旭川市教委28年度教育行政方針―小池教育長説明 成果実感できる教育を
(市町村 2016-03-02付)

旭川市教委小池語朗
旭川市教委・小池語朗教育長

 【旭川発】旭川市教委の小池語朗教育長=写真=は、二月二十六日開会の市議会第一回定例会で二十八年度教育行政方針を説明した。学校教育の基本方針として、「学びの成果を実感できる確かな教育の推進」を掲げた。その上で、①家庭や地域に開かれた信頼される学校づくりの推進②確かな学力を育成し、社会で自立的に生きていく基礎を培う教育の推進③豊かな心と健やかな体を育成する教育の推進④安心して学び、安全に過ごすことができる教育環境の整備―の四点を重点として示した。小中連携・一貫教育の推進プランの策定と連携コーディネーターの配置、少人数学級指導の継続を推進。また、中央中学校に開設するALTオフィスを拠点に、英語講座の実施などを通し、英語教育の充実に努めることなどを表明した。

小中連携・一貫教育推進プランを策定

 執行方針の概要はつぎのとおり。

【学校教育推進の基本方針】

 旭川市学校教育基本計画に基づき、児童生徒一人ひとりに生きる力を育み、学力向上をはじめ、児童生徒の成長が実感できる教育を確実に推進する。

 そのため、二十八年度は、基本方針を「学びの成果を実感できる確かな教育の推進」として、四つの重点的な取組を進める。

▼家庭や地域に開かれた信頼される学校づくりの推進

 保護者や地域住民の理解と参画を得た取組を進めるとともに、「小中連携・一貫教育の基本的な考え方」に基づく取組や教職員の信頼確保に努める。

 家庭や地域との連携について、保護者や地域住民、学生ボランティア等の協力を得た学習支援や、校外学習、職場体験の実施など、地域の教育力を生かした取組を進める。

 小中連携・一貫教育については、モデル校事業において、九年間を見通した教育活動による学習意欲の向上や児童生徒の交流による思いやりの心の醸成、教職員の指導力の向上などの成果が現れてきていることから、今後も積極的に進める。その具体的な取組としては、文部科学省の委託事業を含むモデル校事業を引き続き実施するとともに、新たにコーディネーターを配置し、中学校の通学区域を単位とした連携を促進する。

 また、本市の実情を踏まえて効果的に小中連携・一貫教育を進めるため、学校関係者や保護者、地域住民などで構成する検討委員会を設置し、その取組を体系的に整理した推進プランを策定する。

 さらに、旭川小学校と旭川中学校を接続した施設一体型の開設に向け、実施設計に着手するとともに、通学区域の見直しを進める。

 児童が公民館等から学校に通う通学合宿については、望ましい生活習慣や学習習慣の定着を図るとともに、地域社会全体で子どもを育む意識を高めるため、さらに多くの児童の参加と地域住民の協力を得ながら拡充を目指す。

 教職員の信頼の確保については、本市において開催される第七十一回道社会科教育研究大会および第五十五回全日本中学校技術・家庭科研究大会をはじめ、各種研修会を通じて、資質能力の向上を図るとともに、コンプライアンス意識を高めていく。

▼確かな学力を育成し、社会で自立的に生きていく基礎を培う教育の推進

 確かな学力の育成については、本市における全国学力・学習状況調査結果をみると、各学校における授業改善や個別の学習支援をはじめとする日々の積み重ねを基本とした取組によって、学ぶことの大切さを理解し、意欲的に取り組む児童生徒が多くなるなどの成果が現れている。

 一方で、複数の資料から情報を読み取り、自分の考えなどを記述する設問については、知識・技能の活用に課題があり、また、本市の児童生徒の実態として、総じてスマートフォン等のメディアとの接触時間が長い傾向がみられた。

 こうした児童生徒の現状や課題に対する危機意識をもちながら、各学校における学力向上の取組に対する指導と支援を充実する。また、小・中学校それぞれ二校を指定した授業力向上実践研究推進事業を引き続き実施し、アクティブ・ラーニングの視点を加え、授業改善を図る。さらに、家庭と連携し学習習慣の定着に努めるとともに、補充的な学習を充実する。

 きめ細やかな指導については、小学一・二年生における三十人以下の学級編制を引き続き実施する。また、小学三年生以上における三十五人以下の学級編制については、本年度モデル事業を実施した三校で、小学四年生を対象に実施する。

 国際理解教育については、中央中学校に開設するALTオフィスおよび外国語教室を拠点とし、児童生徒向け英語講座の実施など、英語教育の充実に取り組む。

 特別支援教育については、一人ひとりの教育的ニーズに応じた指導の充実のため、補助指導員を増員する。また、新たに開設する旭川市子ども総合相談センターをはじめ、各種機関と連携し、就学前から就学後までの一貫した支援の充実に努める。

 ことし四月に開校する旭川高等支援学校については、入学する生徒の社会的自立に向け、経済界、保護者団体等と連携し、生徒の職場実習、就労等を支援する。

▼豊かな心と健やかな体を育成する教育の推進

 道徳教育については、児童生徒の人格形成に重要かつ不可欠なものであること、三十年度から道徳の時間が教科化されることを見据え、「考える道徳、議論する道徳」への転換に向け、学校への指導資料の提供や、教職員を対象とした研修会を実施する。

 いじめや非行の防止については、「学校いじめ防止基本方針」に基づき、全教職員が危機意識を高め、校長をリーダーとする組織体制を強化するとともに、年二回すべての小・中学校で取り組む「いじめ非行防止強調月間」における児童生徒の主体的な活動などを通じて、未然防止の取組を徹底する。

 また、児童生徒の悩みの解消や問題の解決に向けた支援を行うため、スクールカウンセラーの配置回数を増やす。

 学校図書館の活性化については、児童生徒の読書活動や学校図書館の活用を推進するため、引き続き、文部科学省が定める図書標準の全校達成に向け、蔵書の充実に努めるとともに、学校司書を対象とした研修を充実し、資質向上を図る。

 体力向上については、全国体力・運動能力、運動習慣等調査において、本市の児童生徒の体力は十分でないという結果が出ており、各学校の実態に基づき、「一校一実践」に取り組むとともに、小学校段階からの取組を重視し、「小学校教員体育研修会」を引き続き実施する。

 学校給食については、旭川産の米粉を使用したメニューの提供を拡充するなど、地産地消の推進に一層努める。また、入札不調となった東旭川学校給食共同調理所の改築については、建設手法等を再検討し、早期に着手できるよう取り組む。さらに、豊かさと潤いのある食事環境の整備を図るため、強化磁器食器への切替えを行う一方で、安全性が高くより強度や耐久性に優れた食器の導入について検討する。

▼安心して学び、安全に過ごすことができる教育環境の整備

 安全教育、安全対策については、警察や消防等の関係機関と連携し、防犯教室や避難訓練を実施するとともに、登下校時の安全確保のため、保護者や地域住民と協力し、見守り活動を実施する。

 学校施設の整備については、永山小学校の大規模改造に着手するほか、老朽化した設備の更新等を進める。

 就学助成については、援助を必要とする児童生徒に必要な支援が行き届くよう、新たに助成費目に生徒会費を加えるなど充実させる。また、中央中学校への通学距離に配慮した冬期間の通学費を引き続き助成するとともに、聖和小学校の統合に伴い、新たにスクールタクシーを運行し、児童の通学手段を確保する。

 小・中学校の適正配置については、児童生徒により良い教育環境を確保するため、本年度策定した適正配置計画に基づき、保護者や地域住民との協議を進める。

【社会教育推進の基本方針】

 市民が心豊かな生活を送ることができるよう、市民の主体的な学びを支えるとともに、学びの成果を地域で循環させる仕組みづくりを進め、地域の教育力の向上や郷土愛の育成に努める。

 そのため二十八年度においては、新たに策定した旭川市社会教育基本計画および現在策定中の旭川市文化芸術振興基本計画に基づき、基本方針を「市民一人ひとりが学びを深め、地域を知り、学習成果を生かせる環境づくりの推進」として、「社会教育活動の振興」および「文化芸術活動の振興」に向け、市民の自主的な学習活動を引き続き支援するため、創意工夫しながら五つの重点的な取組を進める。

▼社会教育活動の振興

▽市民一人ひとりの主体的な学びの機会の均等

 科学館においては、培ってきた専門性や特性を生かしながら、様々な実験・実習、科学イベントなどを通じ、市民が科学を身近に感じられるような学びの場を提供する。

 博物館においては、年三回行う企画展を充実させ、新規来館者の掘り起こしやリピーターの獲得を目指しながら、市民の学習意欲の高まりに応えられる取組を進めるなど、多種多様な市民ニーズに対応した学習機会、学習情報を提供する。

▽市民の学びを支える環境の整備

 中央図書館においては、夏・冬休み期間中の月曜日開館を継続し、子どもたちが読書に親しみ、学習活動の支援につながる取組を進めるとともに、開館日・開館時間の拡充を検討する。

 また、施設改修の主なものとして、科学館においては、美しい星空を再現できると定評がある、ドイツのカールツァイス社製プラネタリウム投影機器を最良の状態に保つため、オーバーホールを実施する。

▽地域における学びの循環

 公民館においては、シニア大学や百寿大学、公民館サークルなど公民館を拠点に活動する市民や団体が、自らの学びの成果を社会貢献や地域活動に生かすことができるよう、町内会や関係団体等と連携した取組を進め、地域の活性化や教育力の向上に努める。

▼文化芸術活動の振興

▽市民の心を豊かにする文化芸術活動の充実

 市内で活動する文化芸術関係団体が行う演奏会や、展覧会等への支援制度の周知を図り、より多くの団体に活用していただけるよう努める。また、旭川彫刻フェスタを開催するなど、市民が気軽に彫刻に親しむ機会を充実する。さらに、井上靖記念館における事業の充実のため、一般財団法人井上靖記念文化財団と連携した事業実施に向け、同財団と協議を進める。

 市民文化会館や大雪クリスタルホールにおいては、様々な世代の市民が、質の高い優れた文化芸術を低廉な料金で鑑賞、体験できるよう、魅力ある自主文化事業を実施する。

▽郷土文化の保存・活用と郷土愛の育成

 中原悌二郎記念旭川市彫刻美術館については、二十九年度中のリニューアルオープンに向け、旧旭川偕行社の大規模改修を継続する。また、アイヌ文化の伝承や普及・啓発については、関係団体の取組を支援する、さらに、先人たちに対する子どもたちの理解をより深めるため、小・中学生を博物館へ送迎し、資料等を通じた郷土学習を引き続き支援する。

(市町村 2016-03-02付)

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