旭川市 3年度教育行政方針 ICTパークを活用 教材整備や研修で指導力高め
(市町村 2021-03-04付)

旭川市黒蕨真一
黒蕨教育長

 【旭川発】旭川市教委の黒蕨真一教育長は2月26日、令和3年市議会第1回定例会で3年度教育行政方針を説明した。GIGAスクール構想の推進に向けて教材ソフト等の整備に引き続き取り組むほか、ICTの専門的知識を有する支援員の配置や実践推進校による成果の普及、教職員向けの研修を通して指導力の向上を図っていくことを表明。プログラミング学習の充実に向けたICTパークの活用など、市ならではの取組を充実していく考えを示した。

 教育行政方針の概要はつぎのとおり。

【学校教育】

▼子どもたちに未来を生き抜く力を育む

 新型コロナウイルス感染症について長期的な対応が見込まれる中、教育活動の推進に当たっては、感染状況等を踏まえながら柔軟に対応し、学びの保障に努めるとともに、誹謗中傷を生じさせないための指導の徹底や、児童生徒の感染に対する不安・悩みなどへの心のケアを図っていく。

 また、感染症予防の指導や校内の衛生管理など、国の制度も活用し感染症対策に継続して取り組んでいく。

 確かな学力の育成については、新学習指導要領の趣旨を踏まえ、各学校における主体的・対話的で深い学びの実現に向けた授業改善が一層進められるよう、道教委の事業を活用し、授業改善推進チームによる巡回指導やその成果の普及とともに、授業力向上プロジェクトチームによる教員研修を実施していく。

 英語教育については、各学校にALT(外国語指導助手)および小学校外国語活動サポーターを派遣するほか、海外の児童生徒との交流や長期休業中のALTによるイングリッシュ・チャレンジ教室、教員の英語力向上を図る研修会を実施する。

 GIGAスクール構想の推進については、児童生徒一人ひとりの可能性を引き出す個に応じた学びや協働的な学びを実現するため、各学校に整備したICT環境の円滑な運用と効果的な活用を図っていく。

 そのため、ICTを活用した学習で使用する教材ソフト等の整備に引き続き取り組むほか、ICTの専門的知識を有する支援員を配置するとともに、実践推進校を指定し、その成果の普及や、教職員向けの研修を通して指導力向上を図っていく。

 また、市の取組について、保護者の理解が得られるよう積極的な情報発信に努めるとともに、産学官による学校のICT活用を支援する体制の整備や、プログラミング学習の充実に向けたICTパークの活用など、家庭や地域との連携・協力のもと、市ならではの取組を充実していく。

 少人数学級編制については、国において、3年度から小学校の35人学級を段階的に進めることが決定されたことから、国の動きや道教委の取組も踏まえ、引き続き教員の確保に努め、市独自の取組を進めていく。

 豊かな心の育成については、道徳科研修会を開催し、教員の授業力向上を図るとともに、児童生徒に命の大切さや思いやりの心を育む教育を推進していく。

 いじめ問題への対応については、市いじめ防止基本方針に基づき、学校や家庭、関係機関等と連携し、未然防止や早期対応の取組を進めるほか、道外先進校とのオンライン交流や、生活・学習Actサミット開催などを通じ、児童生徒の主体的な活動を促進していく。

 また、児童生徒のいじめの未然防止に向け、仮称・いじめ防止条例の制定を進めていく。

 不登校への対応については、各学校において、教員やスクールカウンセラー等による教育相談や学習支援、家庭訪問などを充実し、未然防止や早期発見・早期対応に努めていく。

 適応指導教室(ゆっくらす)における児童生徒一人ひとりに応じた支援や、関係機関等と連携した取組を進めていく。

 健やかな体の育成については、児童生徒自らが目標をもって生活し運動に取り組むことができるよう指導資料を作成するなど、体育授業や体力づくりの取組を充実するとともに、各学校のオリンピック・パラリンピック教育の取組を関係部局と協力して支援していく。

 また、学校給食を通じ、地域の食文化や地産地消の大切さなどについて理解を深めることができるよう、地元の生産者などとも連携し、食に関する指導を充実していく。

 児童生徒のふるさと旭川の理解を深め、郷土への愛着と誇りを育むため、キャリア教育等で活用できる本市の地域人材や施設などのリストを拡充し、各学校における地域の教育資源を効果的に活用した学習活動を支援していく。

 特別支援教育については、一人ひとりの教育的ニーズに応じるため、教職員や特別支援教育補助指導員の研修会を開催し、指導・支援の充実に努めるとともに、医療的ケアを必要とする児童生徒に対応できるよう、看護師資格を有する補助指導員を増員する。

▼子どもたちの学びの環境を整える

 児童生徒の安全を確保し、安心して学ぶことができるよう、防災や交通安全、防犯等に関する指導の充実を図り、児童生徒の危機対応能力を育成するとともに、登下校の安全対策として、関係機関や地域と連携した通学路の合同点検を実施し、危険個所の周知や必要な対応を行っていく。

 千代田小学校の増改築工事への着手をはじめ、豊岡小学校の実施設計、永山西小学校の基本設計、明星中学校の耐力度調査を実施し、学校施設の耐震化を推進していく。

 アスベスト含有断熱材が使用されている煙突の改修については、3年度をもってすべての対象校が完了できるよう取り組んでいく。

 児童生徒のより良い教育環境を整えるため、市立小・中学校適正配置計画に基づき、保護者や地域住民と意見交換を行い、理解を得ながら学校の統合や通学区域の見直しに取り組んでいく。

 子どもの貧困については、社会的な課題であり、経済的に厳しい世帯に対する支援として重要な役割を担っている就学援助や、特別支援教育就学奨励費事業によって、引き続き保護者の経済的負担の軽減を図るとともに、関係部局と連携し、就学援助制度と各種支援制度を合わせて周知するなど、きめ細かな情報提供に努めていく。

▼子どもたちをともに育て豊かな学びをつくる

 学校における働き方改革については、市立小・中学校働き方改革推進プランの目標達成に向け、引き続き各学校において教職員の勤務時間の把握と適切な勤務管理を行うとともに、部活動指導員等の専門スタッフの配置やオンデマンド研修の充実を図るなど、時間外勤務の縮減に向けた取組を推進していく。

 教職員の服務規律の保持については、学校教育に対する信頼を損なうことのないよう、不祥事の根絶に向けた強い決意を学校と共有し、教職員一人ひとりの心に響く効果的な指導を通じた意識改革や、具体的な事例を踏まえた研修の実施など、教育公務員としての自覚と責任を強く促す取組を進めていく。

 地域の理解と協力を得た学校運営に向けては、各学校におけるコミュニティ・スクールの取組を着実に進めていく。

【社会教育】

▼市民一人ひとりの主体的な学びの機会の充実

 昨年策定した社会教育施設ガイドライン等に基づき新型コロナウイルス感染症対策に努めるとともに、緊急時に速やかに対応できる体制を維持しながら、学びの場の提供と機会の充実を図っていく。

 生涯学習フェアまなびピアあさひかわについては、節目となる30回目の開催を延期したが、市民の学習活動への関心を高め、自らの成果を発表する貴重な機会であることから、十分な感染症対策を講じた上で開催する。

 ジオパーク構想については、周辺自治体や関係団体とのネットワークを強化し、住民参加型の活動や調査・研究を行うなど、将来的な日本ジオパーク認定に向けた体制づくりや環境整備を進めていく。

▼市民の学びを支える環境の整備

 中央図書館においては、新たに策定する第4次市子ども読書活動推進計画に基づき、子どもたちがいつでもどこでも自分から読書に親しむことができる環境づくりに取り組んでいく。

 科学館においては、新設したサイパル未来基金を活用し、常設展示室に錯覚をテーマとした展示物のコーナーと地球温暖化や人口密度などの多様なコンテンツが学習できる体験型地球儀を新たに設置するほか、3Dプリンタやレーザーカッターを使い参加者が自由な発想でものづくりに取り組むことができる新規事業を展開していく。

 市民文化会館については、市民対象の施設見学会を開催するとともに、関係部局と連携して今後の整備等の方向性について、引き続き検討を進めていく。

 ウェブ所蔵絵画作品展については、教育委員会が所蔵している絵画の一部を誰でも鑑賞できるよう、ホームページによる公開を実施していく。

▼地域における学びの循環

 地域全体で子どもたちの学びや成長を支える地域学校協働活動については、モデル地区での導入に向け、地域学校協働本部の設置やコーディネーターの配置など、活動を推進する体制づくりを進めていく。

 市シニア大学においては、学習成果を多くの機会で生かし、地域で活躍できる人材を育成するため、実践的なカリキュラムを実施していく。

 成人を祝うつどいについては、3年の式典を1月から延期し5月開催としたが、4年の式典と合わせ、十分な感染症対策を講じ、新成人が安心して集い、人生の節目を祝うことができるよう準備を進めていく。

 公民館については、地域集会施設の活用方針に基づき、6年度に予定されている地域集会施設の見直しの第2段階に向け、位置付け等について引き続き検討していく。

▼市民の心を豊かにする文化芸術活動の充実

 市民の文化芸術活動を支援する取組については、コンサートや展覧会などの事業に対する支援を行うとともに、市民ギャラリーの利用者の要望に応えて利用時間帯を1時間早め、利便性を高めていく。

 市民文化会館や大雪クリスタルホールにおいては、幅広い世代を対象に、低廉な価格で質の高い舞台芸術が鑑賞できる公演や、文化芸術の素晴らしさを体験できる機会の提供など、魅力ある自主文化事業を実施する。

 彫刻美術館においては、第42回中原悌二郎賞を開催し、優れた彫刻作品の鑑賞機会の充実を図るなど、彫刻のまちとしての魅力の発信に努めていく。

▼郷土文化の保存・活用と郷土愛の育成

 アイヌ文化の普及や促進については、国の交付金を活用し、市長部局と連携しながら、アイヌ文化を生かすまちづくりを推進する事業に取り組んでいく。

 民間のアイヌ文化施設については、整備計画の検討を進めるとともに、協働事業によってアイヌ文化の保存と伝承、理解の促進を図り、産業や観光の振興につなげていく。

 また、大雪山麓上川アイヌ日本遺産推進協議会の一員として、市のアイヌ文化遺産の活用と情報発信を図っていく。

 博物館においては、アイヌの人々の暮らしと動物とのかかわりをテーマとするほか、博物館が所蔵するこけしを活用して歴史や特徴を紹介する企画展を開催するとともに、郷土の歴史や文化への関心をさらに高め、理解を深めるための講座や体験学習を実施する。

 優佳良織については、本市発祥の染織工芸を絶やすことのないよう、技術を保存・伝承するための支援を継続していく。

 歴史的建造物の旧宮北邸については、昨年、建物とその敷地を取得したことから、建物の保存や活用方法について、専門家に助言をいただきながら検討を進めていく。

(市町村 2021-03-04付)

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