4種校長会長インタビュー 第1回 チーム北海道として進む コロナ禍 各地区の声発信(関係団体 2021-06-24付)
道小校長会会長・吉田信興氏
―会長としての抱負
道小学校長会は、昭和32年の発足から64年目を迎えた伝統ある組織である。これまで、北海道の教育が幾多の困難に直面する中、「正論を以って正道を歩む」という理念のもと、校長の職能向上と北海道教育の振興・発展を図ることを目的として、長きにわたって活動してきた。
全道980人の会員が北海道教育の質の向上のために真摯に取組を進めている。今後も、このような伝統を引き継ぎ、全道の校長と力を合わせながら目的の達成に向けて、精一杯の努力を積み重ねていきたい。
令和2年度は新型コロナウイルス感染症が拡大し、2ヵ月間、学校を休業した。この間の大混乱は地域による教育格差を生んだ。GIGAスクール構想の前倒しによってICTの格差はかなり縮まったとはいえ、いまだ終息しないコロナ禍で教育活動を進める各地区の生の声を精力的に聞き、実態を把握し、それをエビデンスとして道や国に働き掛けていく役割をしっかりと果たしていきたい。
これからも、この道小学校長会という組織を活性化させるとともに、道教委、道中学校長会、道PTA連合会、民間教育団体などと連携を図りながら、「未来を見据え、チーム北海道として進む道小」として北海道教育の質の向上に努めていく。
―抱える課題と対策
第1の課題は、新型コロナウイルス感染症対策である。
1年が経過しても、新型コロナウイルスは姿を変異しながら感染を拡大させており、終息がみえない。私たちはウィズコロナの中で感染防止対策を十分に行いながら、教育活動を推進するため、柔軟な教育課程を作成したり、臨時休業を想定したICT環境の整備をしたり、学校行事の在り方を検討し、ニューノーマルを構築したりするなどの取組を各学校で行っている。
道小学校長会としては、研修会や様々な機会で情報交流をしたり、各地区の生の声を聞かせていただいたりしながら道や国へ、そして会員一人ひとりへ発信し続けたい。
さらに、前年度に全面実施となった学習指導要領の中核を成す「主体的・対話的で深い学び」を視点とする授業改善を定着させることが第2の課題である。コロナ禍で授業改善が軽視されないよう注視しなければならない。
第3には、中央教育審議会から答申のあった「令和の日本型学校教育の構築」を具現化し、「個別最適な学び」「協働的な学び」という学びの本質に立ち返る必要性と「同調圧力からの解放」「正解主義からの脱却」「2項対立からの離脱」といった、これまでの学校の“当たり前”を見直す教育観の転換である。
第4には、GIGAスクール構想の前倒しによって整備された1人1台端末の活用である。
授業での活用や家庭での活用が学校差、地域差なく行われることが重要である。いまだに配られていない地区があるという時間的格差、教師用パソコンが未整備だったり、初期設定を教員に課せられている地区があったりする整備内容の格差、LTEで導入した地区もあれば、高速大容量通信環境が整っていない地区もある通信環境など様々な格差が生じており、大きな課題となっている。
第5には、学校における働き方改革の推進がある。
学校における働き方改革「北海道アクション・プラン」(第2期)が出され、目標達成の数値化が示されている。道は1年単位の変形労働時間制の導入を決定したが、果たしてその制度を活用できるだけの働き方改革が進むのかが今後の大きな課題と言える。
第6には、教員の質の向上と人材の確保である。
教員の絶対数が不足している中、1学級35人の少人数学級制が導入され、4年度からは高学年の教科担任制が始まる。教員採用試験の在り方を見直したり、教員免許更新制の抜本的な見直しが検討されたりするなど、人員の確保のため、様々な手法がとられているが、教員の質と量の課題はなかなか解消されないままになっている。
―本年度の重点
課題が山積する中、つぎの5点について重点的に取り組む。
1点目は、地域格差のない教育条件の整備を目指すことである。
前述と重複するが、道内20地区の校長会と連携を密にしながら、新型コロナウイルス感染症対策、GIGAスクール構想やICT、働き方改革などの話題を中心に状況を定期的に把握し、エビデンスを得て道や国へと実態を伝え改善への要望をしていきたい。
2点目は、主体的・対話的で深い学びの授業改善の定着化である。
1人1台端末を活用しながら、個を主体とした学びを進めるとともに、独りよがりにならないために多様な他者と協働的に学び、そして個の発展につなげていくという学びのスタイルは、主体的・対話的で深い学びの授業の中で開花すると考える。そのために私たち校長は、自らが学び続け、研鑚に励む職能団体であることを大切にしていきたい。
3点目は、学校における働き方改革の積極的な推進である。
道教委が改訂した北海道アクション・プラン(第2期)の工程表にのっとり、手引『Road』を活用しながら、着実に働き方改革を進める必要がある。6つの重点が示されているので、全教職員で共通理解を図り、実践を重ねていく必要がある。
新たな取組として、教頭へ支援も加わった。教頭あっての校長であり、教頭あっての学校である。教頭の肉体的負担、精神的負担をかけないための校長としての取組を各校で考え、実施したい。
4点目は、教員の質の向上である。
個別最適な学びのためには、子ども一人ひとりを大切にした教育の実践、とりわけ子ども一人ひとりの課題や思い・願いを生かす授業を行い、子ども一人ひとりの取組を評価し、指導・支援するといった授業力や指導力が教員に求められる。
また、全国的にわいせつ教員へ厳しい目が向けられている。わいせつに限らず、体罰、個人データの紛失等、教員としてあってはならない服務規律違反が後を絶たない。各学校においては、これまで以上に教員としての資質向上のための校内研修や校外研修を充実させるとともに、校長がリーダーシップを発揮し、教員の心に届く、心に染みる、テンションを上げて仕事に前向きにさせるような言葉がけを継続しながら、質の向上に努めることが不可欠と考える。
最後の5点目は、ウィズコロナの研修会、研究大会を目指すことである。
道小学校長会は、3年度も引き続き新型コロナウイルス感染症の状況を冷静に見極めながら、活動を進める所存である。
研修活動の中核をなす第64回道小教育研究石狩・千歳大会は、新型コロナウイルス感染症の状況改善が見通せないことから、会同による研究大会を断念した。オンライン配信を活用した全体会と研究発表者、趣旨説明者が作成した動画を参加者が視聴した上で、書面で交流する分科会を組み合わせて行うことに変更した。
形は変われども実り多い大会となるよう、石狩管内小中学校長会を中心に、道小の会員全員の力を結集していきたい。
―新型コロナウイルス感染症への対応
各学校では、新型コロナウイルス感染症拡大の対応に日々追われている。児童本人や同居家族、教職員本人や同居家族のPCR検査結果に基づく調査や文書作成、学級学年閉鎖の措置等、気の休まる日がないほどの毎日である。
①発生時の対応②コロナ禍での学習整備環境状況・工夫や課題等③新しい生活様式を踏まえた教育課程の改善④アフターコロナを見据えた学校経営等―の観点からの4点について、状況を簡単に紹介する。
第1に、発生時の対応について。
緊急連絡としてはメールを活用し、休日の対応も行えるようにしているところが多い。また、電話、おたよりやホームページ等で状況に応じた対応を行っている。
校長会で対応マニュアルを作成している地区があり、組織的な取組となっている。学びの保障という点では、発症した児童やその学級に対し、1人1台端末を活用している地区やその準備をしている地区は少ない状況である。
第2に、コロナ禍での学習整備環境状況・工夫や課題等について。
2年度から網戸や扇風機、冷風機、加湿器、消毒液、アクリル板等の感染症防止の整備や非接触型体温計、温湿度計等の機器等は相当の割合で整えられている。しかし、密を避けるための空き教室が整わない学校、1学級40人に近い学級を多く抱える学校では、密接対策が難しい現状となっている。
そのような中、子どもたちは手洗い、マスク、消毒、検温等を行い、教育活動を行っている。1人1台端末については各学校で手探りながら活用が始まっている段階で、個別最適な学びを加速するツールになることを期待したい。家庭への持ち帰り計画については、まだこれからという地区が多いようだ。
第3に、新しい生活様式を踏まえた教育課程の改善について。
特に行事における分散の開催や時間短縮等の規模の縮小、内容の精選、修学旅行や宿泊学習での目的地の変更等、コロナの感染状況に加え、働き方改革と相まって大きく変更を図っている現状がある。
最後に、アフターコロナを見据えた学校経営等の観点について。
今回の新型コロナウイルス感染症対策に伴い、学校行事や教育活動を大胆に見直す機会となったことで、アフターコロナの時代では、再び元に戻るのではなく新しい生活様式に基づいたニューノーマルを構築していくべきではないかという声が多く聞かれる。
よしだ・のぶおき
昭和60年道教育大学札幌分校卒業後、札幌市立真駒内曙小に赴任。平成21年札幌市立平岸小教頭、26年札幌市立札苗緑小教頭、29年札幌市立川北小校長、令和2年札幌市立旭小校長。
昭和36年6月7日生まれ。60歳。札幌市出身。
(関係団体 2021-06-24付)
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