寄稿 登校再開のレジリエンス 自分に応じて学ぶ場面を 新型コロナ対応で道文教大・石垣教授(コロナウイルス関連 2020-05-28付)
道文教大学人間科学部子ども発達学科の石垣則昭教授は、「登校再開のレジリエンス(しなやかに戻す)」と題し本紙に寄稿した。新型コロナウイルス感染拡大防止のための臨時休業後、再開された学校でどのように授業を行うか提言。学習目標を明示した上で、一人ひとりが自分に応じた学びに取り組む場面づくりに取り組むことなどを呼びかけた。
新型コロナウイルスの影響から、ようやく学校再開に向け明るい兆しがみえるようになりました。皆様におかれましては、長期に及ぶ学校閉鎖によって、子どもたち一人ひとりの動向確認、学習課題の提示と進ちょく状況の確認、部活動の個人練習の指導など多岐にわたり、気の休まることがない毎日を過ごされていたと存じます。
今、学校再開に向け皆さんが一番に気になるのは「学力の個人差」だと思います。子どもたちに提示した学習課題は、個々どの程度進め理解されているのだろうか。遠隔授業を実践されている場合でも、教師の説明だけでは、学習内容の理解での個人差は大きくなります。また、この個人差は、学習内容の習得面ばかりでなく、学習の意欲面でも課題が生じます。
登校再開のレジリエンスを考えると、学校生活の中心である授業再開時に教師主導の授業だけで進めると、集団生活や授業そのものに合わせることができない適応上の問題ともなります。
学級の仲間と共に学び成長するなどの学級経営方針を伝え、学級目標を確認し、どう仲間づくりを高めながら学級を進めることがよいのか、子どもたち同士で共通理解を図る工夫が必要です。
授業では、教師が同じ情報を全員に伝えるという一斉指導の形では、個の学習状況に応じることはできませんので、最初に、きょうの学習では何を理解すればよいのかを明示し、一人ひとりが自分に応じた学びに取り組ませる場面づくりが効果的ではないでしょうか。特に、自力解決できないところは仲間に聞く、教師に聞くという進め方は効率的であるように思います。
自力での学習をノートやワークシート(三密に配慮したワークシートによる交流例は、寄稿の第1回目・4月14日付掲載)、さらに、教師の助言や学級の仲間との交流によって整理した内容を、子どもたち同士が相互評価する場を設けると、さらに効果的な学習となります。このようなふれあいのある学習は、学力の個人差を埋めるとともに、集団への適応を高める有効な学習手段ではないかと思います。
子どもたち相互の身近な意見交換では、グループでの話し合いは健康面での危険がありますから、クラス全体を対面の形(サークル型、U字型など)にして、互いの間での意見交換、伝え合いをするなど、ソーシャルディスタンスを確保しながら進める方法はいかがでしょうか。
いずれにしても、学習への意欲を回復させ、適応力を高め学力の個人差を埋めるためには、子どもたち自身が何を理解できたのかをつかませる授業が大切ではないでしょうか。つまり、子どもの様子を見ながら、教師の出番をいかに少なくし、子どもたちが中心に学習を進めるかがポイントだと思います。
そのためには、子どもたち一人ひとりが自分で動けるような仕掛けをしておかなくてはいけません。仕掛けとは、何を理解させる授業なのか、どう授業を進めるのか、子どもたちにはどのような活動を求めるのか、さらに、授業のゴールでは何を理解するとよいのかなどの準備をいいます。さらに、子どもたちが思考し活動する時間を確保するため、子どもたちが理解しやすく、手短に伝える教師の工夫も大切であると言えます。
北海道通信のご厚意によって、連載とは別に4月から4回にわたり寄稿させていただきました。本寄稿が皆様のお役に立てるならば幸いです。
(北海道文教大学人間科学部子ども発達学科教授・石垣則昭)
(コロナウイルス関連 2020-05-28付)
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