文部科学省の28年度予算案主要事項④( 2016-02-02付)
文部科学省の二十八年度予算案主要事項はつぎのとおり(金額単位・百万円。カッコ内%は前年度予算比)。
学びのセーフティネットの構築
◆学校をプラットフォームとした総合的な子どもの貧困対策の推進=二、六一二(一一九・三%)
家庭の経済状況にかかわらず、学ぶ意欲と能力のあるすべての子どもが質の高い教育を受け、能力・可能性を最大限伸ばしてそれぞれの夢に挑戦できるようにすることは、一人ひとりの豊かな人生の実現に加え、今後のわが国の成長・発展にもつながるものである。
子どもの貧困対策に関する大綱を踏まえ、学校を子どもの貧困対策のプラットフォームと位置付け、総合的な子どもの貧困対策を推進するとともに、教育の機会均等を保障するため、教育費負担の軽減やフリースクールなどで学ぶ子どもへの支援を実施する。
▼学習支援の充実
▽地域未来塾による学習支援の充実=二六九(学校・家庭・地域の連携協力推進事業の一部。補助率1/3)
経済的な理由や家庭の状況によって、家庭での学習が困難であったり、学習習慣が十分に身に付いていない中学生などに対して地域住民の協力やICTの活用などによる学習支援を実施するとともに、新たに高校生への支援を行う(二、〇〇〇ヵ所→三、一〇〇ヵ所)。
▼地域人材の活用や学校等との連携による訪問型家庭教育支援事業(新規)=二八(学校を核とした地域力強化プランの一部)―五ヵ所
経済的困難をはじめとする様々な問題を抱え込み主体的な家庭教育が困難になっている家庭やその子どもに対して、学校や地域の関係機関などと連携した家庭教育支援チームなどによる訪問型支援などの幅広い支援を行う家庭教育支援体制を構築する。
▼高校生等の就職・就学支援等=五五三
▽多様な学習を支援する高校の推進事業(委託事業)=七九
生徒の多様な学習ニーズに応じた教育活動を展開する定時制・通信制課程の高校や総合学科の高校、ICTを活用した遠隔教育を実施する高校における生徒への支援体制の充実を図り、生徒の学習意欲を向上させ、確かな学力を身に付けさせるなど、高校教育の質の確保・向上に向けた一層の取組を推進する。
▼要保護児童生徒援助費補助=七八三(補助率1/2)
要保護児童生徒の保護者に対して学用品費、修学旅行費、学校給食費などの就学援助を行う。
※参考・復興特別会計
▼被災児童生徒就学支援等事業=七、九八八(全額国庫補助の単年度の交付金事業・補助率10/10)
東日本大震災で被災し、経済的に就学が困難な幼児児童生徒の就学機会を確保するため、幼稚園児への就園支援、小・中学生に対する学用品費等の援助、高校生に対する奨学金支給、特別支援学校などに在籍する児童生徒等への就学奨励、私立学校および専修学校・各種学校の授業料減免などを実施する。
◆大学等奨学金事業の充実と健全性確保=一〇二、二七〇(一一一・〇%)―ほかに財政融資資金(財投機関債含む)九一四、四〇〇
意欲と能力のある学生などが、経済的理由によって進学を断念することがないよう、安心して学ぶことができる環境を整備することが重要である。
このため、無利子奨学金の貸与人員の増員や、所得連動返還型奨学金制度の導入に向けた対応の加速など、大学等奨学金事業の充実を図る。
▼「有利子から無利子へ」の流れの加速=九四、五三七
貸与基準を満たす希望者全員への貸与の実現を目指し、無利子奨学金の貸与人員を増員し、奨学金の「有利子から無利子へ」の流れを加速する。
▽無利子奨学金事業の拡充
①事業費=無利子奨学金三一二、四八一→三二二、二四九(有利子奨学金七九六、五七八→ 七六八、五五一)
②貸与人員=無利子奨学金四六万人→四七万四千人・うち新規貸与者増員六千人(有利子奨学金八七万七千人→八四万四千人)
▼「所得連動返還型奨学金制度」の導入に向けた対応の加速
奨学金の返還の負担を軽減し、返還者の状況に応じてきめ細やかに対応するため、所得の捕捉が容易となる社会保障・税番号制度(マイナンバー制度)の導入を前提に、返還月額が卒業後の所得に連動する、所得連動返還型奨学金制度の導入に向けて、詳細な制度設計を進めるとともにシステムの開発・改修に着手するなどの対応を加速する。
▼有利子奨学金の利子負担の軽減のための措置=五、三九九
有利子奨学金について、在学中は無利子および返還中は低利子とするために、利子補給金を措置する。
▼大学等奨学金事業の健全性確保=二、三三四
日本学生支援機構に対する返還金回収促進経費(返還相談体制の充実、債権回収業務の民間委託、延滞事由の要因分析など)を措置する。
※参考・復興特別会計
▼大学等奨学金事業=二、八二〇
東日本大震災で被災した世帯の学生等が経済的理由によって進学を断念することがないよう、無利子奨学金の貸与を行う。
①事業費=三、五六五
②貸与人員=五千人
◆学校施設等の老朽化対策等の推進=一二三、一二七(一〇〇・六%)
▼公立学校施設の老朽化対策を中心とした教育環境の改善等の推進=七〇、八八六(一一〇・〇%)
学校施設は児童生徒の学習・生活の場であり、より良い教育活動を行うためには、その安全性・機能性の確保は不可欠である。
しかしながら、学校施設は、建築後二十五年以上経過し、改修が必要な建物の面積が全体の約七割を占めるなど老朽化は深刻な課題となっている。
このため、安全を確保し、質の高い教育活動を支えられるよう老朽化への対応を図るなど、教育環境の改善を推進する。
▽小・中学校等の学級数の増加等に伴う教室不足への対応等
小・中学校、特別支援学校の学級数の増加に伴う教室不足に対応するための新築・増築、学校の統合にかかる新築などにかかる施設整備。
▽老朽化対策を含む教育環境の改善
教育環境を改善するため、長寿命化による対応を含む老朽化対策等を推進。
▼国立大学等施設の整備=四一、八〇〇―ほかに財政融資資金三七、七六三
二十八年度を初年度とする次期国立大学法人等施設整備五ヵ年計画(~三十二年度)策定に向けた検討の状況を踏まえ、著しく進行する国立大学等施設の老朽化に対し、安全・安心な教育研究環境の基盤の長寿命化や耐震化を図りつつ、国立大学法人等の機能強化などへ対応するため、最先端研究施設の整備や附属病院の再開発整備など、計画的・重点的な施設整備を推進する。
▽安全・安心な教育研究環境の基盤の整備
施設の耐震化(非構造部材の耐震対策含む)や老朽施設の改善、機能劣化の著しい基幹設備(ライフライン)の計画的な更新などを推進。
▽国立大学等の機能強化等変化への対応
高度化・多様化する教育研究活動に対応する最先端研究施設の整備、地域医療・先端医療等の拠点となる附属病院の再開発整備を実施。
絆づくりと活力あるコミュニティの形成
◆学びを通じた地域づくりと学校・家庭・地域の連携協働=七、〇四五(一〇一・三%)
学校を核とした地域力強化の仕組みづくりを推進するとともに、地域の活性化につながる多様な取組を展開することによって、まち全体で地域の将来を担う子どもたちの育成および地方創生の実現を図る。
▼地域とともにある学校づくりの推進=一二五
地域コミュニティの衰退や子どもの問題行動など、学校・地域の差し迫った社会的・地域的な課題に対し、首長部局や関係機関などとの協働体制を確立し、課題解決に向けて取り組む新たな学校モデルの構築・発信や、自律的・組織的な学校運営体制の構築に向けた実践研究などの実施、学校現場における業務改善の取組を積極的に支援し、教員と専門スタッフによるチーム体制の構築、学校マネジメント機能の強化、教員が力を発揮できる環境を整備し、子どもと向き合う時間の確保や授業の充実を図る。
▼博物館ネットワークによる未来へのレガシー継承・発信事業(新規)=二六
全国の博物館の振興のため、自然科学分野の国立博物館などがもつ豊富な資料やノウハウを生かし、複数の地方の博物館と連携協力しながら、全国の博物館の取組の充実に資する国内外の好事例収集、調査研究などを実施するとともに、それらの館が調査研究の成果を活用した連携企画展示などを行い、これら一連の取組によって生まれた効果の全国への普及を図る。
▼生涯学習施策に関する調査研究=四四
生涯学習の成果を適切に活用し、より高度な学習や幅広い活動などにつなげる仕組みとして生涯学習支援基盤(生涯学習プラットフォーム)に関する実証など、地域課題の解決や多様な学習機会の充実に資する調査研究などを実施し、生涯学習の振興方策の充実を図る。
※参考・復興特別会計
▼仮設住宅の再編等にかかる子どもの学習支援によるコミュニティ復興支援事業=七九五
学習環境が好転していない地域において、長期にわたる仮設住宅生活で学習支援が十分に行き届いていない被災した児童・生徒を中心に、地域人材による学習支援を実施することによって、仮設住宅内、また、仮設住宅とその学校や周辺地域とを結ぶコミュニティの復興促進を図る。
スポーツ立国の実現
◆スポーツ立国の実現を目指したスポーツの振興=三二、三六〇(一一一・七%)
すべての人々がスポーツに親しみ、スポーツを楽しみ、スポーツを支え、スポーツを育てる活動に参画する機会を確保するとともに、国民に誇りと喜び、夢と感動を与えてくれるトップアスリートの育成・強化、国際競技大会などの招致・開催等を通じた国際交流・貢献を推進し、わが国の「新たなスポーツ文化」を確立することを目指す。
▼二〇二〇年東京オリンピック・パラリンピック競技大会等に向けた競技力の向上=一四、二七三
▽競技力向上事業=八、七〇〇
オリンピック・パラリンピック競技大会などにおける日本代表選手のメダル獲得に向けて、各競技団体が行う日常的・継続的な選手強化活動を支援するとともに、二〇二〇年東京大会で活躍が期待される次世代アスリートの発掘・育成などの戦略的な選手強化を行う。
▽ハイパフォーマンスサポート事業=三、五二八
オリンピック競技・パラリンピック競技を対象に、メダル獲得が期待される競技をターゲットとして、アスリート支援や研究開発について、多方面から専門的かつ高度な支援を戦略的・包括的に実施する。
また、二〇一六年リオデジャネイロオリンピック・パラリンピック競技大会において、競技直前の準備のためにアスリート、コーチ、サポートスタッフが必要とする機能(リカバリーやコンディショニング機能に重点化)を選択できる拠点(ハイパフォーマンスサポート・センター)を設置する。
▼スポーツ庁設置によるスポーツ施策の総合的な推進=一八、〇八八
▽特別支援学校等を活用した障害児・者のスポーツ活動実践事業(新規)=一八
地域における障害者スポーツの拠点づくりを推進するために、障害児・者が、身近で安心・安全にスポーツができる場として特別支援学校などを有効に活用するための実践研究を行う。
▽スポーツによる地域活性化推進事業(健康長寿社会等の創生) =三三二
スポーツ無関心層などを対象として、運動・スポーツへの興味・関心を喚起するため、インセンティブ付き運動・スポーツプログラムなどを実施するとともに、当該取組の効果やスポーツ活動の継続率の測定・分析を行うなどスポーツによる健康増進の取組を支援する。
▽スポーツ環境の整備=一、〇〇〇
子どものスポーツ機会の充実、ライフステージに応じたスポーツ活動の場を確保するため、スポーツ施設の整備を推進し、スポーツ環境の整備促進を図る。
▽スポーツ新事業開拓に関する調査研究事業(新規)=三四
スポーツ分野の産業化を進め、スポーツ市場を拡大し、その収益をスポーツ環境の充実につなげる好循環を成立させるために、国内外のスポーツ市場やスポーツ産業の現状把握およびスポーツに関連する新事業開拓に向けた調査研究を実施する。
▽子どもの体力向上課題対策プロジェクト(新規)=九五
教育委員会における体力向上に向けたPDCAサイクルを実施する実践研究や体育系大学などに委託して課題に対応した運動プログラムの作成などを行う。
▽武道等の円滑な実施の支援=四、七二九
武道等の安全かつ円滑な実施のため、武道等の領域での授業の充実、若手教員をはじめとした指導者の資質向上や指導力強化を推進し、指導体制の整備を図るとともに、中学校武道場の整備促進を図る。
世界に誇るべき「文化芸術立国」の実現
◆豊かな文化芸術の創造と人材育成=二〇、一九七(一〇一・三%)
豊かな芸術創造活動を生み出す環境を創出し、わが国の芸術水準と国際的評価を高めるため、芸術団体や劇場・音楽堂などへの効果的な支援を行うとともに、地域の魅力と活力を高める特色ある文化芸術振興の取組を支援し、地域の活性化を図る。
▼文化芸術立国実現に向けた文化プログラムの推進=一三、五三八
◇国が地方自治体、民間とタイアップした取組の推進=一三、一四四
▽戦略的芸術文化創造推進事業=四四一
芸術文化の振興を図る上で推進することが必要な芸術活動、障害者の優れた芸術作品の試行的展覧会、公演情報などの海外発信の環境整備などに関する調査研究などを実施する。
▽舞台芸術創造活動活性化事業=三、二八七
分野の特性に応じた舞台芸術創造活動に対する新たな助成システムを導入し、わが国の芸術団体の水準向上と、より多くの国民に対する優れた舞台芸術鑑賞機会の提供を図る。
▽文化芸術による地域活性化・国際発信推進事業=二、七九〇
地方公共団体が企画する地域の文化資源などを活用した文化芸術活動や、地域の文化芸術施策を推進する体制整備などへの支援を行い、文化芸術による地域活性化、地域文化の国際発信、訪日外国人の増加を促進する。
▽劇場・音楽堂等活性化事業=三、〇二七
地域の劇場・音楽堂などの活性化と実演芸術の水準向上を図るため、公演事業や専門的人材の養成、普及啓発活動、外国人を受け入れる環境整備等の支援を行う。
◇文化プログラム推進のための基盤整備=七六四
文化プログラムに多くの訪日外国人が参加し、その開催効果が広く波及するよう、国内の文化施設において多言語化対応の情報発信、環境整備等を進める。
▼文化芸術創造活動への効果的な支援=五、九〇三
▽戦略的芸術文化創造推進事業=四四一
▽舞台芸術創造活動活性化事業=三、二八七
▼芸術家等の人材育成=八、四七七
▽新進芸術家グローバル人材育成事業=一、四一四
若手芸術家などに公演や展覧会など実践的な研修機会を提供することなどによって、文化芸術を支えるグローバル人材を育成し、わが国の文化芸術の海外への発信力の強化を図る。
▽文化芸術による「創造力・想像力」豊かな子どもの育成=六、三二五
文化芸術によって、創造性、発想力、コミュニケーション力に富んだ子どもたちを育成するため、文化芸術を体験する機会の充実を図る。
◆かけがえのない文化財の保存、活用および継承等=四五、一四六(一〇一・五%)
文化財を次世代へ確実に継承するために、適切な修理・整備や防災・防犯対策などへの支援を行うとともに、日本遺産などの地域の文化財の魅力を国内外に発信する取組や、観光振興政策と連携して地域活性化の取組を推進する。
▼文化財総合活用戦略プランの強化=九、六二六
▽日本遺産魅力発信推進事業=一、二七五
日本遺産の認定を推進するとともに、認定された地域の文化財群を総合的に整備・活用し、国内外に戦略的に発信する取組への支援を実施する。
▽美しい日本探訪のための文化財建造物活用事業(新規)=二〇〇
重要文化財建造物の外観、内装(公開部分)を美しく保ち、観光資源としての魅力を向上させる事業(美装化)への支援を新たに実施する。
▼文化財の適切な修理等による継承・活用等=三二、〇三五
▽国宝・重要文化財建造物保存修理強化対策事業=七、六〇七
木造文化財建造物の価値を損なうことなく次世代へ継承するため、適時適切な保存修理事業への支援を実施する。
▽近代化遺産等重点保存修理事業=一、一〇五
煉瓦造、鉄筋コンクリート造などの文化財建造物(近代化遺産)について、文化財としての価値を担保するため、本格的な保存修理事業への支援を実施する。
▼文化財の公開活用、伝承者養成、鑑賞機会の充実等=三、四八五
広く国民に対して文化財を公開し、鑑賞するための機会を提供するとともに、無形文化財などの伝承者養成、わざの錬磨などに対する支援を行う。
※参考・復興特別会計
▼被災文化財の復旧等=一、一三四
被災した国指定等文化財について早急に保存・修復などの措置を講ずる。
◆わが国の多彩な文化芸術の発信と国際文化交流の推進=二、五八〇(一〇七・三%)
わが国の多彩な文化芸術を戦略的に国内外へ発信するとともに、文化芸術各分野における国際文化交流を推進することによって、国内の文化芸術水準の向上を図ると同時に、クールジャパンの発信強化を図る。
▼日本文化の発信・交流の推進=一、八一二
▽アーティスト・イン・レジデンス活動を通じた国際文化交流促進事業=一一〇
国内のアーティスト・イン・レジデンス団体が海外との双方向に行う交流活動等を支援する。
▽芸術文化の世界への発信と新たな展開=九六二
舞台芸術や現代アートなどわが国の優れた芸術文化を積極的に発信し、各分野における国際文化交流を推進することによって、わが国の芸術水準や国際競争力を高める。
▼外国人に対する日本語教育の推進=二一〇
▽「生活者としての外国人」のための日本語教育事業=一五〇
わが国に在留する外国人が日本語を用いて円滑に生活を送ることができるよう、「生活者としての外国人」を対象とした、地域における日本語教育を推進する。
◆文化発信を支える基盤の整備・充実=三二、五九一(九七・〇%)
わが国の顔となる国立文化施設(美術館、博物館、劇場)の整備・充実を通じて、文化発信の国内基盤を強化するとともに、国民の鑑賞機会の充実を図る。
▼国立文化施設の機能強化=二五、九四一
多言語化対応など、国立文化施設(美術館、博物館、劇場)の機能強化を図る。
▼国立文化施設の整備=五、八九四
来館者の快適な観覧環境や安全安心を確保するため、基幹施設(展示設備、舞台設備等)改修などを行う。
▼文化発信を支える基盤の整備・充実=七五五
歴史的・文化的価値のある文化関係資料のアーカイブ構築に関する調査研究などを行う。
◆スポーツ・文化・ワールド・フォーラムの開催=五〇一(皆増)
ラグビーワールドカップ二〇一九、二〇二〇年東京オリンピック・パラリンピック競技大会、関西ワールドマスターズゲームズ二〇二一に向けて、観光とも連動させつつ、スポーツや文化による国際貢献や有形・無形のレガシーなどについて議論、情報発信し、国際的な機運を高めるためのキックオフイベントとしての国際会議を、二〇一六年リオ大会直後の秋に、京都と東京で開催。
成長戦略の実現に向けての科学技術イノベーションの推進
◆科学技術イノベーション・システムの構築=三一、九九四(九〇・二%)
大学・研究開発法人・産業界などが集い、既存分野・組織の壁を取り払い、企業だけでは実現できない飛躍的なイノベーションを産学官連携で実現する。
また、大学の研究シーズをもとに、地域外の人材・技術を取り込ながら、地域から世界で戦える新産業を創出する。さらに、民間の事業化ノウハウを活用した大学等発ベンチャー創出の取組などを推進する。
▼オープンイノベーション加速に向けた産学共創プラットフォームによる共同研究推進(新規)=七〇〇
非競争領域における産学共同研究をマッチングファンドによって支援することで、企業から大学などへの資金・人材の呼び込みをより一層促進し、わが国のオープンイノベーションを加速する。
▼地方創生に資するイノベーション・エコシステムの形成=二、九二〇
地域の大学が産官金などと協力しつつ、全国規模の事業化経験をもつ人材を活用して新産業創出に主体的に取り組む活動の支援や、地域企業と全国の研究成果をつなぐマッチングプランナーの活用および地域特性を踏まえた将来ビジョンに基づき、世界的にも優れた研究施設などを核に大学、企業等が集積したイノベーション創出の場の構築によって、地方創生に資するイノベーション・エコシステムの形成を推進する。
▽地域イノベーション・エコシステム形成プログラム(新規)=六〇〇
▽マッチングプランナープログラム=八六三
▽世界に誇る地域発研究開発・実証拠点(リサーチコンプレックス)推進プログラム=一、四五六
▼センター・オブ・イノベーション(COI)プログラム=八、八六九
目指すべき社会像を見据えたバックキャストによるビジョン主導型のチャレンジングな研究開発を大型産学研究開発拠点において推進する。
※二十八年度から「大学等シーズ・ニーズ創出強化支援事業」と一体として、科学技術振興機構において実施。
▼強い大学発ベンチャー創出の加速=五、一四五
強い大学発ベンチャーの創出を推進させるため、知財の集約・強化、創業前段階からの経営人材との連携や、起業に挑戦し、イノベーションを起こす人材の育成を一体的に推進していく。
▽大学発新産業創出プログラム(START)=二、一〇七(二、二九〇)
▽知財活用支援事業=二、三三五
▼国立研究開発法人を中核としたイノベーションハブの形成=一、四〇〇
国立研究開発法人を中核として、産学官の垣根を越えた人材糾合の場(イノベーションハブ)の形成およびその機能強化を図るため、国立研究開発法人の飛躍性ある優れた取組を選択的に支援・推進する。
◆基礎研究力強化と世界最高水準の研究拠点の形成=三〇三、二一六(一〇〇・一%)
新たな知のフロンティアを拓く礎であるとともに、イノベーション創出の基盤でもある、独創的な学術研究と出口を見据えた基礎研究を、競争的研究費改革を踏まえつつ、強力かつ継続的に推進する。加えて、同改革と連携し、研究開発と共用の好循環を実現する新たな共用システムの導入を加速する。
また、大学の研究力強化のための取組を戦略的に支援し、世界水準の優れた研究大学群を増強する。さらに、国内外の優れた研究者を惹きつける世界トップレベル研究拠点の構築を進める。
◆科学技術イノベーション人材の育成・確保=二六、七七五(九六・一%)
科学技術イノベーションを担う多様な人材の育成や活躍促進を図るための取組を重点的に推進する。
特に、わが国を牽引する優れた若手研究者が産学官の研究機関を舞台に活躍する新たなキャリアパスを拓くための制度を創設するとともに、科学技術イノベーションを担う女性の活躍促進や次代を担う人材の育成などの取組を行う。
▼卓越研究員制度の創設(新規)=一、〇〇〇
優れた若手研究者が産学官の研究機関から最適な場所を選んで安定かつ自立した研究環境のもとで挑戦的な研究を推進するとともに、このような新たなキャリアパスを拓くための制度を創設する。
▼科学技術イノベーションを担う女性の活躍促進=一、九八七
研究と出産・育児・介護などとの両立や女性研究者の研究力の向上等を通じたリーダーの育成などの研究環境のダイバーシティ実現に向けた取組や、女子中高生の理系分野への興味・関心を高め、適切な進路選択を可能にするための取組などの支援を実施する。
▽ダイバーシティ研究環境実現イニシアティブ=一、〇八八
▽特別研究員(RPD)事業=八六九
出産・育児による研究中断後の復帰支援(Restart Postdoctoral Fellowship)。
▽女子中高生の理系進路選択支援=三〇
▼スーパーサイエンスハイスクール(SSH)支援事業=二、一五五
先進的な理数系教育を実施する高校等を「SSH」に指定し、課題の発見と解決に向けた主体的・協働的な学習(いわゆるアクティブ・ラーニング)や、高大連携の取組などを先導するとともに、生徒の科学的能力や科学的思考力等を培い、将来の科学技術系人材の育成を支援する。
◆科学技術イノベーションの戦略的国際展開=一五、〇五四(九九・五%)
国際的な人材・研究ネットワークの強化、先端科学技術分野での戦略的な国際協力の推進、地球規模課題の解決への貢献などに取り組み、日本外交の新機軸としての科学技術外交を戦略的に推進する。
◆社会とともに創り進める科学技術イノベーション政策の展開=七、〇三〇(九三・三%)
「社会および公共のための政策」の実現に向け、科学技術コミュニケーション活動のさらなる促進など、国民の理解と信頼と支持を得るための取組を展開する。
また、研究開発システムの改革を推進することで、科学技術イノベーション政策の実効性を大幅に高める。
◆ライフサイエンスによるイノベーション創出=八〇、一四五(九八・九%)
健康・医療戦略(二十六年七月二十二日閣議決定)等に基づき、iPS細胞研究などによる世界最先端の医療の実現や、疾患の克服に向けた取組を強力に推進するとともに、臨床研究・治験への取組などを強化することによって、ライフサイエンスによるイノベーションを創出する。特に、日本医療研究開発機構(AMED)における基礎から実用化までの一貫した研究開発を関係府省と連携し強力に推進する。
◆クリーンで経済的なエネルギーシステムの実現=三七、六九六(九九・三%)
わが国が抱えるエネルギー問題や、国際社会が直面する地球環境問題を克服し、クリーンで経済的なエネルギーシステムの実現のための研究開発を推進する。
◆自然災害に対する強靱な社会に向けた研究開発の推進=一〇、九七四(一〇二・四%)
火山災害の軽減に貢献するための先端的な火山研究の推進およびそれを担う人材の育成・確保を推進するとともに、地震・津波による被害軽減のための調査観測、地震・津波発生メカニズムの解明などの調査研究、防災科学技術の研究開発などを実施することで、自然災害に対する強靱な社会に向けた研究開発の推進を図る。
(連載おわり)
( 2016-02-02付)