札幌市教委の28年度教育方針概要【上】(市町村 2016-03-04付)
札幌市教委の二十八年度教育方針説明会(二月二十二日、市内ちえりあ、三月二日付8面既報)で、引地秀美学校教育部長、松田昌樹児童生徒担当部長、檜田英樹教職員担当部長、長谷川雅英生涯学習部長、山根直樹教育制度担当部長が所管事項について説明した。
概要を連載で紹介する。
【知・徳・体の調和のとれた育ち】
▼学ぶ力の育成
▽「さっぽろっ子『学ぶ力』の育成プラン」と「分かる・できる・楽しい授業の推進」
札幌市では子どもたちに、「自ら課題を見つけ、自ら学び、自ら問題を解決する資質や能力等」の「学ぶ力」を育成することを目指しており、そのためには各学校が自校の課題に応じて、「分かる・できる・楽しい授業」づくりを教職員の共通理解のもと、着実に進める必要がある。
現在取り組んでいる「学ぶ力」育成プログラムの内容について、適宜見直しを図り、一層の充実に努めるようお願いする。
その際に、①教職員が「どのような力を重点的に育むのか」という目標を共有する②学年や教科の枠を超えて、言語活動や問題解決的な学習などの共通の取組を行う③子どもの成長を様々な情報をもとに把握・評価するとともに、それらを共有し、指導方法の改善策等に知恵を出し合う―の三点の「目標」「取組」「情報」を共有した上で、一貫性のある取組を推進してほしい。
また、「学ぶ力」の育成に当たっては日ごろの学習評価をきめ細かに行うとともに、全国学力・学習状況調査や札幌市全体の評価指標二十項目なども活用して、自校の子どもたちがどのような点に課題があるのかを明らかにし、改善策を計画・実行するようお願いする。
また、二十八年度は学ぶ力の育成に関して、つぎの四点を特に重視してほしい。
一点目は習熟の程度に応じた指導など個に応じた指導の充実である。特に算数・数学はいわゆる積み重ねの教科で、一度つまずくとその後の学習に大きく影響を与える教科であり、学年が上がるにつれ、難しいと感じる子どもが増える傾向が高い。例えば、小学校高学年から少人数指導を手厚くするなど、指導体制の工夫が必要と考えている。
教育委員会としては少人数による習熟度別指導や課題探究的な学習の充実を図る実践について研究を進め、その成果等を各学校に情報提供していく予定。各学校においても積極的な取組をお願いしたい。
また、子ども一人ひとりの状況に応じたきめ細かな指導を進めるためには、学習ボランティアなど外部人材の活用も有効なので、ぜひ学校の実情に応じて取り組んでほしいと思う。
二点目は小学校における「専科指導」など、担任外教諭の活用等による指導体制等の工夫改善について。教育委員会では本年度、理科や外国語活動を中心とした専科指導の在り方に関する調査研究を行ってきた。その成果をもとに、本年度中に「専科指導の手引」を発行する予定である。
各学校においても、実情に応じた取組の推進・充実を図っていただくよう、よろしくお願いする。
特に、世界のグローバル化が急速に進む中、子どもたちの国際性を育むために小学校段階からの英語教育の充実が必要と考えている。今後は外国語活動の専科指導を行うなど、各校における外国語活動を中心となって推進していく英語専門教師を校内に位置付ける事業を行う予定で、二十八年度から実践的な研究を実施する。
各学校においても、専科指導に外国語活動を積極的に取り入れるなどして、小学校の外国語活動の充実を図ってもらうようお願いする。
三点目は課題探究的な学習の充実について。ここで大切なことは、子どもが自ら疑問や課題をもち、主体的に解決する学習を取り入れ、「学ぶ意欲」や「思考力・判断力・表現力等」を高める授業を推進することである。課題探究的な学習を校内研修の内容に位置付けるなどして、各教科など全体を通じて積極的な取組をお願いする。
四点目は市立高校、中等教育学校後期課程における実践研究についてである。二十七年度に初めて教科別研究協議会がすべての教科で実施された。生徒の主体的・協働的な学びの実現に向け、引き続き、指導方法を工夫・改善しながら、生徒の学びに必要な指導の在り方を追究するようお願いする。
また、標準授業時数の確保および生徒一人ひとりの学習の確実な定着を図るため、目標に準拠した評価の着実な実施等に、引き続き努めてもらえればと考えている。
▽進路探究学習の充実
進路探究学習の充実について。「自立した札幌人」の育成に当たって、職業体験などを通して働くことの意義を子どもたちが感じ取るとともに、コミュニケーション能力や課題解決能力などを高めようとする意欲や態度を育んでいくことは、今後ますます重要になると考えている。
各学校においては、子どもが将来への夢や社会で活躍する自分のイメージを描きながら、自分自身の在り方を見いだし、将来の生き方や進路について考える「進路探究学習」の充実を図ってもらいたい。
教育委員会では、市立中学校一年生を対象に実施している「進路探究学習オリエンテーリング事業」について、二十七年度から一年生の時に参加しなかった中学校二年生が参加できるように対象学年を拡充している。各中学校においては、より多くの生徒が参加し、充実した体験となるよう、子どもたちへの働きかけをお願いする。
▼豊かな心の育成
▽豊かな感性と社会性を育む体験活動や道徳教育の充実
豊かな感性と社会性を育む体験活動や道徳教育の充実について。他人を思いやる心や社会に奉仕する精神を育むためには高齢者等とのふれあいやボランティア活動など、社会福祉や地域貢献についての取組を充実させることが大切である。
また、優れた文化施設を活用し、子どもの感性を育み、情操を養うことは、生涯にわたって文化や芸術に親しむ心豊かな市民を育成する上でも大変重要なことであると考えている。
続いて道徳教育の充実では、子どもの発達の段階に応じた道徳教育を推進し、豊かな心を育成することが求められている。
「特別の教科 道徳」は小学校で三十年度、中学校で三十一年度から実施していくことになる。これまでの指導を基盤としながらも、子どもの多様な考えを引き出すための言語活動、体験的な学習の充実等「考え、議論する道徳」を取り入れるなど授業の工夫や指導の改善を図っていく必要がある。
また、道徳の教科化に向けて道徳教育推進教師を中心とする校内体制の整備、年間指導計画に基づいた年間三十五時間の「道徳の時間」の確実な実施をお願いする。
▽命を大切にする指導の充実
命を大切にする指導の充実について。自分のことを肯定的に受け止め、自他のかけがえのない命を大切する指導は重要である。
教育委員会では「いじめ対策自殺予防事業」を立ち上げ、二十八年度も講師を招いての教員研修を行うほか、「子どもの命の大切さを見つめ直す月間」を設定し、各学校で「命を大切にする指導の取組」を重点的に行うことなどを通して、子どもが自ら命を絶つなどの痛ましい事故の未然防止に努めていく。
各学校においては、二十五年度以降に配布した「保護者向け・子ども向けリーフレット」や「絵本」、本年度配布した「いじめの指導資料」を有効に活用しながら、「命を大切にする指導」の取組を一層推進するようお願いする。
一方で、児童生徒が不安や悩みなどから自殺をほのめかす、自傷行為に走るなどの相談は、本年度一月末までで百三十件以上にも及び、緊急に医療機関等との連携が必要とされるケースの相談も増えてきている。
各園・学校においては家庭との連携はもとより、全教職員による子ども理解や子どもが気軽に悩みを相談できる教育相談体制の構築に取り組んでいるところである。教育委員会も学校とともに対応を進めていくので、子どもに心配な状況があったら早期に相談をお願いする。
▽いじめや不登校の未然防止・早期発見・早期対応
いじめの未然防止・早期発見・対処の取組について。「札幌市のいじめの現状」としては毎年各学校にお願いしている「悩みやいじめに関するアンケート調査」において、一〇%強の児童生徒が「今の学年になってからいじめられたことがある」と回答している。
多くは軽微なものではあるが、中には深刻な事態につながる可能性もあることから、その一つ一つに適切に対応する必要がある。
二十五年にいじめ防止対策推進法が制定され、各学校においては、「学校いじめ防止基本方針」を策定していただいたところである。すでにその基本方針に基づき、保護者や地域と連携しながら、体系的・計画的にいじめの防止・早期発見に取り組み、いじめがあった場合においては適切に対処してもらっている。
策定した「学校の基本方針」については、地域・保護者への理解を得るためにも、三月末までに学校のホームページにて公開してほしい。
また、各学校で策定した基本方針はより実効性のあるものにしていくことが重要であり、定期的な評価および見直しを実施するようお願いする。
いじめの未然防止については、児童生徒が自らいじめ防止について考え、意見を述べ合う機会を設けて「いじめ撲滅の宣言文」を策定するなど、児童会・生徒会の取組をはじめとした児童生徒の主体的な取組が大変重要である。
また、いじめられている子どもは仕返しを恐れるあまり、大人に相談することができず、大人がいじめに気づきにくい側面がある。学校においてはスクールカウンセラー等を有効に活用したり、いじめに関するアンケート調査の結果に基づいた教育相談を実施したり、いじめを早期に発見するための相談体制を構築することが求められている。
教育委員会としても、今後もスクールカウンセラーやスクールソーシャルワーカーの拡充に努め、各学校における教育相談体制の充実を支援していきたいと考えているので、各学校においても、これまで以上に有効に活用するようお願いする。
つぎに不登校への対応について。札幌市の不登校児童生徒数は全国と同様に高い水準で推移しており、これまでの支援体制を検証し、工夫・改善を加えながら、より一層効果的な取組を実施していくことが求められている。
不登校の要因や背景は多様化・複雑化しており、登校しない、登校できない状態が長引くほど、解決の困難度が増しているという現状がある。
そのため、新たな不登校の発生を防ぐ「魅力ある学校づくり」の取組が不可欠であり、学校が児童生徒にとって「心の居場所」や「絆づくりの場」となるよう、ピア・サポートなど互いに思いやり、助け合い、支え合う人間関係を育むための活動を取り入れた取組の一層の推進をお願いする。
早期対応の取組としては、特に欠席しはじめた初期の段階での丁寧な対応により、欠席が連続しないようにする取組の強化をお願いするとともに、学校が保護者と連携して、心配される子どものための個別の支援計画を作成し、組織的・計画的な取組の推進をお願いする。
さらに、スクールカウンセラーやスクールソーシャルワーカー等の人材を活用し、子どもの状況の把握に努めながら、積極的に働きかけることやかかわり続ける支援をお願いする。
現在、札幌市では学校に登校できない児童生徒に対する支援を、教育支援センターと相談指導教室の市内六ヵ所で実施しており、仲間とかかわりながら学習活動や体験活動に取り組むことで、人とかかわることへの抵抗感を和らげるなど、一人ひとりの状況の改善を図っているところである。
なお、澄川小学校内に設置している澄川相談指導教室については、三月末に旧真駒内緑小学校跡施設「まこまる」に移転し、四月中旬から開設することになっている。
「相談支援パートナー事業」については、次年度も相談支援パートナーを全中学校および中等教育学校に、相談支援リーダーを小学校十校に配置する。不登校や不登校になることが心配な児童生徒への支援や家庭への訪問など、様々な形でのかかわりや働きかけに活用してほしい。
今後も不登校の子どもに対しては、一人ひとりの学びに合わせた柔軟な対応により、子どもの将来の社会的自立に資する支援の推進に努めてもらうようお願いする。
▼健やかな身体の育成
▽自ら進んで運動・スポーツに親しむ指導の充実
自ら進んで運動・スポーツに親しむ指導の充実について。札幌市の子どもの体力や運動能力は、全国調査の結果から分析すると、特に持久力や敏捷性、運動時間が少ないなどの課題がみられる。
こうした現状から、教育委員会では体力向上を二十八年度の重要課題の一つととらえている。これまでも、「さっぽろっ子〝健やかな身体〟の育成プラン」を踏まえて、各園・学校が様々な取組を進めているところであるが、二十八年度はこれまでの取組をもとに、各学校で、「〝健やかな身体〟育成プログラム」の作成にも着手するなど、より一層の充実を図ってほしいと考えている。
特に「縄跳び運動」については、引き続き、継続・充実していくとともに、体つくり運動やダンス等と関連を図った体育の準備運動の工夫、中学校における運動部活動の活性化など、運動の質の向上や運動の日常化、家庭・地域との連携などをポイントとして体力・運動能力の向上に取り組んでもらいたいと考えている。
また、スキー学習等のウインタースポーツの充実や二十五年度から実施している「雪かき・汗かきチャレンジ」「文化系部活動等スポーツ大会」も拡充していく予定である。積極的な参加をお願いしたい。
加えて、二〇二〇年のオリンピック・パラリンピックの開催を踏まえ、モデル校を指定して、オリンピック・パラリンピックを題材とした授業を推進する取組を、新年度からスタートする予定である。
各園・学校では子どもの体力等の状況を適切に把握するとともに、子どもたちが生涯にわたって自ら進んで運動やスポーツに親しむことができるよう、教科における取組はもとより、休み時間などに運動遊びができる環境を整えたり、健康安全・体育的行事の内容を工夫したりするなど、教育活動全体を通じて、子どもの体力向上に努めていくようお願いする。
▽食育の推進
食育の推進について。各小・中学校においては、食に関する指導の全体計画のもと、栄養教諭等の専門性を活用するとともに教職員が連携協力して児童生徒が望ましい食習慣の形成が図れるよう「食に関する指導の手引き」を活用し、計画的、継続的に食育を推進してほしいと考えている。
学校給食フードリサイクルについては、リサイクル堆肥で栽培された作物を全校の学校給食で提供しているところである。また、リサイクル堆肥活用校からは、体験的な栽培活動による教育的効果も報告されていることから、指導用教材、フードリサイクル作物や堆肥などを活用し、食と環境を結びつけた学習の一層の充実をお願いする。
【札幌らしい特色ある学校教育】
▼雪・環境・読書の具体的な取組について
「雪」については、雪と親しむ学習活動の一つである「スキー学習」に関して、本年度もすべての小学校と、九割以上(九二・九%九十一校)の中学校で実施した。
ただ、昨今の貸切バスを確保しにくい状況と、借上代金の高騰などの課題があることも教育委員会として認識しているところではあるが、スキーリサイクルや中学校、高校教員を対象とした指導者研修会および観光文化局スポーツ部によるインストラクター派遣を引き続き実施していく。各学校においても、スキー学習の実施に向けた取組の工夫をお願いする。
併せて、今後も地域における冬のイベントへの参加や「雪かき・汗かきチャレンジ」「中学生・高校生による除雪ボランティア」の取組など、地域と連携した取組をより一層進めてほしいと思う。
なお、「青少年山の家」において、冬季に小学校の宿泊学習や中学校の体育の授業を実施している学校もあり、歩くスキーやスノーシュー、チューブ滑りやスノークラフトなど、「雪」にふれる楽しさを直接体験できる活動が可能となっているので活用してほしい。
「環境」については、「さっぽろっこ環境ウィーク」における「エコアクション」や環境局と連携して進めている「エコライフレポート」の取組など、持続可能な社会の創造に主体的に参画する実践について取り組んでもらっている。
各幼稚園・学校においては、引き続きエコの取組を進めるとともに、「エネルギー・環境に関する学習」について、二十四年に発行した指導資料のほか、太陽光パネルが設置されている学校ではそのパネルを活用するなどして、体験的な学習を通して環境の大切さを実感する取組の一層の充実をお願いする。
「読書」について、札幌の子どもは全国平均と比べて「読書が好きな子ども」の割合が高くなっている。これは朝の一斉読書をはじめ、すべての幼稚園・学校において、発達の段階等を踏まえた、読書活動の工夫した取組を推進している成果であると考える。
各学校においては、「寄託図書」や「ブックさぁくる」をさらに活用するなどしながら、子どもの読書活動の幅を一層広げるとともに、学校図書館ボランティアや学校図書館アドバイザーなどに加え、現在、中学校への配置を進めている学校図書館司書を有効に活用し、学校図書館の「学習・情報センター」としての機能をより一層高め、学校図書館を活用した授業をこれまで以上に進め、子どもたちの豊かな学びを支えてもらうようお願いする。
雪、環境、読書の三つのテーマ以外の取組について。札幌らしい特色ある学校教育は、札幌の素晴らしい自然環境、人的環境、文化的環境などを生かした取組である。
各幼稚園・学校においては、様々な地域の環境を生かした体験活動への取組とともに、札幌市民憲章をはじめ、ふるさと札幌の理解を深める学習によって、札幌の特色や魅力を学ぶ機会の充実を図ってほしい。
【学校教育の今日的課題】
▼校種間連携
子どもが進学する際には新しい環境での生活や学習に円滑に移行・接続できるよう、校種間で十分連携を図る必要がある。重点に示した内容も踏まえながら、校種間・学校間における教員同士の交流はもとより、子どもが参加する交流など取組の充実をお願いする。
本年度末にはこれまでの札幌市における小中連携の取組を整理した『札幌市小中連携の手引』を発行する予定である。新年度は新たに小中一貫教育の研究モデル事業を立ち上げ、小・中学校九年間を通じた教育活動の充実を図っていく。
また、幼小連携・接続の取組では、全市および各区幼保小連携推進協議会の充実を図るとともに、連携モデル事業の成果を実践事例集として作成し、全市の幼稚園・認定こども園・保育所・小学校に配布する。
二十八年度も継続的、組織的な連携を図り、教育内容や指導方法の相互理解、向上につながるよう推進していく。
併せて二十六年度から、幼保小連携自然体験活動「なかよしキャンプ」事業を実施している。この事業は一年後に同じ小学校に通うこととなる児童(五年生)と幼児(年長児)が札幌の豊かな自然環境の中で一緒に体験活動を行い、自主性やコミュニケーション能力を高め、豊かな心や健やかな身体を育成し、ともに生きる喜びを実感することを目的にした事業である。
現在、五校の小学校で実施し、なかよしキャンプの良さを学校の教育活動にも生かしてもらっている。二十八年度についても引き続き実施し、各区幼保小連携推進協議会の場で事例発表等を行うなどして、事業の成果を幼小の接続向上につなげていきたいと考えている。
▼特別支援教育
重点には校種や学級・教室別の指導・支援のポイントなどを示しているので、参考にしてもらうとともに、「個別の教育支援計画」などを活用し、子ども一人ひとりの教育的ニーズに応じた早期からの継続的な指導・支援の充実に努めてもらいたい。
また、二十八年四月一日から、「障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律」が施行されることに伴い、国や地方公共団体等には、「不当な差別的取扱い」の禁止と「合理的配慮の提供」が義務付けられる。
教育委員会では、この法律の施行にかかり、各学校の適切な判断に資するよう「札幌市立学校職員における対応要領」を作成したので、三月中にすべての園、学校に送付する。
新年度には、対応要領について理解を深めるための研修等の実施を予定しているが、各学校においては対応要領を参考にしながら、法律についての理解を深め、障がいのある子どもたちに合理的配慮を行い、学習活動の充実につなげてほしい。
さらに教育センター教育相談室では、特別支援教育にかかる相談を行っているが、その約八割が「発達障がい」にかかわるものとなっている。
近年、相談を希望する保護者、子どもが増加しているため、保護者が相談を申し込んでから実施されるまでにかなりの日数を要する状況となっている。この待ち期間の短縮を図るため、二十七年度は二人の相談員を増員し対応しているところである。
今後も、相談員の増員や相談場所の拡充を図りながら、市民が相談したいときに身近な場で相談できる体制の整備に取り組んでいく。
「発達障がい」などの特別支援教育相談については、相談を通して心理検査を行ったり、必要に応じて医師による医学的診断を受け、関係機関やほかの相談機関と連携を図るなど、多面的な観点から子どもの状態を把握し、効果的な支援策を講じることができるよう学校と一層緊密な連携を図っていきたいと考えている。
併せて、すべての教員が特別支援教育にかかる専門性を向上させる必要があることから、研修講座の内容の一層の充実を図っていく。さらに、子どもへの支援方法について教師と特別支援教育相談担当指導主事が検討する教師相談、特別支援教育にかかる校内研修会への講師派遣、関係者が集まり子どもへの支援方法を検討するケース検討会議への指導主事の参加もさらに推進していく。
▼人間尊重の教育
「子どもの権利」については、「札幌市子どもの最善の利益を実現するための権利条例」の理念に基づき、子どもたちが自分の権利や他者の権利の尊重について、知的理解にとどまらず、体験を通して人権感覚を身に付けさせることは大変重要である。
命を大切にする指導との関連も踏まえ、「ピア・サポート」など子ども同士が支え合い助け合う取組について、すべての学校で教育課程に適切に位置付けて推進するようお願いする。
併せて、民族教育については、アイヌ民族の伝統的な楽器の一つであるムックリなどの民具を用いたり、男女平等教育についても外部人材を活用したりするなど、体験的な要素を取り入れた学習を行い、人権教育に関する指導の充実を図ってほしい。
▼国際理解教育
外国語教育の充実について。二十八年度は外国語指導助手(ALT)百人を小・中学校および高校等に配置する。小学校では、各学級において年平均十回ALTとの授業ができる予定である。
中学校では、ALTの増員配置と配置方式の見直しにより、各学級において週一回ALTとの授業ができる通年配置校は六十七校となる。今後はすべての学校において週一回ALTとの授業ができるよう配置のさらなる充実を図る予定である。
高校および中等教育学校では、全校に通年配置を継続する。併せて教員の英語指導力向上を目的とした研修も計画的に実施していきたいと考えている。
また、帰国幼児児童生徒等に対する教育の充実について、札幌市においても日本語指導が必要な帰国・外国人児童生徒が増えてきている。こうした児童生徒は日本語の習得はもちろん、生活や文化への適応に困難を抱えるケースがあるので、学校として取り出し指導を行うなど丁寧な対応を行ってほしい。
教育委員会としても、有償ボランティアを指導協力者として派遣する日本語支援事業や、教材の配布、教育センターでの日本語教室の実施などの支援を行っていくので、該当する学校においては、担当係と相談しながら取組を進めてほしい。
なお、「情報教育」を含め、五つの課題における具体的な取組内容や進め方については、あらためて札幌市学校教育の重点で示している事項を確認するとともに、「研究開発事業」などにおける実践研究の成果を札幌市の公式ホームページに掲載しているので、こちらも参考にしてもらうなど取組の一層の充実をお願いする。
(市町村 2016-03-04付)
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