函館市 6年度教育行政執行方針 海洋STEAM教育推進 外部人材活用し指導体制充実
(市町村 2024-03-01付)

函館市藤井壽夫
藤井教育長

 【函館発】函館市教委の藤井壽夫教育長は2月22日の第1回定例市議会で教育行政執行方針を説明した。小学校算数科等における専科教員の配置や中学校における非常勤講師の配置拡充、特別支援教育の充実に向けた支援員、巡回指導員の増員など外部人材を活用したきめ細かな指導体制の確立に努めるとした。教科等横断的な学習の推進に向けては、新たに市の資源を生かした海洋に関するSTEAM教育に取り組む方針を示した。

 執行方針の概要はつぎのとおり。

▼変化する社会を生きる力の育成

 学校運営力の向上を図る各種人材を配置するなど、きめ細かな指導体制の整備を行うとともに1人1台端末やICT機器の一層の活用によって「個別最適な学び」と「協働的な学び」を一体的に充実し「主体的・対話的で深い学び」の実現に向けた授業改善を推進する。

 小学校では教科担任制の導入等を推進するため算数科および理科の非常勤講師を配置する。中学校においては免許外指導の改善を図るための非常勤講師の配置を拡充する。外国語教育については外国語指導助手や外国語活動サポーターの配置によって充実を図る。

 中学校では個々の習熟の程度に応じた学習を充実するため、デジタルAIドリルを引き続き活用する。

 学校図書館では学校司書の活用や図書整備率の向上による読書環境や読書活動のさらなる充実に努める。

 特別支援教育については支援員や学校に対して専門的な助言を行う巡回指導員を増員する。学校全体で適切な指導や必要な支援を行う体制を充実するとともに通常の学級に在籍しながら障がいの特性に応じた支援を受けられる通級指導教室を設置し、児童生徒一人ひとりの教育的ニーズに応じた教育を行う。

 「市いじめ防止基本方針」に基づき学校、家庭、地域、関係機関などと緊密に連携し、未然防止と早期発見、早期対応に組織的に取り組む。

 各校は、不登校児童生徒に適切な対応を行うため、中心的な役割を果たす教員をコーディネーターとして明確に位置付け、児童生徒が抱える諸問題の解決に向けて組織的に取り組む。

 学校独自の取組として設置が広がり、利用も拡大している「校内サポートルーム」に不登校生徒支援非常勤講師を配置し、支援を行う。昨年4月南北海道教育センターに開設した「サポートベース函館」において、外出はできても登校ができない児童生徒の社会的自立に向けた支援を行うほか、フリースクールなどとの連携を推進する。

 学校に登校できない児童生徒に対する学びの一形態として、ICTを活用した計画的な学習活動を行えるよう支援の充実を図り、教育機会を確保する。

 複雑化・多様化する児童生徒一人ひとりの問題への対応を図るため、小学校のスクールカウンセラーの派遣回数を増やすほか、スクールソーシャルワーカーやこころの相談員の配置によって児童生徒や保護者等への支援・相談体制の一層の充実を図るとともに、教員やスクールカウンセラーなどの研修を実施し、資質・能力の向上を図る。

 小学校体育科における水泳学習については新たに民間プールも活用しながら、確実な実施に努めていく。

 児童生徒が自分を大切にするとともに、多様性を認め合い他者を尊重することができるよう、命を守る教育やがん教育、性に関する教育などに取り組む。

 日本語指導が必要な児童生徒については早期に学校生活に適応できるよう、基礎的な日本語の習得や授業の理解を支援する。

 学校給食については物価高騰が続く中、保護者の負担を増やすことなく栄養バランスの良い給食を提供するため、給食食材購入費の支援を継続する。

 「市学校給食基本方針」に基づき、より安全で安心な給食を提供するため、衛生管理を徹底するとともに郷土の食材や食文化への関心を高めるため、函館産や道産の農水産物の使用に努めるほか、計画的に学校給食設備の更新を進める。

 安全に関する教育の推進については地域や学校の実態に即した実効性のある危機管理マニュアルに基づき災害や危機事象の発生時等に適切に対応できるよう備えるとともに、地震など危険発生時等に自ら正しく判断し、身を守る行動がとれるよう児童生徒の発達の段階に応じた指導に努める。

 児童生徒の通学の安全を確保するため地域や家庭、関係機関と連携し、通学路の見守り活動や点検・整備を行う。経済的な理由により、就学が困難な子どもの保護者に対して就学援助による支援を行う。

▼地域とともにある学校づくりの推進

 全ての市立学校に導入したコミュニティ・スクールを通じて、保護者や地域と連携した特色ある様々な取組を促進するほか、地域と学校をつなぐパイプ役として地域コーディネーターの配置を拡充するなど地域学校協働活動の充実を図る。

 幼児教育から小学校教育、小学校教育から中学校教育への円滑な接続については教職員や園児・児童・生徒の交流、就学・進学に向けた情報や目指す子ども像の共有などに取り組む。

 学校における働き方改革については引き続き教職員の勤務実態などを把握するとともに、校務支援システムを活用した校務の情報化や外部人材の配置による学校運営体制の充実を図るなど組織としての業務改善を進め、教員と児童生徒が向き合う時間の確保に努める。

 部活動については市の子どもたちが少子化の中でも将来にわたりスポーツや文化芸術活動に親しむ機会を確保できるよう、学校部活動の地域連携や地域移行を段階的に進めるための推進計画の策定に取り組む。

 教職員の資質・能力の向上については南北海道教育センターにおける研修も含め、その内容を幅広く充実するとともに指導主事等が学校からの要望に応じて行う訪問研修を実施するほか、ICTを活用した教育活動の質を向上させるため「ICTサポートセンター」を継続設置し、サポーターを学校へ派遣する。

 円滑な学級運営を行うことが困難となっている小学校に対し、日常的な学習指導や生徒指導を補助する非常勤講師を配置することによって学校における指導体制等の充実を図る。

 学校再編については子どもたちにとってより望ましい教育環境を整備する観点から検討を進めていく。

 学校施設については子どもや教職員等の健康を守るため、保健室に常設型エアコンを設置するとともに、当面の対策としてスポットクーラーおよび窓設置型エアコンを配備するほか、7年度以降全ての市立学校・幼稚園への常設型エアコンの整備を進めるための実施設計を行うなど学校環境の改善に努める。

 市立函館高校については進学重視型の普通科単位制高校として創意ある教育課程を編成し、地域に学び、地域で学ぶ「函館学」を実施するなど魅力ある高校づくりを推進する。

▼函館への愛着や誇りと未来へ飛躍する力の育成

 小学校においてデジタル社会科副読本を活用するほか、世界文化遺産「北海道・北東北の縄文遺跡群」の大船遺跡や垣ノ島遺跡、縄文文化交流センターを見学するなどの郷土学習を実施し、歴史や文化、自然など、函館の良さを感じることのできる教育活動を推進する。

 豊かな国際感覚を育む教育活動を推進するため、外国語指導助手を活用したコミュニケーション能力の育成を図る学習の充実のほか、市立函館高校の生徒を対象とした海外留学事業を実施する。

 望ましい職業観・勤労観などを身に付けることを目指すキャリア教育の充実を図る。

 各教科の学習を実社会での問題発見・解決に生かすための教科等横断的な教育であるSTEAM教育、市の地域資源である「海洋に関するSTEAM教育」に取り組む。

▼心の豊かさを育む文化芸術の振興

 青少年の優れた作品などの発表の機会である「青少年芸術教育奨励事業」や小・中学校に芸術家等を派遣し、児童生徒が文化芸術に触れる場を提供する「文化芸術アウトリーチ事業」などを実施する。関係団体と連携した「はこだてカルチャーナイト」や「市民文化祭」を開催するとともに市民の自主的な文化活動である「市民創作“函館野外劇”」や「はこだて国際民俗芸術祭」への支援を行う。

 文化財の保存・活用については五稜郭跡において堀の石垣維持に取り組むとともに、遺愛学院本館等および大谷派本願寺函館別院の保存修理費用を助成する。

 また、北海道が設置を検討している世界文化遺産「北海道・北東北の縄文遺跡群」の活用に向けた拠点施設の誘致に取り組む。

 大船遺跡については保存活用に係る基本方針や方法を定める保存活用計画を策定する。

 博物館については常設展に加え、企画展を開催するなど市民や観光客が函館の歴史への理解を深める取組を推進するほか、仮称・総合ミュージアムの整備に向けた検討を進める。

▼健やかな心身を育む運動やスポーツの振興

 はこだて市民健幸大学実行委員会に参画し、パラスポーツやニュースポーツ、アーバンスポーツの体験会や栄養バランスの良い食事の講演会を開催するなどスポーツ・レクリエーション活動の一層の推進を図るとともに、市民の健康意識の向上に努める。

 ことし8月に「2024モルック世界大会in函館」が国内で初めて開催される。こうした各種競技大会の開催支援やスポーツ合宿などの誘致に市スポーツ協会をはじめとする各種団体と連携して取り組むことで、競技人口の拡大や競技力の向上を図るほか、市民のスポーツへの関心を高めるため、様々なスポーツイベントの誘致に努める。

(市町村 2024-03-01付)

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