2定道議会予算特別委の質問・答弁概要(28年7月5日)
(道議会 2016-10-20付)

 二定道議会予算特別委員会第二分科会(七月五日開催)における藤沢澄雄委員(自民党・道民会議)、新沼透委員(北海道結志会)の質問、および柴田達夫教育長、磯貝隆之学校教育局特別支援教育担当局長、河野秀平教育政策課広報・情報担当課長、伊賀治康教職員課服務担当課長、河原範毅高校教育課長、山本純史特別支援教育課長、田林佳彦教育職員局参事(渉外)の答弁の概要はつぎのとおり。

◆職員団体について

藤沢委員 わが会派はこれまで、北教組の大会議案書に記載された見過ごすことのできない内容や記述を取り上げ、道教委の見解をただすとともに、道教委として不適切と考えられるものについては、訂正および削除を北教組に申し入れるよう指摘してきた。

 ことしも、六月十六・十七日に札幌市内で定期大会があり、わが会派も議案書を入手したが、昨年、北教組に抗議した項目については、本年度是正されていたのか伺う。

田林教育職員局参事(渉外) 北教組の定期大会議案書について。昨年度の議案書の中で、不適切な記述として抗議し、是正を求めた十一項目のうち、教職員の人事異動が北教組の抗議によって撤回されたとする事実と異なる記述は削除されたものの、主任制度に関し、すでに破棄した確認書などを活用した取組の記述や、職員団体主催の教育研究集会の参加にかかる存在しない「道教委回答」の記述など十項目が、本年度も是正されていないことを確認した。

藤沢委員 この議案書では、長期休業中の校外研修について、校長が自主的な研修を認めず、研修の機会が不当に狭められている、そして、校外研修を保障するよう要求をしている。道教委は、教員の校外研修について、その必要性や承認の在り方をどのように考えているのかを伺う。

伊賀教職員課服務担当課長 教員の校外研修について。教育公務員特例法第二二条第二項に基づく校外研修は、教員が不断にその資質・能力の向上に努める必要があることから、その職責の特殊性にかんがみ、職務に専念する義務の特例として設けられている。

 本道においては、二十二年の国の会計検査において、校外研修にかかわって、研修内容が明確にされていないなどと指摘されたことなどから、校外研修を承認するに当たっては、所属長たる校長は、保護者や地域住民の理解を十分得られるものとなるよう、研修の目的や内容などを精査の上、校長の権限と責任において、適切かつ厳格に判断して行うとともに、事後の検証も十分に行う必要があると考えている。

― 指  摘 ―

藤沢委員 一見すると、道教委の申入れは、何か自由な勉強する機会、研究する機会を狭めているように聞こえるかもしれないが、かつては、そのルールを悪用して、本当に研修をしていなかった。買い物をしていたとか、いろいろなケースがあったことを、現場の先生方には分かってもらいたい。

 ある年の春休みのことだったが、現職の高校の先生から、春休みとは言え、朝、遅刻して来て、朝会に遅れる人が当たり前になっているという情報を得た。長期休業中は、普段と違ってルーズでも良いみたいなことがまん延していると思うので、その点もぜひ、指導の徹底をお願いしたい。

藤沢委員 昨年も指摘して、道教委の見解をただしたが、議案書には、今回の参議院議員選挙にかかわって、特定の候補者の実名を挙げ、必勝を目指し組織の総力を挙げてたたかうという記述がある。

 現職教員の選挙活動について、あらためて道教委の見解を伺う。

伊賀教職員課服務担当課長 教育公務員の選挙運動について。このたびの参議院議員通常選挙にかかわって、教職員等の選挙運動の禁止等について、六月一日付で文部科学省から通知があり、道教委では当該通知の趣旨を踏まえ、各道立学校長および市町村教委教育長宛に通知した。

 教育公務員については、教育の政治的中立性を図るため、公職選挙法によって教育者の地位利用の選挙運動が禁止されるとともに、教育公務員特例法第一八条によって適用となる、国家公務員法およびこれに基づく人事院規則によって政治的行為に一定の制限がなされており、仮に、法令等に違反する行為があった場合には、厳正に対処していく考えである。

― 指  摘 ―

藤沢委員 先日も苫小牧の高校で、校門の外でビラ配り、署名活動を行っていた。これは、外とはいえ、地位利用に当たると思うし、あらためて注意喚起が必要だと、強く思う。

藤沢委員 ただいま、二つの項目について道教委の見解をただしたが、ほかにも主任制度に反対する記述や学習指導要領を無視した教育課程自主編成を扇動する記述など、学校運営や教育活動に悪影響を与える不適切な記述が散見されている。このような不適切な記述について、道教委は今後、どう対応するのか伺う。

柴田教育長 今後の対応について。現在、本年度の大会議案書の精査を行っているが、今後、議案書全般についての詳細な確認結果を踏まえ、昨年度から是正されていない記述はもとより、事実と異なる不適切な記述等については、厳重に抗議し是正を申し入れることとしている。

 道教委としては、議案書の不適切な記述が、学校運営や教育活動に支障を来すことがないよう、その是正に向けて、今後とも強く求めていく考えである。

― 指  摘 ―

藤沢委員 なかなか改善が進まないとは言え、やはり放っておくわけにはいかないから、その都度、我々も会派として指摘し、ただしていきたい。

◆学校現場の政治的中立

藤沢委員 参議院議員選挙から、選挙権が十八歳以上に引き下げられた。現役高校生が対象となるわけだが、当然、学校現場における政治的中立の確保は非常に大きな問題だと思っている。ところが、学校現場からは、これまでも数々の中立性を疑わせる事例が散見されてきた。そのたびに議会での質問を繰り返し、道教委に対して指導を徹底するように申し入れてきた。

 一方で、一部のマスコミはその議会議論すら、政治的な圧力をかけるものだというような動きもみられた。今回、新たに、政治的中立性を大いに疑わせる事例が発覚したことから、その真偽と今後の対応について質問する。

 六月中旬、道内の高校の保護者から実名で、メールによる投書があった。その内容は、子どもが通う高校の現代社会の時間に、黒板に「アベ、うそつきアベ、戦いに(自分では)いかないアベ、反対」ということが書いてあったという。

 そのメールには、学校名も担当教諭の名前も書かれていた。さっそく道教委に確認したところ、事実はあったという報告を受けた。

 これは、明らかに政治的中立性が確保されていない、まして選挙を間近に控えた時期にこんなことが学校で行われているというのは、まさしく言語道断だと思う。

 これまで、再三にわたって道教委に指摘してきたが、まったく改善されていないのではないか。

 まずは、事実関係について、具体的に伺う。

河原高校教育課長 政治的中立性にかかわる事例について。道教委が学校から聞き取ったところによると、当該高校の公民科を指導している教員が、六月上旬の当該科目の前期中間考査において、論述させる設問の一つとして、生徒が政治に期待することなどを記述させる問題を出題した。

 中間考査が終了して三日後の授業の中で、当該教員は、その設問に対する論理的な考え方や記述の仕方等について解説する際に、委員指摘のとおり、文言を板書したものであり、この板書が授業後に消されることなく残ったままであったことから、当該授業を受けていなかった生徒が見つけ、保護者に伝えられたものと承知しているが、現在、道教委として詳細な調査を実施し、事実確認を行っている。

藤沢委員 まず、この投書の内容が事実だったということは分かったが、道教委はこの事例に関して政治的中立性の観点からどのように判断しているかを伺う。

河原高校教育課長 政治的中立性について。各学校においては、教育基本法第一四条第二項の「特定の政党を支持し、またはこれに反対するための政治教育その他政治的活動をしてはならない」ことに基づき、政治的中立性を確保することが求められるとともに、教員については、学校教育に対する国民の信頼を確保するため、公正・中立な立場が求められており、教員の言動が生徒に与える影響が極めて大きいことなどから法令に基づく制限などがあることに留意する必要がある。

 今回の事案については、校長が当該教員から事実を確認したあと、当該教員は、授業を受けた生徒と板書を見たと思われる生徒に対し、政治的中立性を損っていると思われかねない授業を行ったことについて謝罪しており、道教委としては、現在、政治的中立の観点からも調査を行っている。

藤沢委員 今回の事例だけをみると、作為的ではなく、子どもたちが書いたものを、まとめて一つの論点整理をするためにやったのかなと思わないわけではない。今、調査しているということであったので、それを見守りたいと思っていた。

 これまで、学校現場での政治的中立性を問題視する議論が行われてきたが、その中には、道内の高校で集団的自衛権をテーマとして弁護士との対話形式の出前授業が行われ、偏った意見ばかりで、政治的中立を疑わせる内容があったと議論になったこともある。

 また、明らかに政権批判ととらえられる文言を印刷したクリアファイルを教室に持ち込んで問題となり、全道調査が行われた。

 また、校門前で政治的なビラの配布と署名活動を行っていて問題になったこともあった。

 その都度、保護者や道民に誤解を与えないよう配慮する旨の対応をとられてきたと思うが、いまだにこのような事例が報告されているということは大変遺憾だと思う。選挙を間近に控えたこの時期に明らかな政権批判は、まさしく投票誘導ととられても言い訳はできないのではないか。このように一向に改善されない状況を、道教委はどのようにとらえているのか伺う。

河原高校教育課長 今回の事案について。道教委では、これまでも、学校における政治的中立性の確保等について指導してきており、道民に誤解や不信を招くような事案が発生した場合には、重ねて指導してきた。

 そうした中、このたび生徒や保護者に不信を与える行為があったことは、本道教育に対する信頼を損なう事態として、大変遺憾であり、速やかな指導の徹底が必要であると認識している。

藤沢委員 学校の先生と生徒というのは、パワーバランスが先生の方が強いわけであるから、大きな問題になりかねないので、ぜひとも対応をよろしくお願いしたい。

 今後の調査を待って、現場への対応を考えているということであったが、今まさしく選挙の最中なものだから、急いで対応する必要があるので、道教委の今後の対応について教育長に伺う。

柴田教育長 今後の対応について。道教委としては、このたびの事案を踏まえ、直ちに教育局の高校教育指導班主査会議を緊急開催して、当該事案について説明するとともに、これまでの通知等を再度確認し、校長自らが授業の内容を含め、政治的中立性が保たれるよう教職員への指導を徹底することについて、管内のすべての道立学校を指導するよう指示をした。

 また、高校長協会および特別支援学校長会に対しては、教員の言動が生徒の人格形成に与える影響が極めて大きいことや、教員が学校の内外を問わずに、その地位を利用して特定の政治的立場に立って生徒に接しないことなど、政治的中立性の確保について、各道立学校に周知するよう求めた。

 今後は、このような政治的中立性の確保に疑義が生じることのないよう、各種会議や学校教育指導等のあらゆる機会を通じて、すべての道立学校への指導を一層徹底していく。

― 指  摘 ―

藤沢委員 今回、保護者から投書を受けたということを、非常に重たいことだと思うし、だからこそ、あえて今回、質問させていただいた。

 道民の皆さんに、不信感を与えるということはあってはならないことであるから、高校生を持つ親の人たちに、こういう事例もあったけれど、道教委として、こういう対応をとっていると発信していただければと思う。

◆特別支援教育について

新沼委員 七月二日、「ニッポン一億総活躍プラン」が閣議決定された。このプランは財源の裏打ちがないなど、夢で終わってしまう可能性もあるが、一億総活躍社会実現のためには、障がい者、難病患者、がん患者等が、希望や能力、障がいや、疾病の特性等に応じて最大限活躍できる環境を整備することが必要との認識のもと、「障がいのある子どもも、障がいのない子どもと可能な限りともに学べるようにし、自立や社会参加が果たせるよう環境を整備する。特に、小、中学校における通級指導を推進するとともに、高校においても通級指導を三十年度から新たに制度化し、小・中・高校合わせて指導内容や指導体制等の環境整備を進める」と明記している。ぜひ、そうした環境を整えていただきたい。

 昨年策定された「北海道総合教育大綱」にも特別支援教育の充実をうたい、障がいのある幼児児童生徒一人ひとりの教育的ニーズに応じた指導や支援を受けられる体制を整備するとしている。このことを踏まえ、以下数点伺う。

 道教委が二十七年度に調査した結果では、道内小・中・高校等において、通常の学級に在籍して特別な支援教育を必要とする児童生徒などの割合は二・六%と、年々増加傾向にあると承知しているが、その要因をどう分析されているのか伺う。

山本特別支援教育課長 特別な教育的支援を必要とする児童生徒などの在籍状況などについて。道教委が二十五年度から実施している「通常の学級に在籍する特別な教育的支援を必要とする児童生徒等に関する調査」では、幼稚園から高校までの通常の学級において、特別な教育的支援を必要とする児童生徒等の割合は、二十五年度は二・二%、二十六年度は二・五%、二十七年度は二・六%となっており、少しずつ増加している状況にある。

 増加の要因としては、特別な教育的支援が必要な児童生徒等に対する教職員の理解が深まるとともに、各学校が、支援体制を整備するために設置している校内委員会において、児童生徒一人ひとりに対するよりきめ細かな実態把握に努めてきたことによるものと考えている。

― 再質問 ―

新沼委員 学校の教職員など、受け入れ側の理解と実態の把握が要因との答弁をいただいたが、通常の学級で学びたいとする児童生徒のニーズにはどのように応えていくのか、その際の課題は何なのかを伺う。

磯貝学校教育局特別支援教育担当局長 児童生徒等の教育的ニーズへの対応について。通常の学級に在籍する特別な教育的支援を必要とする児童生徒の教育的ニーズに的確に応えるためには、校内委員会において、児童生徒一人ひとりの実態を把握し、「個別の指導計画」などを作成するとともに、障がいの特性に応じた指導の在り方に関する校内研修や、特別な指導を必要とする児童生徒への通級による指導、さらには、特別支援教育支援員の配置などによって教育環境の充実を図ることが重要であり、道教委では、こうした研修や指導を行うための「校内研修プログラム」を作成し、道立高校への特別支援教育支援員の配置や、市町村立学校などへの配置の働きかけなどを行ってきたが、こうした取組をより効果的に実施するためには、「個別の教育支援計画」の作成や活用、引継ぎが適切に行われるとともに、支援員の配置の拡充が必要であると認識している。

新沼委員 中学校の知的障がい学級や自閉症・情緒障がい学級から高等支援学校への進学希望者も増加しているが、受け入れ体制は十分に整っているのか伺う。

山本特別支援教育課長 高等支援学校への進学希望者の受入体制について。高等支援学校の入学者のうち、中学校の知的障がい特別支援学級および自閉症・情緒障がい特別支援学級に在籍していた者の割合は、過去三年間の平均で八六・七%となっていることから、配置計画における学級や定員の設定に当たっては、こうした小・中学校の知的障がい特別支援学級などの在籍者数を基礎として、出願率等を勘案しながら進学希望者数を推計しており、その上で、各圏域内の特別支援学校の配置状況を踏まえ、既存の学校の間口増や、空き校舎・空き教室など既存施設を活用するなどして、近年増加傾向にある進学希望者の受入体制の整備に努めている。

新沼委員 高等支援学校を卒業する生徒の中には進学を希望する者もいると聞いているが、進学率はどの程度なのか、この数年間の状況について伺う。

山本特別支援教育課長 卒業生の進路について。過去三年間に高等支援学校を卒業した一千九百二十人のうち専門学校や、高等技術専門学院などの教育訓練機関に入学した者は四十一人であり、割合は全体の二・一%となっている。

 年度ごとでは、二十五年度は、卒業生六百四十二人のうち八人で、割合は一・二%、二十六年度は、六百十四人のうち十五人で二・四%、二十七年度は、六百六十四人のうち十八人で二・七%となっている。

新沼委員 就職率についても、この数年間の状況について伺う。

山本特別支援教育課長 卒業生の就職について。過去三年間に高等支援学校を卒業した一千九百二十人のうち、一般就労および就労継続支援A型で雇用契約を結んだ者は六百七十九人であり、割合は、全体の三五・四%となっている。

 年度ごとでは、二十五年度は、卒業生六百四十二人のうち二百二十二人で、割合は、三四・六%、二十六年度は、六百十四人のうち二百八人で三三・九%、二十七年度は、六百六十四人のうち二百四十九人で三七・五%となっている。

 なお、過去三年間で、就職しなかった者のうち、就労移行支援等の福祉的就労をした者は、一千百四十七人であり、卒業生一千九百二十人に占める割合は、五九・七%となっている。

新沼委員 進学も就職もしない卒業者に対するフォローはどうなっているのか伺う。

山本特別支援教育課長 卒業後の支援について。高等支援学校卒業後に進路先が決定していない生徒は、二十七年度では、卒業生六百六十四人のうち十九人であり、その内訳は、病気療養中の者が六人、自宅で過ごしている者などが十三人となっている。

 これらの進路先が未決定の卒業生に対しては、在籍していた学校において、電話や家庭訪問などによる進路相談を行い、本人や保護者の希望、現在の状況等を把握した上で、実習先や相談支援事業所等の紹介、在校生と連動した就労先の開拓、ハローワーク等の労働機関と連携した情報提供などによって、卒業後の支援を行っている。

新沼委員 今まで聞いた取組を通して、また、質疑を通して、障がいのある子どもたちの自立や社会参加が可能となる環境整備が重要である。教育長の決意を伺う。

柴田教育長 特別な教育的支援を必要とする児童生徒等の自立や社会参加に向けた取組について。道教委では、これまで、障がいのある子ども一人ひとりの教育的ニーズに応じた指導や支援の充実を図るため、特別支援教育支援員の道立高校への配置や、市町村立学校などへの配置の働きかけ、また、小・中学校教員などへの助言などを行う「特別支援教育パートナー・ティーチャー派遣事業」、さらには、「高校における生徒の障がいに応じた特別な指導の研究」などに取り組んできた。

 こうした中、二十五年度から実施している調査では、幼稚園から高校までの通常の学級において、特別な教育的支援を必要とする児童生徒などの在籍している学校が、全体の六割を超えていることから、昨年度から、発達障がいのある子どもなどへの指導や支援に関する知識・技能を習得するための「校内研修プログラム」の活用を促進し、各学校の専門性向上に取り組んでおり、本年度は、さらに就学前から一貫した指導や支援が行われるよう、各管内において、教育と保健福祉の関係者が連携して支援体制の構築を行う「発達障がい支援成果普及事業」を実施することとしており、今後とも、こうした取組を通じて、障がいのある子どもやその保護者への早期からの教育相談や支援体制の充実を図り、一人ひとりの自立や社会参加に向けた環境整備を進めていく。

― 要  望 ―

新沼委員 一層の環境整備の充実について働きかけていただきたい。

◆遠隔授業について

新沼委員 二十七年四月一日に学校教育法施行規則が改正され、全国の高校でICTを活用した遠隔授業が実施できるようになった。道教委では、二十年から一部の高校で遠隔授業を導入し、二十五年度からは文科省の委託を受け、遠隔システムを活用した授業科目の単位認定の在り方や指導方法について研究開発を行っていると承知している。

 研究開発の期間は二十九年三月までとなっており、終了まではあと九ヵ月ほどあるが、この三ヵ年で得られた成果および浮かび上がった課題について伺う。

河野教育政策課広報・情報担当課長 遠隔授業に関するこれまでの成果と課題について。道教委が実施してきた遠隔授業にかかる研究開発においては、ICT技術の特性を生かしながら、対面授業と同程度の教育効果の発現を目指して取り組んできており、分かりやすい授業のための教材提示の充実や受信側の生徒の活動を観察するための手元用ハンディカメラといった新たなツールの活用によって、対面で行う授業に相当する教育効果が確認されたところであり、教科・科目の専門性の高い教員が遠隔授業を行うことによって、生徒の学習意欲の向上がみられた。

 一方、受信側の生徒数によっては、生徒の理解力に応じた個別支援に課題があったり、授業者と受信側のサポート教員の連携に課題がみられた。

 今後、研究開発を進める中で、こうした課題の改善を図るなど、遠隔授業を充実していく必要があると考えている。

新沼委員 ことしの秋から、中学校でも学校の適正規模十二学級を下回る地方の小規模四校で試験的に遠隔授業を導入して、実施するモデル校を公募するようだが、どのような基準で四校に絞り込むのか、また、逆に手を挙げる学校が四校に満たなかった場合はどう対応されるのか伺う。

河野教育政策課広報・情報担当課長 中学校における遠隔授業について。道教委としては、教員数が少なく、専門性を生かした指導に課題のみられる小規模な中学校における教育水準の維持向上等を図るため、本年度から、遠隔授業の導入の在り方について、試行的実施によって調査研究を行うこととし、具体的には、四校の中学校を指定して、遠隔授業のシステムや人的な配置、授業方法等について実践的に検証し、効果的な遠隔授業の在り方の調査研究を行う。

 調査研究校の指定に当たっては、こうした趣旨を十分に周知して、積極的に取り組むことのできる学校を指定することとし、地域性や学校規模、ネットワーク環境等を総合的に勘案して決定する。

 なお、仮に実施希望が四校に満たない場合は、調査研究の趣旨や内容について、さらに丁寧に周知していく。

新沼委員 今の子どもたちは小さいころからパソコンやスマートフォンなどIT機器に慣れ親しんでいて、遠隔授業にも違和感はないと思われる。小学校への導入についてはどのように考えているか伺う。

河野教育政策課広報・情報担当課長 小学校への遠隔授業の拡大について。教科担任制である中学校においては、教員数の少ない小規模校では、免許外の教科を担当するなど、専門性を生かした指導が一部では困難な状況にあることから、遠隔授業は、こうした課題を解決するための有効な手立てとなることが期待されるが、一方で、学級担任が基本的にすべての教科を指導する小学校への導入については、中学校における研究校の取組の状況を十分検証するとともに、他県の取組状況や専門家の意見を参考としながら検討していきたいと考えている。

新沼委員 遠隔授業については、現在、研究開発校は礼文高校など五校、研究協力校は紋別高校など七校で、文字どおり研究開発として実施されているが、委託期間が終了する来年度以降の高校への本格導入について、教育長はどのように考えているのか伺う。

柴田教育長 高校における遠隔授業について。広域分散型の本道においては、ICTを活用した遠隔授業は、離島の高校や郡部の小規模校の教育水準の維持向上を図る観点から大きな効果が期待できるものと認識している。

 こうした中、これまでの研究開発校の取組によって、対面で行う授業に相当する教育効果が確認されたが、教員の連携などに課題もみられ、今後、こうした課題の改善を図るとともにオンデマンド教材の開発など、引き続き研究開発に取り組んでいく考えである。

 併せて、こうした研究開発校と併行して、地域キャンパス校とセンター校間で実施している遠隔授業についても、配信校から複数の地域キャンパス校への一斉配信について研究開発を行うなどして、遠隔授業を効果的に実施するための環境整備や内容の一層の充実に取り組んでいく。

(道議会 2016-10-20付)

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