道議会文教委員会(7月9日)の質問・答弁概要
(道議会 2015-09-25付)

 道議会文教委員会(七月九日開催)における吉田祐樹委員(自民党・道民会議)、丸岩浩二委員(自民党・道民会議)の質問、および杉本昭則学校教育監、菅原行彦学校教育局指導担当局長、堀本厚健康・体育課長の答弁の概要はつぎのとおり。

【道総合教育大綱の骨子案】

吉田委員 今回の大綱の骨子案の中で、項目4に「いじめ等への取組の充実の項目」がある。大綱づくりも急務であるが、教育現場では、依然としていじめなどの問題が生じている。ここ数日の報道で、岩手県の中学生がいじめを苦にして自殺したことが伝えられている。伝えられているとおりであるとすれば、関係者の対応に大きな問題があったと考えられる。

 例えば、小学校時代からいじめがあったとのことであるが、そのことが中学校には引き継がれていないこと、担任が連絡ノートなどで生徒からいじめを訴えられていながら、具体的な対応をしていないこと、校内でいじめの対応に関するルールがあったにもかかわらず、担任から校長への報告など、ルールどおりの取組が行われていないこと、保護者への連絡、連携が行われていなかったことなど、多くの問題があったと思う。

 道教委として、この事件をどのように受け止めているのか伺う。

杉本学校教育監 いじめの問題にかかわり、岩手県内の事案について。本道においても、十七年に滝川市の女子児童の自殺という痛ましい事案があり、それを機に、道教委では、このようなことを二度と繰り返さないため、いじめの未然防止、早期発見・早期対応に取り組んできた。

 二十六年には、「道いじめの防止等に関する条例」や「道いじめ防止基本方針」の策定等に取り組んできた。

 報道によると、今回の岩手県内の事案については、学校内での情報共有や組織的な対応等が不十分であったと報じられており、道教委としては、この事案を一つの学校、一つの地域でのことととらえるのではなく、その重大性を踏まえ、すべての教育関係者が連携・協力して、同様の事案の防止に努める必要があると考えている。

 今後、いじめの未然防止、早期発見・早期対応について、特に、校内における情報共有にかかる指導通知を発出するなどして、適切な対応に努めていく考えである。

― 意 見 ―

吉田委員 今回の事件においては、校内において、しっかり情報共有ができていれば、未然に防げた部分もあると思うので、再度、道内においても、徹底していただきたい。

【アレルギー対応について】

丸岩委員 学校におけるアレルギー対応食の対応について、わが会派の同僚議員が昨年十月に文教委員会で議論した。

 その後の市町村および学校における食物アレルギー対応について、順次伺う。

 昨年十月、文教委員会において、道教委に対し、全道の学校給食の調理場の状況についての把握を求めたが、その後、どのような対応を行ってきたのか伺う。

堀本健康・体育課長 給食調理場の状況把握について。道教委では、ことし二月に、学校給食施設を保有している全道の市町村立学校および学校給食共同調理場を対象に、学校給食におけるアレルギー対応食に関する実態と対応状況を把握することを目的として、学校給食を提供している学校数および総提供人数やアレルギー対応食のための調理員の配置状況、アレルギー対応食の調理のための施設設備の整備状況、アレルギー対応食の提供状況などについて調査を行い、五月に結果を取りまとめた。

丸岩委員 施設の設備や人員の配置について、調査結果はどのような状況だったのか伺う。

堀本健康・体育課長 調査結果について。主な調査項目について、その概要を申し上げると、全道五百七十八施設において給食が提供されており、そのうち、アレルギー対応食を提供している調理場は三百五十七施設であった。

 施設・設備の整備状況については、アレルギー専用の調理室または調理スペースがあるとした施設が三十七、ないとした施設は五百四十一となっており、専用の設備、機器があるとした施設は六十八、ないとした施設は五百十となっている。

 また、学校給食調理員の配置状況については、アレルギー対応食を提供している三百五十七施設のうち、対応食を提供するために調理員を増員している施設が十二、増員していない施設は三百四十五となっている。

 さらに、アレルギー対応食を実施している調理場のうち、アレルギー対応食を調理する担当者を決めている施設が三百三十二、決めていない施設が二十五となっており、アレルギー対応食の保存食をすべて採取、保存している施設は百一であるが、二百五十六施設では適切に行われていなかったなどとなっている。

丸岩委員 施設や人員について、とてもその体制が整っているとは言えない状況である。そういったことが認識できるが、この調査結果を踏まえて、道教委として、どのような課題があると分析しているのか伺う。

堀本健康・体育課長 課題について。調査結果から、アレルギー専用の調理室または調理スペースが設けられていないことや、アレルギー専用の設備や調理器具、配食するための専用の容器等が整備されていないこと、アレルギー対応食を調理する学校給食調理員があらかじめ決められていないことなど、食物アレルギー事故の未然防止の観点からみて、求められる要件が必ずしも十分とはなっていない現状が明らかになったものと受け止めている。

 こうした結果となっている要因としては、施設設備等の整備にかかわる財政的な問題が大きなものと考えている。

 また、アレルギー対応食を提供するための条件整備を進めていく意識を高めていくことも課題になっているものと考えており、道教委としても、こうした市町村における意識がより一層高まるよう、指導助言に努めていく。

丸岩委員 ただ今、答弁があった課題意識のもとで、当面の間、どのようなことに取り組むよう、学校や市町村教委に指導したのか伺う。

菅原学校教育局指導担当局長 指導について。道教委では、この調査結果を受け、五月二十九日付で、給食を実施する道立学校および各市町村教育委員会に対し、学校給食におけるアレルギー対応食について通知した。

 その中で、アレルギー対応食担当の調理員を区別化すること、専用の設備・機器を整備すること、アレルギー対応食ごとに専用の調理器具を使用すること、対象児童生徒のアレルギー対応食を個人容器に配食することなど、アレルギー対応食を実施する際の留意点を示し、学校給食を原因とするアレルギー症状を発症させないことを前提として、各学校、調理場の能力や施設設備に応じて、食物アレルギーを有する児童生徒の視点に立ったアレルギー対応食の提供を行う必要がある旨を指導した。

丸岩委員 調理場の現状について伺ってきたが、一方で、市町村や学校を含め、すべての関係者の連携のもとに、アレルギー対応を確実に行っていくためには、国が示すガイドライン、また、道教委が昨年策定した「進め方」などを参考にしながら、それぞれの市町村で指針を策定することが必要と考えられるが、現時点での道内市町村の指針の策定状況を伺う。

堀本健康・体育課長 指針の策定状況について。ことし三月末現在、道内の市町村における指針の策定状況は、百七十九市町村中五十九市町村となっている。

 なお、二十七年度末までに策定予定としている市町村は四十五市町村あるものの、二十八年度以降としている市町村が五市町村、時期未定としている市町村が七十市町村となっている。

丸岩委員 指針の策定件数の報告があったが、全道の三分の一の程度である。その認識、また、実施に対する取組が積極的でないといった現状が分かるが、そういった現状を踏まえながら、国として、各都道府県や市町村によるアレルギー対応の方針、策定等を支援するための資料等を作成し、配布したと聞いている。その内容は、どういったものであったか伺う。

堀本健康・体育課長 国の対応について。ことし三月に、学校における効果的な対応を支援するため、文部科学省からアレルギー疾患対応にかかわる資料が各都道府県および市町村の教育委員会ならびに各学校に対し、送付された。

 その内容としては、学校生活上の留意点や緊急時の対応等を図解入りで簡潔に説明した『学校のアレルギー疾患に対する取組ガイドラインの要約版』、学校給食における食物アレルギー対応の基本的な考え方や留意事項等を具体的に示した「学校給食における食物アレルギー対応方針」、学校におけるアレルギー疾患対応の基本的な考え方やエピペンの正しい使い方を収めた教職員研修用の映像資料などとなっており、これらの資料を参考として、それぞれの立場において主体的にアレルギー対応に取り組むよう通知があった。

丸岩委員 国からは、ガイドラインや対応指針などの資料等が提供されてはいても、今の答弁では、策定の市町村が三分の一に満たない五十九市町村にとどまっているのが現状である。

 道教委として、指針の策定が進んでいない要因について、どのようにとらえているのか。今後の取組についても、併せて伺う。

菅原学校教育局指導担当局長 指針の策定について。文部科学省においては、二十六年三月に、「今後の学校給食における食物アレルギー対応について」の通知を発出し、都道府県および市町村の教育委員会に対して、具体的なアレルギー対応について一定の指針を示すことを求めているが、市町村において策定が進んでいない要因としては、当該通知後における国の具体的な情報提供や道教委における指針の策定を待って検討に着手することとした市町村が多いことが考えられる。

 道教委としては、ことし五月に未策定市町村に対して、参考となるよう作成例を示したが、今後においても、教育局や本庁の職員が直接指導助言を行うなどしながら、策定に向けた、取組の促進に努めていく。

丸岩委員 道教委においては、このたびの調査結果やアレルギー対応にかかわる市町村の指針の策定状況などを踏まえ、児童生徒への安全安心な学校給食の提供に向けて、一層取組を強化すべきだと考える。

 道教委として、今後、学校給食における食物アレルギー対応にどのように取り組んでいくのか伺う。

杉本学校教育監 今後の取組について。食物アレルギーを有する児童生徒が安心して学校生活を送ることができるようにするためには、市町村教委において策定される指針等に基づき、学校、医療、消防機関等の関係者の連携のもとで、適切にアレルギー対応が進められることが重要と考えている。

 このため、道教委としては、市町村教委における指針の策定状況やアレルギー対応食にかかわる施設設備の対応状況等を定期的に把握して、改善に向けた取組が促進されるよう指導助言に努めていく考えである。

 また、アレルギー対応についての理解を深めることができるように、今後とも、市町村教委職員のほか、校長や教頭、養護教諭、栄養教諭などを対象としたアレルギー疾患にかかわる研修機会の充実に努め、学校および市町村教委において、安全を最優先に、食物アレルギーを有する児童生徒の視点に立った適切な対応が図られるよう、取り組んでいく考えである。

― 意 見 ―

丸岩委員 食物アレルギーは、原因や症状も様々であるし、その食物によって命にかかわることもある。

 また、いつどういったタイミングで発症するかも分からない、大変に難しい問題であることを承知しているが、学校は本来、保護者にとって信頼して預けられる場所である。児童にとっても楽しく安心して通える場所でなくてはならないから、そういった意味から、道として、そのための環境整備に取り組んでいただくようお願いする。

(道議会 2015-09-25付)

その他の記事( 道議会)

道議会文教委員会(4日) 指導通知発出し状況調査を実施 教職員団体の政治的活動

 四日の道議会文教委員会では、教職員団体が政治的スローガンを書いたクリアファイルおよび同様の趣旨の文書を学校に配布したことの調査について質疑を行った。秋山雅行総務政策局長は「学校は教育基本法...

(2015-11-09)  全て読む

道議会文教委 防災教育の充実で杉本学校教育監 新たにマニュアル作成 突発的な自然災害を想定

 四日に開かれた道議会文教委員会で杉本昭則学校教育監は、防災教育の充実にかかわり、突発的な自然災害を想定したマニュアルを、『危機管理の手引』の追録として新たに作成・配布することを表明した。丸...

(2015-11-06)  全て読む

道議会文教委 連携して本道教育の目指す姿を実現 北海道総合教育大綱で道・道教委

 四日の道議会文教委員会では、北海道総合教育大綱について質疑が行われ、加藤貴弘委員(自民党・道民会議)が道、道教委の今後の取組をただした。  道の今井太志政策局総合教育担当局長は「大綱に定...

(2015-11-06)  全て読む

道議会文教委 組体操など体育活動の事故防止 チェックリストなど提示 指導通知を発出―菅原局長

 道議会文教委員会が四日に開かれ、組体操など体育活動中の事故防止について質疑が行われた。菅原行彦学校教育局指導担当局長は、学校で日ごろの安全管理や安全指導を徹底し、事故防止に努めることが重要...

(2015-11-06)  全て読む

道教委全国学力・学習状況調査市町村別結果報告 本年度134市町村が公表へ 上位県とのレーダーチャート比較も

 道教委は、十一月末公表予定の本年度『全国学力・学習状況調査北海道版結果報告書』について、十月末現在で道内百七十九市町村中、七四・八%に当たる百三十四市町村から市町村名を明らかにした公表の同...

(2015-11-06)  全て読む

3定道議会一般質問(17日) 補助対象メニュー見直しを含め検討 帰国子女受入の私学支援で知事

 高橋はるみ知事は、帰国子女の増加に伴い、受け入れる私立学校も増加することを想定し、「今後は、私立学校に対する管理運営費補助金による支援については、帰国子女の実態や受入を行っている学校の具体...

(2015-09-24)  全て読む

3定道議会一般質問(16日) アウトメディアプロジェクト普及 私学含めた取組へ拡充 主体的取組を推進―教育長

 柴田達夫教育長は、「どさんこアウトメディアプロジェクト」の一層の普及に向け、「子ども自らが課題解決に向け、主体的に取組を進める必要があることから、生徒会フォーラムなどを開催し、私立学校を含...

(2015-09-18)  全て読む

3定道議会一般質問(16日) ネットトラブル防止の取組充実 ヘルプサイト周知等―柴田教育長が答弁

 柴田達夫教育長は、十六日に開かれた三定道議会本会議で、ネットトラブル事例をまとめた保護者向けリーフレットの定期的な作成・配布や、相談窓口「ネットトラブル未然防止のための総合ヘルプサイト」の...

(2015-09-18)  全て読む

3定道議会一般質問(16日) 学校改善に向けチーム学校推進―柴田教育長答弁

 十六日の三定道議会本会議では、「チーム学校」について質疑が行われた。  柴田達夫教育長は「校長のリーダーシップのもと、教員や教員以外の様々なスタッフがそれぞれの専門性を生かして、チームと...

(2015-09-18)  全て読む

3定道議会一般質問(15日) 実践事例集を作成―通学路の安全対策で教育長

 柴田達夫教育長は、三定道議会本会議(十五日)で、実践事例集の作成・配布、活用促進などを通して、通学路の安全確保に取り組んでいく考えを示した。中川浩利議員(民主党・道民連合)の一般質問に答え...

(2015-09-17)  全て読む