2定道議会予算特別委の質問・答弁概要(28年7月5日)(道議会 2016-10-18付)
二定道議会予算特別委員会第二分科会(七月五日開催)における吉川隆雅委員(自民党・道民会議)、藤川雅司委員(民進党・道民連合)の質問、および柴田達夫教育長、北村善春学校教育局長、河原範毅高校教育課長の答弁の概要はつぎのとおり。
◆高校生の主権者教育
吉川委員 選挙権年齢の十八歳以上への引き下げに伴い、高校生が選挙に参加することが決まってから一年あまりが経過した。すでに福岡県のうきは市では、七月三日に全国初となる高校生による市長選挙への投票が行われたようであり、道内においては、この七月十日の参議院議員選挙において、いよいよ高校生が選挙に参加することになる。
これまで道教委として、高校生が有権者として求められる力を身に付けるために、どのように取り組んできたのか、最初に伺う。併せて、市町村などにおける取組事例についても伺う。
河原高校教育課長 政治的教養を育むための取組について。高校においては、生徒の政治や選挙に対する関心を高め、主体的に社会に参画するために必要な力を育むため、教科「公民科」の科目「現代社会」や「政治・経済」において、わが国の民主政治や議会の仕組み、政治参加の重要性、主権者としての政治参加の在り方について学習している。
道教委では、こうした学習に加え、選挙権年齢の十八歳以上への引き下げを機会として、公民科の授業におけるディベートや総合的な学習の時間での模擬選挙のほか、ホームルーム活動における有権者になることの理解などについての取組事例を掲載した指導資料を作成・配布し、各種会議等の機会を通じて具体的な取組を指導してきた。
また、市町村においては、若者の政治参加をテーマに、生徒と議員とが意見交換やグループ討議を行う議会フォーラム、地域活性化をテーマとして企業経営者を学校に招き、町の特産品のPRの充実を図るワークショップなどを実施した例があると承知している。
吉川委員 道教委の取組あるいは市町村においても様々な取組がされているということが分かった。
いわゆる「主権者教育」は、学校だけではなく、社会全体で取り組んでいくことも必要であると考える。そうしたことで、より効果的に主権者意識の醸成を図ることができる。学校以外の取組の一例としては、新聞販売協会からの申出によって、ことし六月から札幌市内の高校に対して新聞の無償配布が行われていると承知している。
その経緯を伺うとともに、今回の取組に対する道教委の認識を伺う。
北村学校教育局長 新聞の無償配布について。選挙権が十八歳以上に引き下げられたことを受け、将来を担う高校生の政治・経済への関心を高めるため、日本新聞販売協会北海道地区本部から、札幌市内の高校三年生の各クラスを対象に四紙を二十八年六月一日から夏休み前日までの間で、無償配布したいとの申出が道教委にあり、札幌市内の道立高校二十六校すべてが配布を希望した。
今回の販売協会の取組については、全国でも初めての取組と伺っている。無償配布を受けた高校三年生からは、「四紙を同時に読み比べることによって、社会の動きが分かるようになりためになった」「選挙にかかわる様々な情報が入り、参考になった」などの声が寄せられており、道教委としては、生徒が政治・経済への関心を高め、理解を深める上で意義のある取組と考えており、今後とも、生徒がより一層政治・経済への関心を高める取組について検討していく考えである。
― 意 見 ―
吉川委員 この販売協会の思いは、販売の促進ということではなく、高校生に身近に新聞がある生活というものを実感してほしいと聞いている。今、答弁にあったように全国初の取組ということもあり、道教委として効果の把握はもちろんのこと、せっかく関係ができたので、この関係を切らすことなく、またつぎの展開、同じような機会を設けられないかどうかといったことも検討すればいいのではないかと思う。
吉川委員 若い人は政治に無関心なのではないかということはよく言われるが、私は職業柄もあると思うが、若い人たちでも政治に関心がある、あるいはかかわりたいと考えている若者がたくさんいることもよく知っている。
しかしながら、ほかの年代に比べて低投票率ということがあるのも事実である。高校生のうちから選挙を通じ、地域や国の構成員の一人としての権利や責務についての自覚を育むことで、そういった問題の解決にもつながっていくことが期待される。
そのためには、主権者教育についての取組を一過性のものとするのではなく、高校生の政治に対する関心を高めるための取組は継続的に行っていく必要があると考える。道教委としての見解を伺う。
柴田教育長 政治への関心を高めるための取組について。わが国の将来を担う高校生に、自分が社会の一員であり、主権者であるという自覚をもたせることは重要であることから、道教委としては、これまで以上に、学校と選挙管理委員会や地域とが連携し参加・体験型の学習を充実させる必要があるものと考えている。
こうした学習を行うのに当たっては、選挙や投票の意義などを学ぶことに加え、社会を観察し問題解決に向けて発言し行動する学習のほか、例えば、模擬選挙や模擬議会などの参加・体験型の学習を位置付けるなどして、卒業までの三年間を見通した計画的・継続的な指導計画を作成することが重要であると考えている。
道教委としては、こうした指導計画が各学校で作成されるよう、道教委が作成した指導資料を活用して、指導主事の学校訪問や各種研修会において指導するとともに、効果的な取組事例を収集し各学校に提供するなどして、政治的教養を育むための取組の一層の充実を図っていきたい。
― 要 望 ―
吉川委員 今、教育長の答弁の中に、社会を観察し、問題解決に向けて発言し行動する学習といった言葉があったが、政治が何のためにあるのかといえば、私は国や地域、あるいは個人に関する問題を解決し、より良い方向へもっていくためにあると思っている。そうしたことからすれば、このような主権者教育を行い、子どもたちが政治とのつながりを意識することによって、国際社会に対し、国家に対し、あるいは地域に対し、また、隣にいる誰かのために、自分が何をすべきなのか、何ができるのか、そういった考えを育むことにもつながると思う。ぜひ、政治への関心を通して様々な課題解決に子どもたちの意識が向かっていくような、その主体性を引き出すような主権者教育の実施に努めていただきたい。
◆公立学校施設整備予算
藤川委員 ことし四月から五月にかけて、札幌市において学校の耐震工事の契約をめぐり、入札終了後、仮契約締結後に国からの負担金の交付が受けられなくなるという情報があり、現場が混乱したと聞いた。
現時点では、道を中心に緊急要望を行い、札幌市を含む一部の事業のみが確保されたようである。
どうしてこのようなことが起こったのか。
さらには、ここ何年かの国の予算および採択の状況はどうなっているのかを伺う。
柴田教育長 公立学校施設整備事業について。二十八年度の国の公立学校施設整備費予算は、翌年度繰り越しできる二十七年度補正予算と当初予算を合わせて、一千九十七億円が措置されたが、この予算は全国の事業計画を踏まえた概算要求額を約一千億円下回った。
国では、二十八年度の施設整備について、前年度からの継続事業などを優先採択事業としたことから、四月当初では、道内の市町村が計画していた二百四十六事業のうち継続事業の九十五事業が採択された。その後、増改築事業等の三十事業が追加で採択されたものの、いまだ半数近くの事業が未採択となっている。
また、近年の国の予算および採択状況については、昨年度まで学校施設の改築事業などに充てることができた東日本大震災復興特別会計を含め、二十六年度が予算額一千六百七十九億円、採択事業は計画数の約九割に当たる二百七十二事業。二十七年度は予算額二千四百三十七億円、採択事業は同様に計画数の約九割に当たる七百十四事業となっている。
― 要 望 ―
藤川委員 今回、札幌市においては入札も終わり、仮契約をし、これから本契約といった時点で負担金が交付されないのではないかという情報があり、本当に現場が混乱したと聞いている。
一つは、学校は、児童生徒が学んでいる施設であるということとともに、災害時には避難所となる施設であって、その耐震化は非常に重要な事業である。
また、各自治体の予算執行計画や、入札、仮契約にまでいったわけであるから、建築業者の計画や準備にも影響を与えるので、今後とも、しっかりと予算の確保をしていただくことを求めておく。
◆主権者教育について
藤川委員 選挙権年齢が十八歳以上に引き下げられて初めての選挙が七月三日、福岡県うきは市市長選挙で行われた。十八歳、十九歳の投票率は三八・三八%、全体の投票率は五六・一〇%とのことで、全体の投票率も低いが、さらに十八歳、十九歳は低いと言わざるを得ない。国政選挙では七月十日投票の参議院通常選挙から初めて有権者が十八歳以上に拡大される。
主権者教育は学校が地域と連携して、早い段階から、地域の問題や社会問題、政治問題について関心をもち、社会の一員として、主権者であるという自覚をもってもらうことが重要と考える。
学校が地域と連携した活動をどのように行っているのか伺う。
河原高校教育課長 社会参加と政治的教養を育む教育について。高校の公民科の科目「現代社会」において、「社会参加」についての取扱いは、生徒が社会参加を通して、社会の維持・発展に貢献することや、自己実現を可能にすることができることなどを理解するとともに、どのように社会的役割を担っていくのかについて考察することと示されている。
このことを踏まえ、道内の各高校においては、地域の有識者を講師として、将来の生き方について学ぶ講演会や、地域の課題をテーマに取り上げ、解決策を探る課題研究、地域の企業等におけるインターンシップなどの学習のほか、清掃活動や交通安全活動をはじめ、祭典の運営の補助など、地域住民等と協同して行うボランティア活動などに取り組んでいる。
藤川委員 学校では地域と連携した様々な社会参加の取組を行っているという答弁であった。これらの取組を授業と関連付けた主権者教育を行うことが大切であると考えるが、学校ではどのように行っているのか伺う。
河原高校教育課長 学校での取組について。道教委としては、国家・社会の形成者として求められる力を身に付けさせるためには、公民科の指導だけではなく、地域と連携した様々な社会参加の取組を教材として、総合的な学習の時間や特別活動等において、関係機関や地域等と連携した実践的な教育活動を計画的に行うことが重要であると考えており、国の副教材等を活用した三年間の指導計画や、特別活動における選挙に関する学習や模擬選挙などの実践例を指導資料として取りまとめ、啓発してきた。
各道立学校においては、これらの資料を活用しながら、総合的な学習の時間などで、地域の課題をテーマとして取り上げ、解決策を探る課題研究を行うほか、それぞれの地域におけるボランティア活動にも取り組んでおり、このような取組が政治的教養を育む教育につながるものと考えている。
藤川委員 教室を出て、広く社会で学ぶ機会を増やすとともに、地域の課題解決の方法を学習するため、例えば、議会視察、模擬議会等の取組を充実させるべきと考えるが、道教委としての考えを伺う。
また、主権者教育を進めていく上において、積み重ねられた実践を広く普及していく必要があると考えるが、道教委としての考えを併せて伺う。
河原高校教育課長 実践的な指導について。高校生が、地域の課題等を理解し、その課題を多面的・多角的に考える学習の機会を設けることは大切であると考えており、これまでも、道内の高校等において、模擬議会や模擬選挙などの実践的な指導が行われてきている。
道教委としては、『教育課程編成・実施の手引』や指導資料でこうした学習活動の事例を掲載し、普及を図るとともに、教員を対象に、選挙管理委員会の事務局の職員を講師とした研修なども行っており、今後とも、地域の課題等について、生徒が自ら学ぶ実践的な指導事例や関係機関と連携した取組について情報収集を行い、各学校への提供に努めていく。
藤川委員 文部科学省は昨年十月に高校生の政治活動について、違法性がなく暴力的な活動につながる可能性がない場合などの条件付きで解禁した。
一方でことし一月には、学校側に政治活動の事前届出制を認める考えも示した。最近、道内の学校で十八歳の高校生が政治活動などへ参加する場合に、学校への届出を必要とするといった動きがあるとの報道を目にした。
届出は、個人の人権を規制することになると考えるが、道教委の考えと現状をどう把握しているのか伺う。
北村学校教育局長 学校の構外で行われる政治的活動等について。放課後や休日等に学校の構外で行われる高校生による政治的活動等については、国の通知において、家庭の理解のもと、生徒が判断し、行うものであるが、こうした活動も、各学校において、学業や生活などに支障のないよう指導することを求めており、道教委としては、こうした国の考えを十分踏まえ、生徒の政治的教養が育まれ、有権者として自らの判断で権利を行使することができるよう、各学校において適切に指導を行うことが必要であると考えている。
なお、道立高校および中等教育学校において、現時点で届出を必要としている学校はないと承知している。
藤川委員 新聞報道では、道内二校ほどが届出を必要とするという報道があったが、報道とは違って道内の公立高校では、届出は必要ないという状況であることが確認できた。
ある県では県立の全高校に届出を義務化するという動きも聞いており、人権侵害に当たるのではないかと私は思うが、道内の公立高校においては、そういうことはないということで安心した。
学校教育において、今後も、地域と連携した様々な社会参加などへの関心を高める教育をしていかなければならないと考えるが、道教委の考えを伺う。
柴田教育長 政治的教養を育むための取組について。道教委としては、高校生に対して、主権者としての自覚を促し、必要な知識と判断力の習熟を進める教育を充実させることは、重要であると考えている。
各学校においては、こうした力を育むことや、政治や選挙への関心を高めるため、総合的な学習の時間や特別活動等で行う指導と教科の指導とを関連させるとともに、選挙管理委員会などの関係機関や関係者等と連携、協働し実践的な指導の充実を図ることが求められていると考えている。
こうしたことを踏まえ、道教委においては、国の副教材に加え、道教委が作成した指導資料を活用するなどし、指導主事の学校訪問や各種研修会の機会等において政治的教養を育むための取組の充実に向け一層の指導を行っていく考えである。
― 意 見 ―
藤川委員 政治意識の醸成は、家庭や地域、学校、職場、さらに、我々政治家が日常活動や選挙を通じて有権者と対話を多く行うなど、あらゆる場面で日常生活が政治にかかわりがあるということに日ごろから関心をもってもらう、そういった情報提供をしていくことが何よりも重要だと思う。
そういう意味では、十八歳からの選挙権ということになったが、中学生あるいは小学生からの主権者教育も非常に重要になってくると思う。
今回は高校における取組について伺った。それぞれ努力をしているということなので、継続した取組を求める。
(道議会 2016-10-18付)
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