旭川市教委の教育行政執行方針―赤岡教育長が説明 教育課程編成の手引を全小学校に(市町村 2017-03-01付)
旭川市教委・赤岡昌弘教育長
【旭川発】旭川市教委の赤岡昌弘教育長は、二月二十四日開会の市議会第一回定例会で二十九年度教育行政執行方針を説明した。学校教育の重点として、「家庭や地域に開かれた信頼される学校づくりの推進」など四点を提示。具体的な施策として「小中連携モデル校である旭川小学校と旭川中学校において、施設一体型の学校の増改築工事に着手する」「三十五人以下の学級編制は、小学校三年生を対象としたモデル事業を三校で実施する」「医療的ケアの必要な児童生徒に対応する看護師資格を有する者を含め、補助指導員を十人増員する」「小学校の教育課程編成の手引を作成し、全小学校に提供する」などの考えを示した。
赤岡教育長は、コミュニティ・スクールの導入に向けた調査研究や、三十二年度から小学校での英語の教科化を見据えた指導用教材の作成、小・中学校の九年間を見通した教育活動を促進するための通学区いい気の見直し、児童生徒の悩み解決に向けた支援を行うためのスクールカウンセラーの派遣回数増加などを進めていく考えを表明した。
方針の概要はつぎのとおり。
【学校教育】
▼基本的な考え
子どもたち一人ひとりが主体的に学び、自らの人生を切り拓き、より良い社会を創り出していけるよう、きめ細かで質の高い教育を推進するとともに、家庭や地域と連携し、信頼される学校づくりを進める。
二十九年度は市学校教育基本計画に基づき、四つの重点的な取組を進めていく。
▼家庭や地域に開かれた信頼される学校づくりの推進
小中連携・一貫教育については、現在策定中の推進プラン等を踏まえ、引き続き小中連携コーディネーターの活用や、教職員を対象とした研修会の実施などを通して、小学校と中学校が九年間を見通した教育活動を促進する。このため、小・中学校の通学区域の見直しに向け、関係する保護者や地域住民との協議を進めるとともに、小中連携モデル校である旭川小学校と旭川中学校においては、施設一体型の学校の増改築工事に着手する。
学校・家庭・地域の連携については、保護者や地域住民、学生ボランティア等、地域人材の協力を得た子どもたちへの学習支援や、校外学習、職場体験の実施など、地域の教育力を生かした取組を進める。
地域とともに学校を支えるコミュニティ・スクールについては、先進的に取り組んでいる他都市の実践例を参考にしながら、本市での導入に向けて調査研究をしていく。
教職員の服務規律の保持については、度重なる教職員の不祥事によって教育に対する信頼が大きく損なわれたことは、誠に遺憾であり、申し訳なく思っている。
信頼を回復するため、教職員一人ひとりが児童生徒に範を示すべき立場にあることをあらためて自覚し、教育公務員として高い規範意識と倫理観、使命感をもって職務を遂行するよう、教職員の研修や校長会議等を通じて、服務規律の保持を徹底する。
▼確かな学力を育成し、社会で自立的に生きていく基礎を培う教育の推進
全国学力・学習状況調査における本市の状況は、学ぶことの大切さを理解し、意欲的に学習に取り組む児童生徒が多くみられる一方で、身に付けた知識・技能を活用する力に課題がみられた。
このような状況を踏まえ、自ら学び、自ら考える力を育むため、望ましい学習習慣づくりなどの取組をさらに充実させるとともに、基礎的・基本的な知識・技能の習得と思考力、判断力、表現力等の育成のバランスを重視した指導を行うなど、社会で生かすことのできる力を育成する。
学力向上については、旭川市授業力向上実践研究推進事業を引き続き実施し、研究成果を全小・中学校で共有するとともに、子どもたちの主体的・対話的で深い学びの実現に向けた授業改善を図る。
また、全国学力・学習状況調査の結果を教員とともに詳細に分析し、各学校に指導の改善策を示す。
きめ細かな指導の充実については、小学校一・二年生における三十人以下の学級編制を引き続き実施する。また、小学校三年生以上における三十五人以下の学級編制については、小学校三年生を対象としたモデル事業を三校で実施する。
国際理解教育については、三十二年度からの小学校における英語の教科化等の実施を見据え、外国人英語指導助手いわゆるALTのオフィスにおいて指導用教材を作成し、各学校に提供するとともに、ALT等を活用し「小学校教員英語研修会」を実施するなど、指導力の向上に努める。また、長期休業中にALTによる児童生徒向けの英語講座を引き続き実施する。
特別支援教育については、一人ひとりの教育的ニーズに応じた指導の充実を図るため、医療的ケアの必要な児童生徒に対応する看護師資格を有する者を含めて、補助指導員を十人増員する。また、適切な相談・支援を行うため、旭川市子ども総合相談センターや医療、福祉等の関係機関との連携に努める。
旭川高等支援学校については、生徒の社会的、職業的自立に向け、保護者、経済界等、関係団体と連携し、引き続き生徒の現場実習や就労等を支援する。
▼豊かな心と健やかな体を育成する教育の推進
道徳教育については、三十年度からの「特別の教科道徳」の小学校での全面実施を見据え、「考え、議論する道徳」への転換に向け、指導資料の活用や、教員を対象とした研修会を実施するとともに、小学校の教育課程編成の手引を作成し、全小学校に提供する。
いじめや不登校等への対応については、各学校のいじめ防止基本方針に基づき、未然防止や早期発見、早期解決に向けた取組を組織的・計画的に進めていく。
また、いじめや情報モラルを自分のこととしてとらえ、未然防止につなげるため、児童生徒主体の「生活・学習Actサミット」を引き続き開催する。
さらに、児童生徒の悩みの解消や問題の解決に向けた支援を行うため、スクールカウンセラーの派遣回数を増やす。
学校図書館の活性化については、学校司書を一人増員し、小・中学校への効果的な配置を図るとともに、文部科学省が定める図書標準の全校達成に向け、蔵書の充実に努める。
体力向上については、各学校において、児童生徒の実態に応じた「一校一実践」に取り組むとともに、小学校段階からの継続した指導が重要であることから、体育専科教員等を活用した「小学校教員体育研修会」の実施を継続する。
健康管理については、児童生徒の健康状態を的確に把握するため、保健調査票を活用し、健康診断を効果的に実施する。
学校給食については、旭川産の米粉を使用したメニューの提供を拡充するなど、地産地消の推進に努める。また、東旭川学校給食共同調理所の改築については、三十二年一月の供用開始に向け、実施設計に取り組むほか、運営面の準備をする。さらに、本市の学校給食における今後の施設整備や、安全性が高く耐久性に優れた食器の導入、給食費にかかわる会計方法の在り方など、課題や方向性を体系的に整理・検討する。
▼安心して学び、安全に過ごすことができる教育環境の整備
子どもの安全確保については、警察や消防等の関係機関と連携し、防犯教室や避難訓練等を実施するなど、安全教育を推進していく。また、保護者や地域住民の協力による登下校の見守り活動の実施など、子どもの安全を地域で見守る意識の醸成に努める。
学校施設の整備については、ことし八月からの供用開始に向け、永山小学校の大規模改造工事を引き続き実施するほか、老朽化の著しい東栄小学校増改築の基本設計に着手する。また、校舎や体育館の暖房設備の更新等を計画的に進める。
就学助成については、援助を必要とする児童生徒に必要な支援が行き届くよう、新入学用品費の支給額を引き上げるほか、新たに助成費目に中学校のクラブ活動費を加え、一層の充実を図る。
小・中学校の適正配置については、児童生徒により良い教育環境を確保するため、旭川市立小・中学校適正配置計画に基づき、保護者や地域住民との協議をしていく。
【社会教育】
▼市民一人ひとりの主体的な学びの機会の充実
科学館においては、身の回りの様々な不思議や科学現象への興味・理解を深めるため、身近な材料を用いた実験や講座等を実施するとともに、夏・冬休み期間中には、子どもたちや親子を対象に、ワークショップや特別実験ショー、プラネタリウムでの特別番組の投影などの企画展を開催し、楽しく科学にふれる機会を創出する。
また、博物館においては常設展示していない収蔵品や、道内のほかの博物館資料を活用して、魅力ある企画展を年三回開催し、多様なテーマを設定しながら資料を見てもらうことで市民の関心や学習意欲を高め、学びの機会と学習情報を提供する。
▼市民の学びを支える環境の整備
中央図書館においては、夏・冬休み期間中の月曜日開館を継続し、子どもたちの読書活動の推進と、学習活動の支援につながる取組を進める。
また、新たに利用時間の拡充と変更を試行的に行い、毎朝三十分早めて午前九時三十分から開館し、閉館時間を一時間延長するなど、平日は午後七時、土・日・祝日は午後六時までとして、利用しやすい環境づくりに取り組む。
また、市民文化会館においては、関係部局との協議や整備に関する費用等の調査を進めるなど、多くの市民に親しまれ、利用いただける施設として、今後の整備の方向性を検討していく。
▼地域における学びの循環
公民館においては、公民館を拠点に活動する市民や団体が、学びの成果を社会や地域に生かすことができるよう、地域や関係団体等と連携した取組を進めるとともに、シニア大学では、社会的ニーズを踏まえた講座の充実を図り、シニア世代が地域を支える一員として一層活躍できる環境づくりに取り組む。
本市の社会教育施設においては、多くの市民がこれまでの学習成果を生かして様々な事業や講座等のスタッフ・講師などで活躍している。それぞれの施設が核となり、地域における学びを広げ、循環させていく仕組みづくりに努める。
▼市民の心を豊かにする文化芸術活動の充実
市民の芸術活動については、市内の文化芸術団体が開催する展覧会等への助成制度を継続し、広く周知を行い、多くの団体が活用できるよう、文化芸術活動を支援する。
また、旭川市民ギャラリーについては、旭川駅にある彫刻美術館ステーションギャラリーを活用し、期間を限定して試行的に開設することで、市民の文化芸術活動の発表機会を確保するとともに、まちなかの賑わいづくりを図る。
市民文化会館や大雪クリスタルホールにおいては、幅広い世代を対象に質の高い舞台芸術が鑑賞できる公演や、文化芸術の素晴らしさを体験できるワークショップの開催など、魅力ある自主文化事業を実施する。
さらに、井上靖記念文化財団との連携については、昨年設立した実行委員会のもと、新たに井上靖記念文化賞を創設し、文化芸術分野を中心に、地域や社会への貢献を行いながら、今後さらなる活躍が期待される人材や団体を支援する。
▼郷土文化の保存・活用と郷土愛の育成
アイヌ文化の伝承や普及・啓発については、関係団体の取組を支援し、市民の理解を深めるとともに、小・中学生を博物館に送迎する事業を引き続き実施して、郷土の歴史や文化への関心を高め、資料等を活用した郷土学習を支援する。
また、二十四年から休館中の中原悌二郎記念旭川市彫刻美術館については、旧旭川偕行社の大規模改修工事を終え、ことし秋に再オープンする。国の重要文化財である旧旭川偕行社の趣き豊かな雰囲気の中、記念式典やミニコンサート、市内の文化芸術施設をめぐるバスツアーなどを実施し、彫刻に身近に親しんでもらうとともに、再オープンに合わせて、第四十回の節目を迎える中原悌二郎賞の贈呈式を行うなど、彫刻のまち・旭川の魅力を市内外にPRする。
(市町村 2017-03-01付)
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