道高校長協会総会 林会長あいさつ 変化を起こす主体たれ 危機管理の経験知を共有を(関係団体 2022-05-13付)
林正憲会長
10日に開催された道高校長協会総会における林正憲会長のあいさつ概要はつぎのとおり(12日付1面一部既報)。
本年度は公立高校33人、私立高校13人、合計46人の校長先生が新たな仲間に加わった。心より歓迎する。大いなる志を抱いて校長になられたことと思う。
人口減少や教育格差など社会の重たい課題がある中で、学校教育には大事な使命がある。理想と現実の差は大きいかもしれないが、逆にその差が私たちのエネルギーにもなる。
支部長、ブロック長と連携を密にしてほしい。他の校長の経験から学ぶとともに、新しい風を吹かせる気概で学校づくりに励んでほしい。共に頑張ろう。
新会員を加え、本協会は公立224校、私立55校、計279校の校長先生によって構成されている。
北海道の高校は広域分散型であること、1間口、2間口の小規模校が3分の1を占めることなど際立った特徴があり、ダイバーシティそのもの。それゆえ、情報共有、意見交換、学び合いに大きな意味がある。
夜の懇親会が実施できるようになればさらに良いのだが、お酒なしでも休憩時間などに気軽に声をかけ合ってほしい。集合型は、校長のネットワークを広げる貴重な機会である。
さて、本協会の運営方針として前年度から掲げている4つのSについてお話しする。
▼支える
1つ目が「支える」。私は校長として困ったことが何度もある。先輩や仲間の校長先生に相談し、何とか乗り切ることができた。
校長は時に孤独を感じつつ、覚悟を持って最終的に決断することになるが、支え合う関係が背中を押してくれる。生徒に必要な援助希求力は私たちにも必要。私たちは仲間である。仲間がいると落ち着く。知恵も勇気も出る。
▼備える
2つ目が「備える」。対象は危機と変化である。
第1に、危機に備えること。学校には人為的なものから自然災害、感染症など様々な危機がある。万一を想定し思考する力、シミュレーション能力が問われる。危機管理にかかる経験知を共有しよう。
職員の不祥事という危機は絶対に回避したい。特に、私たち校長自身の信用失墜行為は教育の根幹を揺るがす。様々な事例を常に自分事として捉え、お互い、身を正そう。
第2は、変化に備えること。以前、学校経営指導に際し、村田尋如教育指導監からSWOT分析の表の提出を求められた。
強み、弱み、機会、脅威のSWOTを静態的に分析して終わるのではなく、SWOTをどう組み合わせ、どう掛け合わせて変化に対応するのか考えさせられた。
変化を予測し、変化を捉えながら、学校の強みを生かし、弱みを何とかし、機会を生かすことが求められる。変化にどう備えるか、学び合おう。
▼攻める
3つ目が「攻める」。本年度は新学習指導要領の全面実施、観点別評価の扱いの変更、道立学校においては、BYOD1人1台端末の導入、校務支援システムの更新などがあり、新たな課題と向き合っている。
受け身で対症療法的な経営を行うのではなく、攻めの姿勢で課題を活用したい。変化に流されるのではなく、むしろ、変化を起こす主体でありたいと思う。
OECD Education2030プロジェクトでは、生徒エージェンシーの概念が鍵とされている。
自分の人生や世界に対して、変革を起こすために目標を設定し、振り返りながら責任ある行動を取る能力のことである。生徒に求めるなら、私たちが手本となるべきである。
学校教育目標、スクール・ミッションおよびスクール・ポリシーをベースにし、「攻め」の学校マネジメントをしよう。
攻めるためのヒントとなるのが、調査研究部の活動。これは本協会の大きな柱である。今何が必要か、何を知りたいかを問い、探究している。大変うれしいのは、本年度も多くの委員の立候補があったこと。積極的に協力し事例を提供していこう。
他にも参考となる情報や知見は本や雑誌、ネットにあり、イベントもある。
私も7月、文科省で学習指導要領改訂の中心的な役割を担った合田哲雄さんと、経産省で「未来の教室」を立ち上げGIGAスクール構想を推進してきた浅野大介さんを招いてシンポジウムを行う。
オンラインでCSTIや未来のブカツの議論を視聴し、優れた実践家や識者の生の声を聞くこともできる。「こんな学びをしている」と情報交換し、仲間と共に学ぶ校長協会でありたいと思う。
また、4年前の10月の代表校長研の際、故佐藤嘉大元道教委教育長が「一方的な説明の場ではなく、行政サイドと校長協会が自由闊達に意見交換する場でなければならない」と仰ってから、私たちが意見や提言を提出し、それに応えていただく関係ができている。
教育の動向を深く理解し、精査した上で建設的な意見を出したいと思う。併せて、文教施策要望についても、中長期的なビジョンを持ち、意義あるものにしたいと思う。
▼育てる
4つ目が「育てる」。第1に、全国的に教員不足に直面している。茨城県では教員採用の募集数を志願者数が下回っているという衝撃的なニュースがあった。
北海道も年度当初から欠員の学校がある。採用予定者の辞退や初任者の退職も珍しくない。国が免許の扱いに踏み込むほど危機的な状況である。
道教委は、教員採用にかかり毎年新たな取組を行っている。私たちも知恵を出し合おう。
第2に、管理職の成り手不足が続いている。前年度に「未来の教頭」応援プロジェクトがスタートし、初めてアンケートが実施され、明確な方針と具体的な策も示された。残念ながら、すぐに効果があったわけではないが、諦めるわけにはいかない。できることをやり続けたいと思う。
まずは自校の副校長、教頭を、一校を任せられる校長にしよう。日常的に「もしあなたが校長だったら」と問いかけるとともに、範を示し、ただ答えを与える指示命令ではなく、見方・考え方を育む対話によって成長を促そう。
佐藤裕之教育指導監からもご自身も含めて3人の経験豊富な主幹の先生が支援すると力強く言っていただいている。
支部・ブロックで協力し、研修の場を積極的に設定してほしい。副校長・教頭が疲弊しているのではなく、生き生きと働く姿を職員に見せ「あんな風になりたい」と思える存在になるように努めよう。
もちろん、私たちが率先垂範である。「生徒に直接教えるために先生になったが、あんな校長ならやってみたい」、そんな在り方を心がけたいと思う。
以上、4つのSによってより良い学校経営を行い、より良い社会を創ろう。現在、日本の先進国としての地位は大きく低下し、SDGsの観点からも決して評価は高くない。
世界全体を見ても、命の尊厳や自由、民主主義がピンチを迎えているのではないだろうか。私たちは教育の力を信じ、本気で挑戦したいと思う。
▼結びに
結びになるが、私には大切にしている言葉がある。道立教育研究所の北村善春元所長の「徹底した現場主義で未来教育の創造を」、小形秀雄元教育指導監の「どんなときでも対話を止めてはいけない」、そして故佐藤教育長の姿勢と行動は決して忘れない。
生徒指導で四苦八苦していた野幌高校のときに、2度も足を運んでくださり、直接先生や生徒に笑顔で語りかけてくださった。前例や形式にとらわれず挑戦するトップの覚悟を示していただいた。
1年間、公立私立を問わず、皆さんと対話、やり取りをしながら、会長としての責務を果たしたいと思う。どうか、よろしくお願いする。
(関係団体 2022-05-13付)
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