旭川市 5年度教育行政方針 給食費高騰分を支援 家庭学習に端末活用検討(市町村 2023-03-10付)
野﨑教育長
【旭川発】旭川市教委の野﨑幸宏教育長は2月24日、市議会第1回定例会で5年度教育行政方針を説明した。学校給食費について、原材料価格の高騰や円安の影響によってエネルギー、食料品などの価格が上昇していることから、上昇分を保護者負担としないよう支援する方針を表明。ICTの分野では、モデル校で端末の持ち帰りを試行し、家庭学習における活用手法を検討する。
教育行政方針の概要はつぎのとおり。
【学校教育】
▼子どもたちに未来を生き抜く力を育む
新型コロナウイルス感染症は5類感染症となる見込みだが、基本的な感染対策は求められることから、児童生徒が正しい理解のもと、自ら感染予防を実践することができるよう指導を継続していく。
確かな学力を育成する教育の推進については、主体的・対話的で深い学びの実現に向けた授業改善を一層進められるよう、実践推進校を指定し、その成果を市内各校に普及させるよう取り組むとともに、全国学力・学習状況調査の結果を分析し、作成した「指導の改善策」についても、周知を図っていく。
英語教育については、各学校にALTおよび小学校外国語活動サポーターを派遣するほか、長期休業期間に、イングリッシュ・チャレンジ教室を開催するとともに、教員の英語力や指導力の向上を図る研修会を実施する。
ICTを活用した教育については、指導主事による学校訪問等を通じて、教職員の指導力向上に努め、一人ひとりの学習状況に応じ、学習目標を達成する上でより効果的な手段として、健康面に配慮しつつ、タブレット端末の活用を一層推進していく。
モデル校において持ち帰りの試行を実施し、家庭学習における活用手法を検討するとともに、保護者や地域の方々にICT活用に対する理解が深まるよう、情報発信に努めていく。
国や道教委が小学校の全学年を対象に段階的に進めている35人学級の動きを踏まえながら、引き続き市独自に教員の確保に努め、少人数学級編制事業を進めていく。
いじめ問題への対応については、昨年9月に答申を受けた「いじめの重大事態に係る調査報告書」における再発防止策を踏まえ、教委内部の組織体制の強化を図るとともに、市長部局と連携した仮称・市いじめ対策チームによる学校への指導助言・支援等を進めていく。
「仮称・市いじめ防止条例」の制定や「市いじめ防止基本方針」の改定により、いじめ対策の充実強化を図っていく。
スクールカウンセラー派遣などによる、各学校における、相談体制の充実や組織的な対応の徹底により、積極的ないじめの認知や迅速な対処等に取り組むとともに、生活・学習Actサミットの開催を通じ、いじめの未然防止に向けた児童生徒の主体的な活動を支援していく。
不登校への対応については、教員による教育相談や家庭訪問と併せ、スクールカウンセラーによる支援を充実し、未然防止や初期対応の徹底を図っていく。
不登校児童生徒の学校復帰や社会的自立に向け、適応指導教室「ゆっくらす」における指導や、タブレット端末の活用による家庭学習の支援に取り組むとともに、教員・保護者・関係機関を対象とした講演会を開催するほか、子ども総合相談センターなど関係機関とも連携し、児童生徒一人ひとりの状況に応じた対応や保護者への支援を進めていく。
豊かな心の育成については、道徳教育の一層の充実に向け、研修会を引き続き開催し、教員の授業力向上を図るとともに、「生命(いのち)の安全教育」や人権教育、SNSに関する学習を全学校で実施するなど、児童生徒に命の大切さや思いやりの心を育む教育を推進していく。
体力の向上については、教員研修を通じて、実践的指導力の向上を図り、授業改善を進めるなど、学校における体力づくりの取組の充実に努めていく。
学校給食については、給食調理施設の適切な維持管理や職員研修の実施など、衛生管理と安全管理の徹底を図るとともに、学校給食を通じ、食の大切さ、地産地消、地域の食文化について生産者との交流なども行いながら食育を進めていく。
学校給食費については、原材料価格の高騰や円安の影響により、エネルギー、食料品などの価格が上昇していることから、1食当たりの単価は上がるが、同時に家計の負担も増加していることを踏まえ、5年度においてはその上昇分を保護者負担としないよう支援していく。
児童生徒のふるさと旭川への理解を深め、郷土への愛着と誇りを育むため、市の地域人材や施設のリストを拡充し、各学校における地域の教育資源を効果的に活用した特色ある教育活動の推進を支援していく。
特別支援教育については、専門員による指導方法等に関する具体的な助言や研修によって教員の専門性の向上を図るとともに、学校に補助指導員を配置し、医療的ケアや、一人ひとりの教育的ニーズに応じた支援や指導の充実に努めていく。
▼子どもたちの学びの環境を整える
来年4月からの供用開始を目指し豊岡小学校の増改築工事を継続するほか、新たに永山西小学校についても着手していく。耐震化については、日章小学校および明星中学校の補強工事ならびに雨紛小学校の設計を実施していく。
体育館のバスケットゴール、窓ガラスなどの非構造部材の耐震化に向け、調査・設計に着手するとともに、照明のLED化を進めていく。
市立小・中学校適正配置計画に基づき、地域の実情を踏まえ、保護者や地域住民と意見交換を行い、理解を得ながら学校の統合や通学区域の見直しに取り組んでいく。
就学援助制度については、手続きを簡略化するとともに、関係部局と連携し、各種制度や相談窓口についても周知するなど、支援制度活用に当たっての保護者負担の軽減ときめ細かな情報提供に努めていく。
児童生徒が気兼ねなく使用できるよう、学校のトイレに生理用品を配備する。
▼子どもたちを共に育て豊かな学びをつくる
地域の理解と協力を得た学校運営に向けて、各学校におけるコミュニティ・スクールの取組を着実に進めていく。
中学校の部活動については、各競技等に関する専門的知識や技術を有する部活動指導員の配置拡充を図るとともに、市長部局や各競技団体等との連携のもと、休日の部活動の地域移行に向けた取組を進めていく。
学校の教育力の向上については、市立小中学校働き方改革推進プランに基づき、各学校において勤務時間の適正管理や業務改善に取り組むとともに、教育委員会においても引き続き教職員の勤務時間や学校の取組状況を把握し、必要な環境整備を進めていく。
教職員の資質・能力の向上については、任命権者である道教委が策定する教員の資質向上に関する指標の内容を踏まえ、それぞれの教員のキャリアステージに応じた研修を計画的かつ効果的に実施していく。
教職員の不祥事によって学校教育に対する信頼が損われることのないよう、教育公務員としての自覚と責任を常に意識するよう啓発するなど、不祥事の根絶に向け、厳正な服務規律の保持を徹底していく。
「第2期市学校教育基本計画」については、5年度で計画期間の半ばとなることから、新たな教育的ニーズや社会経済状況の変化などに対応するため、見直しに着手していく。
【社会教育】
▼市民一人ひとりの主体的な学びの機会の充実
生涯学習フェアまなびピアあさひかわについては、ハイブリッド開催方式を取り入れるとともに、市民が主体となり、学んだ成果を地域に還元する機会の一つとして開催する。
青少年への学習機会の提供については、社会教育施設における小・中学校をはじめとした団体見学の受け入れ促進や、青少年向けの事業・体験活動に取り組んでいく。
ジオパーク構想の推進については、市を含む構想地域の貴重な地域資源を題材としたイベントやツアーを展開し、教育・観光・地域振興につなげることで、持続可能な地域づくりを目指していく。
▼市民の学びを支える環境の整備
公民館については、昨年5月に社会教育委員会議からいただいた答申を踏まえて今後の在り方を定め、その実現に向け、取り組んでいく。
中央図書館においては、第4次市子ども読書活動推進計画に基づき、全ての子どもが自ら読書に親しむことができる環境づくりを進めるとともに、2月に開始した電子書籍サービスの周知を図り、来館が困難な方への読書活動の機会の確保や、読書が困難な方への読書環境の充実に取り組んでいく。
市民文化会館については、にぎわいのある文化ホールを目指し、学識経験者、ホール利用団体関係者等が参加する検討会やワークショップを開催し、建て替えに向けた基本構想の策定に取り組む。
科学館においては、市科学館施設整備基金「サイパル☆みらい基金」に寄せられた寄付を活用して、AI(人工知能)などの新しい技術を取り入れた近未来を体験できるゾーンを新たに整備し、共に未来を担う子どもたちの科学の芽を育てようという皆さんからの応援を形にしていく。
▼地域における学びの循環
地域学校協働活動については、モデル3地域での活動を継続しつつ、モデル実施の成果と課題を整理し、他地域への展開手法等を検討していく。
▼市民の心を豊かにする文化芸術活動の充実
文化芸術に関わる機会の充実については、演奏会やコンクール、展覧会などを行う団体への支援を行うとともに、市民ギャラリーやリハーサルホールといった文化芸術活動のための市民利用施設の運営を継続していく。
市民文化会館および大雪クリスタルホールにおいては、優れた舞台公演や質の高い音楽鑑賞の機会を提供するため、魅力ある自主文化事業を実施するほか、子ども向けの音楽講座や高校生を対象とした演劇技術講習会を開催し、次代を担う子どもたちの世代から、文化芸術活動への興味や関心を高める取組を進めていく。
▼郷土文化の保存・活用と郷土愛の育成
博物館においては、市内の縄文遺跡をテーマとした企画展を開催するなど、郷土の歴史や文化への関心を高める多様な機会の提供を通じて、郷土文化の保存・活用と郷土愛の育成を図っていく。
アイヌ文化の普及については、国の交付金を活用して3年度から支援を行ってきた民間のアイヌ文化施設の整備が5年度の外構工事等をもって完了し、夏にオープンする予定であるので、同施設と一層の連携を図りながらアイヌ文化の保存伝承や理解の促進を図るとともに、アイヌ施策推進基金を活用し、アイヌ団体等の主体的な文化伝承活動に対する支援を行っていく。
優佳良織については、市発祥の染織工芸を絶やすことのないよう、その技術を保存・伝承するための支援を継続していく。
(市町村 2023-03-10付)
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