文科省28年度予算概算要求 9・8%増、5兆8552億円計上 インクルーシブ教育システムを推進
( 2015-09-01付)

 文部科学省は八月二十八日、二十八年度予算概算要求を発表した。地方活性化などに重点的に予算を配分するために設定した「新しい日本のための優先課題推進枠」の八千四百三億円を含め、前年度比九・八%増の五兆八千五百五十二億円を計上した。アクティブ・ラーニングの充実に向けた教育環境の整備、高大接続改革の推進、幼児教育無償化に向けた段階的取組など、「教育再生」を実現するための施策に重点化。初等中等教育分野では、三十年度以降に小・中学校で教科化される道徳について、効果的な指導方法などを収録した映像資料を作成する。特別支援教育専門家の配置や体制整備に要する経費の一部を補助するインクルーシブ教育システム推進事業費補助を創設。キャリア教育の充実に向けて、小・中学校において起業体験をサポートする外部講師と連携し、学校が自立して起業体験を行うモデルを新たに構築する。=関連記事「解説」欄=

道徳で新たに映像資料作成

概算要求のうち、文教関係予算には、前年度比七・六%増の四兆三千七百四億円(優先課題推進枠五千三百三十八億円を含む)を計上した。

教職員給与に充てる義務教育費国庫負担金には、前年度を百二十一億円下回る一兆五千百六十三億円を計上し、公立小中学校の教職員定数で、三千四十人の改善増を要求。子どもが主体的に学ぶアクティブ・ラーニングの充実に向けた少人数指導などの環境整備を図るほか、特別支援教育の充実、いじめや不登校への対応、チーム学校の推進などに取り組む。多忙とされる教員の負担軽減のため、事務職員の増員も盛り込まれた。

 少子化で二十八年度の定数は、二十七年度から三千百人の自然減となるため、増員要求が実現した場合でも、実質的には六十人の減少となる。

高校基礎学力テスト(仮称)の導入に向けて、学習指導体制や教材開発などとともに、テスト手法などに関する研究開発を行う。

 道徳教育の抜本的改善・充実に向け、新たに「特別の教科 道徳」の趣旨やねらいを踏まえた効果的な指導方法について、映像資料を作成。また、先進事例を収集・集約・発信するための機能を有した「アーカイブセンター」を構築する。

 いじめ・不登校対策の推進には六十一億七千四百万円を計上。スクールカウンセラー、スクールソーシャルワーカーの配置拡充を図るほか、教育支援センター(適応指導教室)の整備促進など、不登校支援に関する調査研究に着手する。

 幼児教育の段階的無償化に向けた取組では、環境整備と財源確保を図りつつ、段階的に無償化に向けた取組を進めることとし、その対象範囲や内容などについては予算編成過程において検討する事項要求(三百二十三億四千百万円)とした。

 特別支援教育の充実に向け、インクルーシブ教育システム推進事業費補助を創設し、十五億二千九百万円を計上。都道府県などが行う早期支援コーディネーター約百四十人、合理的配慮協力員約三百五十人など特別支援教育専門家の配置や、体制整備(約三百五十地域)に要する経費の一部を補助する。

 キャリア教育の充実に向けて、小・中学校において起業体験をサポートする外部講師と連携し、学校が自立して起業体験を行うモデルを新たに構築する。

 フリースクールなどで学ぶ義務教育段階の子どもへの支援策について、学習機会を確保するための新たな仕組みの試行・検証、経済的支援にかかる実証的な研究に着手。

 地域の豊かな社会資源を活用した土曜日の教育支援体制等構築事業では、小学校で二千校区増など、本年度の一万二千校区から一万五千校区に拡充する。

 高大接続改革推進プログラムを創設。三十億二千百万円を充て、入学者の受入れや教育課程編成・実施などに関し一体的に策定された方針に基づき、大学における教育内容、学習・指導方法、評価方法などを転換する取組を支援する。

 修学支援では、高校生への給付型奨学金に前年度を百十億円上回る百八十九億円を計上。対象者を十三万二千人増やし四十七万二千人とし、非課税世帯(第一子)における給付額を国公立三万七千四百円から十二万九千七百円、私立三万九千八百円から十三万八千円に増額する。

( 2015-09-01付)