デジタルシティズンシップ教育 ICTの善き使い手育成 札幌中央小 教育課程開発など(札幌市 2023-03-30付)
札幌市立中央小学校(紺野宏子校長)は、パナソニック教育財団の助成を受け、ICTを活用した実践研究に取り組んでいる。昨年9月には、デジタルシティズンシップ教育の授業改善に向けて全学年の授業を公開。年間を通して、ICTの“より善き使い手”となる子の育成に向けたモデルカリキュラム開発に取り組み、デジタルシティズンシップ教育の有効性を明らかにした。
パナソニック教育財団は、子どもたちの「生きる力」を育むため、ICTを効果的に活用して学校現場の教育課題の改善に取り組む実践的研究の助成を行っている。
1年間の研究を助成する「一般」と、2年間の研究を助成する「特別研究指定校」制度の2種類を用意。各指定校は助成金を活用し、タブレットPCやデジタル教科書等をそろえ、ICT環境の充実を図るほか、ICT先進校の視察等を行い、校内研究の活性化につなげている。
同校では、ICTの活用に関わって2年度から2年間、市のGIGAスクール構想のモデル研究校として1人1台端末の利活用について研究。1年間を通して実践した成果をまとめ、市内各学校に共有した。
また、3年度からEdTech(Education Technology)導入の補助を受け、デジタルシティズンシップに関するサービスの導入を検証。様々な環境で生まれ育ってきたデジタルネイティブの児童を「より善き使い手となったデジタル市民の育成」を目指して研究を進めてきた。
4年度からは、同財団の助成を受け、研究課題「ICTの“より善き使い手”となる子の育成に向けたモデルカリキュラムの開発~モデルカリキュラム開発に向けたデジタルシティズンシップ教育の授業改善」のもと実践研究を開始。児童をICTのより善き使い手として育み、ICT活用の場をより安全・安心な環境にしていくことを目指して取組を進めた。
昨年9月には、デジタルシティズンシップに関する6授業を公開。うち2年生の「メディアの見方を考えよう」では「普段の生活でどのように情報を手に入れているのか」について、メディアに対する認識を持たせ、児童が普段目にするテレビCMを例に情報との向き合い方を考えた。
授業では、例として柔軟剤やランドセルのテレビCMを取り上げ「何が本当かな?」と児童たちに発問。複数回再生したCMを見た児童は「あっ!ここは本当じゃない」「実際はこんなキラキラ目に見えないよ」などと、CMに用いられている誇張表現に目を向け、情報に対する批判的な視点を養なった。
その上で「なぜそのような表現をしているのか」「それによって何を伝えたいのか」を考え、テレビやタブレット端末をはじめとする多様な情報の受け手として適切に読み解いていく力を培った。
同校が前期と年度末に実施した児童・教職員・保護者向けの学校評価アンケート、デジタルシティズンシップ教育研究についての教員アンケートによると、「子どもたちは、タブレット端末の活用を通し、正しい情報技術の利用ができていたか」の質問に対して、保護者・教職員において「とてもそう思う」の割合が研究開始当初に比べ1割以上増加。また、研究推進に関わる教職員アンケート「(デジタルシティズンシップ教育)についてどのように指導していけば良いか分かる」の項目に対して、肯定的に回答した教員の割合も大きく上昇し、これらのことから、デジタルシティズンシップ教育の有効性が明らかになった。
同校の情報教育推進を担う中里彰吾教諭は「教科教育の目標とデジタルシティズンシップ教育研究の目標が二重構造になっているため、授業の評価の曖昧さが見られた」と実践研究の課題を挙げる。「今後も教科教育の目標に従いながら、メディア・リテラシーを中心としたデジタルシティズンシップ教育に取り組めるかを検討していくことが必要」とし、引き続き、指導体制の維持や継続的な実践を積み重ねていく考え。
(札幌市 2023-03-30付)
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