札幌市教委　性暴力等の防止へ　初の研修として動画配信　道公認心理師協会等が講師

（札幌市 2023-01-24付）

　札幌市教委は、教育職員等による児童生徒性暴力等の防止等に向けた対応の一環として、教諭等向けの初の研修をユーチューブによる動画配信で実施している。性被害事案アドバイザーを務める大塚智子弁護士、道公認心理師協会の河合祐子会長が講師を担当している。市教委は、教職経験に応じた研修の事後研修として位置付け、数年かけて全ての教諭等が受講できるようにしている。

　３０年前、当時の教え子にわいせつ行為をしたとして市立中学校の男性教員が懲戒処分となった問題を巡り、被害女性が被害を訴えた平成２８年当時の市教委の対応に関する検証報告の中で「より早い段階から法律の専門家らの協力を得るべきだった」「職員が事実認定の理論や手法について研修する機会が設けられていなかった」などの課題が指摘された。

　さらに、令和４年４月から教育職員等による児童生徒性暴力等の防止等に関する法律が施行され、専門家の協力を得て事案の調査や被害者の保護・支援を行うことが明記された。

　これらを受け市教委は昨年７月、児童生徒性暴力等の防止と対処の両面にわたって実効性のある取組として、弁護士、臨床心理士、公認心理師といった専門家をアドバイザーに委嘱し事案の調査や被害児童生徒のサポート、研修などを行う仕組みを構築した。

　７月に学校管理職向けの研修を集合形式で実施しており、教諭等に向けた研修機会は今回が初めてとなる。初任段階における研修、中堅教諭等資質向上研修など教職経験に応じた研修の事後研修として位置付け、数年かけて全ての教諭等が受講できるようにする。

　研修動画は２本制作。アドバイザーを務める大塚弁護士、河合会長がそれぞれ講師を担当している。

　大塚弁護士は、不祥事発生に伴う影響と法的責任について解説。不祥事が生じた場合、学校現場にどのような影響が及ぶのか、刑事上や民事上の責任の内容などを説明している。

　河合会長の動画は「児童生徒への性暴力」がテーマ。教育職員等による児童生徒性暴力等の防止等に関する法律の概要のほか、性暴力の定義について解説している。教員と児童生徒の距離が近く信頼関係を構築しやすいため、学校が性暴力等が発生しやすい環境にあることを指摘し「“学校なのに、先生なのに”ではなく、“学校、先生だからこそ”という意識が大事」と強調している。

(札幌市 2023-01-24付)