道高教組と道教組が声明発表 20人以下授業実現 早急に 配置計画案の撤回を要請
(関係団体 2020-06-10付)

 道高教組(尾張聡中央執行委員長)と道教組(川村安浩執行委員長)は8日、道教委の2021~2023年度の公立高校配置計画案、公立特別支援学校配置計画案に対し「“コロナ”対策をまったく考慮しない“配置計画案”を直ちに撤回せよ」とする声明を発表した。声明では、新型コロナウイルス感染症の影響が長期化する中、児童生徒の命と健康を守るため、早急に20人以下で授業を展開する必要性を指摘。「機械的な学級削減や統廃合は直ちに止め、少人数学級実現のための教職員と空き教室の確保に努めるべき」などと訴えている。

 概要はつぎのとおり。

1 新型コロナウイルス感染症の影響が長期化する中、今こそ20人以下学級の実現を

 新型コロナウイルス感染拡大防止のため、あらゆる場面でソーシャルディスタンスが求められている中、文部科学省は「児童生徒の席の間に可能な限り距離を確保し(概ね1~2㍍)、対面とならないような形で教育活動を行うことが望ましい」とした(5月1日文科省通知)。

 この原則を守るためには、教室を20人以下にしなければならないことは明らかである。日本の子どもたちは、40人学級という世界的にみてもまったく非常識な空間に押し込められ、感染症の脅威にさらされている。一刻も早くこの状況を改善しなければ、子どもの命と健康を守ることができない。

 これまで道教委は、40人学級に固執し、48学級を望ましい学校規模とする学問的根拠のない独自の理論によって、3学級以下の高校を機械的に統廃合の対象としてきた。しかし、現在、早急に学級を分け、20人以下で授業を展開する必要がある。機械的な学級削減や統廃合は直ちに止め、少人数学級実現のための教職員と空き教室の確保に努めるべきである。

 道教委は、高校配置計画案を直ちに撤回するとともに、40人学級を前提とした、これからの高校づくりに関する指針を見直し、抜本的に施策の転換を図るべきである。

2 コロナ禍のもとでの相次ぐ計画変更は、学校を混乱させるだけだ

 2019年度の伊達高校と伊達緑ヶ丘高校統合を皮切りに、2020年度は実に11校もの計画変更案が示された。

 高校配置計画は、地域の中学生への周知・理解などのために、3年間の見通しをもって示されたはずである。

 道教委は、「急激な中卒者数の増減や生徒の進路動向に大きな変動が生じた場合」に計画変更するとしているが、対象となった11校にそのような急激な中卒者数の増減や生徒の進路変動など大きな変化があったとは到底思えず、場当たり的な計画変更であることは否めない。また、今回の高校配置計画案について、旭川市内3校同時学級減など、学校へ何の打診もなく発表されたという報告が多数あり、まさに寝耳に水であった。

 ただでさえ、現場はコロナウイルス感染症の対策に追われている上に、道教委が相変わらず押し付けている授業時数確保至上主義のために、年間計画の変更、土曜授業、長期休業の削減などで、すでに疲弊している。このような状況のもと、高校配置計画は凍結するべきであり、計画変更してまで強引に施策を進める道教委の姿勢はまったく理解できない。

 次年度から、江別高校の普通科1学級減を事務情報科へと変更、滝川高校ほか4校は単位制を導入する案が急きょ示された。配置計画が決定するのは例年9月であり、このような急激な変更では、受検生に対する説明は十分にできない。

 そもそも、道教委は「中学生の進路選択に十分な検討時間を確保する」ため、3年間の計画を策定するとしている。この間の臨時休校によって中学校の授業が予定どおり進まない中、試験範囲の縮小などが当然求められるが、いまだ2021年度高校入学者選抜の見通しも示していない。その上、このような突発的な計画変更案を示すなど、今でも不安を抱えている中学3年生に対して、まったく配慮を欠いた施策である。

3 道教委の“特色づくり”の破綻はいよいよ明らかになった

 道教委は一貫して、特色づくりを学校に押し付けてきた。総合学科や単位制、フィールド制などを乱立させ、相次ぐ学級減による教育課程の著しい変更など現場を混乱させた上に、今回の高校配置計画案では、留辺蘂高校が道内初の総合学科の募集停止、4校のフィールド制の転換が示された。

 道教委は、総合学科を特色づくりの目玉とし、「小規模校となった場合でも、民間非常勤講師を活用するなどして教育活動の充実を図る」としながら、これまでも機械的学級削減を繰り返してきたが、ついに留辺蘂高を募集停止する案を示した。

 また、前年度に決定した釧路北陽高校に次ぎ、北見緑陵高校、札幌丘珠高校、野幌高校、千歳北陽高校でフィールド制を廃止し、普通科単位制などに転換することとしている。

 フィールド制は、教員の加配措置がないまま特色づくりを押し付けるもので、これまでも学校現場は大変苦慮しており、道教委も指針で「見直しを含めて検討」としていたものである。これらのことは、道教委が進めた特色づくりの破綻がいよいよ明らかとなり、具体化したものと言える。

 しかし、野幌高、千歳北陽高について、新たな特色ある高校と位置付け、すでに破綻している特色づくりを一層推し進めようとしている。

 高校配置計画とは、そもそも「学校・学科の配置や規模の適正化を図る」という目的のため示されるものである。生徒の実態や地域の状況に応じて、どのような学校づくりをするのかは、教育課程の編成主体である各学校に任せられるべきであり、道教委が高校配置計画の中で位置付けるものではない。

 道教委はすでに破綻が明らかになった特色づくりの押し付けをやめ、各地域の状況や子どもの実態から出発した学校づくりを支援する教育条件整備に専念すべきである。

4 障がいの有無にかかわらず、すべての子どもに発達を保障する教育条件整備を

 特別支援学校配置計画案について、札幌養護学校の分校新設が発表された。札幌白陵高校の校舎に併設する準備が昨年から進められていたが、特別支援学校配置計画案で初めて示された。

 札幌白陵高では、少人数指導などを実施するために使っていた教室が使えなくなり、教育課程の変更を迫られ、札幌養護では、保護者から不安の声や計画の再検討を求める声が上がるなど、両校の生徒にとって教育条件の引き下げと言わざるを得ない。

 前例のない知的障がい普通科高等部の移転にもかかわらず、両校の関係者の納得を得ているものとは言えず、見切り発車である。この姿勢は、「Nothing about us without us(私たちのことを私たち抜きで決めないで)」を合言葉に、世界中の障がい当事者が参加して作成した障害者権利条約(2006年国連採択、2014年日本政府批准)の理念にも反している。

 特別支援学校の過大・過密化、狭あい化を解消することは喫緊の課題であるが、今回の移転によって、一時的に緩和されたとしても、長期的にみればその解消には全く不十分であり、根本的な解決につながらない。

 計画案に示された配置の見通しは、「道央圏については、さらに数年後、出願者数の増加が見込まれるため、既存施設等の活用による対応」としているが、特別支援教育を受ける子どもたちの発達段階に合わせ、必要なスペースを確保するためにも、本来、単独校舎で新設するべきだ。

 道教委は、このあとも当事者の声を十分に聞き、教育行政として責任をもって条件整備するよう求める。

5 コロナ後を見据え、教育条件整備の抜本的な方針の転換を求める

 道教委は自らが示したこれからの高校づくりに関する指針を見直し、これまで固執してきた特色づくりと望ましい学校規模を改め、抜本的に方針を転換するべきである。

 また、感染症対策のためにも、特別支援学校の過大・過密、狭あい化を一刻も早く解消しなければならない。

 日本教育学会が発表した提言で「本年度の小学校1年生が新型コロナウイルスによる長期休業で問題を抱えたら、高校を卒業する12年後、大学を卒業する16年後まで影響が及ぶかもしれない」とするなど、新型コロナウイルス感染症が学校教育はじめ社会にもたらした影響は甚大なものがある。

 今、長期的な視野に立ち、コロナ後の日本の教育の在り方を根本的に問い直さなければならない。

 しかし、新型コロナウイルス感染症対策を考慮した計画案とは全くなっておらず、従来からの施策を機械的に進めているだけである。

 道教委は高校配置計画案を撤回し、40人学級を見直し、20人以下学級を早急に実現するなど、新型コロナウイルス感染症に対する施策に全力を挙げて取り組むことをあらためて求める。

(関係団体 2020-06-10付)

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