５学年以上に完全教科担任制を導入　“９年間の教育”意識定着　帯広大空学園　子の実態共有

（市町村 2023-02-14付）

５学年社会科授業を行う中学校教諭

　【帯広発】小学校高学年を対象とした教科担任制導入が本格化する中、帯広市立大空学園義務教育学校（村松正仁校長）は５学年以上に完全教科担任制を導入している。小・中学校教員の特長や主体性を生かした配置や専科教員加配を有効活用し、教員の意欲を高める取組を推進。教材の分析・研究に集中する時間や、教職員間で子どもの様子を共有する機会が増し、小中の垣根を越えた“９年間の義務教育”という意識が根付いている。

　国は本年度から、小学校高学年における教科担任制を本格導入。外国語・理科・算数・体育を対象に、専科指導の充実を目指している。

　大空学園は４・３・２制で学年を分け、５学年以上に完全教科担任制を導入した。一般的な義務教育学校をみると、５学年から段階的に一部教科担任制を導入している。同校ではこれを前倒しし、３・４学年から外国語活動・体育・音楽などの教科を中学校教諭が担当する。村松校長は「近年、子どもの精神的な成長が早まっている。施設一体型の教育環境を生かし、小中における教育環境の変化を埋めるだけではなく、成長進度に合わせた学びを提供したい」と、その意図を明かす。

　５～７学年には、小学校教諭と中学校教諭を配置。中学校教員免許を有する小学校教諭は当該科目を担当し、取得していない場合は得意な科目や希望の科目を受け持つなど、教員の特長や自主性を最大限生かすべく、担当科目を調整した。

　道教委による理科専科の教員加配申請がかなったことも大きい。３・４・６学年理科に配置することで、５学年以上の全教科の担当教諭配置を実現した。村松校長は「通常の教員定数では、現行の教科担任制は難しかった」と話す。

　開校１年前、新たな試みを聞いた旧大空中学校の教諭は「児童の様子や小学校の学習が想像できず不安を感じていた」と振り返る。指導体制の劇的な変化に「児童に対するきめ細かな見取りができないのでは」と困惑する小学校教諭もいたという。

　導入後、各教員から意識の変化が見える。６学年国語を担当する小学校教諭は「空きコマで教材の分析・研究を行うことができる」と、教科担任制の利点を実感する。校内の教科部会で、中学校教諭から定期テストの作成方法に関する助言を受ける機会もあり「身に付けてほしい資質・能力に合わせて、定期テストを作成することができた」と話す。「子どもの言動や様子の変化などを教職員間で共有する機会が増えた」ことも、大きな成果と言える。

　社会科を担当する中学校教諭は「５・６学年の段階から、中学校の分野を意識した授業づくりができる」と、連続性のある学びへの手応えを口にする。

　また、管理職４人が授業を見回り、教職員・児童生徒の様子を確認。必要に応じて声をかけるフォロー体制も欠かさない。

　昨年８月に実施した第１回学校評価では、教科担任制を肯定的に受け止める児童生徒が９割を超えた。１１月に行った教職員対象のアンケートでは「専門性・技術を高めたい」「日々の仕事にやりがいを感じる」など肯定的な回答が相次いだ。

　村松校長は「小学校・中学校というくくりではなく、“９年間の義務教育”という意識が教職員に醸成されてきている」と実感する。施設一体型の利点を生かし、小学校教諭・中学校教諭の垣根を越えた、義務教育学校としての人材育成を目指す。

(市町村 2023-02-14付)