函館市4年度教育行政執行方針 小学校に学習補助員配置 ICT支援員派遣機関設置(市町村 2022-03-02付)
辻教育長
【函館発】函館市教委の辻俊行教育長は、2月25日開会の第1回定例市議会で4年度教育行政執行方針を説明した。小学校では日常的な学習や生徒指導を補助する非常勤講師を新たに配置。中学校では学びの充実に向け、デジタルAIドリルを導入するとした。また、教員の研修やICT支援員の派遣を行うサポートセンターを設置する方針を示した。世界文化遺産「北海道・北東北の縄文遺跡群」では、登録1周年の記念事業に取り組むとともに、垣ノ島遺跡におけるAIコンテンツの運用に取り組む。
執行方針の概要はつぎのとおり。
▼変化する社会を生きる力の育成
子ども一人ひとりが、変化する社会の中で主体的に生き抜くことができるよう、確かな学力、豊かな心、健やかな体を育むことが重要。
各校においては、1人に1台整備した学習用端末を最大限活用しながら、きめ細かな支援を行うことによって主体的・対話的で深い学びの実現に向けた授業改善に取り組む。
小学校においては、少人数指導の充実や教科担任制の導入を推進するため、算数科および理科の非常勤講師を配置する。
円滑な学級運営を行うことが困難となっている小学校に対し、児童が落ち着いた環境で学ぶことができるよう、日常的な学習指導や生徒指導を補助する非常勤講師を新たに配置する。
中学校においては、免許外指導の改善を図るため非常勤講師を配置する。
外国語教育については、外国語指導助手や外国語活動サポーターの活用、教員研修の実施によって充実を図る。
学習用端末を活用した学びを充実するため、各教室に整備する大型ディスプレイの効果的な運用に努めるほか、児童生徒の習熟の程度に応じた学習を充実するため、中学校の全学年、全生徒を対象にデジタルAIドリルを導入する。
導入したICT機器などの機能を最大限学びに生かすことができるよう、教員の研修や専門的な技術を有する支援員の派遣などを行うサポートセンターを設置する。
学校図書館については、引き続き、学校司書を配置し、読書環境の整備や読書活動の充実を図る。
特別支援教育については、児童生徒や保護者の多様化するニーズに対応するため、小・中学校に配置する支援員を増員するとともに、巡回指導員やサポートチームを活用し、学校全体で支援する体制を充実させる。
通級指導教室を活用し、通常の学級に在籍する心身に軽度の障がいのある児童生徒一人ひとりに対応した支援を行う。
いじめの問題については、いじめ防止対策審議会における審議を踏まえながら、学校、家庭、地域、関係機関などと緊密に連携し、いじめはどの学校にも誰にでも起こり得るものとの認識に立ち、ネット上のいじめも含め、未然防止と早期発見、早期対応に組織的に取り組む。
不登校対応については、不登校児童生徒の状態やニーズに応じて、学校内外において、ICTを活用した計画的な学習活動を行えるよう支援の充実に取り組むとともに、適応指導教室および相談指導学級における支援や、フリースクールなどとの連携を推進するほか、保護者等への支援・相談を行うスクールソーシャルワーカーの活用によって、児童生徒が抱える諸問題の解決に向けて組織的に取り組む。
日本語指導を必要とする児童生徒に対しては、個別に指導を行う支援者を派遣する。
コロナ禍で様々な制約を受けてきた児童生徒の心のケアに努めるとともに、複雑化・多様化する個々の問題への対応を図るため、教員の研修の充実やこころの相談員など専門職員の資質・能力の向上に取り組む。
いじめや不登校、特別な支援を必要とする児童生徒や保護者等に対する総合的な相談体制の整備に向けた調査・研究に取り組む。
児童生徒一人ひとりが自分を大切にするとともに、多様性を認め合い他者を尊重することができるよう、がん教育や命を守る教育、性に関する教育などを実施する。
学校給食については、学校給食基本方針に基づき、より安全で安心な給食を提供するため、衛生管理をさらに徹底するとともに、郷土の食材や食文化への関心を高めるため函館産や近郊産の農水産物の使用に努めるほか、計画的に学校給食設備の更新を進める。
学校における防災・安全については、新型コロナウイルス感染症対応マニュアルに基づき、感染症の拡大防止に向けた対策を講じるとともに、地域や学校の実態に即した実効性のある危機管理マニュアルに基づき、地震や津波等の発生時に適切に対応できるよう備える。
児童生徒の通学の安全確保については、地域や家庭、関係機関と連携し、通学路の見守り活動や点検・整備を行うとともに、児童生徒の通学のあり方の検討を進める。
就学援助については、生活保護基準の引き下げの影響を受けないよう支援していくほか、事務手続きの簡素化を図る。
▼地域とともにある学校づくりの推進
学校と家庭や地域が一体となって子どもを育むとともに、教職員一人ひとりが個性・能力を十分に発揮できる学校づくりを推進することが重要。
全ての市立学校に導入したコミュニティ・スクールを通じて、保護者や地域と連携しながら地域の良さを生かした様々な取組を推進するとともに、地域と学校をつなぐパイプ役としての地域コーディネーターの配置を拡充し、地域学校協働活動の充実を図る。
幼児教育から小学校教育、小学校教育から中学校教育への円滑な接続のため、教職員や園児児童生徒の交流、就学・進学に向けた情報共有、校区を同じくする小・中学校における目指す子ども像の共有などに取り組む。
学校における働き方改革については、校務支援システムを活用した校務の情報化を推進するほか、外部人材の配置など学校運営体制の充実を図ることなどによって、組織としての業務改善を進め、教員と児童生徒が向き合う時間の確保に努める。
部活動については、地域の実情に合わせた持続可能な在り方の検討を進める。
教職員の資質・能力の向上については、南北海道教育センターの研修内容を充実するとともに、指導主事らが学校からの要望に応じて行う訪問研修を実施する。
学校再編については、ことし4月、銭亀沢小学校と南茅部小学校を開校する。
5年4月開校予定の南茅部中学校については、校舎の新築工事など準備を進めていく。
学校施設については、施設の改修や修繕等による学校環境の充実に努める。
市立函館高校については、進学重視型の普通科単位制高校として、創意ある教育課程を編成し、地域に学び、地域で学ぶ函館学を実施するなど、魅力ある高校づくりを推進する。
▼函館への愛着や誇りと未来へ飛躍する力の育成
子ども一人ひとりが、函館の魅力を感じ、関わりを深め、愛着や誇りを持つとともに、未来に向かって新たな価値を生み出す資質・能力を育むことが重要。
小学校において、デジタル化した社会科副読本を活用するほか、昨年7月に世界文化遺産に登録された垣ノ島遺跡や大船遺跡、縄文文化交流センターを見学するなどの郷土学習を実施し、函館の歴史や文化、自然など、函館の良さを感じることのできる教育活動を推進する。
豊かな国際感覚やコミュニケーション能力を育むため、外国語指導助手を活用した教育活動の充実を図るほか、市立函館高校の生徒を対象とした海外留学事業を実施する。
望ましい職業観・勤労観などを身に付けることを目指すキャリア教育の充実を図る。
▼生きがいを創り出す生涯学習の推進
市民一人ひとりが生涯を通じて学び続け、その成果を生かし、充実した生活を送ることができる生涯学習の推進が重要。
このため、行政や民間団体、高等教育機関等で実施している様々な講座などの情報を提供する学習情報誌『まなびっと広場』を発行するほか、亀田交流プラザなどの施設において市民の生涯にわたる学習活動の場を提供する。
PTAなどと連携を図り、家庭における教育や子育てに関するセミナーを開催するなど、家庭教育の支援に努めるほか、高齢者が楽しみながら知識や教養を身に付け、仲間づくりを通して生きがいのある生活を実現できる学習の場を提供する。
学校開放については、文化・社会教育・スポーツ活動の場として、特別教室などを開放するほか、子どもや地域住民の読書活動の場として学校図書館の地域開放に努める。
▼心の豊かさを育む文化芸術の振興
文化芸術や文化遺産に触れる機会を充実させ、市民一人ひとりが創造性を高め、感性を豊かにすることができる文化芸術の振興が重要。
青少年の優れた作品などの発表の機会である青少年芸術教育奨励事業や、小・中学校に芸術家等を派遣して児童生徒が文化芸術に触れる場を提供する文化芸術アウトリーチ事業などを実施する。
はこだてカルチャーナイト、はこだて国際民俗芸術祭などの市民の自主的な文化活動を支援するほか、関係団体と連携して市民文化祭を開催する。
市民会館や芸術ホールなどの施設において、市民の文化芸術活動の促進を図っていく。
文化財の保存・活用については、引き続き、五稜郭跡の堀の石垣改修に取り組むとともに、函館ハリストス正教会復活聖堂、遺愛学院本館および大谷派本願寺函館別院の保存修理費用を助成する。
世界文化遺産「北海道・北東北の縄文遺跡群」の登録一周年の記念事業に取り組むほか、垣ノ島遺跡においては、最新のデジタル技術を活用したコンテンツの運用のほか、臨時駐車場の確保やシャトルバスの運行、大船遺跡においては、駐車場の整備に向けた取組を図るなど、遺跡の活用および受け入れ体制の充実に努める。
博物館については、常設展に加え、企画展を開催するなど、市民や観光客が函館の歴史への理解を深める取組を推進するほか、西部地区における総合ミュージアムの整備について検討を進める。
▼健やかな心身を育むスポーツの振興
市民一人ひとりが健康づくりとスポーツを通じて、体と心を鍛えることができるスポーツの振興を図ることが重要。
このため、各種スポーツ教室の開催などによって健康づくりとスポーツへの関心を高めるとともに、子どもがスポーツに参加する機会を充実させ、市民だれもがそれぞれの体力や年齢などに応じて参加できるスポーツ・レクリエーション活動の推進を図る。
東京2020オリンピック競技大会から新たに正式種目に採用されたスケートボードやスポーツクライミングについて、イベント開催などを通じ、市民ニーズや競技人口等を把握する。
5年度に北海道開催が予定されている全国高校総合体育大会については、本市において実施されるハンドボールと自転車競技の開催準備を進める。
函館マラソンについては、関係団体と連携し、3年ぶりの開催を目指す。
市スポーツ協会や各種スポーツ団体などと連携し、競技大会の開催やスポーツ合宿および大会の誘致に取り組み、競技人口の拡大や競技力の向上に努めるほか、フットサルやバレーボールなどのプロスポーツイベントの開催など、市民のスポーツへの関心を高める。
4月に千代台公園庭球場に増設したテニスコート8面をオープンするほか、根崎公園ラグビー場の改修など、スポーツ施設の整備を進める。
(市町村 2022-03-02付)
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