東川町研究開発学校 3年次報告書①
(市町村 2020-03-17付)

 【旭川発】平成29年度から4年間、文部科学省委託「研究開発学校制度」の指定を受けている東川町立東川小学校ほか6校園は、第3年次における研究開発実施報告書をまとめた。報告書の概要を連載で紹介する。

【研究開発課題】

 文化や価値観などの異なる人々とよりよい人間関係を構築できる資質・能力を育成するための、初等中等教育段階におけるグローバル化に対応した教育環境づくりを柱とした教育課程の研究開発。

【研究開発の概要】

 自国や地域の文化や伝統への理解を深めるとともに、異なる習慣や文化をもった人々と共に生きていく多文化共生のために、人間尊重の精神を基調とする国際感覚を養い、国際社会に通用するコミュニケーション能力の向上を図る教科として、「グローブ(Globe)」を創設し、国際教育における初等中等教育の一体的な教育課程の在り方を探る。

①新教科「グローブ(Globe)」の創設と指導内容、指導方法および評価方法の在り方

②幼・小・中・高における国際教育や英語教育(コミュニケーション能力)の接続の在り方

③外国語に慣れ親しみ、異文化理解を深めるための地域人材(15ヵ国のJETスタッフ、9ヵ国の日本語学校留学生)の有効的な活用の在り方

【研究の目的】

 ふるさと東川を愛する心情を高め、人間尊重の精神を基調とする国際性を養い、国際社会に適用するコミュニケーション能力を育成するため、新教科「Globe」を創設し、指導内容、指導方法、評価方法の在り方を探る。

【研究仮説】

 国際教育を中核とした新教科「Globe」を創設し、指導内容、指導方法および評価方法を体系的に構築することによって、自国や地域の歴史や文化、伝統に対する理解を深めるとともに、異文化を理解し、異なる文化や習慣をもつ人々とともに生きていく(多文化共生)ための資質・能力を育むことができる。

【教育課程の特例】

 国際教育を中核とした新教科「Globe」の設置、新教科のため、各教科、および総合的な学習の時間を一部削減。

【研究内容】

▼教育課程の内容

◇新教科「Globe」は、ローカル、グローバル、コミュニケーションの3要素で構成し、グローバル化に対応する資質・能力を育むことを目的に、幼稚園・小学校・中学校・高校におけるカリキュラムを編成した。

 ローカルは、自国や地域の文化や伝統に根ざした自己の確立を図る(自己理解、郷土理解)。

 グローバルは、多様な文化を受容し、共生することのできる態度を育成する(異文化理解、多文化共生)。

 コミュニケーションは、文化の異なる人々との英語をツールとしたグローバル社会で求められる円滑なコミュニケーション能力を育成する(コミュニケーション)。

▽幼稚園

 4歳児は、もちつきや節分など日本の伝統行事や外国の行事等にかかわる活動の中にALT(外国語指導助手)が入る。英語でのゲームや歌などを通して交流を図ることによって、自分と違う国の人々に親しみをもつと考える。英語の読み聞かせも定期的に行い、英語にふれる活動を多くする。

 5歳児は、ALTと連携して、簡単な英単語を使い、歌や踊り、ゲームなどの活動を通して英語を聞き、自ら発音して、英語への興味・関心を高める。写真やイラスト、ジェスチャーなど、視覚的にも分かりやすいプログラムを毎月復習しながら新しい英語にふれる。

▽小学校

 ローカル要素(以下、【L】)

 集団活動に進んで参加するなど、自分の役割を自覚し、責任を果たそうとするとともに、自分の住んでいる地域や国の伝統、歴史、郷土を愛する心をもつ。

 グローバル要素(以下、【G】)

 様々な国・民族の文化を尊重し、誰とでも公平に接するとともに、人とのかかわりを大切にして、寛容的および協力的な態度で生活しようとする。

 コミュニケーション要素(以下、【C】)

 外国語の背景にある文化に対する理解を深め、他者に配慮しながら主体的に外国語を用いてコミュニケーションを図ろうとする。

▽中学校

 【L】は、自信をもつとともに、自己を見つめ個性を伸ばそうとする態度を身に付け、自分と社会とのかかわりを理解し、よりよい社会をつくろうとする心をもつ。

 【G】は、異なる文化をもつ人々が共生する社会を受容するとともに、日ごろから考えや習慣の異なる人に対して、寛容的および協力的な態度で生活しようとする。

 【C】は、外国語の背景にある文化に対する理解を深め、聞き手、読み手、話し手に配慮しながら主体的に外国語を用いてコミュニケーションを図ることができる。

▽高校

 【L】は、社会における自分の担う役割や責任、自分のもつ可能性を自覚し、自己肯定感を高め、学びや協働に向かう積極性をもつ。

 【G】は、多文化共生社会を受容し、自らその形成者として共に生き、共に課題に取り組もうとする参画と貢献しようとする。

 【C】は、言語や文化に対する関心をもち、他者を尊重し、聞き手・読み手・話し手・書き手に配慮しながら外国語でコミュニケーションを図ることができる。

▼幼・小・中・高の連携

▽幼から小への接続

 幼稚園で学習してきた色(colors)や果物fruits)、体の部分(body)などを小学校で活用することで、「英語を知っている」「英語の活動が楽しい」と感じることができるなど、小学校との円滑な接続ができるようカリキュラム編成を行っており、小学校のGlobeへの学習意欲につながっている。

 このほか、幼小連携事業として、年長児と小学1年生との交流では、Globeを実施した。幼児は、幼稚園から行っているあいさつと色(colors)を、英語で話す活動を通して楽しみながら取り組むことができる。

▽小学校から中学校への接続

 小学校4校から全員が東川中学校へ入学することを踏まえ、各小学校でクラスルームイングリッシュを統一して指導することによって、中学校への円滑な接続を図る。

 前年度、6年生を対象にクラスルームイングリッシュを統一した指導で取り組んだことによって、現在の中学1年生は英語に対する反応もよく、スムーズにあいさつなどを交わすことができるなど、効果がみられた。

▼地域人材の活用

▽JETプログラムスタッフ等

 町には、JETプログラムスタッフが在住している。5人のALTはGlobeの授業、3人のSEA(スポーツ国際交流員)は、体育の授業や少年団活動および部活動(野球、バレーボール)、11人のCIR(国際交流員)は、イベント参加や国際交流活動を行っている。

 ALTは各校に常駐しており、Globeのほか、休み時間や給食時間などでも子どもたちと接する機会があり、自然と外国語や外国の文化を身近に感じることができる。

 Globeでは、学習課題から課題解決を図り、単元の終末では、様々な国の人々に学んだ英語を使って学習したことを伝える場面を設定することによって、英語で伝えようという必然性が生まれるようにしている。

 児童は、既習事項の英単語やジェスチャーを使い、相手に伝えることを目的として意欲的に活動するとともに、伝わった瞬間は互いにうれしそうな表情をみせるなど、達成感を得ることができる。

 このことを通して、自国や地域の文化や伝統への理解を深めるとともに、異なる習慣や文化をもった人々と共に生きていく態度を育む。

▽日本語学校留学生

 町には、全国初の町立の日本語学校があり、アジア圏を中心に多くの留学生が学びに来ている。

 簡単な英語でのやりとりや日本語会話による交流で互いの文化や言語を交流するなどの活動が展開できる。子どもたちは学習した英語で伝え、留学生は学習した日本語で伝えることで、目的をもって意欲的に学ぶことができるとともに、互いの文化を伝え、理解し合うことにもつながる。

(市町村 2020-03-17付)

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