実生活に生きる力育成 道国語教育連盟 第79回函館大会( 2024-10-24付)
附属函館中の阿部奈央美教諭による「話すこと・聞くこと」の授業を公開
【函館発】道国語教育連盟(村上智樹委員長)は11日、函館市立亀田小学校を主会場に第79回道国語教育研究大会函館大会を開いた。小・中学校7校の教諭による7授業を公開し、分科会や基調講演等を展開。中学校「話すこと・聞くこと」の授業では、1人1台端末によってテキスト記録アプリを活用し、発言量等の記録データをもとに、生徒自らが話し合いの在り方や内容を深める姿が見られた。
研究主題は「実生活に生きてはたらく国語の力の育成」。①1人1台端末の学習環境を活用した単元づくり②指導と評価の一体化を踏まえた単元づくり③国語科年間指導計画の工夫・改善―の3視点を設定した。4年度から3ヵ年計画で研究を進め、三つの視点を各年度の副主題に据えている。
開会に当たり、村上委員長は「多くの学びとともに、多くの人との出会いの機会にもつながる。この大会が、人と人とのネットワークを広める機会になれば」と期待を寄せた。
髙村幸子大会運営委員長は、子どもを取り巻く環境の変化に触れ「国語の力こそが子どもたちが社会で生きていく上で不可欠な基盤になる」とし、大会日程を紹介した。
来賓を代表し、渡島教育局の山下幹雄局長、函館市教委の藤井壽夫教育長が祝辞に立った。山下局長は国語科で育む資質・能力に触れ「国語科の学習を他教科等の学習や学校の教育活動全体と関連させていくカリキュラム・マネジメント上の工夫を図る必要がある」と示唆。藤井教育長は学習指導要領の前文から子どもに必要な資質・能力を説き「一つ一つの根幹をなすのは国語教育だ」と強調した。
◆亀田小、五稜郭中 2会場7授業公開
公開授業は亀田小、五稜郭中学校の2会場で、市内7小・中学校教員による実践を公開。小・中学校の「話すこと・聞くこと」「書くこと」「読むこと」、小中合同の「知識および技能」の領域に沿って7授業を展開した。
中学校「話すこと・聞くこと」は、道教育大学附属函館中学校の阿部奈央美教諭による3年生単元「互いの意見を生かして話し合おう」。4時間扱いで、テーマ「持続可能な未来を創るために自分たちが取り組むこと」のもと、生徒自身が学習の見通しを持って、情報収集や意見・根拠を構成シートに整理し、話し合い活動を進める。
3時間目となる本時の目標を「進行の仕方を工夫したり互いの発言を生かしたりしながら話し合い、合意形成に向けて考えを広げたり深めたりすることができる」と設定した。
導入時に学習課題やテーマを確認し、各班に分かれて話し合い活動を実施。1人1台端末とマイク付きヘッドホンを用意し、テキスト記録アプリ「MOZICA」、グーグル・ドキュメントの音声入力機能を活用。MOZICAは、音声からリアルタイムで発言を記録し、毎時の発言量が発言者に応じて色分けしたグラフとして表示される。
生徒たちは、2年次の授業で生徒個人が作成した「話し合いの手引」を踏まえ、自ら話し方や聞き方を意識して協議を進めた。聞き手に回った際は、相手の意見を整理して、課題点を見つけて指摘し、解決策を共に考えるなど、話題を発展させた。
阿部教諭は巡視する中で、共有される各班のデータを見ながら生徒の意見を深掘りしたり、論点整理に協力して生徒が自ら方向性を見いだすきっかけをつくったりするなど、話し合いの活発化を支えた。
話し合いを終え、生徒たちはデータをもとに、進行の仕方と話し合った内容の両面から振り返りを行った。
阿部教諭による指名のもと、いくつかの班が振り返りから得た気付きや活動の工夫点を発表。「話し合いの前に方向性を定めて、結論を出す前に再度確認することで、観点がぶれないように心がけた」「全員の意見から共通点を見つけて、新たな視点を探った」と、多様な話し合いの深め方を伝え合った。
公開授業後、亀田小を会場に分科会を実施。基調講演では、文部科学省初等中等教育局教育課程課教科調査官の鈴木太郎氏が講師を務めた。
( 2024-10-24付)