4種校長会長インタビュー 第4回 地域の人材育成を支援 障がいある子の学び場整備(関係団体 2021-06-29付)
道特別支援学校長会・友善学会長
―会長としての抱負
昨年の小学校に続き、本年度から中学校において新学習指導要領が全面実施となった。
ことし1月には、中央教育審議会より答申「“令和の日本型学校教育”の構築を目指して」が公表され、その中の特別支援教育の章では、「新しい時代の特別支援教育の在り方に関する有識者会議」の最終報告が盛り込まれる形で、「障がいのある子供の学び場の整備・連携強化」「特別支援教育を担う教師の専門性の向上」「関係機関の連携強化による切れ目のない支援の充実」がうたわれている。
このように、新たな教育の姿が求められている今、本会としては、その目指す教育の実現に向け、障がいの重度・重複化および多様化や、学習環境ならびに就労環境の地域間の違い、小・中学校等に在籍する障がいのある児童生徒等への対応など、様々な課題に対して道教委や市町村教委と連携して取り組むとともに、地域の人材育成を積極的にサポートするなど、北海道全体の専門性の向上を図るため、センター的機能の一層の充実に力を注いでいきたい。
特別支援教育のスタート時に道教委から示された「より身近な地域で」「より専門的な教育を」という、“広域”という北海道ならではの潜在的な課題解決に向け、本道の特別支援教育をより充実したものにしていきたい。
―会の抱える課題と対策
コロナ禍において、児童生徒の生命と健康、学びを守る取組が最優先される。同時に、これまで蓄積してきた学びの文化の大幅な見直しが迫られる現状、その再構築が喫緊の課題となる。
GIGAスクール構想の大幅な前倒しによって急速に整いつつあるICT教育環境を有効に活用し、各障がい種が抱える課題をICTの活用等を通して解決し、特別支援学校の教育の充実を図りたい。
また、各障がい種の専門性や、本会各支部の機動性など、より効果的に役割を分担しながら各地域の人材を育成するための支援を行い、就学にかかわる教育相談や各学校の指導・支援の充実が図られるよう、協力していきたい。
教育相談・研修支援を拡充
―各障がい教育について
視覚障がい教育では、札幌視覚支援学校および函館盲学校、旭川盲学校、帯広盲学校の4校が、自校の教育活動の充実に加え、視覚障がいのある乳幼児から成人の方とその保護者、関係者に対し、医療・保健・福祉等の関係機関と連携を図りながら、見え方の状態に応じた学習や生活等に関する教育相談や研修支援などを行っている。
本年度は、視覚支援学校・盲学校4校が共通に抱える在籍者の少人数化に伴う教育課題を解決すべく、道教委事業「仮称・ICT活用による遠隔授業」に取り組み、これまで困難であった児童生徒同士が学び・教え合う協働的な学びと、少人数の利点を生かした個別最適な学びの一体的な充実を、道立特別支援教育センターの協力を得て推進する。
さらに、ICTを利活用した教育相談や研修支援の拡充を図り、道内に広域に点在する利用者の多様なニーズに応えたい。
聴覚障がい教育では、道内の聾学校7校(釧路鶴野支援学校を含む)がそれぞれの地区において聴覚障がい教育のセンター的機能を担っている。聾学校に在籍する幼児児童生徒の障がいの状態や実態が多様化していることを踏まえ、医療機関や保健機関、行政機関などの関係機関と連携を密にし、多面的に子どもを捉えながら、効果的・効率的な言語指導、学力向上に取り組んでいる。
GIGAスクール構想の加速によって、聴覚障がい教育においてもICTを活用した指導に取り組んでいる。聴覚障がいの状態等に応じて音声、文字、手話、指文字等を適切に活用し、ICTも活用しながら的確な意思の相互伝達が行われるよう、指導方法を工夫するなど聴覚障がい教育の専門性の向上を図りながら、増加する人工内耳装用者や重複障がい幼児児童生徒への指導など、多様な教育的ニーズへの対応に努めていく。
知的障がい教育では、自立と社会参加を目指す教育を進めているが、年々増加する児童生徒や障がいの多様化に対応するため、教育環境の整備と教育課程の改善・充実が喫緊の課題である。
また、コロナ禍による経済状況の変化が予想され、高等部卒業後の就労先への影響が危惧される。本年度は小・中学部のみの苫小牧支援学校が開校し、中標津支援学校には義務併置型の高等部が開設予定であり、より身近な地域で専門的な教育を受ける機会がさらに推進される。
前年度は長期の休業によって教育内容の変更や削減を余儀なくされたが、新しい生活様式を基本として、ICTを活用した教育への取組や新しい体験的な学習の在り方を模索しているところ。
これまで培ってきた知的障がい教育の知見を継承しつつ、制限のある環境でも教育効果を上げる方法、行事のもち方などを交流していきたい。知的障がい特別支援学校は最も学校数が多く、広域に点在することから、各学校の課題の集約、情報提供を迅速に行い、昨年以上に各学校同士の連携強化を図っていきたい。
肢体不自由教育では、幼児児童生徒の障がいの状態が重度・重複化、多様化しており、個々のニーズに応じたより質の高い教育の実現が課題となっている。
前年度から道立・札幌市立各校の連携によって、テレビ会議システム等を活用した各種研修や協議、研究大会での実践交流などに取り組み、教職員の専門性の維持・向上を図っている。
本年度は、特に、授業におけるICTの活用を重点に各校の取組の交流を進めていきたい。
また、前年度中止を余儀なくされた体育大会については、一昨年度に一部試行的に行ったオンラインでの取組を拡大し、本年度は参加全7校をオンラインで結び8月に開催する予定。こうした他校の児童生徒との交流は、学びに向かう意欲の向上につながることから、コロナ後を見据えて充実を図っていく必要がある。
病弱教育では、入院期間の短縮化等によって、特別支援学校で学ぶ児童生徒数は減少傾向にあるが、学びの連続性のための前籍校との連携が課題となっており、引き継ぎにICTを活用する試みも見られる。
また、前年度から道教委では、長期入院している高校生への教育保障の取組を進めており、引き続き、関係校で本事業に協力していきたい。
昨年8月に八雲病院の札幌移転に伴い八雲養護学校が機能移転し、手稲養護学校三角山分校が開校となり、道医療センターに隣接する校舎で市立札幌山の手支援学校とともに教育活動を進めている。
両校がこれまで蓄積してきた教育実践のノウハウを互いに交流するとともに、両校ともICTの活用を積極的に進め成果を上げており、今後こうした取組を一層充実させることで、本道全体の病弱教育の充実につなげることができると考えている。
―新型コロナウイルス感染症への対応
本会では、特別支援学校の幼児児童生徒の生命や健康、学びを守る取組を進めるため、これまで取り組んできた感染対策を基本に、その徹底を図っていく。また、新たに設立された新型コロナウイルス感染症対策部局との綿密な連携や、各学校間の一層の情報共有を図り、各学校が抱える課題をいち早く明らかにし、より有効な対策がとれるよう取組の推進を図っていく。
また、必要に応じ、オンラインやオンデマンドを組み合わせた教育活動を展開し、幼児児童生徒の学びを止めない取組の一層の推進を図るため、そのノウハウの共有に努めたい。
―本年度の重点
【1 本道における特別支援教育の目指す姿を明らかに】
道教委が示している本道における特別支援教育の基本計画は、現在第二期前期5ヵ年の中間年に差しかかっている。これまでの取組の進ちょく状況を的確に評価し、後期5ヵ年の方針の策定にかかわり、しっかりとした提言を校長会として行っていく。
【2 ICT等を活用した効果的・効率的な取組を】
各家庭等と一層の連携を図り、ICT教育の環境整備に努めるとともに、各学校間でのICTを活用しての交流教育等の取組を推進し、子どもの学びの最適化を図るなど、各障がい種における課題の解決につなげるとともに、ICTの活用による働き方改革の取組を推進する。また、ICTを活用し専門性の向上を図る取組の充実を図り、様々な取組のノウハウを共有するなどして特別支援学校全体の教育力の向上を図る。
【3 地域の人材育成を】
障がいの多様化やより一人ひとりのニーズに合った教育を保障していくため、障がいのある子どもの学び場の整備・連携強化を目指し、本会としてセンター的機能の発揮に努めるとともに、各校種の校長会とも連携して、専門性の向上や人材育成をより推進できるよう、地域、圏域の特別支援教育の推進に寄与していきたい。
(連載終わり)
ともよし・まなぶ
昭和61年東北福祉大学社会福祉学部卒。平成24年星置養護副校長、27年七飯養護校長、31年真駒内養護校長、令和3年拓北養護校長。
昭和37年4月25日生まれ、59歳。今金町出身。
北海道特別支援学校長会会長
(関係団体 2021-06-29付)
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