道議会質疑 一般質問(6月17日)
(道議会 2022-09-28付)

【質問者】

▼池本柳次議員(民主・道民連合)

【答弁者】

▼鈴木直道知事

▼鈴木一博保健福祉部少子高齢化対策監

▼倉本博史教育長

◆子育て支援

Q池本議員 厚生労働省が発表した3年人口動態統計によると、3年度の出生数は、2年度と比べ、2万9231人減少し、81万1604人となっており、過去最少を更新している。

 合計特殊出生率も1・30まで低下し、国の将来推計の想定を超えるペースで少子化が進んでいる実態が明らかになっており、とりわけ、本道の合計特殊出生率は1・20と、全国平均を0・1ポイントも下回るなど、深刻度は他都府県以上に大きい。

 支援センターについては、少子化対策要綱などで、2年度末までに全国展開を目指すとしていたものの、道内の状況は3年度末で、設置済みは133市町村、設置予定があるのは12市町村で、いまだに検討中が34市町村もある。

 これまで設置促進に向けどのような対策を講じてきたのか、未達成の理由を含めて伺う。

 国では、児童福祉法と母子保健法の一部を改正し、子ども家庭総合支援拠点と子育て世代包括支援センターを見直し、こども家庭センターを設置することとするなど、子育て世帯に対する包括的な支援のための体制強化などを行おうとしている。

 改正法の施行は6年4月1日だが、道では、こうした国の動向を踏まえ、今後の子育て支援強化にどう取り組むのか伺う。

A鈴木保健福祉部少子高齢化対策監 子育て支援体制の整備について。保健師等を配置し、妊娠、出産、子育てに関する各種相談に応じ、切れ目のない支援を提供する子育て世代包括支援センターについては、第4期子ども未来づくり北海道計画において、6年度までに全市町村での設置を目指し、道立保健所による技術的支援や道内の先進事例の情報提供、研修会の開催などに取り組んできたところ。

 今般の法改正によって、国では、このセンターの役割を見直し、各市町村に、妊産婦や子育て世帯、子どもの包括的な相談支援等を行うこども家庭センターの設置を進めることとしていることから、道としては、新制度への円滑な移行のための支援の充実や人員配置の弾力化など、市町村の実情を踏まえた運用が可能となるよう国に要望するなど、各地域において必要な機能が確保されるよう取組を進めていく。

Q池本議員 道内の合計特殊出生率が1・20と低下し、少子化が一段と進んでいる状況にもかかわらず、知事の危機感は全く感じられない。子育て支援の強化について、再度の答弁を求める。

A鈴木知事 今後の子育て政策の取組について。道としては、誰もが安心して子どもを産み育てることができ、未来を担う子どもたちが健やかに成長できる環境づくりは、最重要課題であると認識しており、保育の受け皿整備や人材の確保、児童虐待の未然防止など、喫緊の課題への対応に加え、男性の育児休業の促進や、医療費助成、経済的負担の軽減など、子育て家庭に関する各種支援に取り組んでいるところ。

 今後の子ども施策の効果的な展開に当たっては、子どもや家庭が抱える様々な課題に対し、きめ細かに切れ目のない包括的な支援を実施することや、誰一人取り残さず、子どもや家庭に必要な支援をプッシュ型で実施できるよう、教育庁をはじめ、関係部局、振興局が連携して、総合的な対応力を一段と高めていく。

◆ヤングケアラー

Q池本議員 3月に制定された道ケアラー支援条例では、ケアラーのうち、18歳未満の者をヤングケアラーと定義している。

 条例の第12条第2項で「ヤングケアラーへの支援に関し、ヤングケアラーが自らの意見を表明する権利を行使することができ、かつ、その意見が適切に支援に反映される環境の整備に努めるものとする」と規定しているが、推進計画の策定に当たり、ヤングケアラーの意見表明の場をどう確保し、どうくみ上げていこうとするのか、所見を伺う。

 また、実効性ある支援体制をどう構築していくのか、併せて伺う。

A鈴木知事 ヤングケアラー支援の取組について。ヤングケアラーについては、家庭内のデリケートな問題であることや、本人に自覚がなく、悩みを相談した経験がない子どもも多いことから、周囲の関係者が子どもの事情を理解し、信頼関係を構築した上で、必要な支援に結び付けていくことが必要である。

 このため、道では本年度、大学生や小学生を対象とした実態調査を行うほか、学校など関係機関との調整を行うコーディネーターを児童相談所の圏域ごとに配置するとともに、対面やSNSなどによる専門の相談窓口や、ヤングケアラー同士の交流の場となるオンラインサロンを開設することとしている。

 今後とも、こうした関連施策の実効性が確保されるよう、ケアラー支援条例に基づき、取組の目標値を盛り込んだ推進計画を策定し、その推進状況の評価を行うとともに、ヤングケアラーの当事者や家族の声を聞く機会や手法を検討するなど、それぞれの子どもの実情に応じたきめ細かな支援体制の構築に取り組んでいく。

◆子どもの命守る取組等

Q池本議員 親が育てられない乳幼児を匿名で預かるベビーボックスと称する施設を当別町の市民団体が開設し、道や町では、乳幼児保護後の医療体制の不備などを理由に、当該団体に受け入れ自粛を求めている。

 赤ちゃんポストとしては、熊本市の慈恵病院が平成19年からこうのとりのゆりかごを運営し、これまで161人の乳幼児を保護している。

 道には、救える命を守る知恵と工夫が求められていると考える。知事の見解を伺う。

A鈴木知事 子どもの命を守る取組等について。今般、道内で幼い子どもが命を落とす事案が続いていることは、私としても大変痛ましく、こうした事案が繰り返されることのないよう、地域社会全体で子どもの命を守っていかなければならないと考えている。

 そのためには、様々な事情や困難を抱えながら妊娠、子育てをしている方にしっかりと寄り添い、必要な支援に結び付けていくことが重要であると考える。道としては、各種広報媒体やホームページなどを活用し、不安や悩みを抱えている方々に向けて、匿名での電話相談や各地域の相談機関の積極的な利用を呼びかけている。

 また、今般の乳児の死亡事案の発生を踏まえ、先日、児童相談所など関係職員による緊急連絡会議を開催し、市町村や関係団体に対し、あらためて住民の皆さまからの相談にきめ細かに対応いただくよう要請することや、児相職員が市町村に直接出向き、支援を要する家庭の状況把握や支援内容に積極的に助言することなどを確認した。

 今後とも、道民と一丸となって、地域の見守り機能を十分に発揮し、授かった命を大切に育み、健やかに成長できる環境整備に取り組んでいく。

Q池本議員 今後とも、地域の見回り機能を十分に発揮し、授かった命を大切に育み、健やかに成長できる環境整備に取り組むとのことだが、赤ちゃんポストは、そうした見守り機能の網から外れた最後のセーフティーネットである。

 難しい問題であることは十分承知しているが、赤ちゃんポストについての見解を再度伺う。

A鈴木知事 赤ちゃんポストについて。養育困難な子どもを匿名で預ける赤ちゃんポストについては、虐待や死に至るような子どもを救うことにつながる面を持つ一方で、乳児の安全確保上の懸念や、子どもの養育を放棄し、安易な預け入れを助長する恐れ、さらには、子どもの出自に関する情報が欠如するなど、その設置等の適否については大変難しい問題であると考えている。

 道としても、先般、国に対し、道内事例に関する問題を提起し、今後の考え方を検討するよう要請してきたところだが、まずは、こうした施設を利用する状況にならないよう、市町村や関係団体にも協力いただきながら、地域の見守り機能を発揮していくとともに、予期せぬ妊娠や子育てへの不安や悩みを抱えている方々に対し、各種相談機関の周知や利用の促進を図っていく。

◆こども家庭庁

Q池本議員 子どもを巡っては、いじめや虐待、貧困、少子化対策など、課題が多岐にわたっており、コロナ禍にあって、より深刻化している。こうした課題に対し、国の担当が複数の省庁にまたがっているところから、子ども政策を総合的に対応するこども家庭庁設置法案が成立した。

 こども家庭庁の所管業務について、現在、道では、保健福祉部の子ども未来推進局をはじめ、総務部、環境生活部、経済部、教育庁で担っている。道でも知事直轄の司令塔組織が必要と考える。知事の見解を伺う。

A鈴木保健福祉部少子高齢化対策監 こども家庭庁への対応について。国では、子ども政策をさらに強力に進めていくため、常に子どもの視点に立ち、子どもの最善の利益を第一に考え、自立した個人として等しく健やかに成長することのできる社会の実現に向けて、司令塔役となるこども家庭庁を創設することとした。

 道としては、子どもたちの年齢や発達の過程に応じながら、子どもを取り巻くあらゆる環境を視野に入れ、その権利を保障し、施策を展開することが重要と考えており、今後、こども家庭庁が担う業務や機能に関する検討状況のほか、新年度施策に関する情報収集を進めながら、子どもや家庭が抱える様々な課題に的確かつ迅速に対応できるよう、教育庁をはじめ、庁内関係部で構成する検討委員会で、具体的な対応方向について必要な検討を行っていく。

◆子の自殺予防

Q池本議員 いじめ防止対策推進法では、いじめの定義を、同じ学校にある児童生徒が行う心理的または物理的な影響を与える行為で、行為を受けた児童生徒が心身の苦痛を感じているものとしており、いじめを受けて自殺を図ったり、長期の不登校になったりした場合は、重大事態と認定し、学校や教育委員会は、弁護士や第三者による調査組織を設置し、事実関係を調べることが義務付けられている。

 3年3月に旭川市内の公園で中学2年の女子生徒が凍死した事案で、旭川市教委の第三者委員会が発表した中間報告では、当時通っていた中学校や市教委が事実を把握していながら、いじめと認定していなかったと指摘されている。重大事態の定義を全く理解していないと言わざるを得ず、学校や教育委員会の責任は非常に重い。

 今後このような事態が生じることのないよう、教育現場に対し、法の趣旨徹底を図り、自殺の未然防止につなげていく必要がある。知事および教育長の見解を伺う。

A鈴木知事 子どもの自殺防止について。いじめは、児童生徒の心身の健全な成長と人格の形成に重大な影響を与える深刻な問題であり、未然防止はもとより、早期発見と早期対応によって解決されることが重要である。

 このため、道では、児童生徒に対しては、自ら命を絶つような選択は絶対にしないよう相談窓口の周知に努めてきたところであり、各学校に対しては、いじめ重大事態に係る対応や再発防止策などの事例を紹介するとともに、教員が児童生徒一人ひとりにきめ細かに対応できるよう、定数措置の拡充や教員の負担軽減策を国に要望してきたところ。

 私としては、児童生徒がいじめに悩み苦しむことなく、安心して学べる環境づくりに向け、今後とも、道教委と連携を強め、学校訪問や研修会など、様々な機会を活用しながら、いじめ防止対策推進法の趣旨を徹底し、いじめと自殺の未然防止に取り組んでいく。

A倉本教育長 子どもの自殺防止について。未来ある子どもたちの命はかけがえのないものであり、いじめによって子どもたちが深く傷付き、自らの命を絶つようなことは決してあってはならず、こうした事案の根絶を目指すため、学校、教育委員会は、家庭、地域、関係機関との連携を強化し、自殺防止に取り組むことが重要である。

 道教委としては、市町村教委や校長会、PTA、道福祉部局などの関係機関で構成する道いじめ問題対策連絡協議会において、相互の役割を確認し、連携する上での課題について協議するなど、関係機関等と一体となって取り組んでいく。

 また、指導主事による学校訪問や教職員研修等を通して、法令に示された学校内の組織体制の構築はもとより、学校、教育委員会の責務や、いじめの初期対応、重大事態への対処などの基本的認識について、市町村教委、学校との共有を徹底し、状況に応じて必要な対応を行うなど、児童生徒の自殺の未然防止に取り組んでいく。

◆デジタル教科書

Q池本議員 デジタル教科書は、元年度から、一定の基準のもとで、必要に応じ、紙の教科書に変えて使用することができるようになっているが、3年3月1日現在の普及状況は、公立の小学校で6・4%、中学校で5・9%、高校で5・3%にとどまっている。

 文部科学省が実施したデジタル教科書についてのアンケート調査では、図表の見やすさでは、デジタル教科書への肯定的意見の割合が高く、紙は、書き込みやすさを評価する回答が多かったとされている。

 文科省では、つぎの教科書改訂が始まる6年度の本格導入に合わせて普及を図っているが、道教委では、道内の状況をどう把握し、今後の普及促進にどう取り組んでいくのか伺う。

A倉本教育長 デジタル教科書について。国では、3年度からデジタル教科書の活用を促す事業を実施しており、前年度は、約4割の小・中学校等に配布し、本年度は全ての小・中学校等に英語の教科書を配布するなど、デジタル教科書の本格的な導入に向けた取組を進めている。

 道教委では、指導主事等の学校訪問などによってデジタル教科書の活用状況を把握し、効果的な活用法について指導助言を行うとともに、図表の拡大や文字の書き込み機能をはじめ、動画や音声などを取り入れて学習効果を高めた実践事例を全道に普及している。

 今後は、管内の中核となる教員が参加する教育課程改善協議会において、デジタル教科書を活用した授業づくりについて研修する場を設けるとともに、指導力の優れた教員で編成する授業改善推進チームが実践研究を行い、その成果を各学校に普及するなど、全ての教員がデジタル教科書を効果的に活用した授業を行えるよう支援していく。

◆視力低下防止

Q池本議員 元年度の調査によると、視力1・0未満の小学生の割合は34・5%、中学生は57・4%と、前回調査から大きく増えており、子どもの視力の低下に歯止めがかからない。

 GIGAスクール構想による児童生徒1人1台端末環境が整備されるとともに、コロナ禍における外出自粛で、ゲームなどをする機会も増える中、一段と悪化する恐れも指摘されている。

 教育長は、デジタル化の一方で、進行する児童生徒の視力低下の防止にどう取り組むのか、所見を伺う。

A倉本教育長 視力低下防止の取組について。全ての子どもたちの可能性を引き出す個別最適な学びと協働的な学びを実現するため、GIGAスクール構想の推進やデジタル教科書の導入など、ICTの積極的な活用が進められている中、端末利用に当たっては、視力低下の防止をはじめとする児童生徒の健康への配慮等が重要である。

 こうしたことから、道教委では、市町村教委および学校に対し、端末利用時の健康への配慮事項を記載した啓発リーフレットを配布し、活用を図ることを通して、タブレット使用時の正しい姿勢や、一定の時間利用したあとに休息を入れるなど、目の健康に関する指導の徹底や、家庭と連携した生活習慣の改善に関する取組を進めるよう指導している。

 さらに、今後、小児科医や眼科医等の専門家と連携を図り、目を大切にする指導の実践研究に取り組み、その成果を広く周知して各学校における取組の定着を図るなど、児童生徒の目の健康の保持増進に努めていく。

(道議会 2022-09-28付)

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