Pick Up2023 第8回 渡島・檜山( 2023-12-19付)
◆渡島西部4町の部活動広域連携
生徒の選択肢確保 最適な方策探る
ことし11月、渡島西部4町と札幌市のスタートアッブ企業㈱BUKARUの部活動広域連携実証事業が始まった。10月の連携協定締結式で4町の教育長らは「子どもたちへより良い選択肢を提供することが自治体の役目」と口をそろえた。
今月9日、福島町立福島中学校を会場に、知内町立知内中学校、松前町立松前中学校の各バスケットボール部員が函館大学の学生と合同練習に汗を流した。部員は男女を合わせて福島中が6人、知内中が14人、松前中が1人。単独では維持するのが難しい状況だ。
生徒の移動に係る課題対応として、町有バスのローテーション運行を試行し、保護者送迎の負担軽減や自治体の予算分割につなげている。福島中で顧問を務める中時雄大教諭は「3校の生徒が家庭や天候等の事情に左右されず活動に参加できるようになる」と期待する。
バスケットボール部の顧問教員は3校いずれも競技経験者。休日の活動参加にも意欲的に取り組む一方で、長期的にみると人事異動に伴い指導経験のない教員が受け持つ可能性もある。
ICT活用など懸念事項も
持続的な部活動には指導者、顧問教員、生徒が円滑なコミュニケーションを行う場も欠かせない。バスの運行状況や活動の練習メニューを共有できるアプリケーションを開発した森田敦社長は「地域移行の課題解決にはICTの活用が不可欠。生徒との私的な連絡調整に配慮が必要な教職員にとっても安心材料では」と話すが、移動に伴うワイファイの使用可能圏域の懸念や個人スマホへのアプリ導入は学校や教員間で不安要素が残るのが実情だ。
自治体の垣根を越えた合同部活動は、過疎化が進む地域の子どもが希望に応じてスポーツや文化的活動に取り組むことができる可能性を高める。各町は子どものニーズ変化によって単独チームが編成できるようになった場合など、持続可能な部活動に向けて様々な課題と向き合っている。
ことし11月の北海道教育の日記念講演会。総合型地域スポーツクラブおにすぽの磯田大治氏は「生徒にとって何が最適かを考えることが大切だ」と訴えた。部活動の地域移行に向けては、どの自治体も“子どもに選択肢を与える環境づくり”という前提を忘れてはならない。
◆今金高養の寄宿舎環境整備
高等養護学校 進む寄宿舎離れ
特別的な支援を要する児童生徒数が増加傾向にある中、郡部の特別支援学校の定員割れが顕著になっている。町村に所在する道立高等養護学校の本年度入学者数は全校で定員割れとなっており、関係者は「厳しい寮生活をイメージし、寄宿舎を敬遠する生徒も少なくない」という。
失敗できる環境で自立心を育む
檜山管内唯一の特別支援学校、今金高等養護学校(飯出広行校長)では道南地域の生徒約40人が共同生活を送る。掃除の役割分担を徹底したり、時には娯楽室でテレビゲームをしたりするなど、和気あいあいと共同生活を楽しむ。
近年は、スマートフォンの利用時間など時代に合ったルール作りを生徒の自治的活動を中心に進め、自立や社会経験を促進する取組を活発化。生徒数の減少で空き部屋が増えたことを逆手に取り、女子寮には1人部屋を設置した。グループホームと同様の生活環境はスマートフォンも自由に利用でき、体調不良時に寄宿舎指導員と連絡を取る上で欠かせないツールとなっている。
鍵の施錠管理や内服薬の処方についても管理職や保護者との合意形成のもと、なるべく生徒で調整できる体制に踏み切った。
寄宿舎指導員の武部ひとみさんは「大人になると直面する生活課題は増える。失敗をカバーできる環境を整え、答えを大人が導き出すのではなく、自分で考えさせることが本来の自立」と力を込める。
国の制度設計必要
寄宿舎を設置する高等支援学校は他都府県では少なく、広大な土地を有する本道ならではの環境だ。地域や学校、寄宿舎が連携し、生徒の自立心を育む環境の構築が進む一方、ワイファイ環境やエアコンなどハード整備に関する課題は残る。
特別支援教育を専門とする檜山教育局の津川周一教育支援課長は「寄宿舎は生徒たちの学習や成長を支える重要な環境」と力を込める。学習の振り返りや体調管理など卒業後の社会参加を見据えた支援の充実には、地域の実態をくみ取った国の支援が不可欠だ。
( 2023-12-19付)