文部科学省の28年度概算要求主要事項③
( 2015-10-09付)

 文部科学省の二十八年度概算要求主要事項はつぎのとおり(金額は要求・要望額、単位・百万円。カッコ内%は前年度予算比)。

学力と人間力を備えた人材を育成するための教育再生の実現

【未来への飛躍を実現する人材の養成】

◆諸外国・国際機関等との連携によるグローバルな人材の育成等=八八〇(一五六・三%)

 地球規模で課題となっている貧困・テロ、環境、資源・エネルギー問題などの解決に資するとともに、世界の国々とともに教育の質の向上に取り組んでいくため、諸外国政府や国際連合大学、国際バカロレア機構、ユネスコ(国際連合教育科学文化機関)などと連携し、国際社会や地域社会で活躍する人材育成などに向けた事業を展開する。

▼二〇一六年G7教育大臣会合の開催(新規)=一四一

 二〇一六年に日本(三重県志摩市)でサミット(主要国首脳会議)が開催される機会を活用し、G7の教育大臣等の参加を得て、二十一世紀において求められる資質・能力とその育成方策などに関する今後の取組や協力について議論する会合などを、岡山県倉敷市において開催する。

▼国際バカロレアの推進=七九

 グローバル人材の育成に有益なプログラムである国際バカロレアについて、わが国における導入拡大を図るため、国際バカロレア機構と協力し、その一部科目を日本語でも実施可能とする「日本語DP」の開発を推進する。

▼日本型教育の海外展開(新規)=一五〇

 近年、諸外国から高い関心が示されている日本型教育について海外展開を推進するため、関係省庁・法人・民間企業などで構成する「日本型教育の海外展開官民協働プラットフォーム」を創設。このスキームのもと、関係者間での情報共有、具体の展開案件の形成を促進するための国際フォーラムおよびパイロット事業の実施を通じて、諸外国との強固な信頼・協力関係の構築、日本の教育機関の国際化の促進および日本の教育産業などの海外進出の促進を図る。

▼ユネスコとの連携によるグローバル人材育成=三一一

 近年のグローバル化をはじめとする国際社会の多様性に対応するユネスコの取組と連携して、わが国のユネスコ活動の活性化および国内外における持続可能な開発のための教育(ESD)の一層の推進を図るなど、国際的に活躍できる人材育成に資する事業を展開する。

▽日本/ユネスコパートナーシップ事業=九八

 国内のユネスコ活動に関係のある機関などの活動強化を通じて、ユネスコ活動の普及と理解の促進を図り、ユネスコの理念・目標の実現を目指す。

 従来のユネスコスクール支援事業、ユースフォーラム開催などに加え、学校におけるESDの取組をさらに効果的に推進するため、新たに『ESDの実践の手引き』(仮称)の活用による研修実施やESD先進重点校の選定・支援などを行う。

 また、地質学的遺産の保護と国際的な認定を目的としたジオパーク事業がユネスコの正式事業となることから、ジオパークを活用したユネスコ活動推進事業を行う。

▽グローバル人材の育成に向けたESDの推進=七四

 教育委員会および大学が中心となって、ユネスコ協会および企業などの協力を得つつ、ESDの推進拠点であるユネスコスクールとともにコンソーシアムを形成し、国内におけるESDの実践・普及および国内外における学校間の交流などを促進する。

▽ESDグローバル・アクション・プログラム(GAP)信託基金=一三九

 「ESDグローバル・アクション・プログラム(GAP)」に明記されている優先行動分野に重点的に取り組み、ESDを戦略的により一層推進するため、ユネスコに信託基金を拠出し、「地域コミュニティー」、「教育者」、「ユース」などに関する事業を実施する。

▼国際連合大学を通じた地球規模課題解決に資するグローバル人材育成等=二〇〇

 ミレニアム開発目標(MDGs)以後の国際開発目標として、国連において検討が進められている、ポスト二〇一五年開発アジェンダなどにおける地球規模課題の解決に寄与するため、国連システムのシンクタンクである国連大学を通じて、グローバル人材育成、国際協力プロジェクト実施、サステイナビリティ研究の推進などを行う。

◆国立大学改革の推進=一、一五五、三一三(一〇四・〇%)

▼国立大学法人運営費交付金=一、一三六、五一三(一〇三・八%)

 国立大学および大学共同利用機関がわが国の人材養成・学術研究の中核として、継続的・安定的に教育研究活動を実施できるよう、基盤的経費である国立大学法人運営費交付金の充実を図る。

▽大学運営の基幹的な経費の充実

 継続的・安定的に教育研究を展開しうるよう、各国立大学の財政基盤をしっかりと支えるために必要な大学運営の基幹的な経費の充実を図る。

 意欲と能力ある学生が経済状況にかかわらず修学の機会を得られるよう、授業料免除枠を拡大(二十七年度約五・七万人→二十八年度約五・九万人)するとともに、学内ワークスタディへの支援を行う。

▽機能強化の方向性に応じた重点支援

 各大学の機能強化の方向性に応じた取組をきめ細かく支援するため、国立大学法人運営費交付金の中に三つの重点支援の枠組みを新設。

①主として、地域に貢献する取組とともに、専門分野の特性に配慮しつつ、強み・特色のある分野で世界・全国的な教育研究を推進する取組を中核とする国立大学を支援

②主として、専門分野の特性に配慮しつつ、強み・特色のある分野で地域というより世界・全国的な教育研究を推進する取組を中核とする国立大学を支援

③主として、卓越した成果を創出している海外大学と伍して、全学的に卓越した教育研究、社会実装を推進する取組を中核とする国立大学を支援

▽マネジメント改革の推進

 学長のリーダーシップやマネジメント力の発揮を予算面で強化する観点から、教育研究組織や学内資源配分等の見直しを促進するための仕組みとして、「学長の裁量による経費」を新設。

▽共同利用・共同研究体制の強化・充実

 国内外のネットワーク構築や新分野の創成等、共同利用・共同研究拠点の強化に資する取組から、将来的に共同利用・共同研究拠点を形成するような附置研究所等の先端的かつ特色ある取組まで、一体的に重点支援し、わが国の大学全体の機能強化に貢献する。

 また、大学共同利用機関等において実施される先端的な学術研究の大型プロジェクト(大規模学術フロンティア促進事業)について、国際的競争と協調のもと、戦略的・計画的に推進する。

▼国立大学経営力強化促進事業=一八、八〇〇(一一一・九%)

 「国立大学経営力戦略」(二十七年六月十六日文部科学省)に基づき、国立大学の自己変革を進め、新陳代謝を図るため、意欲と能力のある教員がより高いパフォーマンスを発揮する環境整備や経営を支える人材等の育成・確保等を推進し、国立大学の経営力の強化を促進する。

▽国立大学改革強化推進補助金=一四、六〇〇

 若手研究者の安定的なポスト拡大と中長期的な視野に立った教員の年齢構成の是正等などの先導的な取組や研究戦略(産学連携を含む)、国際交流等の専門分野において高度な専門的能力を備えた専門人材を育成・配置することによって、研究力強化、グローバル化への対応を組織的に展開するなど経営力の強化への先導的な取組を集中的かつ重点的に支援。

▽国立大学基盤強化促進費=四、二〇〇

 各国立大学の機能の強化をより一層促進するため、基盤的設備や最先端設備の整備など基盤強化の観点から重点支援する。

◆国立高等専門学校における教育研究の推進=六三、〇三六(一〇一・七%)

 職業に必要な知識および技術を有する実践的・創造的な技術者を養成している国立高等専門学校について、教育活動を支える基盤的な経費の充実を図る。

▽国立高等専門学校における教育研究基盤の充実

 国立高等専門学校の基盤的な経費を措置するとともに、産業構造の変化、少子化の進展、技術の高度化などの社会・経済状況を踏まえ、「国際的に活躍できる技術者の養成に向けた取組を推進するとともに、国内外から高い評価を得ている高等専門学校制度の海外展開に向けた体制整備」「社会・地域・産業界等のニーズを踏まえ、今後の高専の強みや特色となる分野(情報セキュリティーなど)の教育や、地元企業や自治体と連携して行う教育の取組を推進」など、高等専門学校教育の充実を図る取組を支援する。

◆私立大学改革の推進など私学の振興=四八九、八五四(一一三・六%)

▼私立大学等経常費補助=三二七、四五〇(一〇三・九%)

 私立大学等の運営に必要な経常費補助金を充実し、建学の精神や特色を生かした教学改革や経営改革等に取り組む大学等を重点的に支援する。

▽一般補助=二七四、六七〇

 大学等の運営に不可欠な教育研究にかかる経常的経費について支援する。

▽特別補助=五二、七八〇

 二〇二〇年度以降の十八歳人口の急激な減少を見据え、経営改革や地域発展に取り組む私立大学などに対し、重層的に支援する。

・私立大学等経営強化集中支援事業の充実=七、〇〇〇

・経済的に就学困難な学生に対する授業料減免の充実=対象人数二十七年度約四・二万人→約四・五万人

▽私立大学等改革総合支援事業=一九、二〇〇

 教育の質的転換などの改革に全学的・組織的に取り組む私立大学などに対して重点的に支援する。

▽私立大学研究ブランディング事業(新規)=七、八五〇

 学長のリーダーシップのもと、優先課題として全学的な独自色を大きく打ち出す研究に取り組む私立大学に対し、経常費・設備費・施設費を一体として重点的に支援する。

※参考・復興特別会計

▽特別補助

・被災私立大学等復興特別補助=一、七六二

 被災地にある大学の安定的教育環境の整備や被災学生の授業料減免などへの支援を実施。

▼私立高校等経常費助成費等補助=一〇五、五〇〇(一〇三・四%)

 私立高校などの教育条件の維持向上や保護者の教育費負担の軽減および学校経営の健全性の向上を図るとともに、各私立高校等の特色ある取組を支援するため、都道府県による経常費助成等に対して補助を行う。

▽一般補助=九〇、一八八

各都道府県による私立高校などの基盤的経費への助成を支援する。

▽特別補助=一二、五四八

 教育の質の向上のため、教育の国際化などを進める学校への支援拡充、私立幼稚園などにおける障害のある幼児受入れや預かり保育への支援など、各私立高校等の特色ある取組を支援する。

▽特定教育方法支援事業=二、七六四

 特別支援学校などの特定の教育分野について、その教育の推進に必要な経費を支援する。

▼私立学校施設・設備の整備の推進=五二、三〇四(五・七倍)

 建学の精神や特色を生かした私立学校の質の高い教育研究活動等の基盤となる施設・設備などの整備を支援する。また、財政融資資金を活用し、学校法人が行う施設整備等に対する融資を行う。特に、東日本大震災の教訓等を踏まえ、また今後発生が懸念されている南海トラフ地震や首都直下地震に備えるべく、私立学校施設の耐震化の一層の促進を図る。

▽教育・研究装置等の整備=九、三六〇

 教育および研究のための装置・設備の高機能化等を支援する。

▽私立大学研究ブランディング事業(新規)=三、〇〇四

 学長のリーダーシップのもと、優先課題として全学的な独自色を大きく打ち出す研究に取り組む私立大学に対し、経常費・設備費・施設費を一体として重点的に支援する。

▽耐震化等の促進=四二、九四四

 学校施設の耐震化等防災機能強化をさらに促進するため、校舎などの耐震改築(建て替え)事業および耐震補強事業の防災機能強化のための整備等を重点的に支援する。各都道府県による私立高校などの基盤的経費への助成を支援する。

▼私立大学等教育研究活性化設備整備事業=四、六〇〇(一〇〇・〇%)

 教育の質的転換などの改革に全学的・組織的に取り組む私立大学等に対して重点的に支援する。

▽私立大学等改革総合支援事業=四、六〇〇

 教育の質的転換、地域発展、産業界・他大学などとの連携、グローバル化といった改革に全学的・組織的に取り組む私立大学などに対する支援を強化するため経常費・設備費・施設費を一体として重点的に支援する。

◆大学教育再生の戦略的推進=四一、一六〇(一一〇・五%)

▼世界をリードする教育拠点の形成=二九、九九五(一〇二・八%)

 世界トップレベルの大学教育を実践する大学が、さらなる教育改革に取り組むことで、わが国の大学教育をけん引することができるように教育拠点の形成を支援する。

▽博士課程教育リーディングプログラム=一七、七五六

 ふかん力と独創力を備え、広く産学官にわたってグローバルに活躍するリーダーを養成するため、産学官の参画を得つつ、博士課程前期・後期一貫した世界に通用する質の保証された学位プログラムを実施する「リーディング大学院」の構築を支援する。

▽成長分野を支える情報技術人材の育成拠点の形成=一、一九二

 情報技術人材育成のための実践教育ネットワーク形成事業において産学協働で実施している課題解決型学習などの実践的な教育を深化・発展させ、情報技術人材の育成機能を一層強化することによって、現代社会の要請に基づくサイバーセキュリティーをはじめとした情報技術を活用し、具体的な課題を解決できる人材の育成を強力に推進する。

▼革新的・先導的教育研究プログラムの開発推進=一一、一六五(一三八・五%)

 高等教育の革新的・先導的教育研究プログラムを開発・実施する意欲的な取組を支援することによって、わが国全体の大学教育の充実と質の向上を図る。

▽経営系専門職大学院の国際競争力強化促進事業(新規)=三〇〇

 高度専門職業人養成機能の抜本的強化を図るため、グローバル化や教育の質を確保する観点から、経営系専門職大学院の国際競争力を強化し、世界基準の経営人材を養成するための取組を支援する。

▽地(知)の拠点大学による地方創生推進事業(COC+)=四、四二三

 若年層の東京一極集中を解消するため、個別大学への支援から全学的に地域を志向する大学群、自治体、地域の中小企業などとの連携を必須とし、地域を担う人材を育成するための教育改革の実行などによって、それぞれの地域の実情に応じた雇用創出や学卒者の地元定着率向上に向けた取組への支援に転換することで、地(知)の拠点大学による地方創生を推進する。

▽大学間連携共同教育推進事業=二、一八二

 国公私の設置形態を越え、地域や分野に応じて大学などが相互に連携し、社会の要請に応える共同の教育・質保証システムを構築する

◆高度医療人材の養成と大学病院の機能強化=四、四三三(一〇一・八%)

 大学および大学病院を通じて高度医療を支える人材の養成および新しい医療技術の開発などを担う人材の養成を促進するとともに、地域医療の最後の砦である大学病院の機能を強化する。

▼先進的医療イノベーション人材養成事業=三、二〇五

 わが国が抱える様々な医療課題を解決し、国民に提供する医療水準を向上させるため、大学における研究マインドをもった次世代医療人材の養成拠点の形成を促進する。

▽未来医療研究人材養成拠点形成事業=一、六二〇

 世界の医療水準の向上および日本の医療産業の活性化に貢献するため「メディカル・イノベーション推進人材」を養成する。また、将来の超高齢社会における地域包括ケアシステムに対応するため「リサーチマインドをもった総合診療医」を養成する。

▽がんプロフェッショナル養成基盤推進=プラン一、五八五

 複数の大学がそれぞれの個性や特色、得意分野を生かしながら相互に連携・補完して教育を活性化し、がん専門医療人養成のための拠点を構築する。

▼大学・大学院および附属病院における人材養成機能強化事業=一、一二六

 医療の高度化などに対応するため、優れた高度専門医療人(医師・歯科医師・看護師・薬剤師等)を養成するための教育体制の充実を図る。

▽課題解決型高度医療人材養成プログラム=八九三

 高度な教育力・技術力を有する大学が核となって、わが国が抱える医療現場の諸課題などに対して、科学的根拠に基づいた医療が提供でき、健康長寿社会の実現に寄与できる優れた医療人材の養成を推進する。

▽基礎・臨床を両輪とした医学教育改革によるグローバルな医師養成=二三三

 近年、若手医師の臨床志向に伴い基礎医学研究に進む医師が減少していることから、魅力ある教育プログラムの構築によって、病理学や法医学などの優れた基礎研究医の養成を推進する。また、診療参加型臨床実習の充実および国際標準の認証評価制度等の導入に向けた基盤を構築する。

▼大学における医療人養成の在り方に関する調査研究=一〇二

 わが国における今後の社会・経済構造の変化に伴う保健医療分野のニーズに対応するため、大学および大学院における医療人養成の在り方について検討するための調査・研究を実施する。

◆専修学校等の人材育成機能の向上=二、六六八(一二六・二%)

 地域や産業界の人材ニーズに対応した人材育成機能の強化に向け、専修学校の教育内容の質保証・向上を図るための支援を行うとともに、専門学校生に対する経済的支援策について総合的な検討を進めるための実証研究を行う。

▽成長分野等における中核的専門人材養成等の戦略的推進=一、五三四

 専修学校、大学、大学院、短期大学、高等専門学校、高校等の教育機関、産業界、その他関係機関が協働し、地域や産業界の人材ニーズに対応した、社会人などが学びやすい教育プログラムの開発・実証、高等専修学校等における特色ある教育推進のための教育カリキュラムの開発等を実施する。これらの取組を通じて成長分野などにおける中核的専門人材や高度人材の養成を図る。

①地域版学び直し教育プログラムの開発・実証九三ヵ所

②特色ある教育推進のための教育カリキュラムの開発・実証一三ヵ所

③高度人材養成のための社会人学び直し大学院プログラム一四ヵ所

▽専修学校版デュアル教育推進事業(新規)=三〇二―二四ヵ所

 専修学校において、これからの時代に求められるアクティブ・ラーニングの在り方を見据え、学習と実践を組み合わせて行う効果的な教育手法を開発し、学校・産業界双方のガイドラインとして作成・共有化することによって、質保証・向上を図りつつ、実効的・組織的な産学協同による教育体制の構築を目指す。

▽職業実践専門課程等を通じた専修学校の質保証・向上の推進=一八三―二七ヵ所

 二十六年度から、教育面における企業等との密接な連携などの要件を満たしたものを文部科学大臣が「職業実践専門課程」として認定する制度が開始されたことに伴い、認定校を中心として、第三者評価などさらなる質保証・向上の取組を推進し、課題やノウハウを取りまとめ検証を行い、その結果を広く全国に提供することなどによって、専修学校全体の質保証・向上を図る。

▽専門学校生への効果的な経済的支援の在り方に関する実証研究事業=五九七―対象人数約三、〇〇〇人

 意欲と能力のある専門学校生が経済的理由によって修学を断念することがないよう、専門学校生に対する経済的支援策について総合的な検討を進めるため、実証的な研究として経済的支援およびその効果検証等を行う。

▽専修学校留学生就職アシスト事業=五三

 専修学校における外国人留学生に対する来日の動機付けから就職支援までを総合的に支援し、産業界等と連携のもと、留学生受入拡大を図る。

 専修学校における外国人留学生に対する来日の動機付けから就職支援までを総合的に支援し、産業界等と連携のもと、留学生受入拡大を図る。

【学びのセーフティネットの構築】

◆高校生等への修学支援=三九〇、九四一(一〇〇・〇%)

 すべての意志ある生徒が安心して教育を受けられるよう、高校等の授業料に充てるため高校等就学支援金を支給し、授業料以外の教育費については各都道府県が実施する高校生等奨学給付金事業を支援することで、低所得世帯等の教育費負担の軽減を図る。

▼高校等就学支援金等=三六八、七〇八

 新制度(所得制限等)の学年進行に伴う支給対象者の減(約三〇一万人→約二七三万人)などを反映し、高校等就学支援金を支給することによって、家庭の教育費負担の軽減を図る。

▽年額一一八、八〇〇円を上限とするが、私立高校に通う低所得世帯および中所得世帯の生徒等については、所得に応じて五九、四〇〇円~一七八、二〇〇円を加算して支給。

▽年収九一〇万円以上程度(市町村民税所得割額三〇四、二〇〇円以上)の世帯の生徒等については、所得制限を設定。

▽二十六年三月以前から引き続き高校等に在籍する生徒等については、従前の制度を適用。

▼高校生等奨学給付金(奨学のための給付金)=一八、九一二(補助率1/3)

 学年進行で着実に事業を実施するとともに、非課税世帯の給付額の増額を図ることによって、低所得世帯の教育費負担の軽減を推進する。

◇拡充内容

▽学年進行=二十七年度一~二年次→二十八年度一~三年次

▽対象者数=三四万人→四七・二万人

▽非課税世帯(全日制・第一子)における給付額を増額

◇給付額

▽生活保護受給世帯(全日制等・通信制)=国公立の高校等に在学する生徒年額三二、三〇〇円、私立の高校等に在学する生徒年額五二、六〇〇円

▽非課税世帯(全日制等・第一子)=国公立の高校等に在学する生徒年額三七、四〇〇円→一二九、七〇〇円、私立の高校等に在学する生徒年額三九、八〇〇円→一三八、〇〇〇円

▽非課税世帯(全日制等・第二子以降)=国公立の高校等に在学する生徒年額一二九、七〇〇円、私立の高校等に在学する生徒年額一三八、〇〇〇円

▽非課税世帯(通信制)=国公立の高校等に在学する生徒年額三六、五〇〇円、私立の高校等に在学する生徒年額三八、一〇〇円

▼その他の高校生等への修学支援=二、六五三

▽学び直しへの支援(補助率10/10)

 高校等を中途退学した人が再び高校等で学び直す場合に、法律上の高校等就学支援金支給期間三十六月(定時制・通信制は四十八月)の経過後も、卒業までの間(最長二年)、継続して授業料の支援を実施。

▽家計急変世帯への支援(補助率1/2・10/10)

 保護者等の失職、倒産などの家計急変によって収入が激減し、低所得となった世帯に対し、都道府県が授業料減免による緊急の支援を行う場合、就学支援金の支給額に反映されるまでの間、就学支援金と同様の支援を行うために必要な経費を補助。

▽海外の日本人高校生への支援(補助率10/10)

 海外の日本人学校などに通う日本人高校生についても、広く高校段階の学びを支援する観点から、就学支援金に相当する額を支給。

▼マイナンバーに対応した高校等就学支援金事務処理システムに関する経費等=六六八

 二十九年七月に本格始動するマイナンバー・ネットワークと就学支援金事務を連動させた効率的な就学支援金事務システムを整備する。

◆総合的な子どもの貧困対策の推進=三、六七〇(一六七・六%)

 家庭の経済状況にかかわらず、学ぶ意欲と能力のあるすべての子どもが質の高い教育を受け、能力・可能性を最大限伸ばしてそれぞれの夢に挑戦できるようにすることは、一人ひとりの豊かな人生の実現に加え、今後のわが国の成長・発展にもつながるものである。

 子どもの貧困対策に関する大綱を踏まえ、学校を子どもの貧困対策のプラットフォームと位置付け、総合的な子どもの貧困対策を推進するとともに、教育の機会均等を保障するため、教育費負担の軽減やフリースクールなどで学ぶ子どもへの支援を実施する。

▼学校をプラットフォームとした総合的な子どもの貧困対策の推進

◇学習支援の充実

▽地域未来塾による学習支援の充実=六二八―学校・家庭・地域の連携協力推進事業の一部(補助率1/3) 経済的な理由や家庭の状況によって、家庭での学習が困難であったり、学習習慣が十分に身に付いていなかったりする中学生などへの学習支援を実施するとともに、新たにICTの活用などによる高校生への支援を行う(二、〇〇〇ヵ所→三、六〇〇ヵ所)。

◇地域人材の活用や学校・福祉との連携によるアウトリーチ型家庭教育支援事業(新規)=一〇一―七ヵ所

 経済的困難をはじめとする様々な問題を抱え込み主体的な家庭教育が困難になっている家庭やその子どもに対して、学校や福祉機関等と連携した家庭教育支援チーム等による訪問型支援などの幅広い支援を行うアウトリーチ型の家庭教育支援体制を構築する。

◇高校生等の就職・就学支援等

▽多様な学習を支援する高校の推進事業経費=一〇一

 生徒の多様な学習ニーズに応じた教育活動を展開する定時制・通信制課程の高校や総合学科の高校、ICTを活用した遠隔教育を実施する高校における生徒への支援体制の充実を図り、生徒の学習意欲を向上させ、確かな学力を身に付けさせるなど、高校教育の質の確保・向上に向けた一層の取組を推進する。

◇要保護児童生徒援助費補助=八三七(補助率1/2)

 要保護児童生徒の保護者に対して学用品費、修学旅行費、学校給食費などの就学援助を行う。

《関連施策》

▽教職員定数の増(家庭環境などによる教育格差の解消一五〇人)

▽高校生などへの修学支援

▽幼児教育の段階的無償化に向けた取組の推進

▽特別支援教育就学奨励費負担等

※参考・復興特別会計

▽被災児童生徒就学支援等事業=八、〇三三―全額国庫補助の単年度の交付金事業(補助率10/10)

 東日本大震災で被災し、経済的に就学が困難な幼児児童生徒の就学機会を確保するため、幼稚園児への就園支援、小中学生に対する学用品費などの援助、高校生に対する奨学金支給、特別支援学校等に在籍する児童生徒などへの就学奨励、私立学校および専修学校・各種学校の授業料減免などを実施する。

◆大学等奨学金事業の充実と健全性確保=一一七、七二三(一二七・八%)

 意欲と能力のある学生などが、経済的理由によって進学等を断念することがないよう、安心して学ぶことができる環境を整備することが重要である。このため、無利子奨学金の貸与人員の増員や、「所得連動返還型奨学金制度」の導入に向けた対応の加速など、大学等奨学金事業の充実を図る。

▼「有利子から無利子へ」の流れの加速=一〇七、一六二

 貸与基準を満たす希望者全員への貸与の実現を目指し、無利子奨学金の貸与人員を増員し、奨学金の「有利子から無利子へ」の流れを加速する。

▽無利子奨学金事業の拡充

①事業費=無利子奨学金三一二、四八一→三三四、四三九(有利子奨学金七九六、五七八→七九三、〇五五)

②貸与人員=無利子奨学金四六万人→四九万八、〇〇〇人

(うち新規貸与者の増員分三万人)、(有利子奨学金八七万七、〇〇〇人→八五万七、〇〇〇人)

▼「所得連動返還型奨学金制度」の導入に向けた対応の加速

 奨学金の返還の負担を軽減し、返還者の状況に応じてきめ細やかに対応するため、所得の捕捉が容易となる社会保障・税番号制度(マイナンバー制度)の導入を前提に、返還月額が卒業後の所得に連動する「所得連動返還型奨学金制度」の導入に向けて、詳細な制度設計を進めるとともにシステムの開発・改修に着手するなどの対応を加速する。

▼有利子奨学金の利子負担の軽減のための措置=八、一六四

 有利子奨学金について、在学中は無利子および返還中は低利子とするために、利子補給金を措置する。

▼大学等奨学金事業の健全性確保=二、三九八

 (独)日本学生支援機構に対する返還金回収促進経費(返還相談体制の充実、債権回収業務の民間委託、延滞事由の要因分析等)を措置する。

※参考・復興特別会計

▽大学等奨学金事業=二、八三〇

 東日本大震災で被災した世帯の学生などが経済的理由により進学等を断念することがないよう、無利子奨学金の貸与(人員五、〇〇〇人)を行う。

( 2015-10-09付)