札幌市教委の30年度教育方針説明会 長岡教育長があいさつ 転んでも起き上がれる力を(市町村 2018-03-05付)
札幌市教委・長岡豊彦教育長
札幌市教委の三十年度教育方針説明会(三月一日付1面既報)では、長岡豊彦教育長があいさつした。長岡教育長は、生きる力や体力の重要性を強調するとともに、教育を次の世代に引き継いでいくため、職員と意思疎通を図るなど、人材育成に取り組むことを求めた。
長岡教育長のあいさつの概要はつぎのとおり。
◇
◆生きる力を育成
それでは、私から三点についてお願いする。
まず一つ目は生きる力。これをぜひ子どもたちに身に付けさせたいと強くお願いする。
昨年、神奈川県座間市で考えられない事件が起こった。我々の育った時代・環境では到底考えられないような事件で、座間市の事件はまさにSNSを使った事件。子どもたちの生きる力が我々の時代と比べてどうなっているのかと考えさせられた事件だと思う。
社会について一層変化が予想される中で、私たちが子どもたちに生きる力のほか、さらに転んでも起き上がれるようなそういった教育を子どもたちにぜひ、備えてあげなければいけないと思っている。
新学習指導要領の全面実施、それに伴った移行期間が迫っている。各学校においては、新学習指導要領の趣旨や内容、移行期間の内容について十分理解を深めて、新しい教育課程の編成を行うことが必要であり、それに向かっての準備を進めてほしい。
また、その学習効果の最大化を図るカリキュラム・マネジメントの確立についても求められている。各学校が現在実行している「学ぶ力」育成プログラムを有効に活用することをお願いする。また、常に見直しや改善が必要になると思うので、そういったプログラムをつくって今の子どもたちに寄り添うような形での検証、その上でのPDCAサイクルによって新たな取組を進めてほしい。
市教委でも、多くの先生の力添えをいただきながら、教育課程編成の手引などを作成している。私どもとしても、皆さんと連携を深めながら、取組を進めていきたいと考えているのでよろしくお願いしたい。
◆体力は生活の基盤
二つ目は体力について。体力は一生涯、生活の基盤となるもの。この年になると、知力・気力・体力の中で一番重要なものを考えると、体力だと私は思う。気力があっても体力がなければ、前に向かって物事を進めていきたい、いろいろなことをしたいと思ってもできないことがある。
今回の平昌オリンピックは非常にいい機会だったと思う。カーリング女子のコメントで「私は北見に育ってよかった。北見にいなければこの銅メダルは獲得できなかった」という感想があった。様々な場所で活躍できるのは、気力はもちろんだが、体力が伴わなければならない。
各学校で「健やかな身体」育成プログラムを通じて取組を進めていると思う。二十九年度全国体力・運動能力、運動習慣等調査について、市では若干ながら数値が上昇した。なお一層、子どもが自分の伸びを実感・体感できるような取組を進めてほしい。
◆家庭への情報発信を
三つ目は家庭との連携について。生活習慣がしっかりしていれば、学習習慣も運動習慣も必然的に備わると考えている。家庭と連携して、生活習慣を子どもたちに身に付けさせてほしい。
家庭を動かすためには、一層の発信力を強めるほか、家庭を振り向かせる努力、知ってもらうための努力が必要。市には十四万人の幼児児童生徒がいる。家庭では九万世帯ほどで、一%がこちらを向くと一千世帯の数になる。一〇%であれば一万世帯の子どもたちが生活習慣をしっかりすると思う。
地道な積み重ねが大きな力となるので、家庭にこちらを向いてもらい、一緒になって取組を進めることをお願いする。また、「さっぽろっこ“学び”のススメ」についても有効に活用してほしい。
◆人材育成のため意思疎通図って
最後に人材育成について。今、私がいるのも、皆さんがいるのも育ててくれた人のおかげだと思う。
釈迦に説法だが、人材育成は私たちがつぎの世代にバトンタッチする上で必ず必要なので、ぜひお願いしたい。
人材育成をする上で同僚・部下に対して、まず、かかわりを十分にもつほか、コンセンサスを得ることが必要。リーダーはいつでもどこでも誰とでも、一日に何回でもコンセンサスを得るなど意思疎通を図る必要があると思う。
それがなければ、職員は「やらされ感」をもち、真剣に情熱的に意欲的に仕事に向かうということはないと思う。ぜひ「やらされ感」が消えるように、本人が自発的・自主的にその仕事に向かうことができるように取り組んでほしい。
コンセンサスを得て、職員が納得することで、初めて自発的・自主的な行動につながるのではないかと思う。「やらされ感」ではなくて自発的・自主的に取り組むことは、個人の成長に当然つながる。
また、職員に「任せる」というマネジメントが非常に大事だと思う。山本五十六の格言に「話し合い、耳を傾け、承認し、任せてやらねば人は育たず」という言葉がある。
承認して、褒めるということで人は本当に見違えるほど大いに育つ。それは、そのときどきのリーダーによる人材育成。つまり、自発的・自主的に取り組むことを促し、そして任せて、成功体験を積ませることだと思う。
◆管理・監督者の責任
最後に大事なこととして、管理・監督者は責任をとるということ。中にはなかなか結果がうまくいかないことがあり、職員のせいにしたり、運が悪かったなどと思う人もいると思うが、最終的な責任は管理・監督者になる。
また、コンセンサスの対極にあるのはハラスメントだと思う。私も仕事上で何度か前に進もうとしたときに、抑止されたことがある。やっていけないのは自分の思いどおりでないと気が進まない、感情的になる、高圧的になるといった行動。これはモチベーションが非常に落ちる。
こういったハラスメントについて、自分は大丈夫と思う人が多い。私もやることがあるのかもしれないし、やってはいけないと思っていてもつい顔に出ることもあるのかもしれない。
しかし、我々は管理・監督者の立場として、職員の同意を得て、その上で自発的に取り組ませるということを心がけてほしい。自信をもって、しかし、謙虚に取り組んでほしいと思う。
繰り返しになるが「夢を応援する教育でありたい」「転んでも起き上がれるような教育でありたい」ということを最後に私の願いとして、三十年度に向け、市教委と皆さん方が力を合わせて連携して、取組を進めさせていただければと思う。
そのことを強くお願いして、私からのあいさつとさせていただく。
(市町村 2018-03-05付)
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