モデル3地区でCS導入 旭川市教委の30年度教育行政執行方針
(市町村 2018-03-06付)

旭川市赤岡昌弘
旭川市教委・赤岡昌弘教育長

 【旭川発】旭川市教委の赤岡昌弘教育長は、二月二十日開会の市議会第一回定例会で三十年度教育行政執行方針を説明した。小中連携・一貫教育の考え方を踏まえ、地域まちづくり推進協議会等と連携して、三つのモデル地区でコミュニティ・スクールを導入するほか、小学校の外国語活動の対応について、外国人英語指導助手に加え、新たに英語が堪能な地域人材を外国語活動サポーターとして派遣することなどを提示。旭川市教育大綱の基本方針「主体的に学び力強く未来を拓く人づくり」の実現を目指し、社会に開かれた、市民の信頼と期待に応える教育行政を推進していく考えを表明した。

 執行方針の概要はつぎのとおり。

◆学校教育

▼基本的な考え

 学校教育基本計画に基づき、四つの重点的な取組を進めるとともに、新学習指導要領の趣旨を踏まえ、家庭や地域社会と連携・協働して、信頼される学校づくりを推進する。

 学校教育基本計画は、三十年度で計画期間が終了することから、新学習指導要領のほか、国・北海道の動向、教育行政の課題、各学校の取組や成果などを踏まえ、新しい計画を策定する。

▼家庭や地域に開かれた信頼される学校づくりの推進

 小中連携・一貫教育については、推進プランに基づき、小学校と中学校が九年間を見通した教育活動に取り組むことを促進する。

 このため、小・中学校の通学区域の見直しに向け、関係する保護者や地域住民との協議を進めるとともに、小中連携モデル校である旭川小学校と旭川中学校においては、引き続き施設一体型の学校としての増改築工事を進め、三十一年一月に開校する。

 また、小・中学校が連携することによって、それぞれの学校を核とした地域との連携が一体的に進められ、連帯意識がさらに高まるなどの小中連携・一貫教育の考え方を踏まえながら、地域まちづくり推進協議会等と連携し、三つのモデル地区で、学校・家庭・地域が一体となって地域総がかりで子どもたちを育むコミュニティ・スクールを導入する。

 日々、児童生徒に向き合っている教職員は、教育公務員としての高い規範意識をもち、心身ともに健康で職務を遂行することが重要である。

 このため、教職員の研修や校長会議などを通じて服務規律の保持を徹底する。

 また、保護者や地域住民などの期待に応えられるようキャリアステージに応じた各種研修を充実し、教職員の資質・能力の向上を図る。

 一方で、教員勤務実態調査の結果から、教職員の長時間勤務の実態が看過できない状況であることが明らかになっている。市では子どもと向き合う時間の確保にも資する取組として、少人数学級編制による教員や特別支援教育の補助指導員、学校司書などを配置し、それぞれ所期の目的は果たしているものの、長時間勤務は解消していないことから、今後、長期休業の活用による学校閉庁日の設定や時間外勤務の削減に向けた業務改善方針の策定など働き方改革を進めるとともに、管理職を対象としたマネジメント研修を通して学校の意識改革を図る。

▼確かな学力を育成し、社会で自立的に生きていく基盤を培う教育の推進

 現在、策定中の旭川市確かな学力育成プランに基づき、各学校における教育活動を支援し、学力の向上を図る。このため、小・中学校それぞれ二校を指定している授業力向上実践研究推進事業を引き続き実施し、新学習指導要領の趣旨なども踏まえながら実践を積み重ねるとともに、その成果を全小・中学校で共有し、各学校の取組の充実に努める。また、全国学力・学習状況調査の結果等から児童生徒の状況を詳細に分析し、授業力向上プロジェクトチームにおいて指導の改善策を示すなど、授業改善や落ち着いた学習環境づくり、望ましい習慣づくりを視点とする指導の充実に努める。

 小学校三・四年生でモデル実施してきた三十五人学級については、生活習慣や基礎学力の定着を一層図るとともに、低学年から中学年に円滑に移行するため、制度を変更し、低学年では三十二人、中学年では三十七人の少人数学級を編制する。

 さらに、小学校における英語教育の早期化・教科化に対応するため、これまでの外国人英語指導助手の派遣に加え、新たに英語が堪能な地域人材を外国語活動サポーターとして、新設される小学校三・四年生の外国語活動の授業へ派遣する。

 特別支援教育については、一人ひとりの教育的ニーズに応じた指導を充実し、医療的ケアの必要な児童生徒に対応するため、看護師資格を有する補助指導員を増員する。

 また、全市を挙げた誘致活動が実り二十八年四月に開校された旭川高等支援学校では、三十一年三月に初めての卒業生を送り出すことから、社会的・職業的自立を図ることができるよう、経済界や保護者団体などと連携し、就労の支援に努める。

▼豊かな心と健やかな体を育成する教育の推進

 三十一年度からの「特別の教科 道徳」の中学校での全面実施を見据え、教育課程編成の指針を作成し、各学校に提供するとともに、考える道徳、議論する道徳への転換に向け、道徳の時間研修会を引き続き開催する。

 いじめや不登校への対応については、全小・中学校において、学校いじめ防止基本方針に基づき、家庭や地域、関係機関と連携し、計画的・組織的に未然防止や早期発見に取り組むとともに、迅速な対処に努める。また、引き続き、生活・学習Actサミットを開催するなど、いじめを許さない学校づくりや情報モラルなどにかかわる児童生徒主体の取組を支援する。

 さらに、スクールカウンセラーの配置および適応指導教室などにおける支援を継続する。

 体力向上については、自校の新体力テスト等の結果を踏まえ、児童生徒の実態に応じた一校一実践の取組を進めるとともに、外部専門家を講師として小学校教員体育研修会を開催する。

 全国大会などに出場する選手に助成する派遣費については、保護者等の経済的負担の軽減のため増額する。

▼安心して学び、安全に過ごすことができる教育環境の整備

 東栄小学校増改築の実施設計と千代田小学校の耐力度調査に着手するほか、小・中学校の設備等の更新を計画的に進める。

 また、旭川市立小・中学校適正配置計画に基づき、保護者や地域住民との協議を進める。協議が整った千代ヶ岡小学校については、最後の卒業式や閉校式典を行う。

 就学助成については、経済的に厳しい世帯に対する支援として重要な役割を担っていることから、これまでの支援を継続するとともに、新入学用品費について必要とする時期を考慮し、入学前に支給する。

 学校給食については、心身の健全な発達に資するため、主要栄養素はもちろんビタミンなどの微量栄養素を摂取する観点からもその役割がますます重要となっていることから、今後ともその充実を図る。

 また、地域の農業や食への理解を深めることができるよう旭川産の食材を積極的に使用するなど、地産地消の推進に一層努める。

 さらに、PEN食器導入の方針を踏まえ、五年で更新していたメラミン食器について、PEN食器に切り替える。東旭川学校給食共同調理所については、三十二年一月の供用開始に向け、増改築工事を進めるとともに、給食調理業務について課題等を整理し、今後の運営体制を検討する。

◆社会教育

▼市民一人ひとりの主体的な学びの機会の充実

 本市は、大雪山、肥沃な扇状地を生み出す石狩川水系、神居古潭峡谷など、地質遺産に恵まれている。

 そこに成り立つ自然環境や、営まれてきた人々の暮らしについて学び伝えることで郷土愛を育み、さらには、交流人口の増加など地域の活性化を図るジオパーク構想の認定に向け、推進協議会の立ち上げや普及活動を進める。

 また、科学館については、子どもたちが身近な不思議や科学の楽しさを体験し、興味や関心を高めるための機会として、夏・冬休み期間中、ワークショップや特別実験ショー、プラネタリウムでの特別番組の投影などをボランティアと協働しながら実施する。

▼市民の学びを支える環境の整備

 中央図書館については、昨年七月から利用時間の拡大と変更を実施しているが、三十年度も試行的な取組を通年実施とし、利用時間の変更に伴う動向の変化など、さらなる検討を進め、市民の皆さんにとって利用しやすい環境整備を進める。

 また、市民文化会館については、整備等の方向性について、引き続き検討を進める。

▼地域における学びの循環

 身近なところで子育てや、家庭教育についての悩みを相談できる家庭教育ナビゲーターの育成を継続し、活動の場の提供を進める。

 公民館においては、地域住民の要望に応じて、公民館で活動する団体と地域との橋渡し役を務める取組を引き続き進める。

 また、シニア大学では、学生が学習成果を地域活動で発揮できるよう、大学院のカリキュラム編成を見直し、地域についての学習を深め、必要な内容を取り入れた講座を展開する。

▼市民の心を豊かにする文化芸術活動の充実

 三浦綾子記念文学館は、これまで多くの市民やファンの方々に愛され、ことし開館二十周年を迎える。教育委員会としても、各種記念事業を支援する。

 市民の文化芸術活動を支援する取組としては、昨年、試行的に実施した旭川市民ギャラリーについて、常設の施設として上川倉庫群「蔵囲夢(くらいむ)」のコレクション館に開設する。

 また、市民文化会館や大雪クリスタルホールにおいては、幅広い世代を対象に、質の高い舞台芸術が鑑賞できる公演や、文化芸術の素晴らしさを体験できる機会の提供など、魅力ある自主文化事業を実施する。

 昨年、再開館した中原悌二郎記念旭川市彫刻美術館では、ワークショップや文化芸術施設を巡るバスツアーなどの自主事業を実施するほか、著名な彫刻家の作品の制作過程を見ることができる野外公開制作などを実施する彫刻フェスタを開催する。

▼郷土文化の保存・活用と郷土愛の育成

 博物館は、開館二十五周年を迎える。アイヌの人々の暮らしや文化、屯田兵の入植の歴史などの学習の場となっており、先人の残した貴重な資料を守り伝えていくことは、生まれ育った地域への愛情を育むことにつながる。そのため、高校の郷土研究部などと連携した研究事業や、これまでの歩みを振り返る企画展、道内の博物館と連携した企画展などを実施する。

 また、地域の歴史的魅力や特色をストーリーとした日本遺産の認定に向け、大雪山の自然や上川アイヌの文化・伝統などを構成要素として、上川管内二市十町において取組を進めており、今後とも、関連する自治体と連携しながら、圏域の活性化を図る。

 私たちの暮らす北海道は、ことし命名百五十年を迎える。この北海道の名付け親とも言われる松浦武四郎が蝦夷地探索を進め、アイヌの人々と交流した史実をもとに制作されたミュージカル「松浦武四郎」が今秋、市民の実行委員会の手で公演される。教育委員会としても、北海道誕生の物語を多くの子どもたちに観ていただける機会となるよう支援する。

(市町村 2018-03-06付)

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