【第1回】教師の自律的成長実現へ テーマ1「新たな研修制度にどう取り組むか」
( 2023-11-22付)

北村特任教授連載
江別市立江別第三中学校の校内研修の様子

1 はじめに

 本連載開始に当たってのインタビュー記事(8月30日付3面)において、多様で複雑な要素が絡み合って生じる学校の様々な問題は、目指すゴールや取り組むプロセスが複数想定されるなど、簡単には解決に至らない特性を有していることを述べました。

 そこで、今回は、このようなことを踏まえ、新たな研修制度への取組について考えていきたいと思います。

 ご承知のとおり中教審、「“令和の日本型学校教育”を担う教師の養成・採用・研修等の在り方について(答申)」(令和4年12月19日、以下「令和4年答申」)において、教師に求められる資質・能力が再定義され「“新たな教師の学びの姿”の実現」と「多様な専門性を有する質の高い教職員集団の形成」の在り方が示されました。

 そして、その実現に向けた新たな研修の在り方が提示されました。端的に言えば、教師も主体的・継続的に学ぶ必要があり、その学びにおいては「個別最適な学び」と「協働的な学び」が求められるということです。

 つまり、これからの研修の大きな方向性は「教師の自律的な成長」をどのように実現するかと言えそうです。

 そして、その実現のためには、自身の関心などに基づいた「個別最適な学び」や「多様な学び」を実現できる環境を整える必要があり、環境を整える上では、日々の実践からの「経験」や「他者から学ぶ」といった「職場の経験」を重視するということです。

 さらに「職場の経験」を学びとするためには「他者との対話や振り返りの機会を確保した“協働的な学び”」が必要であるという構造で整理してみると、断片的な「新たな教師の学びの姿」から、目指す姿とそのための環境整備が一体として構想できそうです。

 今回示した構造化は、あくまでも私見であり、例えば、各学校でこのように構造化してみると、新たな研修制度への取組について、どのようなことが明らかにできるでしょうか。次項では、このことについての試案を述べます。

2 「新たな教師の学びの姿」の実現について

 まず「新たな教師の学びの姿」は、これまでと何が異なり、何が同じなのかということについて考えてみたいと思います。

 中教審「これからの学校教育を担う教員の資質・能力の向上について(答申)」(平成27年12月21日)では、校内研修について「各学校や地域の実態に根差したものであり、日々の科目などにその成果が反映されやすく、教員自身が学びの成果を実感しやすいなど、教員の学ぶモチベーションに沿ったもの」との認識を示しています。

 このことは、教師が主体的に学ぶ意欲を高める活動として評価していると言えます。そこで、まず、先に構造化した内容に基づき、自校の校内研修の在り方を再点検してみてはどうでしょうか。つまり、令和4年答申で提示された抽象概念を行動段階に具体化できるよう、教師個人として、教職員集団として、できていることとできていないことを確認します。

 これにより、自校として「新たな教師の学びの姿」の実現に向けて注力する観点が整理できると考えています。ただし、学校は教職経験が異なる教師の集団であり、当然、経験から得た学びや考え方、関心や困り感等が異なります。従って「新たな教師の学びの姿」についても、一人ひとりの教師の認識は、同じこともあれば異なることもあるでしょう。

 また、概念は同じであっても、具体の行動に落とし込んだ時には、そのレベルに差が生じることも考えられます。

 そこで、このことについて、教師と管理職とで自身の考え方を出し合い、それぞれの認識の同異を共有する場の設定が必要であると考えます。

例えば、教師が「主体的に学ぶ」とはどのようなことか、「個別最適な学び」は、自校の教育活動とどう関連するかなどについて、日々の実践を振り返り、対話を行う場を校内研修に位置付けるということです。

 なお、より良い学校教育を目指すという社会に開かれた教育課程の理念に基づけば「新たな教師の学びの姿」の実現は、学校内でとどまるものではないでしょう。

 地域から期待される姿や多様な職の職員が協働する姿についても、併せて検討することも期待されます。このようなことを踏まえると、何から始めることができるでしょうか。

次回は、本論を踏まえた実践例を紹介します。

最後に、校内研修の機能や役割を確認しておきます。

岸本幸次郎・久高喜行著『教師の力量形成』(1986年、ぎょうせい)では、校内研修について「子どもの期待されるべき成長・発達を促進するために、学校として組織的・継続的に取り組み、教師一人ひとりの職能成長と、集団としての成長を伸長し、かつ、教師集団の協働態勢を促し、さらには学校の経営、組織革新へと結び付く研修活動である」としています。

 つまり、職能の成長という教師個人の成長に資するという面と、集団の協働態勢や学校の組織革新という教職員集団としての成長に資する面があり、それらの成長は、児童生徒の成長や発達に資するということです。この点は「新たな研修制度」に基づき自校の校内研修を再点検する際に示唆的であります。

( 2023-11-22付)