文科省 3年度概算要求主要事項⑤ 学校を核に地域力強化 価値創造人材育成拠点を形成
(国 2020-10-22付)

総合教育政策局

【学校教育・社会教育を担う教育人材の資質・能力の向上】

 Society5・0の到来などの様々な社会変化や技術革新に対応した力をもつ教師が一層求められており、ICT活用指導力等の新たな能力を身に付けるための教職科目や研修の開発を進めるとともに、多様な経験を有する人材を教育界内外から獲得するため、教職の魅力向上を図る仕組みづくりや学校現場に円滑に参画できる環境づくりを進める。

 また、新型コロナウイルス感染症の影響によって対面での研修が困難となっている実状を踏まえ、ICTの活用など、新しい生活様式の中でも滞りなく実施できる研修手法を開発する。

▼新しい教育課題に対応した教員研修の充実と大学における教員養成の改革=1億4200万円

▽教師の養成・採用・研修の一体的改革推進事業

 教師が教職生涯にわたってその資質・能力を向上させていく効果的な仕組みの構築に資するため、大学、教育委員会、民間教育事業者等に対する委託研究を行うことなどによって、教師の養成・採用・研修を通じた改革を推進する。

▽現職教員の新たな免許状取得や更新等

 隣接校種等の新たな免許状取得を促進し、教員配置上の効率化を図るとともに、大学と地方公共団体が連携して、免許外の教科担任の解消を図る。

 また、全国各地で教員の更新講習の受講機会の確保を図るため、ICTを活用した講習の実施やへき地等での免許状更新講習開設へ補助する。

▼学校教育における外部人材の活用促進事業=8100万円

 多様な経験を有する外部人材が転職、兼業・副業等によって学校現場に円滑に参画できる環境を整備するため、学校現場と外部人材をつなぐ仕組みづくりを検討するとともに、就職氷河期世代を対象としたリカレント教育プログラムを継続して実施する。

▼社会教育を推進するための指導者の資質向上等事業=6700万円

 社会教育主事、司書等については地域における社会教育指導者として、社会の変化や地域課題の実情に応じて、常に新しい知識・技術を習得する必要がある。このため国は、研修を実施し、地域住民における社会教育の質の向上や、住民自らが地域の課題を解決するような地域社会の形成に寄与する。

【グローバル社会に生きる児童生徒の教育機会の充実】

 グローバル人材育成については、第3期教育振興基本計画等を踏まえ他国を尊重し、国際社会の平和と発展に寄与する態度や、豊かな語学力・コミュニケーション能力、主体性・積極性、異文化理解の精神等を身に付け、様々な分野で活躍できる人材の育成が重要である。

 また、急速な社会のグローバル化の進展に伴い、企業等の海外進出によって帯同する子どもの教育環境の整備・充実も不可欠である。

 このため、在外教育施設においても国内と同等の学びの環境を整備するため、派遣教師数を拡充するとともに、令和のスタンダードとして新しい時代の学びの環境の検討を進める。

 また、在外教育施設で学ぶ児童生徒をグローバル人材として育成するための取組を推進する。

▼在外教育施設の戦略的な機能の強化=201億5400万円+事項要求

▽在外教育施設の教育環境の改善

 国内と同等の学びの環境を整備するため、派遣教師数を拡充し、免許外指導の縮小や特別支援教育の充実を図るとともに、非常時でも途切れない教育体制の実現に向けたICT機器整備を進める。

 また、令和のスタンダートとしての新しい時代の学びの環境における少人数によるきめ細かな指導体制の計画的な整備について検討する。

・在外教育施設派遣教師1321人→1460人+事項要求

▽高度グローバル人材の育成支援

 在外教育施設が所在する環境を生かし、児童生徒や教師のグローバルな能力獲得を支援するため、在外教育施設を高度グローバル人材育成の拠点とする取組を進めるとともに、若手英語教師等の派遣増に取り組む。

 また、新たな在外教育施設の在り方・機能強化の方向性について有識者会議を設置し検討を行う。

【生涯にわたる学びの推進】

 人生100年時代や技術革新の進展等を見据え、社会のニーズに対応したリカレント教育の基盤整備や学びを支える専門人材の育成、産学連携による実践的なプログラムの拡充等による出口一体型リカレント教育を推進することによって、誰もがいくつになっても新たなチャレンジができる社会を構築する。

 また、地域の中核的人材育成拠点となる専修学校を引き続き支援するとともに、特に、新型コロナウイルス感染症の影響を踏まえ、自宅学習などの環境下においても実践的な職業教育の質を落とすことなく提供できるようにする。

▼リカレント教育の推進

▽大学等における価値創造人材育成拠点の形成=1億4500万円(新規)

 Society5・0の到来等、変化が激しく不確実性の高まる時代において、機械やAIでは代替できない創造性・感性・デザイン性・企画力など、社会人が新たな価値を創造する力を育成する必要がある。

 そのため、成長戦略実行計画2020等も踏まえ、大学などにおいて創造的な発想をビジネス等につなぐ教育プログラムの開発や拠点を形成し、わが国の国際競争力の向上や生産性の向上に資する組織と人の変革を進める。

▼専修学校の人材養成機能の充実・強化

▽専修学校における先端技術利活用実証研究=7億500万円

 専修学校教育における職業人材の養成機能を強化・充実するため、産学が連携し実践的な職業教育を支える実習授業等においてVR・ARなどの先端技術の活用方策について実証・研究するとともに、新型コロナウイルス感染症の影響下等、遠隔教育をソフト面から支えるモデルを開発し、新たな教育手法の普及促進を図る。

▽専修学校留学生の学びの支援推進事業=3億2200万円(新規)

 新型コロナウイルスの感染拡大を契機として、入国が困難な留学生等のため、母国で主にオンラインを通じて学習するためのコンテンツ開発や学修サポート体制を構築するとともに、現地の教育機関などとも連携し、母国での学修を評価し、来日以後の残りの学修、就職支援までをトータルパッケージで支援するモデルを構築する。

▽専門学校と高校の有機的連携プログラムの開発・実証(専修学校による地域産業中核的人材養成事業の新規メニューとして実施)=4億2100万円(新規)

 これからの時代を担う地域の中核的な職業人材を養成するため、専門学校と高校、教委等の行政および企業が協働で、職業に関する意識のかん養や早期から育成すべき基礎的素養を高校段階で養成し、社会的ニーズに応じた専門的な職業教育を専門学校において実施する高・専一貫の教育プログラムを開発するモデルを構築する。

【地域における学びの推進】

 学校を核とした地域力強化のための仕組みづくりなどを推進するため、地方の活性化につながる多様な取組を展開することによって、まち全体で地域の将来を担う子どもたちの育成、地方創生の実現を図る。

 また、新型コロナウイルス感染症の影響によって、本物にふれるなどの自然体験活動の機会の減少や格差が課題となっていることを踏まえ、新しい生活様式に沿った学び・体験機会の充実等を図るため、青少年教育団体が実施する自然体験活動を支援する。

 さらに、集団登校中の児童生徒が巻き込まれる交通事故、襲撃事件の発生など学校安全の確保に関する課題に着実に対応するため、警察や地域と連携し登下校時の安全確保に取り組む。

▼学校・家庭・地域の連携・協働

▽学校を核とした地域力強化プラン=95億4000万円

 学校を核とした地域力強化の仕組みづくりや地域の活性化に直結する施策等を地域の特色に応じて組み合わせて推進する。

・地域と学校の連携・協働体制構築事業

 社会に開かれた教育課程の実現に向けた基盤となる体制の構築を支援するために、コミュニティ・スクール(学校運営協議会制度)と地域学校協働活動を一体的に推進し、社会全体の教育力の向上および地域の活性化を図る。

 また、新型コロナウイルス感染症の影響を踏まえて、オンラインによる活動や感染症予防対策に必要な物品等の経費を支援する。

・地域における家庭教育支援基盤構築事業

 地域人材の養成や家庭教育支援チームの組織化など家庭教育支援体制の構築、保護者への学習機会の提供や相談対応・情報提供に加え、児童虐待への対応を含む支援員等に対する研修の強化、保護者に寄り添うアウトリーチ型支援の実施など地域における家庭教育支援の取組を推進する。

・地域ぐるみの学校安全体制整備推進事業=3億3800万円

 地域ぐるみで見守り活動を行う体制を整備し、子どもの安全を確保する。

 すべての自治体でスクールガード・リーダーの専門的助言に基づく見守り活動が行われるよう人員を増員する(4000人)とともに、スクールガード・リーダーの装備品を充実する。

▼子どもの体験活動の推進

▽体験活動等を通じた青少年自立支援プロジェクト=2億6000万円

 新しい生活様式に沿った体験活動の機会や場を充実させるための事業を実施するとともに、体験活動に関する普及啓発や調査研究、民間企業が実施する優れた取組に対しての顕彰事業を実施することによって、社会全体で体験活動を通じた青少年の自立支援をより一層促進する。

▼学校安全の着実な推進

▽学校安全推進事業=2億4400万円

 セーフティプロモーションスクール等の先進事例を参考とするなどして、実践的な安全教育、学校安全の組織的取組、外部専門家の活用を図るとともに、安全教育の推進に関する調査研究を実施する。

 また、都道府県などにおける教職員等への研修の支援や小学校新1年生向けリーフレットを作成・配布する。

【共に生きる学びの推進】

 女性の活躍推進等を図るため、多様な年代に対する学び直しを通じたキャリア形成支援に取り組む。さらに、性犯罪・性暴力対策の強化の方針を踏まえ、関係府省とも連携して、生命の尊さ・命を大切にする教育、自分や相手、一人ひとりを尊重する教育を推進し、子どもたちを性暴力の加害者・被害者・傍観者にさせないための教育・啓発活動を実施する

 また、国籍の違いや障がいの有無等にかかわらず、安全・安心に暮らせる共生社会の実現を目的として、障がい者の学びの支援や外国人児童生徒教育等に関する施策を推進する。

▼女性の活躍推進等のための環境整備

▽女性の多様なチャレンジに寄り添う学びと社会参画支援事業=3400万円

 多様な年代の女性の社会参画を推進するため、関係機関との連携のもと、キャリアアップやキャリアチェンジ等に向けた意識醸成や相談体制の充実を含め、学習プログラムの開発など、女性の多様なチャレンジを総合的に支援するモデルの開発や普及啓発を行う。

▽子どもを性犯罪等の当事者にしないための安全教育推進事業=4600万円(新規)

 性犯罪・性暴力対策の強化の方針を踏まえ、関係省庁や民間団体の協力のもと、新たに性被害の未然防止を目的とした予防啓発教材を活用した指導モデルの開発および男女の尊重や自分を大事にすることの理解、固定的性別役割分担意識解消の理解を深める教育プログラムを開発し、普及を図る。

▼障がい者の生涯学習の推進

▽学校卒業後における障がい者の学びの支援に関する実践研究事業=1億6300万円

 学校卒業後の障がい者の学習機会の継続的・自立的な確保のため、都道府県を中心とした地域コンソーシアム形成による持続可能な生涯学習支援体制を構築するとともに、新たに市区町村を主体とした生涯学習プログラムを開発・実施し、多様な学びの場の拡充に取り組む。

 その上で、成果普及や担い手育成のためにブロック別コンファレンス・フォーラム等を実施する。

▼外国人児童生徒等への教育の推進

▽共生社会の実現に向けた帰国・外国人児童生徒等教育の推進支援=12億8300万円

 外国人の子どもの就学状況の把握・就学の促進を図るとともに、学校における日本語指導体制の充実や、高校における日本語指導の充実に向けた指導資料の作成、日本語担当教師等の資質向上を図るための履修証明プログラムの構築、外国人児童生徒等の集住・散在地域それぞれにおける課題を解決する先進的なプログラムの開発等、多様な取組を通じた支援によって外国人の子どもなどに対して適切な教育機会の確保を図る。

【全国学力・学習状況調査のCBT化に向けた取組】

 全国学力・学習状況調査は、義務教育の機会均等とその水準の維持向上の観点から、全国的な児童生徒の学力や学習状況を把握・分析し、教育施策の成果と課題を検証し、その改善を図るとともに、学校における児童生徒への教育指導の充実や学習状況の改善等に役立て、さらに、そのような取組を通じて、教育に関する継続的な検証改善サイクルを確立することを目的として実施している。

 GIGAスクール構想やPISA等の国際的な学力調査のCBT(コンピュータ使用型調査)による実施の流れを踏まえ、全国学力・学習状況調査のCBT化について専門的・技術的な観点から検討を行い、小規模からの試行・検証や問題開発等に取り組む。

▼全国学力・学習状況調査のCBT化に向けた取組=5億8000万円(新規)

 全国学力・学習状況調査のCBT化に向けて、全国的な学力調査のCBT化検討ワーキンググループの中間まとめ「論点整理」を踏まえ、国立教育政策研究所と連携し、小規模からの試行・検証や問題開発等に取り組む。

▽全国学力・学習状況調査のCBT化に向けた試行・検証=8000万円

▽CBT問題開発・測定・評価等に関する調査研究(国立教育政策研究所)=5億円

(国 2020-10-22付)

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