釧路市6年度教育行政執行方針 学びの多様化学校8年度開設へ 統合型校務支援システム稼働(市町村 2024-03-15付)
岡部義孝教育長
【釧路発】釧路市教委の岡部義孝教育長は、6年度教育行政方針において、個別最適な学びと協働的な学びの一体的な充実を目指し、義務教育段階9年間の連続性と系統性を基軸に据えながら、統合型校務支援システムを本格稼働させ、市標準学力検査の結果など個別データを詳細に分析し、指導の充実を図る。また、8年度の開設を目指す不登校特例校「学びの多様化学校」についても、専門的な知見を有する国の「学びの多様化学校マイスター」を招き、指導助言を仰ぐなど多様で適切な教育機会の確保の観点から検討を進めていく。
教育行政方針の概要はつぎのとおり。
▼子どもたちの生きる力を育むために
▽確かな学力の確立
授業改善や生徒指導力の向上、特別支援教育の充実をはじめ、あらゆる教育活動において小・中ジョイントプロジェクトを通した小中連携の取組を強力に推進していく。また、初の試みとして、中学校区を単位とし、小中連携による授業実践をテーマとした公開研究会を開催し、実践事例の共有等による小中連携の質的向上を図る。
授業マイスターによる授業公開や動画配信、授業交流サイトによる教員同士の実践交流を通して、教員個々の授業力向上を図っていく。また、様々な施策を通して交流を継続している秋田県大館市に授業マイスターを派遣し「一人たりとも取り残さない」高いレベルの授業や教員の授業に対する姿勢を体得させ、学力向上セミナー等を通して全ての教員に発信していく。
ICTを用いた授業改善に向け、道教委の指定を受けた3人の教員による取組事例を各学校に定期的に配信し、市内全体への波及を目指す。また、タブレットドリル等に蓄積された児童生徒一人ひとりの学習履歴を丁寧に把握し、個別最適な学びの実現につなげるとともに、道教育大学釧路校の協力のもと実施している放課後学習サポート事業においては、習熟度別に複数のコースを設定するなど改善を図りながら、子どもたちに確実に支援が届く体制を構築していく。
5年度に各学校へ導入した統合型校務支援システムを本格的に稼働させ、釧路市標準学力検査の結果等、個別のデータを詳細に分析し、可視化させながら、子どもたち一人ひとりに応じた指導の充実を促す。
キャリア教育については、釧路青年会議所との連携に基づくキャリアシンポジウムやジョブカフェを継続するとともに、関係機関とのさらなる連携のもと、ふるさと教育との一体的な推進を図るべく、活動内容に応じた外部講師の一覧を作成し、各学校における指導計画に反映させる。
特別支援教育については、初任段階の教員を中心に、さらに研修を強化。また、本年度から2年間、道の推進地の指定を受けることを踏まえ、道や庁内関係部署等、関係機関との連携を密にしながら、幼少期から就労までを見据えた、個別の教育支援計画を用いた切れ目のない支援体制の構築に向け、研究を進めていく。
▽豊かな心の育成
各学校では、タブレット端末内に、読後の本のタイトルと内容が蓄積される「読書記録アプリ」を全児童生徒向けに導入し、読書習慣のさらなる定着を図っていく。また、全ての中学校の学校図書館を対象に、中央図書館の司書を派遣することで、配架や製本技術等、専門的な視点から魅力ある空間づくりに向けた指導助言を行っていく。
多様化する保護者からの教育相談に対応すべく、弁護士や公認心理師等の専門家で構成する支援チームを組織し、学校への指導助言とともに、チームの構成員が直接、保護者や子どもへの相談に応じる体制を整備する。
このほか不登校への対応について、各校にコーディネーターを選任し、具体的な対応策を学ぶ研修を実施するとともに、別室での対応等、個に応じた取組の充実に努める。また、西部地区の不登校児童生徒数の増加に対応すべく、まなびや鳥取をコア鳥取から鳥取小学校内に移設し、受け入れ体制の拡充を図る。
また、8年度の開設を目指す「学びの多様化学校(不登校特例校)」については、専門的な知見を有する国の学びの多様化学校マイスターを招聘。指導助言を仰ぐなど、国の指定に向け検討を加速する。
▽健やかな体の育成
主体的に健康増進や生活改善に関する知識を深めることかできるよう、新たに保健師等を招いた授業を実施していく。
新給食センターについては、7年4月の運用開始に向け建設工事を完了するとともに、地元食材を活用したふるさと給食の充実も視野に、安全・安心な学校給食の提供を行うべく、釧路・阿寒・音別の3地区で異なる給食費の統一化を含めて準備を進めていく。
▽充実した学びを支える教育環境の整備
学校施設長寿命化計画に基づき、幣舞中学校における屋上防水や外壁等の改修工事を7年度から着手すべく、基本・実施設計を行うとともに、新たに3校でバリアフリートイレを設置するなど4校でトイレ整備を進めていく。また、学校施設の保安維持強化を通して児童生徒の安全・安心を確保すべく、防犯カメラを計画的に設置することとし、本年度は3校で整備する。
このほか学校における暑さ対策については、既に終了した普通教室や職員室への送風機設置、保健室へのエアコン整備に加え、本年度は、モデル事業として、とりわけ外気温が高い阿寒地区3校の普通教室に窓枠エアコンを設置し、その効果を検証していく。
▽信頼に応える学校づくりの推進
8年度に予定する音別地区・大楽毛地区における義務教育学校の開設に向け、施設整備を進めるとともに、保護者や地域からなる開校準備協議会において、引き続き協議を進めていく。また、小中連携をより効果的・効率的に進めるべく、小学校の全ての児童が同一の中学校へ進学するための通学区域の変更を実施する。
教職員の働き方改革については、統合型校務支援システムの本格稼働を通して、児童生徒の出欠管理や通知表・指導要録の作成等、教員の負担軽減を図る。また、新たに教職員の出退勤管理システムを各校に導入し、時間外勤務の状況をより詳細に把握・分析しながら、実効性のある改革の推進につなげていく。
▽健全な育ちを支える連携・協働の強化
「くしろ子どもミーティング」や「学校・家庭・地域と共に考える教育懇談会」の継続実施を通して、保護者や地域、さらには学校教育の主役たる子どもたちの声に耳を傾け、施策の構築に生かしていく。
中学校における部活動の地域移行については、5年に実施した教員への意向調査や種目ごとの実情も踏まえ、関係団体や地域人材との連携のもと、一部の種目において試験的な導入を目指すとともに、その結果をもとに、指導者の確保や費用負担、活動場所の確保等、課題の検討を進めていく。
▼人づくり・地域づくりに向けて
▽主体的な学びの推進
中央図書館では、「くしろ読書週間」における「としょかんフェスタ」をはじめとする啓発イベントや、学校ブックフェスティバル、小中高生による本の魅力を紹介し合うビブリオバトルの実施等、取組の充実を図る。
また、新生児を抱える全ての世帯に対し絵本を寄贈するほか、乳幼児向けの本の読み聞かせ等を行う「子ども読書デビュープロジェクト」を新たに立ち上げ、家庭において乳幼児期から切れ目なく読書に親しむ機会を提供していく。
安全・安心かつ快適な学習機会を確保すべく、生涯学習センターの舞台設備の改修や、大ホールのトイレの洋式化を実施するとともに、こども遊学館のネットジャングルを更新するなど、社会教育施設の機能維持・向上に努めていく。
▽自然との共生と文化芸術の振興
炭鉱関連の調査研究を通して交流のある福岡県田川市石炭・歴史博物館と友好館協定を締結したことから、既存の友好館である台湾の新平渓煤礦博物園区を含めた3館による、それぞれの炭鉱の歴史や文化を紹介する展示等、連携した取組を推進する。
▽健康な心と身体を育むスポーツの推進
スポーツ環境の整備に向けては、ライフステージに応じたスポーツ教室や各種講座等を開催し、多様な機会の提供に努めるとともに、気軽に参加することが可能な軽スポーツの開発にも取り組む。また、中学校における部活動の地域移行を控え、将来的な指導者の育成も視野に入れながら、総合型地域スポーツクラブの組織化の支援に努める。
新型コロナウイルス感染症の影響で市での開催を休止していた「ブロンズ像友好釧路市・八千代市少年少女スポーツ交歓大会」を6年ぶりに開催。スポーツによる友好関係をさらに発展させるとともに、あらためて友好都市協定を締結し、物産等も加えた幅広い交流に拡充していく。
(市町村 2024-03-15付)
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