Pick Up2023 第11回 オホーツク( 2023-12-22付)
◆佐呂間町 幼保小の接続へ
架け橋プログラム 相互理解進む
全国的に幼保小の接続の重要性が高まる一方で「接続の関係を具体的にすることが難しい」「幼小の教育の違いを十分に理解・意識されていない」など、円滑な接続にはハードルがある。
佐呂間町は本年度、文部科学省「幼保小の架け橋プログラムに関する調査研究事業」のモデル地域に指定された。
7月に開かれたカリキュラム開発会議では「幼児期の終わりまでに育ってほしい10の姿」を関係者全体で共有。プログラムの開発・実践を進めることなどを確認した。
若佐、佐呂間、浜佐呂間の地区ごとに各4回、合計12回ワーキンググループを実施。小学校教員が保育所を訪問し、園児たちの活動を視察。友達と一緒に遊ぶ「協同性」や、遊びを最後までやり遂げることで育まれる「自立心」など、保育所での遊びを通した学びが、小学校の学習の基盤として生かされることへの理解を深めた。
保育所関係者は「小学校では、保育所で身に付けた資質・能力が十分に生かし切れていない部分があることを知った」と話す。小学校管理職は「日常的な教育活動を視察することで、幼児教育で子どもがどのような力を身に付けているかを知ることができた」など、相互理解が加速する。
外国語活動で交流 ギャップ解消期待
今月には、若佐小学校と若佐保育所による合同英語授業が行われた。若佐小1・2年生5人と若佐保育所の園児7人が参加し、外国語指導助手(ALT)と共に、感情を表す英単語はジェスチャーを交えたり、動作を示す英単語はダンスを踊ったりして、楽しみながら英語に触れた。
保育所では月1回、ALTによる英語コミュニケーションが行われている一方で、小学3年生から始まる外国語活動までのブランクを指摘する声があった。
若佐小の小林冬季校長は「1・2年の時に英語に親しむのは良い機会。今後も計画的に継続できれば」と話した。
谷川敦教育長は「幼児期の学びがその後の学びの構築においていかに重要であるかをみんなで共有し、学びの連続性、指導の連続性のバトンをしっかりと高校3年の学びまでつないでいきたい」としている。
◆美幌高 起業家教育の取組
合同会社3年目
美幌高校(酒井徹雄校長)農業クラブ専門部が、起業家教育の一環で立ち上げた合同会社「アグリロテート」が3年目を迎え、1サイクルを終えようとしている。地域農業の課題解決に貢献できる事業展開を目標に掲げた取組が軌道にのっている。
3年度に設立したアグリロテートは、地域経済や地域企業と関わりながら成果を上げてきた。
例えば、しょうゆ製造時の搾りかすを利用した「しょうゆトマト」を開発および生産した。
また、豚糞堆肥を活用したほ場で生産した農産品を地元スーパーで販売。消費者からは「高校生が生産・製造したものとは思えない商品」と高い評価を受ける一方で「今後、品質を高めてもらいたい生産品がある」という反応を得るなど、代えがたい経験を積んでいる。
地域担い手として 就農意欲高まる
生徒たちの資格取得への意識も高まっている。主に作業に関わる免許11種、情報系に関する資格5種、農業や教科に関わる資格5種などに挑戦。3年生の取得平均数は16・5個にも上った。
生徒たちは「体験を通して、実社会を考えることができた」「地域や関連企業からたくさんの応援があった」と、地域の担い手として関わり続ける自信を手にした。
3年生は、大学や専門学校への進学を予定する一方で、将来的に地域での就農を希望している生徒が複数いるという。
三浦隆雄教諭は「自らの企画から企業運営を行うことで、地域活動の一翼を担う実感が湧いたのでは」と手応えを口にする。
持続可能な農業へ 人材育成に手応え
アグリロテートはことし9月末日の純利益が前年度を上回るなど、着実に成長。同校は「学校での農業経営の学習を基盤に、起業方法や決算方法の生徒間での引き継ぎが確立しつつある」と話す。来期以降も伐採樹木の再利用など、持続可能な農業に貢献できる活動を進め「予測不可能な時代を生き抜く人材」の育成につなげたい考えだ。
( 2023-12-22付)