旭川市4年度教育行政方針 いじめ防止対策を強化 特別支援教育専門員配置(市町村 2022-03-03付)
黒蕨教育長
【旭川発】旭川市教委の黒蕨真一教育長は2月25日、市議会第1回定例会で4年度教育行政方針を説明した。確かな学力の育成に向けて道教委の授業改善推進チームによる巡回指導や、小学校において専科教員による指導の充実に取り組んでいく。特別支援教育では、新たに専門的な知識や経験を有する特別支援教育専門員を配置する。市いじめ防止等対策委員会が調査を進めている重大事態の調査報告をいじめ防止対策に生かし、仮称・いじめ防止条例の制定に向けた取組や市いじめ防止基本方針の見直しを進め、いじめ防止対策の強化に取り組んでいくことを表明した。
執行方針の概要はつぎのとおり。
【学校教育】
▼子どもたちに未来を生き抜く力を育む
新型コロナウイルス感染症の収束が見通せない中、学校の新しい生活様式を踏まえた感染症対策を徹底した上で、学びの保障や心のケアに努めるとともに、児童生徒が正しい理解のもと、自ら感染予防を実践し、感染への誤解や偏見のない適切な行動をとることができるよう引き続き指導する。
学校での衛生管理についても、国の制度を活用しながら継続的に取り組んでいく。
確かな学力の育成については、学習指導要領の趣旨を踏まえ、各学校における主体的・対話的で深い学びの実現に向けた授業改善を一層進められるよう道教委の事業を活用し、授業改善推進チームによる巡回指導やその成果の普及を図るとともに、小学校における専科教員による指導の充実に取り組んでいく。
全国学力・学習状況調査の結果を分析し、作成した「指導の改善策」について教員研修や学校訪問指導などを通じて周知を図り授業改善を進めていく。
英語教育については、各学校にALTおよび小学校英語教育の充実に向け外国語活動サポーターを派遣するほか、長期休業期間にイングリッシュ・チャレンジ教室や教員の英語力向上を図る研修会を実施する。
ICTを活用した教育の推進については、児童生徒の学びの質を高めるため、一人ひとりの学習状況に応じて、学習目標を達成する上でより効果的な手段としてICTを活用するなど、健康面に配慮しつつ1人1台端末の活用を一層推進する。そのため、授業や家庭学習で利用できるオンライン教材ソフトなどの環境整備に取り組むほか、専門的な外部人材を学校に派遣し、運用面の支援を行うとともに、各学校の授業実践の共有や教員研修を通して指導力向上を図っていく。
家庭学習における日常的な端末の活用について、モデル校による持ち帰りの試行を実施し、その成果と課題を踏まえて今後の方向性を検討するとともに、ICTパークと連携し、地域におけるプログラミング学習の充実を図っていくほか、保護者や地域の方々にICTの活用に対する理解が深まるよう情報発信に努めていく。
少人数学級編制については、小学校の全学年を対象に国や道教委が段階的に進めている35人学級の動きを踏まえながら、引き続き教員の確保に努め、本市独自の取組を進めていく。
いじめ問題への対応については現在、市いじめ防止等対策委員会が調査を進めている重大事態の調査報告や再発防止に向けた提言等をいじめ防止対策に生かしていく。
市長部局とも連携して仮称・いじめ防止条例の制定に向けた取組や市いじめ防止基本方針の見直しを進めるとともに、組織体制の強化や専門家による相談体制の充実などについて検討を行い、いじめ防止対策の強化に取り組んでいく。
積極的ないじめの認知や迅速な対処など、各学校における組織的な対応の徹底を図るとともに、生活・学習Actサミットの開催などを通じ、いじめの未然防止に向けた児童生徒の主体的な活動を支援していく。
不登校への対応については、教員やスクールカウンセラー等による教育相談や家庭訪問等を充実し、未然防止や初期対応の徹底を図っていく。
不登校児童生徒の学校復帰や社会的自立に向け、適応指導教室「ゆっくらす」における指導や、タブレット端末の活用による家庭学習等の支援に取り組むとともに、子ども総合相談センターなど関係機関とも連携を図りながら、一人ひとりの状況に応じた対応を進めていく。
豊かな心の育成については、道徳教育の一層の充実に向け、道徳科研修会を開催し、教員の授業力向上を図るとともに、全ての学校で「生命(いのち)の安全教育」の授業を実施するなど、命の大切さや思いやりの心を育む教育を推進していく。
体力向上に向けた取組については、児童生徒自らが目標を持って生活し、運動に取り組むことができるよう、教員研修等を通じて実践的指導力の向上を図り、授業改善を進めるなど、学校における体力づくりの取組の充実に努めていく。
児童生徒の健康の保持増進に大きな役割を果たしている学校給食については、安全・安心の確保が重要であることから、給食調理施設の適正な維持管理や職員研修の実施などによって、衛生管理と安全管理の徹底を図っていく。
学校給食を通じ、食の大切さはもとより、地産地消、地域の食文化などについて幅広く学ぶことができるよう、生産者などとも連携した食育に取り組んでいく。
児童生徒のふるさと旭川への理解を深め、郷土への愛着と誇りを育むため、本市の地域人材や施設などのリストを拡充し、各学校における地域の教育資源を効果的に活用した学習活動を支援していく。
特別支援教育については、新たに専門的な知識や経験を有する特別支援教育専門員を配置するとともに、特別支援教育補助指導員を増員し、一人ひとりの教育的ニーズに応じた支援や指導の充実に努めていく。
▼子どもたちの学びの環境を整える
子どもたちが安心して過ごせるよう学校施設の耐震化に向けて、豊岡小学校の増改築工事に着手するとともに、千代田小学校については、来年4月からの供用開始を目指し工事を継続する。
永山西小学校の増改築工事の実施設計、日章小学校および明星中学校の耐震補強工事の設計についても実施していく。
全国的に子どもたちが巻き込まれる登下校中の事故が発生している中、関係機関や地域と連携し、通学路の危険個所の合同点検を行い、安全確保に向けて必要な対応を行っていく。
児童生徒のより良い教育環境を整えるため、市立小・中学校適正配置計画に基づき、地域の実情を踏まえ、保護者や地域住民と意見交換を行い、理解を得ながら学校の統合や通学区域の見直しに取り組んでいく。
子どもの貧困は社会的な課題であり、就学援助制度等の実施によって、引き続き保護者の経済的負担の軽減を図るとともに、関係部局と連携し、各種相談窓口や支援制度についても周知するなど、きめ細かな情報提供に努めていく。
▼子どもたちをともに育て豊かな学びをつくる
地域の理解と協力を得た学校運営に向け、各学校におけるコミュニティ・スクールの取組を着実に進めていく。
学校における働き方改革については、市立小・中学校働き方改革推進プランに基づき、教職員が勤務時間を意識した働き方を実践するとともに、業務改善や環境整備を進めることなどによって、時間外勤務の縮減を図る。
教員が社会や時代の変化に的確に対応できるよう資質・能力の向上を図るため、それぞれのキャリアステージに応じた研修を計画的かつ効果的に実施していく。
教職員の服務規律の保持については、学校教育に対する信頼を損なうことのないよう、教育委員会と学校が危機感を共有し、教職員一人ひとりに教育公務員としての自覚と責任を強く促すなど、不祥事の根絶に取り組んでいく。
【社会教育】
▼市民一人一人の主体的な学びの機会の充実
生涯学習フェアまなびピアあさひかわについては、オンライン形式などの手法を取り入れ、市民の学習活動への関心を高め、その成果を発表する機会として開催する。
青少年への学習機会提供について、子どもたちが本市の魅力に触れ、愛着を育むことができるよう、地域資源を生かした体験活動などの事業を実施していく。
家庭教育支援の推進については、保護者が家庭教育を学ぶ機会を提供するとともに、子育て世代へのアンケートを実施し、本市における家庭教育の現状や課題を整理していく。
ジオパーク構想の推進については、ジオパーク活動を持続可能な地域づくりのツールとして活用し、将来的な日本ジオパーク認定に向け、さらなる普及や活動主体の多様化に取り組んでいく。
科学館においては、科学への探究心を育む契機として、ロボット恐竜やカムイサウルスの全身骨格レプリカを展示する特別展「恐竜ワールド」を開催し、併せてジオパークの関係者と連携して、恐竜がいた時代の旭川の様子を紹介する展示を行うなど、魅力ある学習機会を提供していく。
▼市民の学びを支える環境の整備
公民館においては、ICT機器を活用した事業を展開するためインターネット環境の整備を進めていく。6年度に予定されている地域集会施設の見直しの第2段階に向け、公民館の位置づけについて考え方を整理していく。
中央図書館においては、第4次市子ども読書活動推進計画に基づき、全ての子どもが自ら読書に親しむことができる環境づくりを進めるとともに、ホームページやSNSを活用した資料提供や広報活動の充実に取り組んでいく。
Web所蔵絵画作品展については、展示作品の対象を広げ、内容を充実させていく。
施設の老朽化が課題となっている市民文化会館については、学識経験者等で構成する市民文化会館の在り方に関する検討会を立ち上げ、市長部局と連携して整備の方向性について検討する。
▼地域における学びの循環
シニア大学においては、主体的に学習成果を還元し、地域で活躍できる人材を育成するため、実践的なカリキュラムの充実を図っていく。
地域学校協働活動については、モデル地域において研修会等を実施し、地域住民の理解を深めるとともに、地域の人材や資源の把握、地域住民が安心して活動できる環境の整備などに取り組んでいく。
▼市民の心を豊かにする文化芸術活動の充実
文化芸術活動がより身近なものとなるよう、文化芸術事業への補助金交付や後援のほか、市民ギャラリーやリハーサルホールなど活動の場を提供することで市民の活動を支援する。
文学資料館においては、より多くの方に関心を持っていただけるよう、旭川にゆかりのあるマンガ家や作家を紹介する企画展示を開催する。
▼郷土文化の保存・活用と郷土愛の育成
社会教育施設においては、市制施行100年に合わせて、これまでの旭川のまちの歩みや暮らしの移りかわりに関する企画展を幅広く開催するほか、博物館では、市内の縄文遺跡をテーマとした企画展を開催し、郷土の歴史や文化への関心を高める多様な機会を提供していく。
アイヌ文化の普及については、国の交付金を活用し、民間アイヌ文化施設の新館整備に対する支援を行うとともに、「アイヌ神謡集」をまとめた知里幸恵氏没後100年を記念する事業を実施するほか、文化伝承活動の促進や博物館が所蔵する交易品を紹介する企画展の開催など、アイヌ文化の保存と伝承、理解の促進を図り、産業や観光の振興につなげていく。
(市町村 2022-03-03付)
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