旭川市の2年度教育行政方針 オンラインで学習支援 5年度までに端末1人1台
(市町村 2020-03-04付)

旭川市教委・黒蕨真一教育長
旭川市教委・黒蕨真一教育長

【旭川発】旭川市教委の黒蕨真一教育長は2月27日、市議会第1回定例会で令和2年度教育行政方針を説明した。児童生徒の個々の学習状況に対応するため、オンラインサービスを活用した学習支援などを推進し、確かな学力の育成に努めるほか、全小・中学校に5年度までに児童生徒1人1台の端末整備に取り組むことなどを表明。これまで中学生がいじめの問題等について協議してきた生活・学習Actサミットの参加対象を全小・中学校に拡大する。子ども読書活動推進計画について、第4次計画を策定する。

 教育行政方針の概要はつぎのとおり。

【学校教育】

◆基本的な考え

 第2期市学校教育基本計画に基づき、3つの重点的な取組を進める。

▼子どもたちに未来を生き抜く力を育む

 確かな学力の育成については、各学校の組織的で計画的な取組の支援に努めるとともに、児童生徒個々の学習の状況に対応するため、オンラインサービスを活用した学習支援を促進する。

 また、全小・中学校に高速かつ大容量の通信ネットワーク環境を整備し、5年度までに児童生徒1人1台の端末整備を順次進める。

 少人数学級編制については、道教委の取組なども踏まえながら、引き続き小学校低・中学年を対象に、国の基準より少ない人数での学級編制を行う。

 英語教育については、ALT(外国語指導助手)および小学校外国語活動サポーターの派遣やイングリッシュ・チャレンジ教室、インターネット電話による海外児童生徒との交流学習に取り組む。

 また、小・中学校の教員を対象に英語力向上のための研修会を実施する。

 情報教育については、外部の専門家などによる出前授業やロボット型教育用教材等を活用したプログラミング学習を実施し、児童生徒の情報活用能力の育成に取り組む。

 また、子どもたちがICTを適切かつ安全に活用できるよう、情報モラルに関する指導の徹底を図る。

 豊かな心の育成については、道徳教育の充実を図るため、引き続き道徳科研修会を開催し、支援に努めるとともに、関係機関などと連携し、児童生徒が命の大切さや思いやりについて考えを深める取組を充実する。

 また、児童生徒の豊かな感性を育み情操を培うため、ミュージカルやオーケストラの演奏会など、優れた文化芸術に直接ふれる機会を提供する。

 いじめの問題への対応については、市いじめ防止基本方針に基づき、学校や家庭、関係機関などと連携し、未然防止や早期対応の取組を進める。

 また、これまで中学生がいじめの問題等について協議してきた生活・学習Actサミットの参加対象を全小・中学校に拡大するほか、先進事例の調査研究やICTを活用し生徒会で各中学校の取組を共有するなど、児童生徒が主体となった取組を支援する。

 不登校への対応については、各学校において、教員やスクールカウンセラーによる教育相談の充実を図り、未然防止や早期対応・解消に努めるとともに、適応指導教室(ゆっくらす)における指導・支援や関係機関などと連携した取組を行う。

 健やかな体の育成については、体育実技にかかる映像資料を作成し、体育授業や体力づくりの取組を充実するとともに、各学校のオリンピック・パラリンピック教育の取組を支援する。

 本年1月から供用を開始した東旭川学校給食センターについては、新年度から中学校5校を加え、安全・安心でおいしい給食の提供に努めるとともに、地域の食育の拠点機能を果たすよう取り組む。

 また、地元産の食材を給食に積極的に取り入れ、生産者との交流の機会を設けることによって、郷土の旬や地元の農業への関心を高めるなど、地産地消の取組を推進する。

 ふるさと旭川の特徴を生かした教育については、各学校において、本市の社会教育施設などの教育資源を効果的に活用した学習活動に取り組むよう支援する。

 特別支援教育については、一人ひとりの教育的ニーズに応じた指導・支援の充実に努めるとともに、医療的ケアを必要とする児童生徒に対応するため、看護師資格を有する補助指導員を増員する。

▼子どもたちの学びの環境を整える

 登下校の安全対策については、引き続き関係機関・地域と連携した通学路の合同点検を実施するとともに、ICタグおよび防犯カメラを活用した登下校見守りシステムを全小学校に導入する。

 また、児童生徒の危機対応能力の育成に向け、防犯や防災に関する訓練等を実施する。

 学校施設の整備については、来年1月の供用開始に向け、東栄小学校の2期目の増改築工事を行うほか、千代田小学校の実施設計、豊岡小学校の基本設計、永山西小学校の耐力度調査にそれぞれ着手し、学校の耐震化を着実に推進する。

 また、アスベスト含有断熱材が使用されている煙突の改修工事に継続して取り組み、安心して使用できる施設の整備を図る。

 就学援助については、中学校の新入学用品費の支給単価を増額するとともに、支給時期を早め保護者のさらなる負担軽減を図るほか、生活保護基準の見直しによる影響が及ばないよう、必要な制度改正を行う。

 また、引き続き全保護者への制度の周知に努める。

 児童生徒のより良い教育環境の整備のため、市立小・中学校適正配置計画に基づき、保護者や地域住民と意見交換を行い、小・中学校の統合や通学区域の見直しに取り組む。

▼子どもたちをともに育て豊かな学びをつくる 

 学校における働き方改革の推進に向けては、引き続きスクール・サポート・スタッフ等の専門スタッフの活用を図るとともに、部活動指導員を増員するほか、ICTを活用した校務支援やオンデマンド研修を進め、時間外勤務縮減の促進に取り組む。

 教職員の服務規律の保持については、教職員一人ひとりが教育公務員としての責務と立場を厳に自覚し、学校教育に対する信頼を損なうことがないよう、より一層の危機感をもって指導の徹底を図り、服務規律の保持に努める。

 コミュニティ・スクールについては、全小・中学校に導入し、公民館等と連携しながら、学校と地域が力を合わせ、子どもたちの成長を支える体制づくりを着実に進める。

【社会教育】

◆基本的な考え

 市社会教育基本計画および市文化芸術振興基本計画に基づき、5つの重点的な取組を進める。

▼市民一人ひとりの主体的な学びの機会の充実

 ジオパーク構想については、構成する周辺自治体とのネットワークを強化し、引き続き住民参加型の活動や調査・研究を行うなど、関係団体や住民とともに、これからの地域の目指す姿について考え、将来的な日本ジオパークの認定に向け、持続可能な地域づくりにつなげるよう取り組む。

 科学館については、開館15周年事業として、近年多くの方々が関心を寄せている恐竜をテーマに、その進化や絶滅、現代の生態系とのつながりを学べる特別展を開催し、最新の科学を学ぶ機会を提供する。

▼市民の学びを支える環境の整備

 中央図書館においては、市内の小・中学校の夏・冬休み期間に、休館日である月曜日に試行的に開館しており、今後も継続して子どもたちにとって利用しやすい図書館を目指し、読書環境の充実を図る。

▼地域における学びの循環

 旭川市シニア大学では、学習課程を効率よく学び、卒業後にその学習成果を多くの機会で生かし、地域で継続的に活躍できるよう、大学院までの6年制カリキュラムを見直し、2年度から順次、大学4年制に移行する。

 これまで成人の日に開催してきた成人を祝うつどいについては、開催日を成人の日の前日の日曜日に変更することで、遠方からの参加者などへの利便を図る。

 また、4年度から成年年齢が18歳に引き下げられることに伴い、参加者の対象年齢や開催方法について、国や他の自治体の動きを注視しながら検討する

 公民館については、学校や地域団体と連携しながら事業を行っていくなど、地域の身近な施設として学習環境の整備に努める。

 また、他の市有施設も含め、これからの地域における社会教育活動に資する施設の在り方についても検討する。

 子ども読書活動推進計画については、第3次計画が5年を経過することから、この計画の基本理念である「すべての子どもが、いつでもどこでも自分から読書に親しむことができる環境をつくる」を継承しながら、新たな課題を整理し第4次計画を策定する。

▼市民の心を豊かにする文化芸術活動の充実

 彫刻美術館については、中原悌二郎賞が50周年を迎えることから、記念事業を開催し、中原悌二郎賞のこれまでを振り返り認知度を高める機会とするほか、自主事業を通じて彫刻鑑賞機会の充実を図るなど、彫刻のまちとしての魅力の発信に努める。

▼郷土文化の保存・活用と郷土愛の育成

 昨年制定されたアイヌの人々の誇りが尊重される社会を実現するための施策の推進に関する法律に基づく国の交付金などを活用し、市長部局と連携しながら、アイヌ文化を生かすまちづくりを推進する事業に取り組む。

 博物館については、アイヌ文化に親しむ日の開催、市内の高校の郷土研究部と連携した研究発表などを実施する。

 また、開村130年を記念し、旭川のあゆみを振り返る企画展を開催するとともに、彫刻美術館や博物館など社会教育施設を活用した郷土の歴史文化に対する学習活動をより充実させる。

 旧宮北邸とその土地については、歴史的な建造物として国から長期にわたって借り受け、維持管理を行ってきたが、2年度中の取得に向けて取組を進める。

(市町村 2020-03-04付)

その他の記事( 市町村)

余市町2年度予算案 埋蔵文化財を発掘調査 教育費8.2%増の8億

 【小樽発】余市町は2月26日、令和2年度予算案を発表した。一般会計は、前年度当初比6・0%減の総額86億6000万円。うち、教育費は8・2%増の8億20万円となった。  主な事業では、国...

(2020-03-04)  全て読む

仁木町の2年度予算案 外国語指導助手を招致 教育費は微減2.6億円

 【小樽発】仁木町は2月27日、令和2年度予算案を発表した。一般会計は前年度当初比1・6%減の総額36億1500万円で、教育費は0・3%減の2億5600万円。  主な事業をみると、外国語指...

(2020-03-04)  全て読む

ニセコ町2年度予算案 高速ネットワーク整備 小中一貫教育を確立

 【小樽発】ニセコ町は2月27日、令和2年度予算案を発表した。一般会計総額は、前年度当初比20%増の64億2000万円。教育費は4・5%減の5億6100万円となった。  主な事業では、小中...

(2020-03-04)  全て読む

札幌市議会で給特法改正条例可決 時間外在校上限追記へ 4月から施行目指し市教委

 札幌市立学校教育職員の勤務条件に関する条例の一部を改正する条例案が、3日の1定市議会本会議で可決された。市教委は今後、教育委員会規則に1ヵ月と1年の時間外在校等期間の上限について追記するこ...

(2020-03-04)  全て読む

美瑛町の2年度予算案 全小にデジタル教科書

 【旭川発】美瑛町は2月21日、令和2年度予算案を公表した。一般会計は前年度肉付け補正後比3・3%減の総額92億8200万円。うち、教育費は2・1%減の4億7804万円となった。  新規事...

(2020-03-04)  全て読む

中川町2年度予算案 施設長寿命化計画を策定 教育費は2.3億円計上

 【旭川発】中川町は2月28日、令和2年度予算案を発表した。一般会計は前年度当初比5・9%増の39億6200万円。うち、教育費は8・4%増の2億2656万円となった。  新規事業では、各種...

(2020-03-04)  全て読む

下川町2年度予算案 下川商業高の存続支援 教育費8%増 3.3億円

 【旭川発】下川町は2月28日、新年度予算案を発表した。一般会計は前年度肉付補正後と比べ0・6%減の50億7100万円を計上。うち、教育費は8・0%増の3億2740万円を措置した。  主な...

(2020-03-04)  全て読む

上富良野町2年度予算案 テニスコートを改修 教育費23%増の3.6億

 【旭川発】上富良野町は2月27日、令和2年度予算案を発表した。一般会計は前年度当初比5・5%増の68億5200万円。うち、教育費には23・0%増の3億6018万円を計上した。  社会体育...

(2020-03-04)  全て読む

池田町2年度予算案 教育費11%増5.8億 新規に学校プール実施設計

 【帯広発】池田町は2月25日、令和2年度予算案を発表した。一般会計は前年度当初比0・7%増の68億3091万円。うち、教育費には11・6%増の5億7767万円を計上した。  新規事業をみ...

(2020-03-04)  全て読む

中札内村2年度予算案 2校に校務支援システム ALTを1人増員へ

 【帯広発】中札内村は2月26日、令和2年度予算案を発表した。一般会計は、前年度当初比23・8%増の56億6390万円。うち、教育費は1・2%増の5億4427万円となった。  新規事業では...

(2020-03-04)  全て読む