文部科学省の29年度概算要求主要事項③
( 2016-10-07付)

 文部科学省の二十九年度概算要求主要事項はつぎのとおり(金額は要求・要望額、単位・百万円。カッコ内%は前年度予算比)。

★学力と人間力を備えた人材を育成するための教育再生の実現

【未来への飛躍を実現する人材の養成】

◆初等中等教育段階におけるグローバルな視点に立って活躍する人材の育成=二三、六九八(一一〇・一%)

 グローバル人材育成については、第二期教育振興基本計画などを踏まえ、日本人としてのアイデンティティや日本の文化に対する深い理解を前提として、豊かな語学力・コミュニケーション能力、主体性・積極性、異文化理解の精神などを身に付け、様々な分野で活躍できる人材の育成が重要である。

 このため、わが国の伝統・文化についての理解を深める取組を実施し、また、小・中・高校を通じた英語教育改革の推進、帰国・外国人児童生徒などへの教育支援の推進、在外教育施設の教育環境の改善などの取組の充実を図る。

▼わが国の伝統・文化教育の充実にかかる調査研究=一二

 教育基本法や学習指導要領で重視されている伝統・文化などに関する教育の充実を図り、グローバル社会で活躍できる人材の育成に資するため、教材の作成や指導方法の開発等を行う。

▽わが国の伝統・文化に関する教材の作成、指導方法等に関する調査研究=三地域

▼小・中・高校を通じた英語教育強化事業=一、五一六

 小・中・高校を通じた英語教育の強化のため、学習指導要領改訂などに向けた新教材の開発・整備、先進的な取組の支援や教員の指導力・専門性向上のための事業を行うとともに、生徒の英語力調査などの取組を実施する。

①小学校の新たな外国語教育における新教材の開発・整備=小学校中学年・高学年用

②外部試験団体と連携した英語力調査事業=中学生五〇、〇〇〇人、高校生四五、〇〇〇人

③中学校・高校における英語教育の抜本的改善のための指導方法等に関する実証研究=三機関

④外部専門機関と連携した英語指導力向上事業=一機関、四七県市

⑤小学校英語教科化に向けた専門性向上のための講習の開発・実施=四七機関

⑥外国語教育強化地域拠点事業=英語二五件、多言語六件

▼スーパーグローバルハイスクール=一、一〇二―指定校一三三校・中間評価の実施(二十七年度指定校)

 グローバルな社会課題を発見・解決し、国際的に活躍できる人材の育成に取り組む高校などを指定し、質の高いカリキュラムを開発・実践する。

▼在外教育施設教員派遣事業等および海外子女教育の推進=二〇、三九二

 在外教育施設で学ぶ児童生徒が増加する中、国内と同様の教育を行うために派遣教員数を拡充するとともに、高度グローバル人材育成拠点としての日本人学校等の教育水準を強化するなどの海外子女教育の充実を図る。

①派遣教員定数=一、一五八人(特別支援教育対応など)

②在外教育施設の高度グローバル人材育成拠点事業(新規)=六施設

▼帰国・外国人児童生徒等教育の推進=四六三

 帰国・外国人児童生徒などの集住地域および散在地域の公立学校における受入れ・日本語指導体制などの充実を図る。また、外国人の子どもの就学を促進するため、学校外における日本語指導や教科指導等の支援体制の充実を図る。

 さらに、教員の専門的能力育成のための養成・研修プログラムの開発、ICTを活用した児童生徒の日本語学習、学校と保護者などとのコミュニケーションの支援手法の開発を図る。

①公立学校における帰国・外国人児童生徒に対するきめ細かな支援事業(補助率1/3)=集住地域型六五地域、散在地域型一五地域

②定住外国人の子どもの就学促進事業(補助率1/3)=一六地域

③外国人児童生徒等教育を担う教員の養成・研修モデルプログラム開発事業(新規)=一機関

④外国人児童生徒等教育の情報基盤整備加速事業(新規)=六機関

▼社会総がかりで行う高校生留学促進事業=二〇八

▽高校生留学促進事業=対象人数一、五〇〇人

 地方公共団体や学校、民間団体等が実施する海外派遣プログラムへの参加に対する支援。

▽グローバル人材育成の基盤形成事業等

◆グローバル人材育成のための大学の国際化と学生の双方向交流の推進=四六、四三六(一〇五・二%)

▼大学教育のグローバル展開力の強化=九、五〇六(一〇一・八%)

 わが国の高等教育の国際競争力の向上およびグローバル人材の育成を図るため、国際化を徹底して進める大学を支援する。

 また、大学教育のグローバル展開力の強化を図るため、わが国にとって戦略的に重要な国・地域との間で、質保証を伴った国際教育連携やネットワーク形成の取組を支援する。

◇スーパーグローバル大学創成支援事業=七、〇六〇

 わが国の高等教育の国際競争力の向上およびグローバル人材の育成を図るため、世界トップレベルの大学との交流・連携を実現・加速するための人事・教務システムの改革など国際化を徹底して進める大学を支援する。

◇大学の世界展開力強化事業=二、四四六

 大学教育のグローバル展開力の強化を図るため、わが国にとって戦略的に重要な国・地域との間で、質保証を伴った学生交流の実施等を推進する国際教育連携やネットワーク形成の取組を支援する。

▼大学等の留学生交流の充実=三六、九三〇(一〇六・一%)

 意欲と能力のある若者全員に留学機会を付与し、日本人留学生の倍増(六万人→一二万人)を目指すため、留学促進キャンペーン「トビタテ!留学JAPAN」を推進し、若者の海外留学への機運醸成や、奨学金などの拡充による留学経費の負担軽減を図る。

 また、優秀な外国人留学生を確保し、内なる国際化を図る「留学生三十万人計画」の実現に向け、日本留学の魅力を向上させるため、海外での募集・選考活動が効果的に機能するよう制度改善を図るとともに、産学官の協力のもと、日本国内での就職を促進するための教育プログラムの構築などの受入れ環境充実のための支援を推進する。

◇大学等の海外留学支援制度等=九、〇七七

▽大学等の海外留学支援制度=八、九九七

・双方向交流の推進による海外留学促進

①大学院学位取得型=二七〇人

②学部学位取得型(新規)=五〇人

③協定派遣型=二四、一〇〇人

④協定受入型=六、〇〇〇人

▽日本人の海外留学促進事業=八〇

◇優秀な外国人留学生の戦略的な受入れ=二七、八五三

▽日本留学への誘い、入り口(入試・入学・入国)の改善=八四九

・留学コーディネーター配置事業=二七〇―九拠点

▽受入れ環境づくり、卒業・修了後の社会の受入れの推進=二五、七六八

・外国人留学生奨学金制度

①国費外国人留学生制度=一八、六八三―一一、二七六人

②留学生受入れ促進プログラム=四、七五六

・留学生就職促進プログラム(新規)=八一二

 各大学が自治体や産業界と連携し、「日本語能力」「日本での企業文化等キャリア教育」「中長期インターンシップ」を一体として学ぶ環境を創設する取組を支援する。

◆諸外国・国際機関等との連携によるグローバルな人材の育成等=六一五(一〇七・〇%)

 貧困・テロ、環境、資源・エネルギー問題などの地球規模課題の解決に資するとともに、教育分野における国際的な協力の取組によって、わが国が世界各国から信頼を得て存在感を示していくため、諸外国政府、国際機関(国際連合大学、ユネスコ、国際バカロレア機構)等と連携し、国際社会や地域社会で活躍するグローバルな人材の育成などに向けた事業を展開する。

▼日本型教育の海外展開=一〇〇

 近年、諸外国の首脳、閣僚などからわが国の教育への高い関心が示される中、より層の厚い日本型教育の海外展開を推進するため、関係省庁・政府系機関・教育関連機関等で構成する「日本型教育の海外展開官民協働プラットフォーム」(EDU―Portニッポン)を立ち上げた。

 このスキームのもと、教育の海外展開モデルを形成するとともに、諸外国との強固な信頼・協力関係の構築、日本の教育機関の国際化、教育産業等の海外進出の促進を図るため、国別・分野別分科会、国際フォーラムの開催に加え、パイロット事業を実施する。

▼国際バカロレアの推進=八九

 グローバル人材の育成に有益なプログラムである国際バカロレアについて、わが国における導入拡大を図るため、国際バカロレア機構と協力し、その一部科目を日本語でも実施可能とする「日本語DP」の開発や試験官の養成など、「日本語DP」の実施のための措置を推進する。

▼国際連合大学を通じた地球規模課題解決に資するグローバル人材育成等=一五五

 人類の生存、開発、福祉など、国連およびその加盟国にとって緊急性の高い地球規模課題の解決に寄与するため、国連システムのシンクタンクであり、国際的な学術機関ならびに国連組織との懸け橋という役割を担う国連大学を通じて、グローバル人材育成、国際協力プロジェクトの実施、サステイナビリティ研究の推進などを行う。

▼ユネスコとの連携によるグローバル人材育成=二七一

 近年のグローバル化をはじめとする国際社会の多様性に対応するユネスコの取組と連携して、わが国のユネスコ活動の活性化および国内外における持続可能な開発のための教育(ESD)の一層の推進を図るなど、国際的に活躍できる人材育成に資する事業を展開する。

▽日本/ユネスコパートナーシップ事業=一〇〇

 国内のユネスコ活動に関係のある機関などの活動強化を通じて、ユネスコ活動の普及と理解の促進を図り、ユネスコの理念・目標の実現を目指す。

 従来のユネスコスクール支援事業、ユースフォーラム開催等に加え、学校におけるESDの取組をさらに効果的に推進するほか、「世界の記憶」や昨年ユネスコにおいて正式事業化された世界ジオパークに関する事業を実施する。

▽グローバル人材の育成に向けたESDの推進=五六

 教育委員会および大学が中心となり、ユネスコ協会および企業などの協力を得つつ、ESDの推進拠点であるユネスコスクールとともにコンソーシアムを形成し、国内におけるESDの実践・普及および国内外における学校間の交流などを促進する。

▽ESDグローバル・アクション・プログラム(GAP)信託基金=一一五

 「ESDグローバル・アクション・プログラム(GAP)」に明記されている優先行動分野に重点的に取り組み、ESDを戦略的により一層推進するため、ユネスコに信託基金を拠出し、「地域コミュニティ」「教育者」「ユース」などに関する事業を実施する。

◆大学教育再生の戦略的推進=二六、六五一(一〇八・一%)

▼世界をリードする教育拠点の形成=一九、二一四(一〇八・九%)

 世界トップレベルの大学教育を実践する大学が、さらなる教育改革に取り組むことで、わが国の大学教育をけん引することができるように教育拠点の形成を支援する。

◇博士課程教育リーディングプログラム=一七、〇〇〇

 俯瞰力と独創力を備え、広く産学官にわたってグローバルに活躍するリーダーを養成するため、産学官の参画を得つつ、博士課程前期・後期一貫した世界に通用する質の保証された学位プログラムを実施する「リーディング大学院」の構築を支援する。

◇成長分野を支える情報技術人材の育成拠点の形成(enPiT)=二、一七七

 サイバーセキュリティ、IoT、ビッグデータ、AI、組み込みシステム、ロボットなど情報技術を高度に活用して社会の具体的な課題を解決できる人材の育成機能を強化するため、産学協働の実践教育ネットワークを形成し、学部学生を対象とする課題解決型学習(PBL)などの実践的な教育を充実させ、新たに社会人学び直しのための体系的プログラムの開発を推進する。

◇卓越大学院プログラム(仮称)構想推進委託事業(新規)=三六

 平成三十年度から構築する「卓越大学院プログラム(仮称)」がより実効性の高いものとなるよう、プログラムの教育内容・実施体制や他機関との連携、異分野融合などをプログラムに盛り込む際の制度上の隘路などについて、大学や連携先となり得る機関からの情報収集を含めた調査研究を行い、今後の公募・審査などに向けた仕組みを検討する。

▼革新的・先導的教育研究プログラムの開発推進=七、四三七(一〇六・二%)

 高等教育の革新的・先導的教育研究プログラムを開発・実施する意欲的な取組を支援することによって、わが国全体の大学教育の充実と質の向上を図る。

◇高度専門職業人養成機能強化促進委託事業(新規)=二〇一

 専門職大学院で学ぶすべての学生が修得すべきと考えられる学習内容や共通的な到達目標を定めたコアカリキュラムを社会(「出口」)のニーズを踏まえつつ、一定分野において策定(例えば会計・公共政策・公衆衛生分野など)および実証・改善(ビジネス・MOT分野)する。

 また、成長分野における教育プログラムの開発によって、サービス産業等の生産性向上に一層貢献できる人材を輩出し、これらの取組を通じて、わが国の高度専門職業人養成機能の強化を図る。

◇獣医学アドバンスト教育プログラム構築推進委託事業(新規)=五〇

 国際水準の動物・畜産物の安全性確保にかかわる即戦力となる獣医師を養成するため、公衆・家畜衛生、産業動物臨床分野における高度獣医療技術の修得を目的とした先導的かつ実践的な教育プログラムを構築することによって、獣医学教育の質向上を図る。

◇地(知)の拠点大学による地方創生推進事業(COC+)=四、〇〇一

 若年層の東京一極集中を解消するため、全学的に地域を志向する大学が他の大学などや自治体、地域の中小企業などと連携し、地域を担う人材を育成するための教育改革の実行等によって、それぞれの地域の実情に応じた雇用創出や学卒者の地元定着率向上を図る取組を支援することで、地(知)の拠点大学による地方創生を推進する。

◆高度医療人材の養成と大学病院の機能強化=六、〇六一(一五〇・〇%)

 大学および大学病院を通じて高度医療を支える人材の養成および新しい医療技術の開発などを担う人材の養成を促進するとともに、地域医療の最後の砦である大学病院の機能を強化する。

▼先進的医療イノベーション人材養成事業=三、七七九

 わが国が抱える様々な医療課題を解決し、国民に提供する医療水準を向上させるため、大学における研究マインドをもった次世代医療人材の養成拠点の形成を促進する。

▽未来医療研究人材養成拠点形成事業=一、三九〇

 世界の医療水準の向上および日本の医療産業の活性化に貢献するため「メディカル・イノベーション推進人材」を養成する。

 また、将来の超高齢社会における地域包括ケアシステムに対応するため「リサーチマインドをもった総合診療医」を養成する。

▽多様な新ニーズに対応する「がん専門医療人材(がんプロフェッショナル)」養成プラン(新規)=二、三八九

 がんにかかる多様な新ニーズに対応するため、ゲノム医療従事者、希少がんおよび小児がんに対応できる医療人材、ライフステージに応じたがん対策を推進するがん専門医療人材を養成する。

▼大学・大学院および附属病院における人材養成機能強化事業=二、一八〇

 医療の高度化などに対応するため、優れた高度専門医療人(医師・歯科医師・看護師・薬剤師等)を養成するための教育体制の充実を図る。

▽課題解決型高度医療人材養成プログラム=一、〇八〇

 高度な教育力・技術力を有する大学が核となって、わが国が抱える医療現場の諸課題などに対して、科学的根拠に基づいた医療が提供でき、健康長寿社会の実現に寄与できる優れた医療人材の養成を推進する。新たに国際医療領域を設け、国公私立大学医学部・附属病院における高度医療人材の養成を促進する。

▽基礎研究医養成活性化プログラム(新規)=二〇〇

 基礎医学を志す医師の減少に歯止めをかけるとともに、わが国の基礎医学研究における国際競争力を強化するため、複数の大学がそれぞれの強みを生かし連携するなど、教育を活性化し、病理学や法医学分野等における優れた基礎研究医を重点的に養成する。

▽大学病院経営支援人材養成プログラム(新規)=九〇〇

 健全な病院運営実現のための教育プログラムの開発および教育体制を構築し、地域医療の実情に応じた経営戦略の企画・立案能力を兼ね備えた医療人材を養成する。

▼大学における医療人養成の在り方に関する調査研究=一〇二

 わが国における今後の社会・経済構造の変化に伴う保健医療分野のニーズに対応するため、大学および大学院における医療人養成の在り方について検討するための調査・研究を実施する。

◆専修学校等の人材養成機能の向上=二、九五八(一三三・一%)

 専修学校において、産業界・社会が求める有為な人材を養成する機能を向上・強化するとともに、職業実践専門課程の認定などを基軸とした質保証・向上のさらなる充実を図る。

 また、経済的負担の軽減を通じた学びのセーフティネットを保障するため、専門学校生に対する経済的支援策について総合的な検討を進めるための実証研究を行う。

▼成長分野等における中核的専門人材養成等の戦略的推進=一、四三〇

 専修学校、大学、大学院、短期大学、高等専門学校、高校などの教育機関、産業界等、その他関係機関が協働し、地域や産業界の人材ニーズに対応した、社会人等が学びやすい教育プログラムの開発・実証、高等専修学校などにおける特色ある教育推進のための教育カリキュラムの開発などを実施する。これらの取組を通じて成長分野などにおける中核的専門人材や高度人材の養成を図る。

①地域版学び直し教育プログラムの開発・実証=九三ヵ所

②特色ある教育推進のための教育カリキュラムの開発・実証=一三ヵ所

▼専修学校を活用した地域産業人材育成事業(新規)=二七二―一四分野

 各分野における専修学校と産業界・行政機関などの連携による人材育成の在り方を検討する持続可能な協議体制の整備を促し、専修学校を活用した社会人などの学び直し講座の開設や、ポータルサイトの活用による社会人の学び直し機会の改善・充実を図る。

▼専修学校グローバル化対応推進支援事業(新規)=三六六―六ヵ所

 諸外国における日本の専修学校の広報・優秀な外国人留学生の掘り起こし、日本語教育支援や修学支援、留学生の在籍管理、卒業後の国内への定着支援など、専修学校への留学に関する総合的・戦略的な留学生施策の推進について、各地域における関係機関・団体との連携によるモデル体制を構築することによって、総合的な外国人留学生受け入れ促進方策の在り方を検討する。

▼専修学校版デュアル教育推進事業=三〇二―二四ヵ所

 専修学校において、これからの時代に求められるアクティブ・ラーニングの在り方を見据え、学習と実践を組み合わせて行う効果的な教育手法を開発し、学校・産業界双方のガイドラインとして作成・共有化することによって、質保証・向上を図りつつ、実効的・組織的な産学協同による教育体制の構築を目指す。

▼職業実践専門課程等を通じた専修学校の質保証・向上の推進=二八三―一二ヵ所

 専修学校における研修体制づくりなどの推進や、高校や企業などへの効果的な情報発信の在り方について検討・検証を行うとともに、職業実践専門課程認定校を中心とした第三者評価の導入などの取組を通じて、職業教育の充実および専修学校の質保証・向上を図る。

▼専門学校生への効果的な経済的支援の在り方に関する実証研究事業=三〇五―対象人数約二、〇〇〇人 

 意欲と能力のある専門学校生が経済的理由によって修学を断念することがないよう、専門学校生に対する経済的支援策について総合的な検討を進めるため、実証的な研究として経済的支援およびその効果検証などを行う。

【学びのセーフティネットの構築】

◆大学等奨学金事業の充実と健全性確保=一一八、二九九(一一五・七%)

 意欲と能力のある学生などが、経済的理由によって進学等を断念することがないよう、安心して学ぶことができる環境を整備することが重要である。

 このため、「無利子奨学金の貸与人員の増員」や、「所得連動返還型奨学金制度」の確実な実施のための対応を進めるとともに、「給付型奨学金の創設」、「低所得世帯の子どもたちにかかる無利子奨学金の成績基準の緩和」に取り組むなど、大学等奨学金事業の充実を図る。

▼「有利子から無利子へ」の流れの加速=一一〇、一六四

 貸与基準を満たす希望者全員への貸与の実現を目指し、無利子奨学金の貸与人員を増員し、奨学金の「有利子から無利子へ」の流れを加速する。

▽無利子奨学金事業の拡充

・事業費=三三七、八一四(一五、五六五百万円増)

・貸与人員=四九、九〇〇〇人(二四、〇〇〇人増)

▼「所得連動返還型奨学金制度」の確実な実施のための対応

 奨学金の返還の負担を軽減し、返還者の状況に応じてきめ細やかに対応するため、所得の捕捉が容易となる社会保障・税番号制度(マイナンバー制度)の導入を前提に、返還月額が卒業後の所得に連動する「所得連動返還型奨学金制度」を確実に実施するため、システムの開発・改修などの対応を行う。

▼有利子奨学金の利子負担の軽減のための措置=五、〇九〇

 有利子奨学金について、在学中は無利子および返還中は低利子とするために、利子補給金を措置する。

▼大学等奨学金事業の健全性確保=三、〇四五

 日本学生支援機構に対する返還金回収促進経費(返還相談体制の充実、債権回収業務の民間委託、延滞事由の要因分析等)を措置する。

※参考・復興特別会計

▼大学等奨学金事業=一、一二二―事業費二、六四二百万円、貸与人員四、〇〇〇人

 東日本大震災で被災した世帯の学生などが経済的理由によって進学等を断念することがないよう、無利子奨学金の貸与を行う。

※「給付型奨学金の創設」および「低所得世帯の子どもたちにかかる無利子奨学金の成績基準の緩和」については、「未来への投資を実現する経済対策」(二十八年八月二日閣議決定)および「平成二十九年度予算の概算要求に当たっての基本的な方針について」(二十八年八月二日閣議了解)を踏まえ、その制度内容について、予算編成過程において検討することとされているため、事項要求とする。

◆国立大学・私立大学等の授業料減免等の充実=四四、七六八(一〇九・五%)

 学生が経済的な理由によって学業を断念することのないようにするため、各大学がさらなる授業料減免等の拡大を図れるよう、運営費交付金、経常費補助金により支援を行う。

 また、専門学校生に対する経済的支援策について総合的な検討を進めるための実証研究を行う。

▼国立大学の授業料減免等の充実=三三、二七五―国立大学法人運営費交付金の内数

 意欲と能力ある学生が経済状況にかかわらず修学の機会を得られるよう、授業料免除枠を拡大するとともに、学内ワークスタディへの支援を行う。

・免除対象人数約六一、〇〇〇人(約二、〇〇〇人増)

=学部・修士約五六、〇〇〇人、博士約六、〇〇〇人

◆高校等就学支援金交付金等=三七〇、三六二(一〇〇・六%)

 すべての意志ある生徒が安心して教育を受けられるよう、高校等の授業料に充てるために高校等就学支援金を支給することで、家庭の教育費負担の軽減を図る。

▼高校等就学支援金交付金等=三七〇、三六二

①対象となる学校種

 国公私立の高校、中等教育学校(後期課程)、特別支援学校(高等部)、高等専門学校(一~三年生)、専修学校高等課程、専修学校一般課程および各種学校のうち国家資格者養成課程(中学校卒業者を入所資格とするもの)を置くもの、各種学校のうち告示指定を受けた外国人学校、海上技術学校。

②年収約九一〇万円(市町村民税所得割額三〇四、二〇〇円)以上の世帯の生徒等については、所得制限を設定。

③私立高校等に通う低所得世帯の生徒については、授業料負担が大きいため、所得に応じて就学支援金を一・五~二・五倍した額を上限として支給。

◆高校生等奨学給付金の充実=一六、二六七(一二三・九%)―補助率1/3

 すべての意志ある生徒が安心して教育を受けられるよう、低所得世帯の授業料以外の教育費負担を軽減するため、高校生等奨学給付金により支援を行う。

▼高校生等奨学給付金(奨学のための給付金)=一六、二六七

▽非課税世帯【全日制等】(第一子)の給付額の増額・多子世帯の給付要件を見直し

 低所得世帯や多子世帯のさらなる教育費負担の軽減を図る。

・非課税世帯【全日制等】(第一子)の給付額の増額・多子世帯の給付要件の見直し

 多子世帯の給付要件を見直すことによって、小・中学生がいる低所得世帯の高校生等への支援を強化する。

 現行「高校生等以外に“十五歳以上二十三歳未満”の兄弟姉妹がいる場合」を「高校生等以外に“二十三歳未満”の兄弟姉妹がいる場合」に見直す。

▽給付額

①生活保護受給世帯【全日制等・通信制】=国公立の高校等に在学する生徒年額三二、三〇〇円、私立の高校等に在学する生徒年額五二、六〇〇円

②非課税世帯【全日制等】(第一子)=国公立の高校等に在学する生徒年額六七、七〇〇円(八、二〇〇円増)、私立の高校等に在学する生徒年額七四、二〇〇円(七、〇〇〇円増)

③非課税世帯【全日制等】(第二子以降)=国公立の高校等に在学する生徒年額一二九、七〇〇円、私立の高校等に在学する生徒年額一三八、〇〇〇円

④非課税世帯【通信制】=国公立の高校等に在学する生徒年額三六、五〇〇円、私立の高校等に在学する生徒年額三八、一〇〇円

( 2016-10-07付)