札幌市養護教員会 元年度研究紀要はぐくみ 第1回中央ブロック 保健情報の発信 正確に伝えるスキルを
(札幌市 2021-03-23付)

 札幌市養護教員会(小笠原麻実子会長)は、2月25日付で令和元年度の研究内容を収録したDVDを各会員に配布した。研究内容は、新型コロナウイルス感染症の影響で中止となった元年度全市研究会で発表する予定だったもの。研究概要は、元年度研究紀要『はぐくみ』に掲載している。各ブロックにおける研究概要を連載で紹介する。

【キーワード】

情報の整理・活用・発信

【研究内容】

▼5月「研究テーマ・研究計画の提案」

▽研究アンケート

①保健室からの発信を行ったかについて

 月別保健室利用状況、けがに関する統計、スポーツ振興センター適用のけがの概要、来室時の子どもの様子、感染症の状況、目指す子ども像、見守りのポイントなどについて、半数以上(61・3%)の養護教諭が何らかの発信を行っていた。

②保健室からの発信を工夫して行ったかについて

 成果としては、「養護教諭の感覚を裏付けるために、数値などの根拠をもって伝えることができた」「数値や事例を意識して、来室数や事故の件数をもとに分析することができた」という意見があった。

 課題としては、「日常執務に追われて、資料を作成する時間が取れなかった」「先生方が知りたい情報とは何か。ただ数値だけ出しても、それで終わってしまう」という意見があった。

▼6月、7月「グループ交流①②」

 職員会議提案である「保健室利用状況」について、実際に使用した資料を用いて、小中各1人の養護教諭が発表した。ブロック研究会当日は、仮想職員会議の場と設定し、発表者以外は、職員会議に参加したその学校に勤務する教員になった気持ちで、3つの視点をもとに発表を聞いた。その後、中学校区をベースにした3つのグループに分かれ、交流した。

▼9月「グループ交流③」C小学校の実践

 3回目のグループ交流では、C小学校の養護教諭が資料提供した。これから職員会議で提案する内容について、より効果的な発信にするために、発表者以外は、養護教諭の立場で3つの視点をもとに発表を聞いた。

 その後、中学校区をベースにした3つのグループに分かれ、交流を行った。

▼11月「令和元年度の研究のまとめ、全体での意見交流」

▽研究アンケート②

①保健室利用状況の発信に関して、以前より意識が向上したか

 「向上した」が60・7%、「概ね向上した」が39・3%であり、この2つの解答で100%となった。本研究を通して回答者全員が意識の向上を実感できたという結果となった。

 特に、「目的や内容を明確にするように心がける」「情報量や文章量などを精査する」の2点において、高い割合で意識が向上していた。

②保健室利用状況の情報発信に関してやってみたことや工夫したこと、あるいは今後やってみたいと考えていることなど

〈アンケートの記述から一部抜粋〉

▽伝える

 校務支援システムの掲示板利用による情報発信は即時に発信することが可能なため、最新の情報をタイムリーに発信することができた。

 先生方向けにコラムのような形で保健室から見えた子どもの様子などを月に1回くらい伝えたい。

▽伝わる

 先生たちが「来室者を減らせばよい」と解釈しないように、来室者数の多い少ないではなく、保健室に来る前にもう一度自分で本当に保健室に行く必要がある状態なのかを考えさせることが大切であることを伝えられた。

 先生方への感謝や子どもたちの成長したところなどのプラスのことも伝え、お互い協力してやっていきたいという思いが伝わるようにしたい。

▽つながる

 毎週、保健室来室状況を伝えることで、3年生の来室が減少した。保健室は健康教育の場であり、単に生徒を預かる場所ではないことを理解してもらえたように感じている。

 体育で起こったけがに関して、体育科の担当教員との連携につながり、事故防止の対策が取られた。

【まとめと今後の課題】

 養護教諭は、保健室に集まってくる情報を伝えることを日常的に行っている。本研究では、その情報の中から保健室利用状況を取り上げ、伝える・伝わる発信にするために、さらには、意識化・行動化につながる発信にするためには、どのようにすべきかについて2年計画で研究を深めてきた。

 情報は伝えることだけにとどまらず、伝えることによって、伝えた相手の意識や行動が変容する“人を動かす”ことをねらいとしていることが多い。

 そのため、養護教諭は限られた時間の中で正確に情報を伝えるスキルを身に付けることが求められる。本研究を通して、効果的な情報発信の具現化には「対象者は誰か」「目的は何か(何のために伝えるのか)」「内容(何を伝えたいのか)」「変容(伝えた人にどうしてもらいたいのか)」といったことを養護教諭自身がしっかりと考え、明確にした上で発信する必要があることが分かった。

 さらに、人が動く気持ちになる根拠(客観的なデータや具体的な事例)、スピーチの力(説得力をもった話し方)、タイミング(時期をとらえる)が重要であるということを学んだ。

 しかし、今回の研究では、評価の在り方については探ることができず、課題が残る結果となった。情報はもっているだけではなく、発信をすることで初めて意味をもち、それをどのように生かすのかが重要である。

 保健室からの情報発信を「他の教職員がどのように受けとめ、子どもとのかかわりや指導にどのように生かしているか」など、今後は自らの情報発信に対する振り返りを行うことも必要だと考えられる。

(札幌市 2021-03-23付)

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