道議会質疑 一般質問(令和2年9月18日)
(道議会 2020-11-26付)

【Q 質問Question A 答弁Answer P 指摘Point out O 意見Opinion D 要望Demand】

【質問者】

▼安住太伸議員(自民党・道民会議)

▼寺島信寿議員(公明党)

【答弁者】

▼鈴木直道知事

▼小玉俊宏教育長

◆学校図書館の役割について

Q安住議員 コロナは、子どもたちの生活に様々な影を落とした。人間という漢字が示すとおり、人は、人との触れ合い、間にあって、初めて人足り得ると思う。その人としての大切な成長段階で、人との接触を禁じられ、ときにぶつかり合うほどに、友達同士、触れ合って磨き合う関係性を絶たれた子どもたちのことを思うと胸が痛む。

 一方で、コロナは、これまで遅れぎみだったわが国の教育現場におけるICT活用環境を、飛躍的に改善しようともしている。しかし、そうした変化が、結果的に子どもたちの生身の人間としてのリアルな関係形成を阻害し、加えて、読書離れを招いてしまわないか心配でならない。

 本を手に取り読書に浸る時間は、時空を超えて、人が織りなす、ときに滑稽な、ときに悲壮な、ときにいとおしいばかりの人間模様へといざなう。情操を育み、思考をめぐらせ、生きる上での知恵を子どもたちが自らの血肉とするのに、これほどふさわしい教材はなかろうとさえ思う。

 また、ICT技術の発展と情報化社会の進行は、子どもたちをネット社会の闇へとも引き寄せてしまった。押し寄せ、あふれ返る情報の波間から、子どもたちが真に意味ある情報を選び出し、読み解き、また、発信側にあっても、人として大切なことを心に留め、情報のその大海で溺れてしまわないために、こんな時代だからこそ、学校図書館が果たす役割は極めて大きいと考える。

 しかし、本道の学校図書館が司書教諭の発令、学校司書の配置、図書標準の達成率のいずれにおいても、全国平均を大きく下回り、平均にたどり着く見通しすら立っていない。

 ウイズコロナ時代における学校図書館の役割をどうとらえ、どのようにその使命を果たしていくのか、所見を伺う。

A小玉教育長 激動の時代を心豊かに生き抜く力の育成に関し、学校図書館の役割などについて。学校図書館は、児童生徒が自ら学ぶ学習情報センターと、豊かな感性と情操を育む読書センターとしての機能を有し、子どもたちの言語能力、情報活用能力などの育成を支える重要な役割があるものと認識している。

 そのため、コロナ禍にあっても、学校図書館については、国のガイドライン等に示されている新型コロナウイルス感染症の防止対策を講じた上で、閲覧、貸出しなどの機能の維持継続に取り組んでいる。

 一方、本道においては、学校図書館の図書の冊数が標準を著しく下回る市町村があるなど、必ずしも十分とは言えない状況にあり、道教委では、これまで、学校図書館の活用や環境の整備についての研修を実施してきた。

 今後とも、子どもたちの読書活動を推進するため、資料の整備や授業での効果的な活用に資する道内外の先進事例を紹介するほか、市町村教委と地域との連携による図書館機能の充実を促すなどして、学校図書館の環境整備に一層努めていく。

◆多様な経験のある人材活用

Q安住議員 コロナがもたらした生身の人間としての関係形成の阻害ということでは、直接的な人と人とのかかわりがより希薄化することで、これまで以上に、ひきこもり、いじめなど、心に闇を抱える子どもたちが増えているのではないか危惧している。

 家族にも打ち明けられず、一人苦しみ、中には、命を絶つまで追い込まれていく子どもたちを、その深いふちから救い出し、少しでも抱える苦しみを取り除いてあげたいと思わずにはいられない。

 先日、定年を機に、極貧生活の中で、将来に希望のかけらすらもつこともかなわないようなアジア辺境の地で、現地を巻き込み、現地の人たちと共に学校をつくり、日本の学校との相互交流を15年以上にわたり続けている谷川洋さんの話を伺った。

 谷川さんがアジア中を駆け巡り、山奥に現地との共同でつくり上げた小・中・高校の数は、実に300校以上。もし、この人の話を本道の子どもたちにも届ける機会をつくることができたなら、子どもたちの心の闇にも一条の光が届くかもしれないとの思いを強く抱いた。

 同じアジアの隣国で、同じような年の子どもたちが飢えで亡くなっていく現実、どんなに学びたくとも、家庭や地域の様々な事情の中で、学べない子どもたちが大勢いる村に学校ができるということの意味。谷川さんの話を伺い、その取組にかかわる機会をぜひ、子どもたちのためはもちろん、心に重荷を抱える多くの皆さんに届けることは、この激動の時代を心豊かに生き抜く力を育む一助になるのではないかと思う。

 谷川さんのような多様な経験を有する人材の活用について、教育長としての考えを伺いたい。

A小玉教育長 多様な経験を有する外部人材の活用について。本道の未来を担う子どもたちが互いに尊重し、共に支え合い、社会の一員として健やかに成長していくためには、様々な人とのかかわり合いや体験を通して、社会への貢献や命を大切にする心、思いやりの心を育むことが重要であると認識している。

 道教委では、これまで、スポーツ選手や芸術家など、道内外で活躍する著名人を講師として学校に派遣し、目標に向かって努力することや家族などの支えに感謝することなどについて、実体験に基づいて子どもたちに分かりやすく語っていただく機会等を通して、豊かな心を育む、子どもの心に響く道徳教育推進事業に取り組んできた。

 今後とも、子どもたちが多様な価値観にふれ、よりよく生きることについて考える機会を一層充実させることによって、コロナ禍にあっても、子ども一人ひとりが夢や希望をもって、たくましく生きていく力を育む教育の充実に努めていく。

◆ウポポイの活用促進等

Q寺島議員 いまだ新型コロナウイルスの収束が見通せず、ウポポイの入場者数にも制限がある状況下においては、入場者数にこだわるよりも、訪れていただく人たちにアイヌの歴史や文化への理解をより深めてもらうことが重要と考える。

 開業から2ヵ月を迎えての受け止めと、現下の状況において、アイヌの歴史、文化への理解促進に今後どのように取り組むのか、所見を伺う。

A鈴木知事 ウポポイの活用などについて。ウポポイは、わが国の貴重なアイヌ文化を復興、発展するためのナショナルセンターとして、アイヌの人たちに関する幅広い理解の促進に向け、重要な役割が期待をされている。

 7月の開業後は、予約制の導入など、感染症対策を講じる中、博物館では、予約の上限に達する時間帯が多くみられるほか、教育旅行の予約も好調に推移しているなど、アイヌ文化の学びの場として活用が進みつつあると認識している。

 道としては、今後とも、ウポポイの多彩な展示やプログラムはもとより、道内各地域の特色あるアイヌ文化の魅力について、様々な媒体や機会を活用し、情報発信を行うなど、国やアイヌ民族文化財団とも連携し、アイヌの歴史や文化について、正しい知識の共有や理解の促進に向けて取り組んでいく。

◆教育におけるICTの活用

Q寺島議員 新型コロナウイルス感染症の影響で、全国的に臨時休業が長期化する中、子どもたちの学びを保障するため、オンラインによる家庭学習を支援した学校がある一方、学校や家庭の通信環境が整っていないなどの理由から、十分取り組むことができなかったケースもあると承知している。

 こうした状況を受け、国は、GIGAスクール構想を加速し、本年度中に小・中学校等での1人1台端末が整備される見通しとなり、今後は、各学校において、ICT環境を有効に活用し、子どもたちの学びを一層充実させていくことが必要になるものと考える。

 現状において、各学校では、必ずしもICT活用の経験が豊富な教員ばかりとは言えないものと考えるが、教育においてICTを活用する重要性についての認識を伺うとともに、広域な本道において、様々な学校がある中、どのように効果的な教育を普及させていく考えなのか、所見を伺う。

A小玉教育長 教育におけるICTの活用について。本年度、小学校から順次実施される新学習指導要領において、情報活用能力が学習の基盤となる資質・能力に位置付けられるとともに、子どもたち一人ひとりの教育的ニーズや理解度に応じたきめ細かな指導に向けた授業改善を推進する観点から、ICTを適切に活用した学習活動の充実を図ることが求められている。各学校において、コンピューターや情報通信ネットワークなどの情報手段を積極的に活用することが重要となっていると考えている。

 現時点では、各学校のICT環境が十分に整っていないことや、教員の情報通信ツールの利用経験が少ないことなどの課題があることから、道教委としては、ICT機器などハード面の整備と並行し、教員等のための研修を本年度から実施するとともに、学年や教科の特性に応じた授業モデルを作成、普及するなどして、教員一人ひとりのスキルを高め、本道のすべての学校において、子どもたちの学びの質を高められるよう取り組んでいく。

(道議会 2020-11-26付)

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