力向上に向けて公設学習塾を設置する自治体も増えている。足寄町は二十七年度、高校生のための公設学習塾を設置した。保護者、生徒を対象に調査した結果、学校に〝学力〟を求める声が最も多かったためだ。授業以外での学習時間を保障することで、大学に進学する生徒が増えるなど効果が上がっているという。

 三十年度においては、平取町、白糠町、寿都町など複数の自治体が公設学習塾の設置を計画している。

 夕張市が新年度から開設を予定している公設塾では、学力向上を図るための学習サポート以外に、地域の課題解決に生徒自ら取り組み、外部講師の招へいなど企画・立案を行う新しいタイプの学習塾を想定している。

◆地域活性化に向けた連携も

 地域の活性化に向け、行政と高校が連携する取組も多い。三笠市は本年度、三笠高校の部活動の一貫として、生徒がレストランの運営に携わる研修施設・高校生レストランを建設。来年度のオープンを予定しており、市の基幹産業である農業を主軸としたまちづくりに取り組んでいる。

 士幌町は本年度、士幌高校の農産物の生産工程の安全性を保証する国際規格「グローバルGAP」の取得経費を負担。高校での取得を契機として、まち全体で農家の団体認証に向けた準備を進めている。町の関係者は「若者たちが生産工程や生産物の安全性、リスク管理について理解を深め、地域の未来の担い手に育ってほしい」と期待する。

◆複数自治体での議論が必要に

 教育条件の支援が多様化する要因の一つに、少子化による生徒数の減少がある。ある行政関係者は、定員割れによって間口の削減、廃校となった場合、望ましい教育環境を求める子育て世代が流出し、自治体の税収減、地域の活力の喪失につながる懸念を口にする。

 一方、北大大学院教育学研究院の篠原准教授は、生徒確保のために、自治体による支援が競争化している問題を指摘する。長期的な視点から地域全体の産業の活性化を図るため、複数の自治体を巻き込んだ議論の必要性を挙げ「地域が協働して一つの学校を運営することも考えなくては、逆に地域全体の振興を妨げる可能性がある」と警鐘を鳴らす。

 また、高校の魅力化を図るには学校・地域間の連携と協力が鍵になると指摘。「教材となる地域資源の可能性を知る地域住民、教材化の手法に精通する教員が相互に連携すること、高校の主体性を自治体が引き出し、方向性を一致させることが大切になる」と語る。

 ある教育行政関係者は、学校に対する生徒や保護者のニーズを把握する必要性を示し「高校の在り方について意見を交流し、学校、地域の様々な力を結集することが必要だ」と話す。

(市町村 2018-03-07付)

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