Pick Up2023 第7回 胆振・日高( 2023-12-18付)
◆伊達市 部活動地域移行の取組
地域クラブ設立 年間50日指導実現
伊達市は、5年度から3年間を休日中心、8年度からは学校部活動を地域部活動への完全移行を目指して、伊達スポーツクラブ“藍”を設立。少子化による部員の減少や顧問教員の過重負担、スポーツ団体や地域指導者と学校との連携不足などの解決に向けて活動している。
現在は、伊達スポーツ協会の職員や地域のスポーツチームに所属する選手ら約70人がクラブの地域指導者として登録。指導者確保に当たっては、クラブの役員が大会や練習の様子を観察して声をかけた。
クラブは、地域指導者による複数体制で土日いずれか1日と祝日の指導を年間50日間ほど行う。活動引き継ぎ書を活用し顧問教員との連携・協力を深めている。現在は伊達中学校、光陵中学校、大滝徳舜瞥学校のバレーボール部やバスケットボール部、野球部など11競技をサポートしている。
うち伊達中のバドミントン部、光陵中のテニス部、柔道部、剣道部は地域部活動への完全移行が完了した。伊達中バスケットボール部には光陵中の生徒が練習に参加し、試合にも合同チームとして出場。学校の枠組みを越えた活動が進んでいる。
平日の対応課題に
地域指導者は本年度の活動を踏まえ、顧問教員が平日の会議や研修などによって部活動が実施できない場合への対応を課題として挙げる。「地域指導者が平日の指導に当たることも可能。生徒がより充実した部活動を行うための対策を考える必要がある」と指摘する。
顧問教員からは「作戦や戦術面での指導をもっと充実させたい」など、より高度な指導を期待する声が上がる。
クラブの吉川修一事務局長は「子どもたちが思い切りスポーツに打ち込める環境の維持が重要。その上で、経験者からより専門的な指導を受け、生徒たちのレベルアップへとつなげたい」と話している。
◆平取高 存続かけ全国募集へ
止まらぬ生徒数減
「町外から生徒を迎えるしかない」。3月に開かれた平取高校と地域の未来を考えるフォーラムで、遠藤桂一町長はそう決意を語った。平取高の入学者数は2年度19人、3年度15人、4年度11人と3年連続で定員の半数に満たない。生徒増対策は待ったなしの状態だ。
平取町の近年の出生数は20人程度。人口減少から子どもが増える見込みはない。「町から学校がなくなる」という強い危機感から、町、教育関係者、住民らによる「平取高校の魅力化を図り存続させる会」が4年9月に発足。同校存続の方向性を検討し、ことし6月、来年度入学生からの全国募集に踏み切った。
多様性と共生学ぶ
「三笠高校のような特色ある高校に」。フォーラムでは多くの住民が切実な声を上げた。地域みらい留学の登録校は全国で100校超の多数に上るため、魅力がなければ生徒は集まらない。道立高で普通科の平取高は、その枠の中で特色を出さなければならない難題に挑む。
そうした中、同校が打ち出したのが「“アイヌ文化”を学びながら、学校教育全体で“ダイバーシティ(多様性)とインクルージョン(共生・協働)を考える学校”」だ。
町には多くのアイヌ史跡があり伝道者がいる。イベントやレクチャーも多い。アイヌ語、木工、刺しゅうなどを体験的に学びながらアイヌの自然観など精神性にも迫ることができる。
さらに注目されるのが「多様性と共生・協働」の学びだ。LGBTQ、民族、生物多様性、認知的多様性、国際理解などを幅広く学び「共に生きていく」ことと、そのための社会の在り方を探る。
民族間の争いや偏見・差別など現代社会が抱える課題に真正面から向き合い、「多様性」を認め「共生」の道を探る同校の取組は、まさに時代の要請に応えた先駆的な試みと言える。
鈴木浩校長は「本校で共生・協働を学んだ生徒が様々な職場にその精神を広めていくことができれば、社会を変えていくことができるのでは」との未来図を力強く語る。
多様さを受け入れ、共生できる人材の育成。同校の志高い挑戦に注目が集まる。
( 2023-12-18付)