道議会質疑 決算特別委員会(令和2年11月9日)
(道議会 2021-01-20付)

【Q 質問Question A 答弁Answer P 指摘Point out O 意見Opinion D 要望Demand】

【質問者】

▼滝口直人委員(自民党・道民会議)

【答弁者】

▼京谷栄一保健福祉部少子高齢化対策監

▼鈴木一博保健福祉部子ども未来推進局長

▼齊藤順二保健福祉部子ども未来推進局子ども子育て支援課自立支援担当課長

◆子どもの貧困対策について

Q滝口委員 道では、子どもの貧困対策について、子どもの将来がその生まれ育った環境に左右されないよう、道子どもの貧困対策計画によって、相談体制の充実や教育、生活、保護者の就労、経済的支援に取り組んでいると承知している。

 各種事業を確実に実施するには、市町村、民間との連携が必要と考える。

 令和元年度における事業の取組について、母子・父子自立支援員は、14振興局に各1人を設置しているが、ひとり親家庭の自立に必要な情報提供をどのように行い、どのような相談を受け、指導したのか伺う。

A齊藤課長 母子・父子自立支援員について。母子・父子自立支援員は、ひとり親家庭に対し、離別や死別直後の精神的安定を図り、その自立に必要な情報提供、相談指導等を行うとともに、職業能力の向上および求職活動に関する支援を行うことを目的として各振興局に設置している。

 相談窓口においては、子どもの養育や教育をはじめ、求職や転職、資格取得などの就労に関すること、各種の手当てや給付金制度、貸付金などの経済的な支援に関するものなど幅広い相談に応じている。パンフレットや資料などを用いた各種支援の内容やハローワーク等の関係機関の紹介など必要な情報を提供するとともに、ひとり親家庭の個々の状況や就業に関する条件なども伺いながら、自立に必要となる具体的な支援策を助言するなど、それぞれの家庭の事情に寄り添った支援に努めている。

Q滝口委員 母子家庭等自立支援給付金支給事業は、母子家庭等の親が職業能力開発、一定の資格取得や学歴取得のための費用の一部を支援するものである。それぞれの利用実績について伺うとともに、支援給付金支給を申請した件数について、併せて伺う。

A齊藤課長 母子家庭等自立支援給付金について。本事業は、道および市が実施主体となっており、道は、町村に居住する方からの申請に対して給付金を支給している。元年度においては、雇用保険法の規定による職業能力開発のための講座を受講した後に、受講料の一部を支給する自立支援教育訓練給付金事業は26件、看護師等の養成機関の就業期間中における生活費の負担軽減のため、一定の期間、給付金を支給する高等職業訓練促進給付金は25件となっており、いずれも申請のあったすべての方々に対し給付を行った。

 なお、高校卒業程度認定試験合格のための講座を受け、その講座の終了時および合格時に受講費用の一部を支給するひとり親家庭高校卒業程度認定試験合格支援事業は申請がなかった。

Q滝口委員 母子家庭等就業・自立支援センター事業は、函館市をはじめとする6市に設置し、それぞれの市の社会福祉法人に委託し、就業相談、就業に関する情報の提供、自立支援プログラムの策定などを実施している。6市以外の市町村との連携について伺うとともに、自立支援プログラムの策定などによる具体的な実績について伺う。

A齊藤課長 母子家庭等就業・自立支援センターについて。道内6ヵ所に設置しているセンターでは、所在地以外の市町村においても、巡回相談や講習会を実施するほか、関係機関の職員と合同会議を行うなど、地域の支援に偏りが生じないよう、所管する市町村と連携しながら就業に向けた相談やあっ旋、適性に応じた自立支援プログラムの策定によって、ひとり親の就労支援に取り組んでいる。

 また、自立支援プログラムは、児童扶養手当受給者のうち、より安定した就業を望む方々に対して、センターの支援員が面談によって、個々の生活や子育て、求職活動等の状況を確認し、自立、就労に向けた課題や阻害要因などを把握の上、作成するものであり、元年度は72件のプログラムを策定し、各家庭のニーズに合った各種支援、就業のあっ旋等を行い57件が就労につながっている。

Q滝口委員 児童手当・児童扶養手当支給事業における、それぞれの支給対象件数について伺うとともに、支給対象者をどのように把握しているのか伺う。

A齊藤課長 子どもにかかる手当について。児童手当は、中学校卒業までの児童を養育している方を対象としており、元年度は延べ児童数で609万1747人分を、児童扶養手当は18歳以下の児童を養育するひとり親などを対象としており、延べ受給者数で12万32人分をそれぞれ支給している。

 いずれの手当ても、市町村への申請や現況届によって所得状況などの受給要件を確認し、要件を満たした一定所得以下の世帯に支給しており、出生や転入の届出があった際に児童手当の案内を、離婚や死亡の届出があった際に児童扶養手当の案内をするなど、各市町村の窓口において対象者へ周知している。

Q滝口委員 道子どもの貧困対策ネットワーク事業は、子どもの貧困対策にかかる効果的な施策の検討を行うため、多様な分野の関係者で会議を設置している。

 会議における関係者からの意見、それらに対する対応について伺う。また、予算の執行状況と不要額が生じた要因について併せて伺う。

A齊藤課長 貧困対策ネットワーク会議について。道では、本庁および14振興局にネットワーク会議を設置しており、元年度においては、特に本年度からスタートしている第2期道子どもの貧困対策推進計画の策定に当たり、これまでの取組における効果や課題、今後の施策展開に向けた意見をいただき、参考とさせていただいた。

 なお、元年度は、会議の開催に伴う予算額224万1000円に対し、決算額が45万円、不要額は179万1000円となっており、その要因は、各地域ネットワーク会議に対して、アドバイザーとして札幌市内の大学や関係団体から派遣を予定していた方々を、それぞれの地元で確保できたことによって旅費が不要となったほか、新型コロナウイルス感染症の影響によって、予定していた会議を書面での開催に変更したことなどによるものである。

Q滝口委員 道が子どもの貧困対策のために実施している各種事業において、その支援を受けていない子どもやひとり親家庭が潜在的にみられていることから、市町村、民間とのさらなる連携によって、潜在的にサービスを受けていないひとり親家庭を対象とする子どもの貧困対策の一層の充実が可能になるものと考えている。

 道は今後、どのような取組を考えているのか伺う。

A鈴木局長 今後の取組について。相談による支援が届いていない、または、届きにくい子どもや家庭を減らし、地域における子どもの貧困対策を一層進めるためには、支援を必要とする方に制度を知っていただくことが重要であると考えていることから、新たに制度を分かりやすくまとめたリーフレットやガイドブックを作成し、市町村や関係団体との連携のもと、児相の周知に努めることとしている。

 また、昨年6月の法改正によって、市町村に対し、子どもの貧困対策についての計画を策定する努力義務が課されたことを踏まえて、ことし6月に新たに作成した市町村子どもの貧困対策推進計画策定の手引きを活用するなどして、市町村における計画の策定を積極的に促すとともに、地域の実情を踏まえた効果的な対策の検討が進むよう、支援していく考えである。

Q滝口委員 厚生労働省の国民生活基礎調査によると、わが国の相対的貧困率は、平成30年度では15・4%で、24年度の16・1%と比較すると少し改善したが、子どもの7人に1人が貧困の状態にある。

 北海道における生活保護の状況は、受給世帯数はほぼ横ばいで、受給者数は減少しているが、都府県と比較すると保護率は上回っている。

 生活保護世帯の子どもの高校等進学率は、基準値である26年度の96・1%に対し、元年度は96・5%と0・4ポイント改善しているが、目標値98・0%を下回る結果となった。

 一方、生活保護世帯の子どもの高校等中退率は、基準値である26年度の4・0%に対し、元年度は3・9%と0・1ポイント下がり少し改善されているが、目標値の3・0%は達成されていない。

 また、ひとり親家庭の親の就業率は、母子家庭では基準値である26年度の76・5%に対し、元年度では89・7%と13・2ポイント改善し、目標値の78・0%も大きく上回っている。

 父子家庭でも、基準値である26年度の89・8%に対し、94・4%と4・6ポイント改善し、目標値の91・0%も母子家庭と同様に上回っている。

 道は、このような状況をどのように認識しているのか伺う。

A鈴木局長 子どもの貧困に関する指標について。第1期計画におけるひとり親世帯の就業率は、目標値は達成したものの、その雇用形態は非正規が多く、年収が300万円未満の世帯が8割を超える実態にあることから、安定した就業による基本的収入の確保のため、資格取得などによる正規雇用に向けた支援が必要と認識している。

 また、生活保護世帯の子どもの高校への進学率等は、目標値を若干下回っているものの、全国平均より良好な数値でほぼ横ばいで推移している。

 一方で、大学等への進学率は道内全体の子どもの進学率を大きく下回っていることから、経済的負担の軽減にかかる制度の周知徹底などによって、大学等への進学を希望する子どもを支援することが重要と認識している。

 道としては、第2期計画に雇用形態や大学等への進学率にかかわる新たな目標値を設定しており、関係部局が全庁横断的に連携・協力しながら必要な施策に取り組む考えである。

Q滝口委員 第1期道子どもの貧困対策計画における目標値は、生活保護世帯の子どもの高校等進学率や高校等中退率などで達成できていない一方、ひとり親家庭の親の就業率は達成している。5年間で改善が図られてきているが、コロナウイルス感染症拡大によって、社会経済が大きく変化することが予想される中、子どもの貧困対策計画の推進にも多大な影響があるものと考える。

 道は今後、子どもの貧困対策計画にどのような取組をするのか伺う。

A京谷少子高齢化対策監 子どもの貧困対策について。新型コロナウイルス感染症によって、雇用環境が厳しさを増すなど子育て世帯が大きな影響を受けている中、第2期道子どもの貧困対策推進計画が目指している、子どもが夢と希望をもって挑戦できる地域社会を実現するためには、この感染症の影響もとらえつつ、計画に盛り込んだ施策目標を達成していくことが重要であると認識している。

 道では、これまでも相談支援の充実やひとり親世帯臨時特別給付金の支給による経済的支援などに取り組んできた。

 今後は、新型コロナウイルス感染症によって、特に大きな影響を受けているひとり親世帯の実態を把握し、適切な支援を行っていくほか、食事提供や学習支援などを行う子どもの居場所については、設置の少ない地域へのアドバイザー派遣などを通じて、積極的に運営支援を進めるなど、経済的に厳しい状況下にある家庭や子どもたちへの影響を十分に踏まえた実効性のある施策を推進していく。

(道議会 2021-01-20付)

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