働き方改革を進める学校づくり③ 待ったなし 教育のDX化( 2024-10-30付)
今号はシリーズ①で触れたDX化について記述します。
教育DX化とは、デジタル技術を活用した教育モデルの改革を指します。児童生徒は皆、身近にインターネットやパソコンが存在している「デジタルネイティブ世代」と言われています。
スマートフォンやタブレット端末が日常生活に存在しそれを当たり前に活用し、さらに社会人としてはより一層、デジタルやデータが浸透した社会で仕事を進めていかなければなりません。
教師の働き改革を進める上での課題の一つは、授業のデジタル化とメール受配信業務の一元化、クラウド化(C4th等)にあります。この進展によって教育委員会、学校、保護者、地域の連絡手段を学校、保護者、地域ごとにチャンネルを分け、メッセージを配信するなど煩雑であった連絡の手段を一元化し、教育現場の課題解決と望ましい教育環境の実現が期待できます。
また教職員の業務は事務的業務や雑務が多く、長時間労働の要因として過去から指摘されています。授業のデジタル化や業務の一元化・クラウド化によって手作業で行っている各テストの結果が分析でき、事務的業務のデータ化が可能です。
私が理解している実践事例では、教科書の代わりにタブレット端末やデジタル教科書を活用することにより、従来の黒板への板書だけでは理解しづらい学習内容であっても、音声や視覚情報、特に動画などで理解を深めることができ、児童生徒同士のコミュニケーションの機会が増えるなど、ディープラーニング(深い学び)となる教育的効果が高い授業を参観させてもらい意見交換の場を持たせていただきました。
さらにRPA(業務を自動化するシステム)やAI(RPAなどのシステム内に組み込まれ、データに基づいた判断や作業の振り分けを行う機能)により、回収したテストを自動で採点する、学習状況をオンラインでリアルタイムにチェックするなどの技術を運用し業務の軽減を大幅に図っている学校もあります。
言い換えるならば働き改革はDX化によるところが大きいと理解できますが、教育環境の授業のデジタル化と業務の一元化、クラウド化にはシステム、さらにセキュリティーなど初期費用が必要となります。
しかし予算化されていないので進めることができないと言う方がいますが、私は研修会で「できるところから始めましょう」とし、各学年、各教科で制作した動画や作成した資料などのデジタルコンテンツを次年度、その学年担当者が活用できるようにリレーし、児童生徒の実態に応じて手を加え使用してはどうでしょうかと説明しています。
いまだ「苦手だ」「面倒だ」と言う方には「タブレットなどを積極的に活用した授業により、授業の準備、評価が軽減され期待する学力が身に付きやすい」とも説明するようにします。
さらに「単にスクリーンの動画を視聴させ、ワークシートに書き込ませるのではなく、児童生徒にとってディープラーニングにつながる有効な活用方法へ検討すべき」など都府県の具体例を挙げ、研修会で説明しています。
文部科学省の通知文「GIGAスクール構想の下での校務DX化チェックリストに基づく自己点検結果の報告について」の中で「GIGAスクール構想の下での校務DXについて~教職員の働きやすさと教育活動の一層の高度化を目指して」の文面に「今後文部科学省としては3年程度を集中取組期間と位置付け、手軽な改善方法を具体的に示した資料の提供、オンライン・オンデマンドでの学習機会の提供、全額国費によるアドバイザー派遣等を行い、学校現場の困り感に徹底的に寄り沿った支援を一層拡充してまいりますが、全国の学校における働き方改革事例集(令和5年3月改訂版)を参照ください」とあり、DX化による具体的事例が記述されており大変参考になります。
(北海道文教大学人間科学部健康栄養学科教授・石垣則昭)
( 2024-10-30付)