胆振教育局と日高教育局 女性管理職増加を目指した取組(道・道教委 2022-01-28付)
女性教員のキャリアデザインセミナー
【室蘭・浦河発】令和3年4月1日現在、日高管内の小・中学校における女性管理職の割合は13・4%で、道内14管内で最も高い数値となった。ここでは、胆振・日高両教育局の女性管理職増加を目指した取組を取材した。また、女性管理職が活躍する日高管内の“これまで”と“これから”について、日高地区女性管理職会・通称「やまなみの会」の深堀美紀会長(日高町立富川中学校長)にインタビュー。将来管理職を目指す女性職員へのメッセージなどを聞いた。
◆胆振局 女性比率向上へ様々な取組 教務主任等で女性増加 意欲醸成や周囲の理解を
胆振教育局は、管内の女性管理職比率が全道平均を下回ったことから、ミドルリーダー名簿の作成や、校長会・女性管理職会と連携したミドルリーダー養成研修会、教頭昇任時の人事上の配慮、公宅入居の配慮の市町教委への働きかけなどを推進。教務主任や主幹教諭の女性割合が増加し、ミドルリーダーの育成が進んできている。
しかし、教頭受検者の増に結び付いていないことが課題に。胆振局では、①女性登用の必要性、課題意識②女性教職員の昇任意欲③男性教職員の女性登用に対する理解―の3点を要因として分析。
これを受け、本年度から、「局、市町村教委、学校の課題意識共有に向けた管理職育成方針の策定」「女性教職員の意欲醸成に向けた女性管理職登用に係る取組の通知や女性管理職会と連携した取組」「男性教職員の理解促進に向けたミドルリーダー養成研修、管内人事だよりの発行」を進めることとした。
通知では、教頭昇任者には、子育て等の状況を勘案して、通勤圏内の学校への配置や配偶者の勤務地に配慮することを伝えるとともに、計画的な女性管理職の育成を求めた。
昨年9月の女性教員のキャリアデザインセミナーでは、女性教諭を中心に約50人が参加。初めて男性も参加対象とした。
あいさつで山上和弘局長は「女性教員のキャリアアップへの意欲の醸成や、スキルアップを図っていきたい」との意欲を示すとともに、「男性教員の理解や、周囲のサポ―トが欠かせない」と、男性も参加対象とした理由を説明。「女性の活躍は、多様な意見や考え方を教育活動に反映させ、子どもたちの男女共同参画意識にも影響を与えるなど大変重要」などと訴えた。
セミナーでは、厚真中央小学校の吉岡ゆかり校長が「ミドルリーダーって何をするの?~マネジメントは“中堅といわれる自分”を救う」と題し、仕事と家庭・子育てを両立させるためのポイントを紹介。「困ったことがあったときに相談できる人を増やし、話し合いの時間を持つことが大事」などと伝えた。
◆日高局 女性教員ミドルリーダー研修会 同僚とのつながり深め 女性管理職会とも交流
日高教育局主催の女性教員ミドルリーダー研修会の際、日高地区女性管理職会が積極的に参加者と交流。声をかけ絆を深め、女性管理職の増加に尽力している。
昨年10月の女性教員ミドルリーダー研修会では、約30人が参加し、それぞれの学校の取組や学校運営への関わり方について意見を交わし、つながりを深めた。
ミドルリーダーの必要性や役割への共通理解と、ワークライフバランスに配慮した学校運営への関わりなどについて研鑚。管内の公立小・中・高校、特別支援学校の中核となっている女性教員が参加。女性管理職会が運営に協力した。
研修会では、講師の毛利繁和渡島教育局主幹が「協働で進める働き方改革」をテーマに演習も取り入れながら講話。リーダーシップが効果的に発揮されることが改革には重要と話し、「本当のリーダーシップとは何か」と問いかけ、「人と人とのつながりがリーダーシップそのもの。自分でアイデアを出して行動して意識改革を」と求めた。
このあと、日高地区女性管理職会の運営で「働き方改革を意識し、資質・能力の育成を目指す教育課程の精選と工夫」を主題に演習・協議。5グループに分かれて学校の取組など情報を共有しながら意見交流を行い、相互理解を深めた。また、同会会員が積極的に参加者に声をかけ絆を深め、女性管理職への意欲を喚起した。
参加した様似小の江端美代子教諭は「子育て中の女性教員でも、どんどん学校運営に関われるキャリアデザインを発信していけるよう、さらなるスキルアップを図りたい」と話していた。
◆インタビュー 日高地区女性管理職会「やまなみの会」会長 日高町立富川中学校長 深堀美紀さん
―管理職となったきっかけ
私が管理職を目指すきっかけとなったのは、当時在籍していた学校の女性校長との出会いです。現在、管理職9年目ですが、管理職となるには遅い方でした。
子育てもありましたし、家庭の状況が許すまでは管理職となることを断り続け、子育てがひと段落するまでは受けられない、まだまだそんな時代でした。
今でこそ、教頭になった1校目は人事配慮などが受けられますが、当時はまだそういった配慮もありませんでした。先輩の女性校長たちが、女性が管理職になりやすい環境整備に向けた働きかけをずっと続けてきてくれました。先輩たちの努力があっての“今”だと思っています。
―日高地区女性管理職会としての取組は
これまでは、日高地区女性管理職会(通称「やまなみの会」)の形を強固なものにしていくことに力を入れてきました。
正直、私が会に入った当初は会員が少な過ぎて研修会もできない、日高は学校数も人も少ない、今ある人間関係の中で地道に声かけをして、そうした積み重ねでようやく人が集まるようになってきました。
今いるメンバーの地道な努力と制度的な環境が整ってきたことも後押しとなって、会としての活動の幅も広がってきました。人と人とのつながりを大切にする、キーワードは“つながり”です。人が増えると“発信力”もできる、まずは人数を増やしながら、お互いの取組を共有して、それぞれの場所で発信する、そういったつながりが今、実を結んできています。
―管内女性教員ミドルリーダー研修会の意義について
年1回の研修会に向け、会のメンバーに人材をピックアップしてもらい研修会参加への声かけをしてきましたが、本年度の研修会は、これまでで一番多く参加者が集まってくれました。
今、女性管理職会で活躍している教頭先生は、みんなこの研修会に参加してくれたメンバー。こういう場でつながることが大切です。そこでの人材発掘によって、管理職を目指す人が増えます。管理職が増えれば、人材を発掘する人が増えていくと思います。
こうした地道な積み重ねで、女性管理職会のメンバーが増えていきました。若い先生も多く、しばらくはよい流れが続きそうです。
―これから管理職を目指す人へのメッセージを
日高管内は大量に校長が退職する時期に入っています。現在進めている働き方改革は、女性も男性も関係なく、意識高くこの職業に向かって生き生きと働いていくためのものです。学校現場の中心となってやっていける人材がたくさん出てきてほしいです。
日高には、活躍している女性がたくさんいます。女性教員ミドルリーダー研修会や女性管理職会などの活動をきっかけに、さらに、意識を高く持って得たものを学校に返してくれることが一番の理想です。
私は、男性管理職にはない女性として分けられているこの会に参加することによって、男性よりも多くの研修の機会を与えていただきました。そこで勉強してきたことが今の私につながっています。
研修の場で、みんなが集まって、互いに共感したり、みんなの苦労が分かったり、違う学校の取組を知って視野を広げたり。ほんのひとときでも、こうした場が参加した皆さんのつぎにつながってくれればと思っています。
そこでつながりを持ったことで、管理職を目指したり、管理職ではなくても、学校の中核となるミドルリーダーとして必要な資質・能力の育成のために頑張ったりしていただきたい。
―本年度で会長を退きますが、今後の活動へ向けてエールを
時代は流れていくので、どんどん新しい事柄が出てきます。協力し合いながら柔軟性を持って改革していただきたいです。
何か困ったときには、いつでも相談できるような会であることを大切にしてほしいです。
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女性同士が交流を深め、実践や意見を交わし合った
日高地区女性管理職会「やまなみの会」・深堀美紀会長
(道・道教委 2022-01-28付)
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