道議会質疑 予算特別委員会 6月25日(道議会 2021-09-30付)
【Q 質問Question A 答弁Answer P 指摘Point out O 意見Opinion D 要望Demand】
【質問者】
▼三好雅委員(自民党・道民会議)
▼壬生勝則委員(民主・道民連合)
▼大越農子委員(自民党・道民会議)
▼藤川雅司委員(民主・道民連合)
▼赤根広介委員(北海道結志会)
▼阿知良寛美委員(公明党)
【答弁者】
▼京谷栄一保健福祉部少子高齢化対策監
▼吉田充保健福祉部高齢者支援局長
▼竹澤孝夫保健福祉部子ども未来推進局長
▼森みどり保健福祉部政策調整担当課長
▼杉本曜子保健福祉部介護運営担当課長
▼村上則之保健福祉部子ども子育て支援課長
▼手塚和貴保健福祉部自立支援担当課長
◆ヤングケアラー
Q三好委員 国では、子どもが家族のケアに当たるヤングケアラーへの必要な支援策を検討するため、昨年12月にヤングケアラーに関する実態調査を行い、その結果がことし4月に公表された。その概要はどのようなものなのか、支援の在り方など、どのような方向で検討されることになるのか伺う。
A手塚自立支援担当課長 ヤングケアラーに関する実態調査について。国では、ヤングケアラーと思われる子どもなどの実態を把握するため、全国の中学校と高校、中学2年生と高校2年生、市町村の要保護児童対策地域協議会に対し、調査を実施した。
主な調査結果としては、世話をしている家族がいるが、中2で5・7%、高2が4・1%で、そのうち、ほぼ毎日世話をしている子どもは約45%、平日1日に7時間以上を世話に費やす子どもも約10%程度存在している。
ヤングケアラーを言葉として認識し、対応しているのは、中学校で20・2%、高校が9・6%で、要対協からは、「家族や周囲の大人に子どもが“ヤングケアラー”である認識がない」などの意見が出されている。
これらの調査結果から、プロジェクトチームでは、今後取り組むべき施策の柱として、早期発見と現状把握、必要な支援策の推進、社会的認知度の向上の3項目を示し、今後、国において具体的な対応策の検討が進められる予定である。
Q三好委員 ケアラーが抱える課題としてどのようなことが考えられているのか伺う。
A杉本介護運営担当課長 ケアラーが抱える課題について。ケアラーは、介護や看護を必要とされている人から感謝されたり、頼りにされている一方で、自分の時間を十分に確保できずに、心身の健康を損なったり、今就いている仕事から離職せざるを得なくなってしまうことが心配される。
家族が介護をすることは当たり前といった周囲の無理解などから、誰にも相談をすることができず、社会から孤立してしまうことも心配されている。
特に、ヤングケアラーについては、本人や家族に自覚がないケースや、家庭の状況を教師や友人に知られるのが恥ずかしいと思う場合があることなどから、潜在化しやすいといった現状にある。子どもらしい成長や学びにも深刻な影響があることから、関係機関が連携し、認知度の向上に努めるとともに、早期発見や適切な支援につなげていくことが課題と考えている。
Q三好委員 有識者会議会議の構成メンバーや人数、第1回の会議の議題などについて、どのように考えているのか伺う。
A杉本介護運営担当課長 有識者会議について。先日設置した有識者会議のメンバーは、子どもの教育や精神保健分野に専門的な知見のある学識経験者のほか、ケアラーだった人や日本ケアラー連盟などの当事者団体、また、ケアラーを支援する側として、スクールソーシャルワーカーや地域包括・在宅介護支援センター協議会、さらには、経済団体や労働団体、市町村の代表者の合計12人に参画をいただいている。
Q三好委員 知事の答弁では、道教委との連携のもと、本道のケアラーの実態調査に着手するとのことだった。調査の内容はどのようなものになるのか、どのような方法で実施する考えなのか伺う。
A杉本介護運営担当課長 実態調査について。調査の対象となるすべての人に対する共通事項として、ケアの対象者とその内容、ケアによる生活への影響や悩みのほか、必要な支援の内容などの調査項目を想定している。
その他、道教委と連携して行う中高生を対象とするヤングケアラーに関する調査については、介護や家の手伝いをしている子ども本人を含めた中高生に、ヤングケアラーとしての認識や学校生活への影響を、学校およびスクールソーシャルワーカーを対象とする調査には、ヤングケアラーの把握や対応状況を項目に加える予定。
また、子ども以外のケアラーに関しては、ケアラー本人の就労への影響と相談機関に対する具体的な相談内容を項目として追加することを考えている。
なお、調査方法については、個人が特定されないよう留意し、道のホームページを通じて回答する方式なども検討している。有識者会議で議論をいただき、決定したいと考えている。
Q三好委員 ケアラーへの効果的な支援に向けて、道としてどのように取り組んでいく考えなのか伺う。
A京谷少子高齢化対策監 今後の取組について。本道は、全国を上回るスピードで高齢化が進行しているほか、人口に占める障がいのある人の割合も年々増加傾向にあるなど、今後も介護や日常生活の支援を必要とする人の増加が見込まれている。
道では、これまで、高齢者保健福祉計画や障がい者基本計画などに基づいて、高齢者や障がいのある人が地域で安心して暮らすことができるよう、当事者に寄り添った相談支援やサービス提供体制の整備などに努めてきた。今後は、子どもや高齢者、障がいのある人などを支える人の特性に応じた支援にも積極的に取り組んでいくことが重要と認識している。
道としては、早急に実態調査に着手するとともに、先駆的に取り組んでいる道内市町村や他県の状況なども参考に、道内の関係者や有識者会議において意見を伺いながら、効果的な広報啓発の推進など、潜在化しやすく、自らにもその自覚がないなど、様々な課題を抱えているケアラーを確実に相談支援につなげられるような道民の認知度を高めるための方策や、国のプロジェクトチームが指摘している課題への対応などについて議論を重ね、ケアラーとその家族が安心して生活できる社会の実現に取り組む考えである。
P三好委員 若い世代のヤングケアラー等への支援については、これから、高齢者、障がいのある人が安心して地域で暮らすことができる社会づくりを進める上においても、また、若い世代の人の状況においても重要な課題であると考える。
◆子の貧困対策
Q壬生委員 平成27年における母子世帯の就業率は、全国平均の80・8%に対して、北海道は77・6%となっている。雇用形態は、正規職員が全国平均を3%下回り、非正規職員が4%近く上回っている状況にある。
道として、コロナ禍における母子世帯の困窮実態をどう把握し、具体的な支援策を講じているのか伺う。
A手塚自立支援担当課長 母子世帯への対応について。道では、感染症の流行が長期化する中で、道母子寡婦福祉連合会などの当事者団体や、母子家庭等就業・自立支援センターなどの支援機関から、ひとり親世帯の状況として、営業自粛による労働時間の減少や解雇によって収入が減少し、食費や教育費のねん出に苦労していることや、支援制度の詳細を教えてほしいなどの意見があると伺っている。
このため、道では、解雇などによって家計が急変した世帯も含めた低所得の子育て世帯への特別給付金による経済的支援などを行っているほか、ひとり親世帯の意見も踏まえ、各振興局の相談員によるそれぞれの家庭の事情や不安に寄り添った相談支援や、各種支援策に関するパンフレットを配布するなどして、母子家庭等就業・自立支援センターなどの相談機関の活用や、食事の提供を行う子どもの居場所等の利用を啓発している。
Q壬生委員 コロナ禍における子どもの居場所づくりについて。子ども食堂の数は、令和3年4月末時点で62市町村、226ヵ所と承知しているが、活動を休止、廃業した子ども食堂の数を伺うとともに、どのような背景があって、こうした状況に至ったと認識しているのか伺う。
A手塚自立支援担当課長 子ども食堂の状況等について。ことし4月末時点における道内の子ども食堂の開設状況は、開設中の子ども食堂が132ヵ所、休止中または運営状況が確認できない施設が94ヵ所となっている。
こうした状況に至った背景としては、子どもの居場所を守るため、必要な感染予防対策を行いながら活動している子ども食堂がある一方で、地域における新型コロナウイルス感染症の感染拡大の状況から、子どもたちを集めて食事提供することは感染リスクが高いとして、休止を選択せざるを得ない子ども食堂もあるものと認識している。
Q壬生委員 道として、コロナ禍において、子どもの居場所づくりに取り組むNPO団体が活動を継続していくために、どのような支援を行っていくべきと考えるのか伺う。
A手塚自立支援担当課長 子どもの居場所づくりへの支援について。道では、これまで、各振興局に設置している地域ネットワーク会議を活用し、道内の民間団体、企業などに対し、子どもの居場所の運営に必要な食材や衛生用品のほか、ボランティアの確保等への支援を働きかけるとともに、道のホームページを活用し、全国の企業、団体などにも協力を呼びかけ、食材提供の支援を申し出ていただいた民間企業との連携協定の締結などにも取り組んでいる。
今後は、民間のフォーラムなどで発表された運営者と支援を申し出ている企業などとのマッチング事例や、感染予防対策に配慮しながら運営を続けている好事例を各地域で実施する研修の場で幅広く紹介するとともに、課題を抱える運営者に対しては、電話相談やアドバイザー派遣による重点的な対応などによって、活動継続への支援に取り組んでいく。
Q壬生委員 道として、感染防止対策について、どのように支援しているのか、また、支援策の周知方法について伺うとともに、直近の申請・給付状況はどのようになっているのか伺う。
A手塚自立支援担当課長 感染防止対策に関する支援について。道では、企業から支援いただいたアルコール消毒液等の支援物資を子ども食堂に届けるなどの取組を進めるとともに、『子どもの居場所づくりの手引き』に感染症対策の項目を追加するなどして運営主体を支援してきた。
国では、子どもの居場所における感染防止対策を支援するため、つながりの場づくり緊急支援事業を実施しているが、この事業は、本年度から市町村が新たに運営を委託するNPO法人が対象とされており、現在、運営を委託されている法人は対象外であることから、現状では、市町村から事業内容の照会、相談はあるが、申請には至っていない。
道としては、既存事業者にも活用しやすい制度となるよう、国に対し、事業対象の拡大や弾力的な運用について、あらゆる機会を通じて要望している。
Q壬生委員 第2期北海道子どもの貧困対策推進計画は、昨年3月に改定された。
コロナ禍の状況下、計画は、さらに厳しくなった現状に見合ったものとなっているのか、はなはだ疑問である。現下の状況を踏まえた貧困対策の推進計画に見直すべきだと考えている。所見を伺う。
A京谷少子高齢化対策監 子どもの貧困対策推進計画について。2年度からの第2期計画は、各種実態調査の結果や前期計画までの取組実績を踏まえ、相談支援、生活の支援、教育の支援、保護者に対する就労支援、経済的支援の5つの柱に沿って各種施策を取りまとめるとともに、計画の実効性を確保するため、道独自の指標や目標値を設定して、その達成に向けて取組を推進している。
道としては、新型コロナウイルス感染症の感染拡大による日常の生活環境や経済・雇用情勢の変化が、支援を要する子どもやその家庭に影響を及ぼすことのないよう、実態把握のための各種調査や高等職業訓練促進給付金など、国の事業を活用した新たな事業を実施するとともに、毎年度ごとの既存事業の効果検証や見直しなどによって、コロナ禍においても現行計画が掲げる目標の達成に向けて取組を進め、子どもが夢と希望をもって挑戦できる地域社会を目指していく。
D壬生委員 子どもは、次世代を担う、日本にとっても、北海道にとっても本当に貴重な宝である。
その貴重な宝が路頭に迷うような、貧困にあえぐようなことがないよう、道としてもしっかりと対応していただきたい。
◆児童虐待
Q大越委員 少子化が進行する中で、深刻な児童虐待事例が全国各地で発生し、小さな命を失う痛ましい事件が続いている。
道内の過去3年間の虐待事案で、身体的虐待はどのくらい発生しているのか、虐待事案全体に占める割合はどのようになっているのか伺う。
A手塚自立支援担当課長 児童虐待の発生状況について。児童虐待は身体的虐待、性的虐待、ネグレクト、心理的虐待に区分されており、直近の身体的虐待の件数は、平成29年度は542件で全体の16・8%、30年度は662件で17・6%、令和元年度は789件で19・7%となっている。
Q大越委員 生育過程にある子どもやその保護者、妊産婦に、生育等の過程で必要な医療等を切れ目なく提供するための施策を総合的に推進するため、平成30年に成育基本法が制定され、また、令和元年には、死因究明等に関する施策を総合的、計画的に推進するため、死因究明等推進基本法が制定されている。
この2つの法律によって、子どもが死亡した場合の死亡原因の情報収集や、データを活用するための体制整備、データベースの構築など、必要な施策を講じることとされたことから、こうした流れを受けて、国では、諸外国で導入が進むCDR、いわゆるチャイルド・デス・レビュー、予防のための子どもの死亡検証と呼ばれる取組を進めようとしている。
このCDRの取組とは、どのようなものなのか伺う。
A村上子ども子育て支援課長 CDRについて。18歳未満の子どもの死亡をできるだけ予防することを目的として、医療機関や警察、消防など、複数の関係機関や専門家が、死亡した子どもの既往歴や家族背景のほか、死亡に至る直接の経緯などに関する様々な情報に基づいて検証を行い、効果的な予防策を提言し、必要な施策に反映させる取組と承知している。
Q大越委員 病気や事故などで亡くなった道内の子どもたちの死亡の要因別の状況はどのようになっているのか伺う。
A森政策調整担当課長 死亡要因の状況について。国が公表している人口動態統計によると、道内において元年に亡くなった20歳未満の人数は166人。死因で最も多い要因は自殺の24人、次いで、悪性新生物の17人、循環器系の先天奇形と染色体異常がそれぞれ14人、心疾患が12人、不慮の事故が11人、不慮か故意か不明な事故などのその他の外因が4人となっている。
Q大越委員 CDRは、国内では新たな取組だが、国ではこれまでどのような取組が進められてきたのか、都道府県の取組を支援するため、前年度からモデル事業が実施されていると聞いている。どのような状況になっているのか伺う。
A村上子ども子育て支援課長 国の取組について。国では、28年度から、突然の説明困難な小児死亡事例に関する登録・検証システムの確立に向けた研究に着手するとともに、29年10月には、子どもの死因究明の推進のためのプロジェクトチームを設置して、CDRの実施に向けた検討を開始している。
現在、元年度から本年度までの3年間で、CDR制度を確立するための研究が行われており、子どもの死亡の検証とその予防策を提言する体制の在り方などが検討されている。
また、2年度から都道府県を対象とするモデル事業を創設し、群馬県や京都府など7府県でCDRを試行し、全国的な実施に向けた課題を抽出する取組を行っている。
Q大越委員 道では、これまで、CDRにどのように取り組んできたのか、各都道府県に取組が求められているのであれば、国のモデル事業を活用して、道内の体制整備を進めておくべきと考える。道の見解も併せて伺う。
A竹澤子ども未来推進局長 CDRに関する道の取組について。道では、これまで、CDRに関する国の調査研究の動向について、道内3医育大学や道医師会などの関係者と定期的に情報交換を実施するとともに、昨年からは、国が主催する都道府県担当者向けの説明会にも参加している。
厚生労働省では、今後、早期の制度化も検討していることから、道としては、こうした動きに遅れを取ることのないよう、CDRの実施に必要な体制構築に向けた検討を進めるため、他県の状況や国のモデル事業の採択要件などについて情報収集を進めていく考え。
また、先日、道医師会から、道内におけるCDRの実施について要望をいただいている。今後、医師会とも連携をしながら、医療関係者にCDRへの理解を深めていただくため、小児科医を対象とする研修会の場などを活用しながら、普及啓発を実施していく予定としている。
Q大越委員 児童虐待を防止するためには、児童相談所の機能強化や、市町村、関係団体などとの連携強化といったこれまでの取組に加え、CDRのような新たな施策にも積極的に取り組み、子どもたちが安全・安心に成長できる環境を整備していく必要がある。
今後、どのように取り組んでいくのか、対策監の所見を伺う。
A京谷少子高齢化対策監 児童虐待防止に向けた取組について。新型コロナウイルス感染症への対応が長期化し、周囲が虐待の兆候に気づきにくくなることが懸念される中、児童虐待の相談対応件数は増加し続けており、地域における相談支援や見守り機能の充実など、子どもたちの安全を守る取組が一層重要であると考えている。
道では、これまでも、児童福祉司など専門職員の確保や、研修の充実による職員の資質向上などの児童相談所の体制強化、支援ニーズの高い児童の状況把握や、地域の関係機関の連携強化に取り組んでいる市町村に対する技術的、専門的な支援に努めてきた。
感染症の拡大によって少子化が加速することも危惧される中、今後は、CDRのような新たな視点に立った取組についても積極的に推進し、道としての具体的な対応策を検討するなどして、子どもの安全・安心を守る対策の充実を図り、授かった命を大切に育み、未来の北海道を担っていく子どもたちが健やかに成長することができる環境の整備に努めていく。
◆ヤングケアラー
Q藤川委員 国においては、ことし3月にヤングケアラーの支援に向けた福祉・介護・医療・教育の連携プロジェクトチームを立ち上げて、今後取り組むべき施策を明記した報告書を5月に取りまとめた。その施策は、どのような現状や課題をもとに議論が行われ、どういった内容で取りまとめられたのか伺う。
A手塚自立支援担当課長 ヤングケアラーの現状や課題について。国のプロジェクトチームが取りまとめた報告書では、ヤングケアラーについては、家庭内のデリケートな問題で表面化しにくいこと、地方自治体での現状把握も不十分なこと、社会的認知度が低く、支援が必要な子どもがいても、子ども自身や周囲の大人が気づくことができないといった現状にあり、社会的認知度を上げ、福祉、介護、医療、教育などの関係機関が連携し、ヤングケアラーを早期に発見し、適切な支援につなげることが課題として挙げられている。
このため、今後の支援に向けた施策として、早期発見と現状把握のための地方自治体での現状把握の実施や相談窓口担当に対する研修、支援策の推進に向けては、関係機関の連携やピアサポートなどの実施、認知度向上のための集中取組期間を設定し、イベントなどの広報啓発などに取り組むことなどが示されている。
Q藤川委員 道の実態調査について、今後、道教委と連携して早急に実態調査に着手するとのこと。道が支援のための施策を検討する上で、ケアラーの実態や課題をしっかりと把握することは不可欠である。実態調査はどのような内容で行われるのか伺う。
A杉本介護運営担当課長 実態調査の内容について。道としては、調査対象をケアラー本人や公立の中学校と高校の生徒のほか、地域包括支援センターや障がい者相談支援事業所、さらには、道教委との連携のもとで、学校やスクールソーシャルワーカーにも調査することを想定している。
このうち、個人への調査については、ケアの対象者とその内容、ケアによる自身への影響や悩みのほか、必要とする支援などに加え、大人のケアラーには就労への影響を、生徒にはヤングケアラーとしての認識や学校生活への影響などについても併せて伺う。
一方、相談機関や学校などへの調査は、支援に関する課題などに加え、相談機関にはケアラーからの相談の内容、学校などにはヤングケアラーの把握や対応の方法も伺う。
Q藤川委員 特にヤングケアラーについては、国が昨年12月に全国の公立の中学校と高校を対象に抽出による実態調査を行い、その結果を踏まえて、今後必要とされる施策を取りまとめているということである。この支援の施策は、公立のみならず、私立学校およびその生徒に対しても展開されるべきものである。
今回、調査の対象にはなっていないようだが、今後、こうした点も踏まえた上で、ヤングケアラーをはじめ、ケアラーを積極的に支援するべきと考える。今後、どのように取り組んでいくのか伺う。
A京谷少子高齢化対策監 ケアラーに関する今後の取組について。周囲の無理解などによって、家族が介護をすることは当たり前といった見方もあり、ケアラーは、介護や世話についての悩みを周りに相談することができず、つらい思いを抱えていることや、自分の時間を十分に確保できずに健康を損ねたりすることが心配され、特に、ヤングケアラーは、家族のことを知られたくないなど、支援が必要であっても表面化しにくく、心身の成長や学びへの深刻な影響が指摘されている。
道では、道教委および庁内関係部局が情報共有するための連絡会議および有識者会議をすでに設置し、早急に現状を把握するための実態調査に着手することとしている。特にヤングケラーの調査に当たっては、国が行った実態調査との整合性や設問のボリュームなどにも考慮をしつつ進めたいと考えている。
その後、公立、私立にかかわらず、すべての子どもたちに対する支援方策や、仕事と介護の両立に向けた実効性のある施策などについて、有識者会議において検討を進めることとしており、すべてのケアラーとその家族が将来に希望をもち、自分らしく生活できる共生社会の実現に努めていく。
Q赤根委員 昨年の議会議論で、道児童相談所に寄せられた相談の中には、ヤングケアラーに該当すると思われる事案が昨年10月末時点で24件あるという認識を述べるとともに、さらなる実態把握として、市町村の要保護児童対策地域協議会の登録ケースの中に同様の事案がどの程度あるか確認するとの答弁をいただいた。
ヤングケアラーに該当する事案はどの程度あったのか、また、先の24件も含めて、支援など必要な対応にどのように取り組んできたのか伺う。
A手塚自立支援担当課長 ヤングケアラーの現状把握について。昨年、道が調査した道児相に寄せられた事案以外で市町村の要保護児童対策地域協議会が把握しているヤングケアラーの該当児童数は、昨年11月1日時点で29人であり、児相把握分を合わせると、全道で53人となっている。
こうした児童に対しては、要対協が要支援ケースとしてリストアップした上で、児童相談所や学校など、地域の関係機関による見守りを実施することとしている。このうち、ネグレクト疑いなど、児童虐待の恐れのあるケースについては、児童福祉司が保護者を指導したのが22人、放課後等デイサービスおよび相談支援事業所の福祉サービスの利用に結び付けた児童3人を支援施した。
Q赤根委員 これまでの事案などからみえてきたケアラーを取り巻く現状の課題認識を伺う。
また、いわゆる家族介護者数が本道においてどのように推移をしているのか併せて伺う。
A杉本介護運営担当課長 現状の課題認識について。ケアラーは、介護のため自分の時間を十分に取ることができずに、心身の健康を損なったり、介護に専念するため離職をしてしまうことや、介護が必要な人を家族が介護することが当たり前との見方がある中、周囲の理解が得られず、誰にも相談できないまま、社会から孤立していくことが心配される。
特に、ヤングケアラーについては、家庭内のデリケートな問題で表面化しにくく、自治体での現状把握が不十分であり、支援が必要な子どもがいても、子ども自身や周囲の大人が気づくことができないといった現状にあり、年齢や成長の度合いに見合わない過度な責任や負担を負うことで、子どもらしい成長や学びに深刻な影響があることが懸念される。
家族介護者数の推移について。家族介護者数については、道が独自に調査したものはなく、国において5年に1度実施されている社会生活基本調査の結果では、直近の平成28年度において、15歳以上で、普段、家族に対して日常生活における入浴、衣服の着脱、食事などの際に何らかの介護をしている人の数は、道内において約26万8000人と推計されている。
また、5年前の22年においては、約26万1000人となっており、比較すると7000人増加し、増加率としては2・7%となっている。
Q赤根委員 ヤングケアラーは、とにかく早く現状を把握するということに主眼を置いて、質問項目を有識者会議の中でもんでいただきたい。手法についても、道のホームページはもちろん、LINEとか様々な手法も検討していただきたい。
先ほど、少子高齢化対策監から、ボリューム感にも留意しながらという答弁もあったが、再度、実態調査に向けての道の見解を伺う。
A竹澤子ども未来推進局長 ヤングケアラーに対する実態調査について。中高生への調査については、多くの人に回答いただけるよう、回答者に過度な負担をかけず、また、回答しやすくなるよう留意させていただくほか、ウェブ方式以外の効果的な方法についても、有識者からも意見をいただき、時間軸にも十分留意をして、具体的な検討を進めていく。
Q赤根委員 実態調査や条例制定はもとより、具体の支援計画、さらには支援策の検討にも着実に取り組んでいくべきと考える。
有識者会議の役割も含めて、道の見解を伺う。
A杉本介護運営担当課長 有識者会議について。道では、ケアラー支援の検討を進めていくためには、幅広い意見を伺う必要があると考えており、先日、学識経験者や支援団体、当事者など、有識者の了承を得て、会議を設置した。
この有識者会議においては、まずは、早急に実施する実態調査について、調査対象や具体的な調査項目、実施方法などについて議論いただくこととしており、その後、調査結果を踏まえるなどしながら、専門的な見地や、支援者や当事者としての立場から、ケアラーについての道民の理解を深めていくための方策や、早期発見など、ケアラーへの支援方策について議論いただくこととしている。
Q赤根委員 ケアラーを取り巻く状況はそれぞれ異なる。支援などの対応がいかに複雑なものかということもあらためて感じる。
こうした状況を踏まえると、支援体制の構築に当たっては、行政のみならず、医療、福祉、教育、地域からなる重層的な体制をまさにオール北海道で構築していく必要があると考える。所見を伺う。
A杉本介護運営担当課長 ケアラーを支援する体制について。ケアラーは、子育てや仕事をしながら家族の介護をしている場合や、高齢者が高齢者を介護している場合、さらには、子どもが、きょうだいや親、祖父母の世話をしている場合があるほか、ケアを必要としている人も、認知症などの病気になっていたり、障がいがあるなど、様々な状況にあることが考えられる。
このため、福祉や介護、医療、教育の関係機関が連携を密にして、ケアラーの早期発見や支援につなげることが不可欠であるほか、複雑な問題を抱えるケアラーに対しては、切れ目のない支援を行うことが必要である。
今後、有識者からも意見を伺うなどしながら、それぞれの地域の特性や社会資源に応じた支援体制の在り方を検討していきたいと考えている。
Q赤根委員 埼玉県は、令和2年3月に全国初のケアラー支援条例を制定した。3年度から3年間の支援計画をスタートさせ、ヤングケアラーが悩みを相談できるオンラインサロンや元ヤングケアラーとの交流促進をはじめ、市町村の福祉関係課や教育委員会の職員、さらには学校教職員の合同研修といった支援体制の強化、地域の人材を活用した学習支援などを進めていると承知している。
国も、11月11日を「介護の日」と定めているが、一足早くケアラー支援条例を制定した埼玉県においては、11月をケアラー月間と定めて、集中的な取組をはじめ、元ヤングケアラーなどを講師とした広報啓発、人材育成、支援体制の構築など、具体的な取組が始まっている。ぜひ、北海道でも参考にすべきと考える。
ケアラー支援条例の制定、さらには支援計画の策定には、当然ながら一定程度の時間を要することからも、現実的に今苦しんでいるケアラーに対して、可能な限りの支援が行き届くように早急に対応すべきと考えるが、見解を伺う。
A吉田高齢者支援局長 当面の対策について。日常的な介護や看病などの支援が必要な人の中には、適切に公的サービスにつながっていないケースも想定され、地域包括支援センターや障がい者相談支援事業所における相談支援の一層の充実や、居宅介護支援事業所などにおける、より適切なケアプランの作成について周知を徹底し、こうした人へ可能な限り迅速に適切なサービスにつなげていく必要がありる。
また、子どもの育ちや学びに影響を与える可能性のあるヤングケアラーについては、実態調査と並行して、道母子寡婦福祉連合会などの関係団体や連携協定を締結している大学の協力をいただきながら、ヤングケアラーと年代の近い学生に、同じ世代としての問題意識を聴く場を設けることや、効果的な啓発活動について提案を募集するなどの取組を進める考えである。
さらに、本年度は、ヤングケアラーを含むケアラーの社会的認知度を上げるため、道民に対するシンポジウムを開催することとしており、こうした取組も着実に実施しながら、ケアラーに必要な支援が届くよう取り組んでいく。
Q赤根委員 国は、11月11日を介護の日と制定しており、埼玉県も11月を集中月間としている。
シンポジウムは、11月の開催を目指すというような受け止めでよいのか確認する。
A吉田高齢者支援局長 シンポジウム等について。道では、毎年、広く道民を対象として、高齢者の介護や権利擁護などのシンポジウムを開催してきており、本年度は、ダブルケアや老老介護、ヤングケアラーといったケアラーをテーマとしたシンポジウムを年内を目途に開催する予定として考えている。
Q赤根委員 実効性のあるケアラー支援条例の制定や支援計画の策定にどのように取り組んでいくのか。
条例と計画を同時進行で、スケジュール感も含めて、しっかりと取り組んでいくことが大事だと考える。所見を伺う。
A京谷少子高齢化対策監 今後の取組について。家族や知人などの介護や看病をしている人の中には、自分の時間を十分に確保することができなく健康を損ねたり、周囲の理解が得られずにつらい思いを抱えていることなどが心配をされ、特にヤングケアラーについては、家族のことを知られたくないなど、支援が必要であってもなかなか表面化しにくく、心身の成長や学びへの深刻な影響が指摘をされていることから、早期発見と適切な支援に結び付けていくことが何よりも重要と認識している。
このため、道としては、現状把握のための実態調査に早急に着手し、その上で、今般設置した有識者会議の意見も踏まえながら、様々な支援方策の検討を進めるとともに、特に、ヤングケアラーへの支援に向けては、関係団体などの協力のもと、同世代からの効果的な啓発活動への提案募集とか、シンポジウムの開催といった、ケアラーに関する道民の社会的認知度を高めるよう努めるなど、ケアラーとその家族の誰もが将来に希望をもって、安心して生活できる共生社会の構築に向けて取り組んでいく。
Q阿知良委員 道では、道教委とも連携しながら、ヤングケアラーも含めたケアラーの実態調査を行うものと承知している。実態を的確に把握することが、よりよい支援方策にもつながると考えている。国の調査との整合性も含めて、実態調査の内容はどのようなものになるのか伺う。
A杉本介護運営担当課長 実態調査について。この調査については、国が行った実態調査との整合性も考慮しながら、詳細を確定する予定。
調査対象としては、ケアラー本人や公立の中学校と高校の生徒のほか、地域包括支援センターや障がい者相談支援事業所、さらには、学校とスクールソーシャルワーカーを想定している。
このうち、個人への調査では、ケアの内容、自身の悩みやケアによる影響のほか、必要とする支援などに加え、大人のケアラーに就労への影響を、生徒に対してはヤングケアラーとしての認識や学校生活への影響などについても併せて伺う予定。
一方で、相談機関や学校などへの調査については、支援に関する課題などに加えて、相談機関にはケアラーからの相談の内容、学校などにはヤングケアラーの把握や対応の方法も伺うことを予定している。
Q阿知良委員 いわゆる骨太方針2021にも、「ヤングケアラーについて、早期発見・把握、相談支援など支援策の推進、社会的認知度の向上などに取り組む」とされているように、早急に支援方策を検討すべきと考える。ケアラーに対する支援について、道としてどのように取り組んでいくのか、所見を伺う。
A京谷少子高齢化対策監 今後の対応について。ケアラーは、家族が介護をすることは当たり前という見方がある中で、介護や世話で生じる悩みを周りに相談することができず、つらい思いを抱えていたり、介護によって自分の時間を十分に確保することができずに健康を損ねたりすることが心配されている。特に、ヤングケアラーについては、心身の成長や学びへの深刻な影響が指摘をされていることから、早期発見と適切な支援が重要である。
このため、道では、道教委および庁内関係部局による連携会議と、幅広い分野の人に参画いただく有識者会議を設置したほか、現状を把握するための実態調査に早急に着手することとしている。
今後とも、有識者会議において様々な観点から意見を伺いながら支援方策の検討を進め、ケアラーとその家族が地域で安心して暮らすことができる社会の実現に努めていく。
(道議会 2021-09-30付)
その他の記事( 道議会)
道議会一般質問(令和3年9月29日) リーフレット作成 保護者に広く周知 コロナ禍での子の心のケア
コロナ禍における子どもの心のケアが取り上げられた。 倉本博史教育長は、感染症に関する偏見などをなくすためにできることについて考える学習を、道徳や特別活動などで実践するようあらためて指導...(2021-10-04) 全て読む
予算特別委員会 6月29日
【Q 質問Question A 答弁Answer P 指摘Point out O 意見Opinion D 要望Demand】 【質問者】 ▼佐藤禎洋委員(自民党・道民会議) ▼渕上綾子...(2021-10-04) 全て読む
道議会一般質問(9月28日) 提案受ける仕組み整え総合的に検討
◆近代美術館の在り方 道立施設の今後の在り方について質疑が行われた。 道教委の倉本博史教育長は、道立図書館に関し、平成30年度に実施した長寿命化建物診断で適切な改修工事によって使用可...(2021-10-01) 全て読む
道議会一般質問(9月28日) 学校訪問など通し速やかな策定指導
◆学校の業務継続計画 学校における業務継続計画(BCP)が取り上げられた。 道教委の倉本博史教育長は、大規模災害発生時にあっても学校で適切な業務を行うため、校内に避難所を開設する応急...(2021-10-01) 全て読む
道議会一般質問(9月28日) 再開へ個別相談貧困家庭を支援
◆子どもの居場所確保 子どもの居場所の確保が取り上げられた。 鈴木直道知事は、新型コロナウイルス感染症の流行が長期化することで、子ども食堂をはじめとする子どもの居場所の多くが開設時間...(2021-10-01) 全て読む
3定道議会一般質問(令和3年9月27日) 支援員配置を促進 外部人材の活用を ICTの効果的活用
27日の3定道議会一般質問では、ICT支援員の配置促進に向けた方策について質疑が行われた。 道教委の倉本博史教育長は、学校がICTを効果的に活用して主体的・対話的で深い学びの実現に向け...(2021-09-29) 全て読む
職員定年引き上げ在り方を検討へ 3定道議会で知事
21日の3定道議会代表質問では、道職員の定年の引き上げについて質疑が行われた。 鈴木直道知事は地方公務員法の法改正による定年の引き上げに関し、人材確保の効果が期待される一方、継続的な新...(2021-09-27) 全て読む
3定道議会代表質問(令和3年9月17日)他県の事例収集し 関係団体と連携を 休日部活動地域移行
17日の3定道議会代表質問では、休日部活動の地域移行について質疑が行われた。 道教委の倉本博史教育長は、国の委託を受けて本年度から開始した地域部活動の実践研究の成果や課題を整理し、他県...(2021-09-22) 全て読む
3定道議会代表質問(令和3年9月17日)小学校から12年間 一体的に取組推進 学力向上
17日の3定道議会代表質問では、学校段階間の連携による学力向上が取り上げられた。 道教委の倉本博史教育長は、全国学力・学習状況調査や道独自の高校の学力テストなどの結果を踏まえ、各教科に...(2021-09-22) 全て読む
3定道議会代表質問(令和3年9月17日) 相談機会確保など 体制構築へ取組 ヤングケアラー支援
17日の3定道議会代表質問では、ヤングケアラーへの支援について質疑が行われた。 道教委の倉本博史教育長は、道が実施した実態調査を踏まえ、ヤングケアラーへの一層の理解の促進と状況に応じた...(2021-09-22) 全て読む