苫小牧市5年度教育行政執行方針 CS全小中学校に導入 学びの伴走者として授業改善
(市町村 2023-02-24付)

苫小牧市福原功
福原教育長

 【苫小牧発】苫小牧市教委の福原功教育長は16日、市議会定例会で5年度教育行政執行方針を説明した。コミュニティ・スクールの全小・中学校等への導入の意向を示したほか、市内3ヵ所目の適応指導教室となる山なみ学級の開設とともに、ICT機器を活用した支援など「登校することのみを目標にするのではなく、社会的自立を目指すための取組を進めていく」との考えを示した。また、各学校のゼロカーボンシティを目指す取組を促進することや、全ての教員が「焦点化・イメージ化・視覚化を意識し、学びの伴走者として授業改善に努めていく」ことを述べた。

 執行方針の概要はつぎのとおり。

はじめに

 「子どもたちが希望を持って生きるために必要なことは何か」。激動する予測不能な時代にあっても、希望を持ってたくましく生きる大人になってほしい。

 郷土の誇りを胸にグローバルな視点を持ち、どのような世界でも自分らしく輝いていてほしい。

 先行きの見えない不安に覆われたコロナ禍の3年間を乗り越えて、新しい学校生活を子どもたちと共に考え、社会全体で支え、創造する、未来に向かう1年にしたいという強い決意を持って、教育行政を推進する。

方針1 社会で生きる学びの推進

▼確かな学力の育成

 子どもたちが主体的・対話的に深く学んでいくために、全ての教員が共通取組事項である「焦点化・イメージ化・視覚化」を意識し、学びの伴走者として授業改善に努めていく。

 また、家庭と学校をつなぐ情報紙「ほーむ&すくーる」による情報発信や「親子読書」強調月間の設定など、子どもたちの望ましい生活習慣、読書習慣、学習習慣の定着に向けた取組を家庭・地域と連携し推進していく。

▼これからの時代に求められる資質・能力の育成

 1人1台のタブレット端末導入3年目として、子どもたちが効果的にICT機器を活用し、個別最適な学びと協働的な学びを一体的に充実させた授業を実施するために、教員のICT活用指導力が持続的に向上される体制づくりに努めていく。

 また、小学校段階から外国語指導助手(ALT)と継続した英語教育を進めることを通して、英語を用いて基本的なコミュニケーションが取れる児童生徒を育成するとともに、わが国の文化や英語の背景にある文化に対する興味を高めるなど国際理解教育を推進していく。

▼多様な価値を尊重する豊かな心の育成

 教育活動全体を通して、自立した人間として、多様な他者と共により良く生きるための基盤となる道徳性を養う教育を推進していく。

 また、全ての子どもたちが「いじめは絶対に許さない」という意識を持ち、望ましい人間関係を構築するなど、いじめの未然防止に向けた主体的な取組の充実を図っていく。

 さらに、男女混合名簿の活用などジェンダー平等に向けた新しい教育環境についての協議を進めていく。

▼体力向上・健康教育の充実

 全ての子どもたちが、発達段階に応じた体力・運動能力の向上に向けた目標を持ち、いつでもどこでも楽しく運動できる機会やICTを効果的に活用した体育・保健体育の授業を展開することを通して、運動習慣の定着を図っていく。

 また、テレビやスマートフォン、ゲーム機器等による映像の視聴時間を抑えるなど、健康面への配慮や生活習慣の改善に向けた取組を進めていく。

 学校給食については、地場産物の活用や地域と連携した食育の推進のほか、楽しい給食時間の確保に向け、各校で創意工夫に努めていく。

▼特別支援教育の充実

 特別な支援が必要な子どもやその保護者が、乳幼児期から学齢期、社会参加に至るまで、地域で切れ目のない支援を受けられるよう、個別の教育支援計画を活用するなどして、医療、福祉等、関係機関との連携を強化するとともに、児童生徒一人ひとりの教育的ニーズに応じた「連続性のある多様な学びの場」を提供していく。

 また、全ての教員が障がいの特性を理解した中で、一人ひとりの子どもの実態に応じた指導法などを研修し、専門性のさらなる向上に努めていく。

方針2 学校・家庭・地域の思いをつむぐ体制の確立

▼学校段階間の連携・接続の推進

 児童生徒の発達に応じた系統的な教育活動の充実を図るため、苫小牧型小中連携教育(TomakomaiALL―9)を推進し、学校段階間の接続を意識した教育課程の編成・実施や指導方法の工夫改善を図るとともに、連携を強化していく。

 また、園児の体験入学や交流活動の推進、高校等の特性を理解した進路指導の充実など、学びの連続性を重視し、幼稚園、認定こども園、保育所および高校等と連携・協働していく。

▼不登校児童生徒への支援の充実

 子ども同士の良好な人間関係や子どもと教員との信頼関係が構築され、安心感と充実感が得られる魅力ある学校づくりを推進していく。

 また、不登校児童生徒への支援を拡大するために、市内3ヵ所目の教育支援センター(適応指導教室)として、山なみ学級を開設するほか「不登校児童生徒の支援に関する指針」に基づき、フリースクール等民間施設との連携やICT機器を活用した支援など、登校することのみを目標にするのではなく、不登校児童生徒の社会的自立を目指すための取組を進めていく。

▼学校と地域の連携・協働の推進

 子どもたちの学びを充実させるため、保護者や地域住民が学校運営に参画する「コミュニティ・スクール」を全小・中学校および義務教育学校に導入し、学校と地域が一体となった特色ある取組を推進していく。

 また、地域の自然環境や人材などの教育資源を活用したふるさと苫小牧の特色ある教育を推進するために、地域社会や関係機関等と連携し、多様な教育ニーズに対応した学習活動や体験的な活動を充実させていく。

 特に環境教育については、子どもたちが主体的に考え行動できるよう、各学校でのゼロカーボンシティを目指す取組を促進していく。

 部活動の地域移行については、生徒の活動を中心において、段階的な移行に向けた協議を継続していく。

▼学びのセーフティネットの構築

 子どもたち一人ひとりに対するきめ細かな支援体制の充実のため、スクールカウンセラーやスクールソーシャルワーカーの派遣を通して、学校と福祉、介護、医療等の関係機関の連携強化を図っていく。

 また、学校においてヤングケアラーなど悩みを抱える児童生徒の早期発見・早期対応ができる体制を構築できるよう、教職員への研修の充実に努めていく。

 経済的支援を必要とする家庭に対しては、新たに卒業アルバム代や英検受検費用の補助を追加するなど、就学援助制度の充実を図っていく。

▼教育環境・学校施設・設備の充実

 樽前小学校の改築事業や沼ノ端小学校の大規模改修事業など、老朽化対策による学校施設の安全確保を図るとともに、ウトナイ小学校の増築事業や各校の設備改修などによって、子どもたちの学習環境の向上に努めていく。

 学校規模適正化の取組については、義務教育学校として4月に開校する植苗小中学校の実践を参考にしながら、勇払地区などで、学校規模や地域の実情に合わせた望ましい教育環境を地域と共に考えていく。

 また、通信環境の充実や教職員の校務用パソコンの更新で業務の効率化を図るなど、学校における働き方改革を促進させ、教職員が子どもたちとしっかりと向き合い、やりがいを感じられる環境づくりを推進していく。

方針3 すべての人が学び続け活躍できる社会の実現

▼主体的に生涯学習を続け、郷土の発展を支えるひとづくり

 全ての市民が意欲と目的を持って学び続けるとともに、個々のニーズやライフステージに応じた学習機会の充実のため「セカンドブック事業」や「ナナカマド教室」「障がい者学習支援事業」などの取組を継続していく。

 また、多様化する学習ニーズに対応するため、関係機関等と連携し「出前講座」の充実に努めていく。

 さらに、社会教育の充実を図るため、キャリア教育やボランティア活動など、地域と連携した様々な体験を通して、子どもたちの自立性や社会性を育む環境づくりに努めていく。

▼いつでも、誰とでも学べる環境づくり

 語学、文学など多くの学習グループや生涯学習関連団体、企業等との連携・協働によって、幅広いニーズに対応した学びの場を提供するとともに、大学などの高等教育機関と連携した講座や講演により、質の高い学びを継続できるよう取り組んでいく。

 また、アフターコロナを見据え、学びや交流の場への参加を促すため「生涯学習だより」や「サークルガイド」による情報提供を推進していく。

 中央図書館については、障がい者用図書や電子図書など、蔵書の充実を図るほか、調べる学習コンクールに挑戦する子どもたちを応援する取組や、隣接する出光カルチャーパークを活用して、読書と組み合わせた、ヨガや子どものかけっこ教室を開催するなど、指定管理者と協力し、より利用しやすく居心地の良い図書館を目指していく。

 科学センターについては、宇宙ステーション「ミール」をはじめとした科学展示のほか、天文普及、科学体験事業を継続して実施し、子どもたちの科学に対する興味・関心を育てていく。

 また、市民・学校・関係団体と連携し、生涯にわたり科学を学べる施設として機能充実に努めるとともに、移転改築に向けた検討を進め、老朽化した施設の対策を図っていく。

▼文化・芸術がいつも身近にあるまちづくり

 広く市民が文化芸術に親しめる機会を拡充するため、「PMFオーケストラ演奏会」をはじめとした苫小牧音楽祭や苫小牧出身の脚本家、水谷龍二氏の芝居公演、八王子市姉妹都市締結50周年記念事業「八王子車人形」公演などの鑑賞型事業を開催するとともに、「市民文化祭」や「苫小牧アートフェスティバル」など、文化芸術を通して交流する機会の充実に努めていく。

 美術博物館については、出光興産北海道製油所操業50周年、美術博物館開館10周年記念事業として、出光美術館が所蔵する貴重な日本の近現代の絵画、陶磁器などを紹介する「出光美術館名品選」を開催する。

 また、北海道、北東北を中心とする縄文の文化財と現代美術を紹介する「縄文と現代~共鳴する美のかたち」などの開催を通じて文化芸術に触れ合う機会を創出していく。

むすび

 5年度は、苫小牧市教育大綱を改定し新たなスタートを切る1年となる。

 やさしさや思いやり、命を大切にすることなど「時代を超えても変わらない、生きる上で大切なこと」を守り育むため、そして子どもたちが健やかに成長できるよう私たちもまた時代の変化、社会の動きを敏感に捉えて変わっていかなくてはならない。

 社会全体で育まれる子どもたちが、未知なる時代を切り拓く力を身に付け、また市民一人ひとりが学び続けることを通して、自立の精神と連帯・共生の豊かな心に満ちあふれた人づくりを目指していく。

 「全ては子どもたちのために」。私たちは、全ての市民と共に「未来の社会をつくるひとづくり」の実現に向けて全力を尽くしていく。

(市町村 2023-02-24付)

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