道小・道中 教育条件整備に関する提言(関係団体 2020-05-20付)
道小学校長会(神谷敦会長)、道中学校長会(鎌田浩志会長)は、「北海道教育の質の一層の向上をめざす教育条件の整備に関する提言~チーム北海道として」を道教委に提出した。①新学習指導要領の趣旨を生かした授業改善に向けた教育条件に関する提言②“チームとしての学校”実現に向けた教育条件の整備―の2点を柱に、ICT環境の充実に伴う体制整備、体験的な活動を充実させるための教員の確保、ALTや英語を指導できる教員の確保・養成などを挙げている。
概要はつぎのとおり。
【新学習指導要領の趣旨を生かした授業改善に向けた教育条件に関する提言】
現在の子どもたちが社会で活躍するころのわが国は、厳しい挑戦の時代を迎えていると言われている。このような社会を子どもたちが生き抜いていくためには、学習内容を人生や社会の在り方と結び付けて深く理解し、これからの時代に求められる資質・能力を身に付け、生涯にわたって能動的に学び続けることができるよう、学びの質を一層重視した授業改善を図っていくことが求められている。
こうした時代の要請に応えていくためには、学校は、各教科等の特質に応じた見方・考え方を働かせながら、知識を相互に関連付けてより深く理解したり、情報を精査して考えを形成したり、問題を見いだして解決策を考えたり、思いや考えをもとに創造したりする過程を重視した主体的・対話的で深い学びの実現に向けた授業改善の取組を進めていかなければならない。
また、学びを教科等の縦割りにとどめるのではなく、教科等の枠を超えた視点で教育課程を見渡して、相互の連携を図り、教科等横断的な視点をもって、社会とのつながりを重視した社会に開かれた教育課程を編成し、「よりよい学校教育を通じてよりよい社会を創る」という学習指導要領の目標の実現を図っていかなければならない。
特に、小学校においては、ICT環境の整備と充実とともに、子どもたちが将来どのような職業に就くとしても時代を超えて普遍的に求められるプログラミング的思考を育むため、児童がプログラミングを体験しながら、コンピューターに意図した処理を行わせるために必要な論理的思考を身に付けるための学習活動を計画的に実施することが求められている。
こうした授業改善の活性化を図りつつ、教育活動の質を向上させ、学習の効果の最大化を図るカリキュラム・マネジメントを進めつつ、新しい学習指導要領のもとで、道徳科における評価、小学校外国語、外国語活動および総合的な学習の時間の評価なども充実させ、指導と評価の一体化を進めなければならない。
児童生徒の学習評価の在り方については、国において、指導要録における文章記述欄については大幅に簡素化を図るとともに、通知表が指導要録の指導に関する記録の記載事項をすべて満たす場合には、通知表を指導要録とすることも可能とするなどの大胆な見直しを行い、効果的で教師に過度な負担をかけることのない学習評価について改善が図られてきた。
さらに、前年度の臨時休業に伴い未履修分を本年度実施することから時数確保について柔軟にとらえることが求められる。また、学習の質を高める授業改善を進めながら、限られた時間の中で教師の専門性を生かしつつ、授業改善や児童生徒と接する時間を十分に確保し、教師が自らの授業を磨くとともに、その人間性や創造性を高め、児童生徒に対して効果的な教育活動を持続的に行うことも求められている。
以上のことから、道小学校長会・道中学校長会は、新学習指導要領の趣旨を生かした授業改善に向けた教育条件の整備について、つぎのように提言する。
▼主体的・対話的で深い学びの実現に向けた授業改善のための体制整備
▽学習習慣の確立に向けた定数欠・代替教員欠員の解消など、教員の定数確保に向けた体制整備
▽教材研究の時間と子どもと向き合う時間の確保のための人的配置による研修体制の整備
▼現代的な諸課題に対応する教科等横断的な教育内容の充実に向けた人材の確保
▽ICT環境の充実に伴う体制の整備および体験的な活動を充実させるための教員の確保
▽ALTの充実、英語を指導できる教員の確保・養成、専科指導の充実など、外国語の教科指導における体制の整備と充実
▼新しい時代の教育に向けた持続可能な学校指導・運営体制の構築に向けた条件整備
▽専科指導の加配配置による教員一人当たりの週授業時数の改善
▽教師の働き方改革の状況を踏まえた児童生徒の学習評価の工夫改善
【チームとしての学校の実現に向けた教育条件整備】
今日の学校教育の現場は複雑化・多様化しており、いじめの重大事態や不登校、児童虐待の相談対応、特別な教育的支援を必要とする児童生徒、厳しい経済状況にある家庭等への対応、外国人児童生徒への支援など、様々な課題への対応が山積しており、誰一人置き去りにしない教育を実現するため、これらの児童生徒等への支援体制を整えていくことが求められている。
さらに、感染症やアレルギー対策のような新しい健康問題への対応も急務となっている。
これらの状況の中、教員は、子どもと向き合う時間や授業準備等の十分な時間を確保することができず、特に中学校においては、部活動の指導や引率等の業務によって、教材研究・学級経営・生徒指導等の本来的な業務に専念する時間を割かれているという実態にある。
複雑化・多様化している学校の課題に対応し、教師が児童生徒と向き合う時間を十分に確保するため、個々の教員が個別に教育活動に取り組むのではなく、校長のリーダーシップのもと、学校のマネジメントを強化し、組織として教育活動に取り組む体制を創り上げるとともに、必要な指導体制を整備することが求められる。
そのため、必要な教師を確保した上で、生徒指導や特別支援教育等を充実していくために、学校や教員が心理や福祉等の専門家(専門スタッフ)や専門機関と連携・分担する体制を整備し、学校の機能を強化することや地域住民との連携・協働を含めた学校運営の改善を図り、チームとして教育活動に取り組む指導体制を整備することが必要である。
また、チームとしての学校を実現することは、学校と地域との連携・協働体制の強化が重要となることから、地域全体で未来を担う子どもたちの成長を支えていく取組は、地域の活力を高め、地方創生へつながるとともに、学習指導要領が掲げる社会に開かれた教育課程の理念の実現に結び付くものと考える。
チームとしての学校を構築し、チームとしての力を最大限に発揮しながら、学校の教育力・組織力を向上させていくことは、私たち校長に求められる大きな責務であると考える。
そこで、チームとしての学校の実現に向けた教育条件の整備について、道教委が策定した学校における働き方改革「北海道アクション・プラン」において示されている取組も含め、つぎのように提言する。
▼チーム体制構築のための人的配置・専門職員の導入および条件整備
▽教員の人的配置
・管理職の補佐体制充実のための加配措置拡充による主幹教諭の配置の促進
・小学校における専科教員の増員、教科担任制の促進および中学校における免許外担当の解消
▽多様な専門スタッフの配置と専門職員の導入
・スクールカウンセラー、スクールソーシャルワーカーおよび特別支援教育支援員の配置拡充
・学校図書館司書配置の促進
・部活動の指導や顧問、単独で部員の引率等を行う部活動指導員配置のより一層の拡充
▽一人ひとりが担う負担を軽減するための条件整備
・校務支援システムや校内LANの構築等、ICT環境整備の地域格差の解消
・事務の共同実施の推進等による事務機能の強化
▼チーム力向上のための家庭、地域、関係機関等との連携・協働体制の整備
▽学校と地域との連携を推進する地域連携担当職員の導入
▽コミュニティ・スクールの促進およびその仕組みを活用した学校・家庭・地域の連携・協働体制の強化
▽学校と児童相談所等の関係機関および警察との連携・協働体制の充実
▽いじめ問題、保護者対応、学校事故等での問題解決において、学識経験者や弁護士などから支援を受けるスクールロイヤーの配置
▽子どもの生活習慣確立・健全育成のための道PTA連合会等との連携の強化
(関係団体 2020-05-20付)
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