文科省が29年度予算概算要求を発表 9.5%増、5兆8266億円計上 給付型奨学金創設は事項要求に( 2016-09-02付)
文部科学省は八月三十日、二十九年度予算概算要求を発表した。地方活性化などに重点的に予算を配分するために設定した「新しい日本のための優先課題推進枠」の五千四百五十七億円を含め、前年度比九・五%増の五兆八千二百六十六億円を計上した。「次世代の学校」創生のための指導体制の強化、グローバル人材の育成、給付型奨学金制度の実現など、「教育再生」を実現するための施策に重点化。教職員定数の改善として、三千六十人の増員を要求している。教育部局と福祉・保健などの部局が連携し、一貫した支援体制を構築する地域を支援するなどインクルーシブ教育システムを推進。奨学金関連では、給付型奨学金は今後、対象や基準など具体的な制度設計を検討するため、金額を示さない事項要求とした。=関連記事「解説」欄=
概算要求のうち、文教関係予算には、前年度比七・六%増の四兆三千六百三十八億円(優先課題推進枠五千四百五十七億円を含む)を計上した。
安定した教職員定数を目指す中期計画「〝次世代の学校〟指導体制」の推進に一兆五千二百六十三億一千八百万円を計上。文科省では義務標準法の改正を視野に、来年度からの十年間で、基礎、加配を含めて公立小・中学校の教職員定数を二万九千七百六十人増やしたい考え。その一年目に当たる来年度は、教職員給与に充てる義務教育費国庫負担金に、本年度を八十六億円下回る一兆五千百八十五億円を計上し、三千六十人の増員を要求している。
小学校外国語の教科化など学習指導要領の改訂を見据え、専科指導やアクティブ・ラーニングの視点からの授業改善に五百八十人、発達障害のある児童生徒への「通級による指導」の充実に八百九十人、貧困家庭の学力課題の解消といじめ・不登校の未然防止にそれぞれ四百人の増員を求めた。
少子化で二十九年度の定数は、二十八年度から三千百人の自然減となるため、増員要求が実現した場合でも、実質的には四十人の減少となる。
また、教員給与に関連して、部活動指導業務手当を三千円から三千六百円へ増額することを盛り込んだ。
教育課程の充実に向け、小学校におけるカリキュラム・マネジメントの在り方に関する調査に着手する。
道徳教育の抜本的改善・充実に向けては、指導要領改訂の趣旨・目的を家庭や地域と共有するため、新たに保護者向けのパンフレットを作成・配布する。
いじめ・不登校対策の推進に七十七億一千三百万円を計上し、スクールカウンセラー(SC)、スクールソーシャルワーカー(SSW)の配置を拡充。中で、児童虐待に対応するため、SCを小学校四百校に、SSW四百人を重点加配する。
幼児教育の無償化に向けた取組は、環境整備と財源確保を図りつつ、段階的に進めることとし、その対象範囲や内容などについては予算編成過程において検討する事項要求とした。
特別支援教育の充実に向け、インクルーシブ教育システムの推進に十八億円を計上。新規事業として、特別な支援を必要とする子どもについて、就学前から卒業にわたる切れ目ない支援体制の整備を促すため、教育部局と福祉・保健・医療・労働等の部局が連携し一貫した支援体制を構築する地域(三十地域)を支援する。
キャリア教育では、児童生徒が自らのキャリア形成に生かす、仮称・「キャリア・パスポート」の導入に向け、その活用方法などについての調査研究を新たに実施する。
教育の情報化の推進に向け、次世代の教育情報化推進事業をスタート。官民コンソーシアムを活用した教育コンテンツの開発に取り組むほか、教員養成系大学におけるICT活用に関する指導者養成研修を実施する。
高大接続改革の推進では、仮称・高校基礎学力テストの導入に向けて、学習指導体制や教材開発などとともに、試行実施に向けてのフィージビリティを確認するためのプレテストを実施。また、三十二年度から実施予定の仮称・「大学入学希望者学力評価テスト」のプレテストを実施するため、作問や記述式問題の実施方法・採点方法等についての検証、実施体制を構築する。
奨学金関連では、高校生向けの奨学金として、高校生等奨学金の充実に本年度予算を三十一億三千九百万円上回る百六十二億六千七百万円を計上。非課税(全日制等・第一子)の給付額の増額や、小・中学生がいる低所得世帯の高校生への支援を強化する。
大学等奨学金の充実には一千百八十二億九千九百万円を予算化。無利子奨学金の貸与人員を約二万四千人増の約四十四万九千人に拡充。給付型奨学金制度の創設、低所得世帯の子どもにかかる無利子奨学金の成績基準の緩和では、その制度内容について、予算編成過程において検討することとされているため、事項要求とした。
( 2016-09-02付)