経済性最優先から転換を 道教委配置計画案見直し要請―道高教組・道教組が声明(関係団体 2016-06-13付)
道高教組(國田昌男中央執行委員長)・道教組(川村安浩執行委員長)は八日、道教委の公立高校配置計画案・公立特別支援学校配置計画案に対し、「教育の機会均等、子どもの学習権を脅かす〝配置計画〟の見直しを求める」とする声明を発表した。声明では、子ども・保護者・地域からの「地域から学校をなくさないでほしい」という声に「耳を傾けたとは到底思えない計画案」などと批判。「経済性・効率性最優先の価値観で行ってきた学校づくり・地域づくりを転換し、北海道独自で地域の主体性を生かした学校づくり・地域づくりの方向に歩み出すべき」と求めている。声明の内容はつぎのとおり。
◇ ◇ ◇
1.はじめに
道教委は七日、「公立高校配置計画案」(二〇一七~二〇一九年度」)と「公立特別支援学校配置計画案」(二〇一七年度)を発表した。
「高校配置計画案」では、本年度新たに提案された計画には、二〇一九年度、六校(岩見沢西・札幌東豊・室蘭工業・苫小牧南・北見柏陽・北見商業)の各一学級減、函館西(三学級)と函館稜北(三学級)を募集停止し六学級の新設校(学科検討中)として再編する案が示されている。
また、「特別支援学校配置計画案」では、高校の空き教室(上磯高校)や閉校した小学校(真駒内小学校)を活用するなどして、二ヵ所に高等支援学校を新設するとしている。
私たちは、子ども・保護者・地域からの「地域から学校をなくさないでほしい」という声を大切にした配置計画を求め続けているが、道教委は、学校規模が大きくなる利点ばかりを強調し、それらの声に耳を傾けたとは到底思えない計画案を示した。私たちは、子ども・学校の実態と保護者・地域の願いに基づいた配置計画に今すぐ見直すことを求めるものである。
2.子どもたちや地域、学校現場の声を生かす高校配置計画を求める
「高校配置計画案」の発表に先立ち、四~五月に全道各地で行われた「地域別検討協議会」には、多くの教育関係者、PTA関係者が出席し、地域の高校に対する思いが多数語られた。「遠距離通学は、保護者の経済的負担が大きくなるのではないか」「国に対して、少人数学級のための働きかけを続けてほしい」「子どもの貧困、人口減少などますます地元の高校の存在意義が大きくなっているので、生徒のニーズがある限り学校を存続してもらいたい」「北海道独自の教育に対する先行投資として学級定数を引き下げ、北海道を支える子どもたちを育ててほしい」など、「新たな高校教育に関する指針(二〇〇六年)」に固執して機械的に地域の学校をなくさないでほしいという多くの声が上がっていた。道教委は、協議会を開催するだけにとどまらず、これらの切実な声に真摯に耳を傾け、高校配置計画に生かすべきである。
さらに、道教委が計画策定に当たり、地元の中学校・高校で学ぶ子どもの声を聞き、十分な論議の機会と時間を保障していないことも重大な問題である。道教委は、教育の主人公である子どもたちの声にも耳を傾け、地域や子どもとともにつくる北海道の高校教育を目指すべきである。このことは「子どもの権利条約一二条・意見表明の権利」でも保障されている。
七月からは第二回の地域別検討協議会が開催される予定である。道教委は地域の意見を尊重し、「指針」に固執しない柔軟な検討を進めるべきである。また、該当校や地域への事前説明を十分に行うとともに、現在の地域別検討協議会のもち方をより多くの道民や子どもが参加し、意見表明をすることができる真に開かれた場に変えていくよう強く求めるものである。
3.十分な教育条件整備を反映した特別支援学校配置計画を求める
特別支援学校の配置についてみると、二〇一六年度、三校の高等支援学校と一校の特別支援学校が開校した。特別支援学校配置計画案では、二〇一七年度、道南圏には、上磯高校の空き教室に二間口、札幌市内には、閉校した小学校校舎を活用して七間口の市立高等支援学校の開校を予定している。いずれの学校も寄宿舎の併設はない。
北海道の高等支援学校においては、二〇〇九年度開校した小樽高等支援学校を最後に、寄宿舎を併設しておらず、スクールバスの運行もなく、自力で通学できない子どもは保護者の負担によって通学が支えられている現状にある。
しかも、ここ数年で増設された学校は予算不足を理由に、統廃合された空き校舎・教室を転用している。普通学校の校舎の転用で、特別な支援が必要な子どもたちの学びを保障できるかの検証が必要であり、学校の設置者である道教委は、障害者差別解消法五条で定められているとおり、子どもの実態に合わせて、必要な環境整備をするための十分な予算措置をとるべきである。
高等部においては、今後も進学者数は増加することが予想され、学科編成・入学者選考検査の在り方と合わせて、地域的条件や高校の特別支援教育の取組との連携を取りながらの配置計画が必要である。
学校新設に当たって道教委は、「設置自治体の要望等も含めて、総合的に勘案して決めている」としているが、だれのための学校なのかの基本に立ち返り、必要な地域の学校新設にすべきである。
高等部の学科再編は、二〇一七年度以降、障害の程度が「比較的軽い学科」「比較的重い学科」の区分を廃止し、本人・保護者が将来の進路希望や教育課程の特色、学ぶ内容によって学校を選択することができるようになった。子どもや保護者にとって、障害の「軽い」「重い」ではなく、教育内容によって進路選択ができるようになることは、多様な学びの場の保障、本人の願いの実現という点では、私たちも同じ考えであり、一定の評価をしている。
しかしながら、教育課程が子どもの発達や実態に合っていなければ、本質的なインクルーシブ教育の実現とはいえない。今後、提示した学科再編の考えに固執するのではなく、実践を積み重ねる中で検証し、入学した子どもの実態に合わせた学科の在り方を再検討することを求めるものである。
4.経済性・効率性最優先の学校づくり・地域づくりからの転換を求める
二〇〇六年に「指針」が出されて以降、三十六校の高校が閉校し、そのうち十八の自治体から地域唯一の高校がなくなった。私たちは、高校統廃合や学級数削減が教育の機会均等、地域づくり、子どもたちの将来に大きく影響することから、「指針」の見直しを強く要求し続けてきた。
昨年、道教委は、地域、保護者の求めから、「高校教育検討委員会」を立ち上げ、再編基準の在り方、地域と連携した教育環境の充実について、ようやく検討を始めた。ことし九月を目途に検証結果を取りまとめるとしているが、議会質問の答弁でふれているのは、「地域キャンパス校の再編基準の緩和」や「ICT遠隔システムの積極的な活用」などの対応にとどまっている。私たちや地域住民の求める根本的な見直しとなるか、大変不安であり疑問である。
地方の市町村には、切実な思いとして地域の高校を残してほしいという願いがある。このことは、地域別検討協議会での声や私たちが教育キャラバンの懇談で聞いてきた地方自治体の首長・教育長の意見からも明らかである。
高橋知事も公約しているとおり、「地方創生」は北海道の喫緊の課題である。国や道の政策によって、都市集中が起こり地方の過疎化が進んだ。そのしわ寄せが地方の子どもたちに及ぼうとしている。今一度、子どもたちの教育権を保障する視点とともに、高校をなくしていく方向が地域社会の未来にどれほど影響するのかという視点でこの問題をみるべきである。
国が推し進める経済性・効率性最優先の価値観で行ってきた学校づくり・地域づくりを転換し、国に働きかけをしながらも、北海道独自で地域の主体性を生かした学校づくり・地域づくりの方向に歩み出すべきである。地域の「たからもの」である学校を核にしながら、子どもとともに歩んでいく。私たちは、そんな地方創生が北海道の未来を明るくする方向だと考える。
教育にお金をかけることができない国や自治体に未来はない。多様で豊かな北海道の教育を目指すことができるような配置計画の策定を求めるものである。
(関係団体 2016-06-13付)
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