道議会文教委員会の質問・答弁概要(28年4月5日)(道議会 2016-07-06付)
道議会文教委員会(四月五日開催)における丸岩浩二委員(自民党・道民会議)、山崎泉委員(北海道結志会)の質問等、および梶浦仁学校教育監、北村善春学校教育局長、伊賀治康教職員課服務担当課長、河原範毅高校教育課長の答弁の概要はつぎのとおり。
◆教科書発行者の点検・検証
―意見―
丸岩委員 小・中学校の教科書採択に関連した問題について申し上げておく。
前回の委員会で、関係教員に対する処分について伺ったところ、東京都教委の事例なども参考にしながら、事実関係や、当時、管理職などの指導的な立場にあったかなどを勘案して、判断したいという趣旨であった。
報告を伺って、減給一ヵ月や戒告という重いものが含まれていることから、道教委として厳しい処分をしたものと受け止めている。
一方、昭和三十八年に義務教育の教科書を無償とする法律が制定されてから、採択をめぐる教科書出版会社と義務教育関係者の癒着を疑わせる事案が、たびたび指摘されてきた経緯もあると聞いている。
どのような行為が禁止されているのか、過去にどのような違反事例があったのか、教科書を出版している会社が一番詳しい。このたびの一件も、最も批判されるべきは教科書会社であると考えている。
三月の文教委員会で伺ったが、当時の教育部長から、「道内に支社や出張所を置いている発行会社を個別に訪問し、法令にのっとり教科書採択の公正確保を図るよう強く申し入れを行った」という趣旨の答弁をいただいた。
また、このたびの調査結果を踏まえ、道教委として、三月末に、道内の教科書発行関係者を集め、疑念を抱かせる行為を再び行わないよう、強く申し入れたと承知している。
文部科学大臣は四月一日、閣議後の記者会見で、「不適切な行為が採択に不公正な影響を与えた場合は、採択権者の判断で、採択替えを可能とする省令改正を行う」と述べたと聞いている。
そのような事態を招かないように、道教委として、今後とも、採択時期には教科書会社に対して、このようなことがないよう強く注意を促すべきと、あらためて申し上げておく。
また、市町村教委や各学校においても、二度とこのような批判を招くようなことがないようにしなければならない。そのため、校長会や教頭会などを中心にしながら、後輩に対してきちんと申し送りが行われるよう、指導すべきであるということを申し上げておく。
◆18歳選挙権に関する対応
山崎委員 一九四五年以来、七十年ぶりの抜本的な改正の中で、十八歳、十九歳が約二百四十万人増えると予測されるが、道教委として、公職選挙法に関する所見を伺う。
河原高校教育課長 公職選挙法の改正について。選挙権年齢を十八歳以上に引き下げることとしたこのたびの法改正は、将来、わが国を担っていく世代である若い人々の意見を、国の在り方を決める政治に反映させていくことが望ましいという考え方に基づくものであると認識している。
道教委としては、生徒が有権者として自らの判断で権利を行使することができるよう、各学校に対して、政治参加の重要性や選挙の意義についての理解を深め、様々な課題を多面的・多角的にとらえ、根拠をもって自分の考えを主張しつつ、他人の考えに耳を傾け、合意形成を図っていくという政治的教養を育む教育の一層の充実を図るよう指導していく。
山崎委員 新年度が始まって、間近に参議院議員選挙が迫るこの時期の中で、具体的に道教委としてどのような事業、取組を行っていくのか伺う。
河原高校教育課長 新年度からの取組について。高校等においては、これまでも、学習指導要領に基づき、公民科の授業において、政治参加の重要性や選挙の意義についての理解を深める学習を行ってきているが、昨年九月、国から、有権者として身に付けるべき資質や選挙の実際、議員や政党の果たす役割等についての解説や実践的な学習内容を紹介した高校生向けの副教材『私たちが拓く日本の未来』が各高校等に配布された。
本年度においても、各学校では、この副教材のほか、道教委が作成した道内の高校生向けの指導資料を活用するなどして、これまでの学習に加え、教科「公民科」や、総合的な学習の時間等において、選挙管理委員会などと連携した出前講座や模擬選挙等の実践的な学習などを実施することとしている。
山崎委員 出前講座や模擬投票などを含め、今までも各学校ごとに取り組んでいるところはあるにしても、何もしていないところもある。ほかの学校も含めて、「こういうことがある」と事例を紹介していかなければならないと、前回、指摘した。いろいろな講座や模擬投票が可能ではないかと考える。
スウェーデンのように、子どもたちの議会を開いて、実際の担当者が答え、身近に感じることも、必要ではないか。そして、その取組のねらいがなくてはならないと考える。道教委の所見を伺う。
河原高校教育課長 取組のねらいについて。このたびの選挙権年齢の引き下げなどを契機として、高校生には国家・社会の形成者としての資質や能力を育むことが一層求められており、授業において、民主主義の意義や選挙の仕組みなどの政治や選挙に関する知識に加え、現実の具体的な政治的事象も取り扱い、有権者として自らの判断で権利を行使することができるよう、政治的教養を育む教育を一層推進することが大切であると考えている。
山崎委員 国が配布した副教材の取扱いについて、どのように進めていくのか伺う。
河原高校教育課長 国が配布した副教材について。このたび、総務省および文部科学省が作成した高校生向け副教材『私たちが拓く日本の未来』は、解説編、実践編、参考編の三編から構成され、それぞれの編においては、選挙の実際についての解説、模擬選挙や模擬議会などの進め方、投票と選挙運動に関する質疑応答などが示されており、自分が暮らしている地域の在り方や日本・世界の未来について調べ、考え、話し合うことによって、国家・社会の形成者として現在から未来を担っていくという公共の精神を育み、行動につなげていくことを目指したものである。
道教委としては、国が作成したこの副教材等に加えて、道教委が作成した道内の高校生向けの指導資料を活用し、政治や選挙に関する知識に加えて、現実の具体的な政治的事象も取り扱い、有権者として自らの判断で権利を行使することができるよう、具体的かつ実践的な指導を行うことについて、「教育課程研究協議会」等を通じて、各学校に対し、指導助言していく。
山崎委員 生徒たちが「どこまで、どうしたらいいのか」という部分も、疑問があるのではないか。例えば、愛媛では、政治活動の届出を校則化したといった話もある。
生徒の構外の政治活動については、道教委としてどう考えているのか伺う。
北村学校教育局長 生徒の構外での政治的活動について。国の通知において、放課後や休日等に学校の構外で行われる高校生による政治的活動等については、家庭の理解のもと、生徒が判断し、行うものとしているが、生徒の学業や生活などに支障があると認められる場合や、学校教育の円滑な実施に支障があると認められるなどの場合には、学校において、適切に指導を行うことが求められており、道教委としては、道の選挙管理委員会とも連携を図りながら、今後、各学校に対し、公職選挙法上のより具体的な留意点などについて、周知をしていく考えである。
山崎委員 家庭の理解のもとに生徒が判断するということであるが、学業や生活などに支障があると認められる場合とはどういった場合なのかも含めて、きちんと例示していかなければならないのではないかと考える。学校内では、生徒として、どのようなことができて、どのようなことができないのかも含め、構内の政治活動に対してどう考えているのか伺う。
河原高校教育課長 生徒の構内の政治活動について。国の通知においては、放課後や休日等であっても、学校の構内での選挙活動や政治的活動については、学校施設の物的管理上での支障、他の生徒の日常の学習活動への支障、その他学校の政治的中立性の確保等の観点から、教育を円滑に実施する上での支障が生じないよう、制限または禁止することが必要としており、道教委としては、こうした考え方を十分踏まえ、各学校において、適切に指導を行うことが必要であると考えている。
―指摘―
山崎委員 国の通知における禁止、制限は理解できるが、学校の中で、「何がどこまで、どういうふうに制限されるのか」「何が禁止されるのか」を明確にしていかなければならない。それは、国がやるのかといえば、学校の内部の校則というか、学校が決めることであるから、この点は、道教委としても整理しなければならないことではないかと思う。
また、公平性が保たれなければならないと思う。
そういった部分も含めて、これから整備して、考え方を示していくということであるから、きちんと早めに整理していただきたい。
◇ ◇ ◇
山崎委員 罰則も含めて、教員の政治活動について、どのように、道教委が所見をもっているのか伺う。
伊賀教職員課服務担当課長 教員の政治的中立性の確保について。教育公務員は、教育基本法に定める教育の政治的中立性の原則に基づいて、特定の政党の支持または反対のために政治的活動をすることが禁止されており、選挙運動等の政治的行為の制限等についても、公職選挙法および教育公務員特例法に特別の定めがなされている。
道教委としては、教員による選挙運動など、法令に違反する行為はもとより、教育の政治的中立性を疑わしめる行為によって、学校教育に対する道民の信頼を損なうことのないよう、服務規律の保持について指導しているが、仮に法令等に違反する行為があった場合には、厳正に対処していく考えである。
山崎委員 今回、直近の参議院議員選挙から施行され、対象者は三年生になる。この時期は、高体連やスポーツのイベント、大会などがあり、高校三年生からしてみれば、受験前や就職前の最後の夏という重要な時期であって、土・日となると、ほとんどが大会、試合、合宿、練習などで埋まっている時期である。
その中で投票率を上げていくことを考えていかなければならないが、その点について、どのように考えているのか伺う。
河原高校教育課長 イベントが多い時期の選挙について。実際の投票に向けては、学校行事等によって、生徒が投票日当日に投票することが困難となる場合も考えられることから、道教委としては、今後、各学校に対し、学校行事等の日程の設定に当たっては、投票日に留意するとともに、生徒が有権者としての権利を行使することができるよう、道選挙管理委員会とも連携を図りながら、期日前投票、不在者投票といった制度の内容等について生徒に周知を図るよう指導していく。
―指摘―
山崎委員 大会をずらすことは、短期間の中で不可能に近い中、期日前投票は、非常に有効だと考える。道教委として、今の生徒の立場を考えながら、どう自治体と連携をとって、投票率向上につなげていくかを積極的に提案や提言、協働していかなければならないと考える。
例えば、学校内投票所の設置だとか、期日前も含め、出前で投票に行く考え方。帯広に住民票があって、札幌の高校の寮にいる生徒への対応なども含めて考えなければならないのではないか。
参議院議員選挙前にきちんと整理していただきたい、取り組んでいかなければならない。
◇ ◇ ◇
山崎委員 高三の時期は、十七歳と十八歳が混在している。構内でやれること、やれないことも含めて、整備しなくてはならないが、混在している中で、どのように指導を進めていくのか、見解を伺う。
梶浦学校教育監 年齢の異なる高校三年生の指導について。満十八歳以上の生徒と満十八歳未満の生徒では、選挙権の有無や選挙運動などにおいて、法律上の差異があることを十分理解させる必要があることから、国が作成した副教材『私たちが拓く日本の未来』の教師用指導資料では、例えば、満十八歳未満の者が満十八歳以上の者に対して、自分が支持している特定の政党や候補者に投票するよう呼びかけたりする場合や、満十八歳以上の者が満十八歳未満の者を使用して選挙運動を行ったりする場合などは、公職選挙法に違反するおそれがあることなどが示されている。
道教委としては、各学校に対し、こうした留意事項を十分踏まえ、生徒が違法な選挙運動を行うことがないよう指導するとともに、政治的教養を育む教育の一層の充実を図るよう指導していく考えである。
(道議会 2016-07-06付)
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