札幌市教委の28年度教育方針説明会 信頼される学校の創造を 大友教育次長あいさつ概要
(市町村 2016-03-03付)

 札幌市教委の二十八年度教育方針説明会(二月二十二日、市内ちえりあ、三月二日付8面既報)では、大友裕之教育次長があいさつした。大友教育次長は自立した札幌人の育成に向け、知・徳・体の調和のとれた子どもを育む教育のほか、信頼される学校の創造を求めた。

 大友教育次長のあいさつの概要はつぎのとおり。

  ◇   ◇   ◇

 札幌市の教育が目指す人間像として、「自立した札幌人」を掲げ、その姿を「未来に向かって創造的に考え、主体的に行動する人」「心豊かで自他を尊重し、共に高め合い、支え合う人」「ふるさと札幌を心にもち、国際的な視野で学び続ける人」と定義付けている。

 この実現に向け、各園・学校においては子ども一人ひとりの状況等を踏まえ、札幌の豊かな環境を生かし、地域や学校の実態などに即した特色ある教育課程の編成と実施に努め、「学校教育の重点」で示したとおり、「学ぶ力の育成」「豊かな心の育成」「健やかな身体の育成」、すなわち「知」「徳」「体」の調和のとれた子どもを育む教育活動を、積極的に進めていくこととなる。

 この「生きる力」を支える三つの観点は教育が目指すべき不易のテーマであり、まさに学校教育の根幹をなすものであるが、この三つの観点の育成を貫く、育てたい子どもの姿は「自ら学び、考え、行動できる子ども」であると考える。

 本日はそのことに視点を置き、「知・徳・体の調和のとれた教育」と、「信頼される学校の創造」に向けた、学校の組織マネジメントの在り方について話す。

 知・徳・体の一つ目、「学ぶ力の育成」について。情報化や国際化の進展など、社会情勢の大きな変化によって知識が多様化し、最新と思われていた知識が瞬く間に古くなっていく状況においては、既存の知識や技能を得ることにとどまらず、生涯にわたって学び続け、常に新しい知識や技能を身に付けていくことが求められている。

 子どもたちがこのような変化の大きな社会を生き抜いていくことができるよう、今、学校教育に求められているのは、知識や技能を身に付けさせるだけでなく、子どもたち自らが新しい知識や技能を獲得し続ける力を育むこと、つまり「学び方」を身に付けさせるほか、身に付けた知識や技能を「活かす力」と「学ぶ意欲」を育むことである。

 そのことを踏まえ、私たちは子どもたちが生涯にわたって学び続ける力を身に付けられるよう、今盛んに言われているアクティブ・ラーニングの視点を含め、授業の工夫・改善に不断に取り組んでいく必要があると考えている。

 つぎに、二つ目の「豊かな心の育成」について。文部科学省の問題行動等調査では、二十六年度における小学生の暴力行為の件数が一万一千件と過去最多となるなど、いじめの問題を含め、子どもの問題行動への対応が全国的な課題となっている。

 問題行動に関する指導として、まずは「規範意識の醸成」が必要だという識者の意見がある。私もこの意見に異論はないが、ここで大切なことはどのように規範意識の醸成を図るかということと考える。

 例えば物事の善悪について、それを「教える」ということだけではなく、子ども自身が物事の善悪について考え、判断ができるように育てるという視点をもつということである。

 そのためには、子どもたちがルールやマナーを守ることについて自ら考え、何を大切にすべきなのか、自らその意義に気づき、自らルールやマナーを大切にしようとする心情を育んでいくことを大切にした教育をしていかなければならないと考えている。

 国においても、道徳教育の改善の方向性として、「考える道徳」「議論する道徳」への転換を図るとされている。心の教育についても、学んだことをほかの場面でも生かすことのできる汎用的能力を育成していくため、やはり考え、判断する力を身に付けさせることが重要である。

 つぎに、三つ目の「健やかな身体の育成」について。体力は生涯にわたる健康維持のほか、気力を充実し、知性を高めていく基盤となるものであり、これからの変化の激しい社会を生き抜いていくためにも、体力を向上させることは極めて重要である。

 各園・学校においては、子どもの体力向上に向けた様々な取組を進めてもらっているが、学校における活動だけでは十分な成果が得られないこともある。

 これからは子どもたちが自分の体力の向上を体感したり、健康のすばらしさを実感しながら自分の身体を大切にし、健康的に生きることの意義をしっかり理解できるよう、家庭や地域と連携した取組を一層推進していきたいと考えている。

 このことによって子どもたちが自発的に、そして生涯にわたって主体的に健康増進に取り組んでいくことにつながるものと考えている。

 以上、「知・徳・体の調和のとれた育ち」について説明したが、つぎにそれらを支える「信頼される学校の創造」を、学校の組織マネジメントの在り方に視点を置いて話す。

 学校運営計画を策定するに当たって、まずは自園・自校の課題を整理することから始めると思う。その際に学校評価の結果分析や学校評議委員からの意見等を踏まえながら、園長・校長先生方が日常考えていること、感じていることを課題として整理していくと思う。

 それに加えて、学校に対するニーズが個別化・多様化している現在では、日々、実際に子どもたちを指導するに当たって、直接、保護者と接している教員が抱く具体的な問題、課題を取り入れていくことが大切になっている。

 こうしたことから、教職員全員が自園・自校の課題を自ら把握すること、そして課題解決の方向性づくりにこれまで以上に積極的に参画していくことが大切になる。

 園長・校長先生が、自園・自校の教員一人ひとりに、学校運営への参画意識を抱かせ、活躍できる学校づくりを進めるとともに、学校が組織として有機的に機能し、家庭・地域・学校が一体となって教育目標の実現に向かっていくようコーディネートしていく、いわゆる「マネジメント型管理職」として力を存分に発揮してもらうことが、ますます重要な鍵となっていると考える。

 本年度、中央教育審議会の部会において、「チーム学校」の考え方が示されている。「チーム学校」というと、スクールカウンセラーなど教員以外の専門スタッフが、その専門性を発揮し、多様化・複雑化する子どもの状況に対応できる体制づくりに視点が当てられている。

 それだけではなく、教員一人ひとりが自分のこととして学校づくりに参画できる仕組みをつくるなど、その力を発揮できる環境の整備も大変重要である。

 札幌では、すでに多くの園・学校においてワークショップ型の校内研修を取り入れるなど、教員全員が学校づくりに参画する取組が進められているが、これからも園長・校長先生のリーダーシップのもと、さらに教員が生き生きと活躍する学校づくりが進められていくことを願っている。

 そして、このことが子どもたちの成長に強く結びつくものと信じているところである。

 最後になるが近年、子どもや若者にかかわる痛ましい事件・事故があとを絶たず、大変心が痛む。園長・校長先生には事件・事故の報道にふれるたび、自園・自校の子どもたちの顔を思い浮かべ、いろいろな思いをもっていることと思う。

 私も札幌の子どもたちに重ね合わせ、教育に携わる者としてできることは何か、なすべきことは何かと、自分に問いかけているところである。

 一方で、子どもたちに関する明るい話題もたくさん見つけることができる。文化芸術やスポーツなどの分野での活躍はもとより、地域の花壇整備や雪かきなど地道なボランティア活動を通して地域に貢献するなど、札幌の子どもたちは本当によく頑張っていると思う。

 そのような子どもたちの活躍の背景には、いつも子どもたちに寄り添い、指導・支援されている各園・学校の教員や保護者の皆さん、地域の方々などの熱い思い、そしてその「教育の力」の支えがあると考えている。

 本年度から教育委員会制度の改革により、総合教育会議が開かれるなど、教育委員会と市長との関係が一段と強まり、関係部局との有機的な連携が一層進められることとなる。

 そのような中で教育委員会として、あらためて子どもたちへ寄せられる思いを大切にし、「教育の力」を確信し、園長・校長とともに札幌の教育を力強く進め、子どもたちを豊かに育てていきたいと考えているところである。

 きょう、お集まりの皆さんは管理職という立場にある。そういったことから組織マネジメントといった話もした。

 しかし、皆さんも私もその前に教職を志し、少しでもいい授業をしよう、子どもたちの心に寄り添った指導をしようと、様々な実践を重ねてきた教育実践者であるということをあらためてともに自覚したいと思う。

 管理職としての役割や組織マネジメントということが様々なところでいろいろと言われているが、私たちは教育実践者として、まずは教育の原点、本質に立って自分の役割を考え、ビジョンを描き、具体的な取組を進めていかなければならないと考える。

 私は、教育の原点は、「一人ひとりの子どもの可能性を最大限に伸ばすこと」と考えている。「子ども」という名詞でくくって考えるのではなく、あくまでもAちゃん、B君、Cさんといったように、それぞれ自分の名前をもった、目の前の一人ひとりの子に視点を置き、その子の可能性を最大限に伸ばすこと、そのことにゆるむことなく、あらゆる角度から取り組んでいくことが教育であると考える。

 それは決してきれいごとなどという言葉で片付けてはいけないものであり、私たち教育に携わる者すべての使命である。そのために学校運営も教育行政も「真に子どもの側に立つ」という理念を根本に据えていかなければならないと強く思っている。

 教育哲学者の森信三氏は「人の心に火をともさんとするものは、自ら燃え上がれ」と言っている。園長・校長、そして、私たち行政の使命を今一度しっかりと胸に刻み、自らの心に火をともし、ともに燃え上がらないか。「札幌の子どもたちのために」ということを真っすぐに思い、全力を尽くし、そして、札幌の先生方の心の中に「一人ひとりの子どもの可能性を最大限に伸ばす」という心の火をともそうではないか。

 園長・校長先生と教育委員会がそのような思いをともにもち、知恵を寄せ、力を合わせ、一緒に汗を流していくことを強く願い、私からの説明とする。

(市町村 2016-03-03付)

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